シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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そんなバカな…俺が、2日連続?あり得ない…


エピローグ:1 理想を掲げて尚登る、故にこそ人は試練を塔と呼ぶ

「………………うおっ、あれなんだ?」

 

談笑しながらフィフィティシア内を歩く、その際解散の為に人通りの少ない裏路地を探す癖がついてしまったのは世捨て人か隠居人プレイが身についてしまったが故の習性のようなものだろうか……そんな訳で俺とサンラクは周囲に視線を巡らせていた訳で、たまたま俺が目にしたのは全身奇妙奇天烈な紋様が描かれた真っ黒なローブを身に纏った人影であった。それ以外の情報はないのかと言われれば何故か目深に被っているはずのローブの中で影になるはずの顔がバッチリ認識出来ることだろうか、その中で皺くちゃの顔を笑みの形に歪めて俺達のことを確かに手招きしていた。

 

「あ?…………うわほんとだなんだありゃ、俺達のことを呼んでるのか?」

 

「裏路地から手招きなんて怪しい人ですわ……」

 

「全くです」

 

「「君ら2人とも人のこと言えないからね?」」

 

どの口が言ってんだか全く……とはいえなんらかのイベントであることは間違いない、「怪しい人」呼ばわりされてもめげることなく俺達に向かって手招きを続ける老人に近づくべきか否かを思案する俺とサンラクの横から答えが齎された。

 

「あれは、覚醒の導師アーカヌム……ああ、レベル99だから……」

 

「説明をお願いしても?」

 

サンラクの言葉に、俺達が見ているもの、見られているものについてサイガ-0が答えを示す。

 

「覚醒の導師アーカヌムは、レベル99になったプレイヤーの前に現れる、特殊NPC……です。特殊ジョブ「神秘(アルカナム)」の取得ができます」

 

このゲームにおけるジョブ、もとい職業というのはスキルや魔法の覚えやすさにダイレクトに影響するものだ。俺が刀やら槍やらを使い込んでも中々スキルが手に入らない理由は単純にレベル上限まで辿り着いてしまったというのもあるがジョブ的な問題でそういうピンポイントに使えるスキルを覚えづらかったというのも理由の1つに挙げられる。

そんな中で「神秘」というジョブは通常のジョブとは全く違うものであるらしい。まず副業、もといサブジョブ専用であること、次にスキル習得ではなくステータスやスキル、魔法効果そのものに干渉すること。そして最後に……どれもこれもがピーキーな性能をしていること。

 

「……例えば「戦車(チャリオット)」の「神秘」は、AGIとSTRを二倍近く引き上げますが、その代わりにSTMの消費速度も倍になります」

 

「なんじゃそりゃあ……」

 

「脳筋にとっては垂涎ものだろうけど……」

 

オーバーテクノロジーか何かで生まれた燃費最悪の車……もはや車と呼べるのかそれは?あまりにもチグハグすぎやしないだろうか。とは言っても「超特化型」のステータス、スキル構成をしているプレイヤーにとってはかなり有用であるらしく、例えば「魔術師(マジシャン)」の神秘を得た魔法特化のプレイヤーであればSTRが恐ろしく貧弱になるのと引き換えに超火力砲へと変貌を遂げるらしい、具体的にはあの秋津茜のドラゴンブレス並みの規模の攻撃魔法を乱発するんだとか。

小ネタとして引くタロットカードは1枚1枚プレイヤーの姿を模したものであるとか……相変わらずそういう細やかなところでの芸が凄まじいですね、そこで汎用にしないところ最早狂ってるんじゃないですか運営さん。

 

「ところでサイガ-0さんは何を引かれたんですか?」

 

「その、「世界(ワールド)」の神秘を……」

 

聞いてみれば全ステータスに上昇補正が入る代わりにスキル、魔法などで発生するデメリットが2倍になる、というものらしい。あれそれって控えめに言って大当たりなんじゃないの?やっぱり廃人ってすごいわ、そういう運要素までちゃんと兼ね備えてるとは。

 

「戻る前に「神秘」チャレンジとやら、してみるか」

 

「だな……お前がハズレ引いたら外道2人と笑ってやるよ」

 

「そりゃこっちのセリフだっつーの」

 

俺達2人は躊躇うことなく裏路地へ足を踏み入れ老人の目の前に立つ、やはり知り合いがガチャに挑むとなれば結果が気になるのは人の常というのだろうか恐る恐るといった様子で秋津茜とサイガ-0がこちらを……いや、覚醒の導師アーカヌムを見つめている。

 

「どっちから先行く?」

 

「んじゃま、ここは俺がいっちょ大当たり引いてドヤ顔するとしますか」

 

「外れたら笑ってやるよビャッコ」

 

「うるせ…………あーー、いい朝っすね?」

 

「強気に至りし者……汝が神秘を、覚醒してしんぜよう……」

 

「あっ、話通じないタイプなんだ」

 

「さぁ、汝が神秘は運命が決める……札を引きたまえよ」

 

音ゲーでは割とあるあるなので慣れたものだと思っていたがシャンフロでこういう話が通じない相手と触れ合うのは初めてだ、そして老人は懐から取り出したタロットカードを空中にぶち撒ける……驚いたことにそれらは落ちることなく空中で球を描くように浮遊し、補足するならばそれらカード全ては表面がこちら側からは一切見えないようになっていた。改めて思うがこのゲーム無駄に細かいところ本当にこだわりあるな。

 

「これってランダムだったりします?」

 

「あ……いえ、なんらかのパラメータを、参照している、ものだと、考えられています」

 

「なーるほどねぇ……つまり、何を引こうが結果は変わらないって訳だ……これ!」

 

何となく良さそうなものを雑に1枚掴み、表を確認する。描かれていたのは上裸の狐面と二足歩行でマリンルックの兎が共に歩く……いや、登っているイラスト。番号は16番……一時期母さんがタロット占いにハマっていた関係上うろ覚えではあるが覚えている、確か――――――

 

「塔か、中々俺好みじゃん?」

 

「ほう…………汝、理想を求める者、登り詰める脚が止まることはなく、只管に試練という名の塔を登っていく……だが、1つだけ言えることがある」

 

「うん、続けて?」

 

「塔の神秘は汝の刻んだ軌跡を照らし続けるであろう、だがそれ故に登り始めた時の試練は過酷なものとなるであろう、止まること勿れ、止めること勿れ……汝の偉業の為に」

 

「あーーー…………えっと、サイガ-0さん、塔の効果ってわかります?」

 

「塔は確か……戦闘時間が長引けば長引く程スキルリキャストやステータスに上昇補正がつく代わりに……戦闘開始時点から10分間スキルリキャストが2倍になって、ステータスにも下降補正が、かかる、だったはず、です」

 

ふむ、つまり何か?

 

 

 

 

 

 

 

 

大当たりじゃねこれ。




(ザ・タワー)の取得条件は
・長時間の戦闘が多い
・格上に挑んだ回数
・レベル上限に到達する速度
・積み上げた偉業の回数

これらをシステム内で勘案して弾き出されます、条件的に言えばビャッコもサンラク同様愚者を引いていた可能性も割と高いです。
次点で世界の可能性もありました、何せ今ビャッコの右目ってアレなので。
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