シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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道照らす灯火抱き、我ら進まん 其の十一

「う、ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」

 

刀身から放たれる全てを凍らせる冷気がリュカオーンの背骨を凍らせ、そのまま砕き貫いていく。

書き起こしてみればたったこれだけで終わることではあるが実際目にすると中々刺激的なものである。絶賛放出真っ最中の冷気が俺ごとリュカオーンを縫い止め、拘束する……驚いた、形ある夜と言っても良いだろうリュカオーンすらもあの白銀の狼が扱う絶対零度の冷気は縫い止めてしまうっていうのか。まぁ使ってみたところの感触としては「寒い」の一言に尽きるな、反動ダメージがまさかあまりの寒さに凍傷ダメージが発生するものとは……寒いと痛いをさらっと両立させるな運営、こんな所まで馬鹿正直に作り込まなくて良いんだ。

 

刺突点を起点に一気に凍結が広がり俺と槍が楔になってリュカオーンをサイガ-0の眼前で縫い止める、エネルギーが送り込まれバキバキと音を立てながらリュカオーンの行動を封じていく。

 

「…………!!ビャッコ、さん……!!?」

 

目の前のサイガ-0が驚愕したような声色で俺に呼びかける、多分第三者視点からだと自爆じみた形で俺とリュカオーンが氷漬けになってるように見えてるんだろうな。さてこのまま行けば俺はサイガ-0の攻撃に巻き込まれて吹き飛ぶ訳だが。…………まぁ大した問題じゃないさ、だから。

 

 

 

 

「構うなッ、やれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

頼むぜ真打。シャンフロ内最大火力と呼ばれるだけの実力を特等席から見させてくれ。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

「――――我は混沌を手繰る者。天上に在りて天の果てへ飛翔し、奈落に在りて深淵の底へ潜行す」

 

この奥義(スキル)はシャングリラ・フロンティアという世界を彩る設定により「切り札」の名を直々に与えられた本物の神技である。威力や効果などを下げる代わりに詠唱の破棄(スキップ)が可能な魔法とは異なり複雑な発動手順と長たらしい詠唱を強制する中々に面倒くさいものではあるが威力は絶大の一言に尽きる。

 

「双貌たる天魔、尚も手を伸ばし極点へと至る」

 

天帝魔王(サタン)状態時発動可能な「カタストロフィ」、魔王天帝(サタナエル)状態時発動可能な「アポカリプス」。これら2つの絶技をそれぞれ5回、合わせて10回叩き込んでも尚斃れぬ大敵にのみ使うことを赦される聖と邪という相反する2つを無理やり融合させて放つ混沌の一撃。ユニークシナリオ「覇天に手を伸ばす魔王」、それと対を成す「覇淵に踏み入る天帝」の二つのシナリオをクリアする事で入手可能な剣と鎧が変貌を始める。

 

神魔の大剣(アンチノミー)」がどちらか一方の属性を宿す時、それを阻害するもう一方の属性を隔離する役目を持った「双貌の鎧」が己に課せられた役目を一時的に放棄し急速に赤錆色の本来の姿へと戻っていく。それとは対称的に神魔の大剣には光と闇が渦を巻き、正反対のエネルギーがぶつかり合い更に強大な力へと成長を遂げる。

 

「我が覇道を塞ぐ大敵よ、我が覇たる道の先導は我が他に要らず。即ち我が一撃は塞がる万象を砕く」

 

白と黒が交差し、1つになり、螺旋を描く。その先に狙うは漆黒の大狼。

炎の鳥が縫い止め、致命の魔術兎が揺らがした。龍の呪いをその身に刻みし忍が照らし、致命の侍兎が食い止めた。狼の呪いを背負う鳥頭によって恐るべき顎門は粉砕され、今黒狼は龍の呪いをその身に灼き付けられた上裸の狐面が己ごと凍て付かせ拘束している。

吹き飛んだ顎門が、体裁のみを取り繕って中身は空の脚が急速に溢れ出す闇によって修復されているが全てが後手に回り、悪足掻きすらも完封されたリュカオーンはとうとうある種の覚悟を宿した眼でサイガ-0を、秋津茜を、2体のヴォーパルバニーを、サンラクを見つめる。

そして今自らの背中で己を賭けて縫い止めているだろう狐面を思い出し、()()()

 

「我が身は天にありてサタナエル、魔にありてサタン。双貌一つに混沌を執行()す」

 

サイガ-0にとってこの神技は「覚えるのが面倒な上に使い所がほとんどない」というどちらかといえば無駄なものであるという認識であったが、今ではこの瞬間の実現の為だけにあったのではとすら思っている。サンラクの期待を、これまでの積み重ねを、任された役目を果たすべく、長き戦いに終幕を。

詠唱の終わりと共に片手のみで大剣を握り締め、全身全霊を以て振り上げ、下す。

 

始原(ハジマリ)終焉(オワリ)を謳え………………「アルマゲドン」!!!!」

 

放たれる白と黒の交差、白を黒が、黒が白を。お互いがお互いを喰い合い連鎖して段階的に強さを増していくエネルギーの奔流が螺旋を描きながらリュカオーンに直撃する。1.0倍の「初撃」から十段階の()()によるダメージ判定を叩きつける正真正銘「究極の攻撃」がリュカオーンのリソースを凄まじい勢いで削り尽くす。

 

 

「あっ、これ言ったは良いけど俺も死ぬやつじゃ――――――――」

 

途中誰かの断末魔らしきものが聞こえた気がするが気にしてはいけないし放ったものをなしにすることなど到底出来ないので後の祭りである。

 

そうして最後の波動が霧散し、月も沈み始めた夜空に白と黒の輝きが消え失せた時。そこにあったのは左半身が消失したリュカオーンの姿であった。

その姿形は原型を留めておらず、実際問題綺麗さっぱり左半身が消し飛んでいる以上立っていることなど不可能である筈だと言うのにリュカオーンは()()()()()

 

「まだ……足りない……?」

 

「流石にここからロスタイムは勘弁してほしいが……」

 

「アルマゲドン」発動の代償として剣と鎧から色と力が失われ、錆びつき朽ちかけた騎士の残骸と化したサイガ-0をかばうようにサンラクと秋津茜が、そしてエムルとシークルゥが前へと立つ。リュカオーンは己に立ち向かった矮小なる存在に口の端を心底愉快に歪め…………そして遂にその身を崩壊させた。後には地面に突き刺さった朱雀と――――――

 

 

「な、なんか、生きてた…………ラッキー…………」

 

「ビャッコ!!?お前生きてたのか!?!?!!!」

 

「ビャッコさん!良かった……!…………にしても、やったんで、しょうか……?」

 

「それフラグゥ…………」

 

「や、やりましたよお三方とも! リュカオーンを倒したんですよ!」

 

なぜか生存していたことに安堵し崩れ落ちるビャッコ、不安げなサイガ-0、言葉の意味を懸念するサンラク、そして勝利を喜ぶ秋津茜。各々が現状を思う中、3羽のウサギに遅れて4人のプレイヤーはそれに気づく。

 

「サ、サンラクサン……み、見てますわ! り、リュカオーンが!!」

 

「秋津茜殿、まだリュカオーンはそこに()()で御座るよ……!」

 

「ビャッコさんッ、リュカオーンが、()()()…………!!」

 

姿があるわけではない、だが確かにそこにいるという確信が4人と3羽が何もないはずの闇の一点に感覚を向けさせる。何も無いはずのそこにいる気配はただ静かに己の分身を打倒した開拓者達を見つめ、そして笑った。少なくともサイガ-0はそう感じた。

 

『称号【星呑祓い(プラネットイーター:キリング)】を獲得しました』

『カーケスカブ「星吞(プラネットイーター)」討伐に最も貢献したプレイヤーが「万呑の魂魄片」を入手しました』

『称号【影狼(かげろう)を穿つ】を獲得しました』

『特殊状態「導きの灯火」を入手しました』

『ユニークシナリオEX「夜闇を祓うは勇気の灯火」を開始しますか?はい いいえ』

 




認めよう




ーーーーーー精々、上手く使え
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