シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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設定を形に纏める前にこっち終わっちゃった…


深淵の空に星は在らず、混沌の中で獣は猛る。
深淵を覗け、摩天を駆けろ。


SIDE:skyscraper

 

「…………ん、よし。行きますか」

 

目を覚ますとそこに広がるは金属とコンクリートで構成された大樹海、空を埋め尽くすように聳え立つ摩天楼の群れはいつか宇宙(ソラ)すら掌握するという人間の欲望の表れか?太陽の光を浴びて摩天楼達は光を反射するが一方、影を作るのもまた摩天楼だ。

さて俺が今どこにいるかと聞かれればそんな摩天楼達が作り出した影の一角、計算され作り出された格子模様の地図の中で「お前はいらない」と弾き出されてしまったどこにも繋がることのない袋小路だ。

 

「はーーい、よいしょっと…………」

 

素人目からすれば明らかにキッチンカーかキャンピングカーにしか見えないそれ……本来の役割をぶっちゃけると()()()()()()のバックドアを開きその中に収められていた装備を一瞥し俺は唱えた。

 

「…………『For a good cause(大義を成す為に)』」

 

それは、()()()が掲げる絶対にして唯一の誓い。その為であれば何をどうしても一切構わないというあまりにも行き過ぎた冷徹な誓い。

纏った装備の感触を確かめつつ改めてこの街……「ケイオースシティ」の地を踏み締め、砕きながら飛び上がった。

重い様で軽く、軽い様で重いこの装備は宇宙の神的存在である「ギャラクセウス」の悪感情を詰め込んで廃棄されたもの。故に装着した者は大体みんな悪感情に取り込まれて破滅の道へと突き進むか狂気に喰い潰されて最低最悪の悪の道へ堕ちていくかの2択なのだが……どういう訳か俺はそうではないらしい。

温かい「義」の心を持った人間に冷たい「悪」が外付けながらも宿った……相反する2つの想いを抱え戦う俺が願うは大義を成すことのみ。大義とは即ち「悪」を滅して「義」を貫く、その為には何をしても構わない――――例えそれが善良な一般市民を殺すことであったとしても。

 

「勝利条件は2つ……ケイオースキューブの確保、もしくは…………」

 

()()()()()()()()()()

さて、向こうからわざわざやってきてくれるたった1人をぶちのめすこととこの眼下に広がるクソ広い街の中からバスケットボール以下のサイズの箱を探し出すことのどちらの方が楽だろうか?相手が相手故にどちらも大して変わりはしないだろうが俺は物探しより殴り合いの方が性に合って――――。

 

そこまで考えて自分が「勝つ」前提で話を進めていることに気付きふと笑みが溢れた、相手はカッツォに勝ち越してるとかいう訳のわからんスペックを持った怪物、それも後ろにもう1人備えているらしい。だがこれは畑違いと言ってもゲーマーのサガというものだろう。

 

向こうがこの世界に現れるまで確か30秒あるんだったか、そりゃそうか、ヒーローというものはいつも悪巧みを働くヴィランの後手に回る存在だものな。まぁ今回の場合表と裏がひっくり返ってる気がしなくもないが。

さてこういう時、「私」はいつもなんと言うのだったか……あ、思い出した。

 

「この街に遍く者達よ…………悪く思うな、全ては、大義の為に!」

 

眼下に広がる街に住まう全ての人間に宣言し、俺は摩天楼の内の1本を頂上から叩き砕いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

SIDE:abyss

 

目を覚ますとそこに広がるは深淵を覗き見た者が辿るだろう冒涜の大海嘯。

深海を埋め尽くすかつてそこにあったであろう文明の残骸と残滓が深淵の力により邪悪に脈打ち胎動すると共にその中で未だ狂気に飲まれず抵抗し続ける者達が息を潜め、駆け抜け、影を渡る。

 

「チッ…………撃破時間……いや、こっちだとブレークロックだったか。あいつと逸れちまったのが痛いな……」

 

影を伝いながら周囲を索敵しようやく一息つく、クソがなんだって俺はこんなはちゃめちゃなところに来ちまったんだ……元を辿れば大体全部俺じゃなくてハクアレンコが悪いんじゃないか?じゃあ俺悪くないわ。それにしてもエンカ率ぶっ壊れてないか?これまでどれだけ襲われたかもう数えるのも億劫になってきた、ぞ……!

 

「………………ッ」

 

息を潜め身を縮めて()()()が遠ざかるのをひたすらに待つ。

 

(俺よりレベルが低いモンスターは呪いの効果で逃走する筈だってのに……!これもあの婆さん……「クタル・ルールイア」が言ってた「深淵の盟主」の影響か……?)

 

「ゔー」だとか「あ"ー」だとか呻きながらフジツボやらワカメらしき海藻やらを生やしたそれら……ゾンビ共が通りすぎるのをじっと堪えつつこれからの予定を組み立てていく。

 

まず俺達の当初の目標は「封将」とやらの撃破、その為にこの街の四隅の塔へステルスしながら向かっていた……そんな中でブレークロックとはまた違う相方がヘマしてゾンビ共が寄ってきた。

幸い相方と一緒にブレークロックが離脱したから多分向こうは大丈夫だろう、そして恐らく向こうも当初の予定通り塔へ向かって「封将」を倒しにいく……筈。きっと、多分。

 

だがその為にはどうしてもビッグアクションを起こさないといけない、だがそうすればゾンビ共に勘付かれることは請け合いだ。幸いこっちには影を渡るとかいう訳のわからんチートスキルが備わってる、それを駆使していけば辿り着ける……

 

「は、ず…………?」

 

「ゔぁー」(こちらを覗き込む右側がフジツボに覆われたゾンビ)

 

「SAN値チェックのお時間だゴラァ!!!?」

 

予定変更!もうそんなこと気にしてられねぇ最短最速で塔まで駆け抜けてやる!!

 

「ゔぁーーーー!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉゾンビなんだからゆっくり来いよお前らなんでそんな全力疾走できるんだァァァァァ!!!」

 

目の前から迫り来るゾンビの顔面に向かって拳を叩き込み吹っ飛ばしながら前進、妖艶な笑みを浮かべながら()()()()()()こちらに接近してくる人魚(マーメイド)の首目掛けて後ろ回し蹴りを敢行、整った顔付きを見事に歪ませながら吹っ飛んでいく人魚なんぞ知らん俺は先へ進む。というか容赦なんぞ今後ろから追っかけてきてる腐れゾンビに喰わせた方がまだマシだろう。

そもそもこのゲームにおける人魚、恐らくなのだが上の人間の見た目部分は疑似餌のようなもので本体は下の魚部分だろう。先程下部分が大きく裂けて気色の悪い口部分が露出したのをバッチリ見てしまった……どういうシチュエーションかって?ブレークロックとは違うNPCの相方がヘマやった時だ。ここのモンスターをデザインしたやつのツラが見てみたい、きっと底意地の悪いツラをしている筈だ。

確信を持って今にも歌い出そうとしている人魚に向かって強制停止ボタン(延髄斬り)を叩き込み進んでいく……おっ!

 

「おっしゃ塔だぁぁぁあ突っ込めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「ブレェェェェクロォォォォォック!!!お前らも来たかぁぁぁぁあ!!!」

 

予想通りだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

SIDE:skyscraper

 

振るった剛腕が空間を捻じ曲げ、砕く。

今俺が立っているのはケイオースシティのメインストリート、当然市民も多く店も多く立ち並んでいるわけで。そんな中こんなことをやらかせばどうなるのかは想像に難くないだろう。だがまぁそこはほら、大義の為にってヤツですよ。

 

「砕けろ!消えろ!お前ら一般市民は大人しく大義の為の踏み台になりやがれ!警察消防への連絡だけはキッチリしててくれよな!」

 

無駄に凝ったNPC共の叫びが耳に心地良い、悲鳴を上げながら爆心地、もとい爆()地たる俺から離れようと必死で逃げ惑う。

何人か携帯電話を耳に当ててるのとこれがゲームであることを鑑みるに警官連中が来るまであと10数秒ってところか、ついでに装甲車なんかだとあと30秒ってところか?

 

さてこの鎧、ギャラクセウスの悪感情を取り込んだだけあってそういう負の感情を溜め込んでどんどん強化されていくらしい。具体的にはこう……装甲が更に頑強になったり攻撃の威力が増したり色々能力が付与されるらしい。

もう1つだけ面白い効果が付与されているがそれもこれから発現していく能力が前提にあるので今は関係ないが……まぁ、今の時点でまともに殴り合えるスペックには十分達したろう。

 

「………………ふぅん?ウチの前に()()で来るだけあってパフォーマンスとかそういうつまらない目的でのピック(選択)じゃないみたいだね」

 

「おいでなすったか……最高(ヒーロー)!!」

 

振り向いた先に居たのは俺が破壊しまくったことにより生まれた炎を掻き消し立つ1人の……いや、一頭の獣。

全体的に黒いアーマーの各部に青いラインが走り、覆面は恐らく()()()を模しているのだろうな、最近狐に縁があるのは気のせいか?

各部のアーマーにもキツネの意匠があしらわれたソイツは俺のことを品定めでもするかのような不躾な視線を俺に向けてきていた。

まぁ無理もないわな、直前までメンバー登録されていないと思ったら土壇場で登録されたのがプロゲーマーですらない謎の3人組、挙句その内の1人が全米において()()()()()()()()()()「最高」の名を冠するプレイヤーが扱うキャラのライバルキャラを選んだのだから。…………ついでに補足しておくが3人組のもう1人は全米一位の使うキャラのライバルキャラを使う、相手からしたら馬鹿にしてるとしか思えないだろうな?

 

「ケイが連れてきた助っ人の力、確かめてあげるよ……この「オレ」、()()()()たる「バッドテイル」がな!」

 

「勿論受けて立ってやるよ、そう簡単に行くと考えない方がいい……!「私」、()()()()たる「ジャスティスダイル」を相手にして!」

 

 

相手は文字通り全米最高にして最強に届かないまでも世界最高峰の「バッドテイル」使い、付け焼き刃とかそんなレベルでなく使い始めは昨日の昼からなどという糊か何かで腕に貼り付けてそれっぽく立ち回っている即席「ジャスティスダイル」……果たしてどこまで喰いつけるやらわかったもんじゃない。だがまぁこっちはこっちで義理と貸しを以て今こんな場所に立ってるわけで、結果は知らんが仕事は果たさせてもらおう。

ダイアグラム脅威の2:8でバッドテイル有利とかいう「当たったら負けだと思え」とまで言わしめる程のクソッタレの相性関係で全米最高のプレイヤーに特攻を仕掛けなければいけないこの現状をふと振り返って俺はこう呟かざるを得なかった。

 

 

「――――――――――どうして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

SIDE:abyss

 

ここ、「深淵盟都ルルイアス」において俺達が今まで当たり前だと思っていた世の理なんてものは即座にドブに捨てた方が良いということは早々と思い知った、何せ全てが「反転」しているのだから既存の常識に当てはめたらキリがない。本来水中に生きる者達はこの海底都市において水中感覚で空を泳ぐし逆に地上に生きる者達は海底であるにも関わらず地上のように振る舞える。そして今この時を持って水陸両用である場合どちらにも適応されるらしい……おいこらガバガバじゃねーかキチンと定義しろよその辺。

先程まで地を駆けていたアンモナイト野郎が突如宙を泳ぎ出したことによって生まれた感想だ。

 

「ブレークロック!アーラム!こっちに追い込め!!」

 

「無茶言ってくれる……!」

 

「全くだ……!」

 

鋭く放たれるカトラスの一撃を掻い潜りながら2人の方へ接近、そして俺に向かっているヘイトが他に移る前に行動に起こす。

 

「「影操」…………!!」

 

影を操り俺とブレークロック、アーラムの影によってアンモナイトが縛り付けられその動きを止める……よっしゃ今だやれ…………!!?

 

 

「ちょっ!?なんであのゾンビ共入ってこれてんの!??!こいつ一応ボス枠じゃないの!!?!!!」

 

「そんなこと言ってる場合か……!退避するぞ!」

 

「俺に掴まれお前ら!2人抱えても少しくらいは飛べる!!」

 

アーラム助かる〜〜!今雪崩れ込んできてるヤツらの数を見るに間違いなく後続はこの数倍はある!いくらこのフィールドがそこそこに広いと言ってもあっという間に埋め尽くされる未来しか見えない……!

 

慌ててアーラムを掴み離脱、眼下に広がる悍ましいフジツボゾンビと人魚によって埋め尽くされるボスエリアを眺めて気づくのに遅れた時がどうなっていたかを想像してゾッとする……そして俺は思わず呟いた。

 

「――――――――――どうして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

SIDE:skyscraper

SIDE:abyss

 

「どうしてこうなったんだ…………!!!」

 

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