シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
色々と話を聞いてみるとどうやら「リュカオーンの刻傷」とやらは呪いの上位版のようなものらしく、効果が変更されていたとのことだった。
具体的には「
「一定時間とは言え防具を付けれるのはマシな方じゃないか?」
「じゃあもう無制限でいいじゃねぇかそれ……」
「ご尤もが過ぎる」
従来の効果に追加して幾つかのメリットデメリットが増えたらしいが個人的に羨ましいのはやはり「一定時間の防具着用許可」ではなかろうか、どれだけの時間なのかは知らないが少なくとも防具を着れるだけでとても羨ましい、少しの間でも変態として認識されないというのがここまで羨望を抱くものとは17年ほど生きてきたが今日まで知らなかった。
「二段構えのトラップは卑怯だろ……なんで跳び箱越えた先に別の跳び箱があるんだよ……人間二段ジャンプはできないんだぞ……ゲームの世界ならできるわ…………」
「大丈夫ですか? 200m走れば大体吹っ切れますよ!」
「走るは走るでもどっちかと言えばRTAがいいかなぁ」
項垂れるサンラクに向かって秋津茜がそんなことを宣っている……そういえば4エリアごり押しで踏破してここまで来たんだっけ?もしかしてカッツォやペンシルゴンやサンラクとはまた違う方向性でバカなのかこいつ。
そんなことを考えていると不可視の視線と圧が俺に降りかかってきた。
「えっ??」
次の瞬間俺の右側の視界が
「……………………あ"?」
なんか、やばい感覚がする。まず最初に疑ったのはVR機器の故障だ。だがそれならばシステム側が俺を強制ログアウトさせ俺は現実世界のベッドで目を覚ますことになる筈だ。だがそうはならない、つまりシステムがこれをゲームとして正常な処理をなしていると判断したことになる……片方の視界が吹き飛んだ状態が?まとも?んなわけあるかい。
だからまずは己の現状を第三者に確認することにした。
「――――――あーーー、今の俺ってどうなってるか説明してくれる人いる?」
「ビャッコさん、落ち着いて聞いてください」
「なんだオルト」
「右目にリュカオーンが居ます」
「何言ってんのお前?」
右目にリュカオーンがいるらしい、どういうこっちゃねん。
「あっ、視界が戻っ…………えっ?」
ゆっくりと消失していた片方の視界が光を取り戻す……取り戻したがなんか思ってた取り戻し方と違った。
具体的に言えばなんか
落ち着け、落ち着け俺。まだみっともなく叫ぶ時じゃない、まずステータスを確認しろ。
やけに冷静な頭が俺にステータスウィンドウの確認を命じる、過去一で滑らかかつ速やかに与えられた命令を実行しステータス画面を見た。
————————————
PN:ビャッコ
LV:99 Extend(150)
JOB:戦士(二刀流使い)
1500マーニ
HP(体力):30
MP(魔力):50
STM (スタミナ):120
STR(筋力):140
DEX(器用):90
AGI(敏捷):150
TEC(技量):150
VIT(耐久力):5(700)
LUC(幸運):119
スキル
・
・ヴィクトリア・スマッシュLv.1
・マッハレッグLv.MAX
・
・
・
・遮那王憑き
・
・アサシンピアスLv.MAX
・王位龍装【神居】
・フリットフロート
・
・致命秘奥【タチキリワカチ】
・リミットオーバーLv.MAX
・
・
・イグニッションLv.MAX
・オーバーヒートLv.MAX
装備
右:覇兎【金龍】
左:覇兎【赫竜】
頭:ジークヴルムの呪い/黒狼の眼
胴:ジークヴルムの呪い
腰: 発掘研磨腰帯【古兵】(VIT+400)
足:発掘研磨脚甲【古兵】(VIT+300)
アクセサリー:ウカの孤面
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・黒狼の眼
なぜ授けられたか、なぜ授けたのか。それは黒狼のみぞ知ること。
万世の闇を渡る黒狼、その金色の眼は世界と共に巡る魔力を観測し、影を手繰る。唯一分かること、それは授けられし眼は黒狼の権能をも引き継いだのだ。
魂に刻まれ、授けられし物を手放すことは出来ない――例え真なる黒狼を討ち果たしたとて。
「黒狼の眼を授かったプレイヤーはスキル「
「黒狼の眼を授かったプレイヤーはスキル「影操」を使えるようになります」
「黒狼の眼を授かったプレイヤーは魔力の流れを観測できるようになります」
「黒狼の眼を授かったプレイヤーはあらゆる「呪い」を無効化します」
「黒狼の眼を授かったプレイヤーはNPCとの会話に補正がかかります」
「黒狼の眼はオンオフ切り替え可能です。ただしスキルは継続して使用可能です」
なにいってんだおまえ。
◇◇◇◇
「えっえっ?ナニコレ?「渡影」?「影操」?は?魔力の……え?」
やめろやめろやめろやめろ情報量の暴力を叩きつけるなおいこら待てコラリュカオーンお前何満足気にしれっと帰ってやがんだお前ちょっ、待っ。
「うわ、もしかしてこの色付きの風みたいなのが魔力の流れってやつか……?」
「ビャッコさん、右目が……」
「金色になってますね!リュカオーンの眼みたいです!!」
第三者視点からはそうなってるらしい、困った、流石にもうオッドアイへの憧れは捨てたと思ってたんだがちょっとワクワクしてる己が酷く恥ずかしい……じゃなくて。
「何このメリットしかないやつ……」
「恐らく、「呪い」やサンラクさんの「刻傷」、のようなものだと、思いますが……」
「ちなみに前例は……?」
「ないですね」
なんでまたこんな爆弾抱えなくちゃなんねーんだよ俺はァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!
◇◇◇◇
嘆いてばかりでもいられない、取り敢えずオンオフの切り替えは出来るらしいのでいつの間にか生えてきた専用のウィンドウでオフモードにしてエリアボスの討伐に向かうことにした。
現在時刻は朝の4時を過ぎたところ、つまるところ約束の時間までもう3時間半もないということである。街に行ってランドマーク確保、ビィラックに白雪の狼槍の修理、アイテム整理に武器強化に……あ、ログアウトして休憩して食事をとって用を足して風呂に入らなければいけないのも追加か、あれこれ間に合うのか?
「挙句黒狼の眼の検証もしないといけないって冗談キツいぞ……?」
間に合うか?間に合う気がしないが?
諸々の過程を踏まえた上で出せる結論はたった1つ、即ち兵は神速を貴ぶだ……迅速にエリアボスをぶちのめす必要がある。
「いやもうこの際それは置いてエリアボス攻略に集中しよう、なんだっけ?えーと……
「ちげーよ、確か
「違いますよ! 私調べましたから! 確か、えーと……そう!
「
まぁもうこの際なんでもいいよリュカオーンよりはマシだろ確実に。
だが俺達は完全に失念していた。何故忘れていたのか……酷くシンプルで酷く重大なミスを犯してしまった。
俺達はついさっきまでリュカオーンと死闘を繰り広げ、それぞれの手札を全て使い切ってやっと勝利したのだということを。そんな状態で戦闘に突入すればどうなるか、俺達はこの後嫌になる程思い知ることになった。
「だぁぁぁ降りてこいバカヤロー!!」
「サンラクサンアタシを投げようとするのはやめるですわぁぁぁ!!」
「オルト、いけるか?」
「いけるなんて言うと本気で思いましたか?」
「成る程、兎砲弾ですね!」
「良いで御座るか秋津茜殿……兎は空を飛べない、分かるで御座るな?」
「1羽2羽で数えますし行けますよ!」
「無理! 無理で御座るよ!」
「退避ーっ!!」
俺達の攻撃がどう頑張っても届かない高空から火球が放たれ、わぁと叫びながら散開して回避する。
よりにもよってこのパーティー、オルトとエムルちゃんを除き遠距離攻撃手段を誰も持っていないのだ。そして当の兎2羽は魔法職である以上攻撃してもほぼ奪い取られるのだ。焦りが時間を早く感じさせる、実際の滞空時間よりも大幅に時間を稼がれている感覚がして更に焦りが募る。俺やサンラクやシークルゥの攻撃はそもそもの射程が届かないし秋津茜もレベル的な問題で火力不足、頼みの綱のサイガ-0はといえば……
「すいません、私が動ければもっと早く倒せるのに……」
「名誉の置物化だし、負い目を感じることはないですよ」
「むしろ弱体化しても普通に前線張れてる時点で凄いんですけど……?」
「そうですよ! それに弱体化しても私より強いじゃないですか!!」
聖なる純白も、邪なる純黒も損なわれ今やあの神々しさすら纏っていたはずの大剣と鎧は金属というより土塊と呼ぶべきか、色褪せ力を失っているように見える。そして現在スキルの発動を封じられた上に全ステータスが半減しているらしい、その割にはまともに前線を張っているのだが流石廃人と呼ぶべきか?聞けばこれでもまだマシな方らしい、酷い場合だとデバフが永続化して呪いの装備化するんだとか……撃つ前も撃った後も面倒くさすぎる。
「まぁ立ち回り心得ててステータス半減してても割と戦えてるし最低限以上の貢献は出来てるのが凄いところだなぁ……っ、降りてきやがったぞクソトカゲ!全員総攻撃!袋叩きにしてやれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
俺自身も黒染武双を構え斬りかかる、それ以外の武器?どれもこれも損傷が激しすぎるんだわ!!
どうせ全員手札なんて無いのだ、であるならば古来より伝わる最強にして最後のタクティクスたる「袋叩き」を行うしか無い……!ユザーパー・ドラゴン、最後に勝つのは物量だってことをお前に思い知らせてくれるわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
※あまりにグダったので音声のみ抜粋。
「ぴゃぁぁあ!? たーべーらーれーまーすーわぁぁぁーー!?」
「い、妹よーっ!!」
「姉さーーーーんっ!!」
「待てコラァ! って待て、俺を乗せたまま空を飛ぶな! 落ちたら死ぬから!」
「バッカお前何やってんだお前ーーーーーーーーッ!」
「今助けますサンラクさん! ちょ、あああ私の短剣が! 私お金なくてそれしか持ってないんです! 返してぇ!!」
「あ、秋津茜さん、次降りてきた時に取り返せますから、落ち着いて……」
「私素手のスキルとか持ってないんです! 攻撃するための武器のない私ができることなんてもう手裏剣くらいで……」
「サ゛ン゛ラ゛ク゛サ゛ン゛た゛す゛け゛て゛て゛す゛わ゛ぁ゛ぁ゛」
「ええい取り敢えず咥えたエムルを離せ……あっ」
「あっ………びゃぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「エムルーーーーーっ!!」
「ちょっ、今度は私ですか!!?!!!今私魔力が無くて何も抵抗手段が……!!」
「オルトーーーーーーーーッ!待ってろ今救い出してやるか…………あ"っ!?おいこら待て待て黒染武双返せ!他の武器大体耐久値が2割切ってるんだよもうそれしかあっ待って俺もか!?俺もなのか!?」
――――――――――ポイッ。
「ふっざけんなクソトカゲがぁぁぁぉぁぁぁぁぁ!!!!?!!」
◇◇◇◇
か細い断末魔の鳴き声を漏らしながら散々俺達を苦しめたユザーパー・ドラゴン……もといクソトカゲがその身を地面に横たえポリゴンと化して爆散していった。合掌する気にもなれん、一生死んでろ。
いやいや全く、リュカオーンに比べればなんて酷い勘違いをしていたものだ……冷静に考えてユニークが絡まないボスの中で言うならば終盤に位置するモンスターがそんなにちょろいわけがないのだ。リュカオーン戦で消し飛んだ集中力をなんとか掻き集めて練り直すことでようやく倒すことのできる強敵であった。
「や、やりましたね……」
「この、モンスター……こんなに苦戦するようなボスだったんですね……」
「次挑む時は……
「2度とやり合いたくねぇ…………」
「はは、は……」
エムルちゃんが落下死しかけたり俺も死にかけたり秋津茜が武器を奪われたりと散々だった、サイガ-0が魔法で自己強化して要所要所でアシストしてくれていなければ更に戦闘時間が伸びていたことは容易に想像ができる、やはりトキシックイーグルとかいうゲボカス同様空を飛べる敵というのは総じて厄介なエネミーだということを改めて認識することになった。
フィフィティシアへ繋がる道に立ち塞がる最後の関門を突破して明るみ始めた空を眺めながら俺達一行は歩みを進める、リュカオーン、ユザーパー・ドラゴンと連戦を続けた俺達はいつしか他愛のない雑談を交わせる程度には打ち解けていた。
「今こちらに残っている、プレイヤーは次の、調査船に乗る準備を、進めてます。古城骸で他のプレイヤーを見なかったのは、時間もありますが多分、皆あの古城に潜っているからだと思います……」
「そうなんですね、あのお城にはどんなモンスターが出るんですか?」
「なんと言うべきか……線画の騎士、でしょうか」
「???」
何それちょっと気になるんですけど。
頭の上に大量のクエスチョンマークを浮かべる秋津茜に分かりやすい説明を試みるサイガ-0の2人を眺めていると前を歩くサンラクが「おお」と声を上げた。
正面を向き直るとそこには最後にして最初の街が見えてきた。
「あれが…………」
「……はい、あれがアップデート前まではプレイヤーが到達できる最後の街であり……今は、新大陸へ向かうための、門出の町です」
夜明けの太陽が昇る。あまり意識していなかったがこのゲーム初の本物の海が日の出の陽光を受け、キラキラと輝きながら波打っている。
あの遥か先にまだ見ぬ新大陸があり、ついこの間まで最後の街であった15番目の街は今や新たな旅立ちを見送る門出の街としてここにある。
ファステイアより旅立ち、幾つもの困難を乗り越え辿り着いた開拓者達の終着点であり、大いなる大海に隔絶された新たなる世界へ開拓者を送り出す2つ目の出発点。この大陸における唯一の国家「エインヴルス王国」が持つ最後にして始まりの街――――フィフィティシア。そこに俺達は遂に到達したのであった。
エピローグに何話か使ってその後溜め込んでる設定の一部をちょっと吐こうかなと思ってます、気になる設定とかありましたら感想で教えてください