シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

123 / 184
死者蘇生(ネクロマンス)、贄は暴徒の血とトースト

「う、ぐぉ…………!!」

 

全身全霊の力を以てベッドから起き上がる……現在朝の7時、約束の時刻まで残り30分……どう頑張っても徹夜だこれは。辛いとかそんな生っちょろいことを口にする前にそのリソースを別のことに割く方が間違いなく有意義である。具体的にはさっきの1時間半で武器装備の強化刷新に大雑把な「黒狼の眼」の検証、吹き飛んだ資金をどうにかこうにかピーツからもぎ取った、あとは用を足したりシャワーを浴びたり飯を食べたりするのみだ。

生活リズムが終わり散らかしてることには最早言うまでもない、そもそも夏休みというのはその為に存在し……あ、そろそろ課題とかに手をつけなきゃダメか……?考えないようにしておこう。

 

とにかくシャワーだ、冷房はフルダイブしてるとほとんど感じなくなるから不要だと思われがちだがリアルの体が汗をかいて脱水症になりそのままぽっくり逝ったという中々恐ろしい事件があるくらいにはフルダイブ中のリアルの体は細心の注意を払って管理せねばならないので緩ーく冷房をかけているもののやはり若干の汗はかく、取り敢えずなんとかこの汗をさっぱりするべく特に深く考えず上のTシャツを脱ぎながら脱衣所のドアを開け……

 

「お、おはよう…………?」

 

「おー、キョウか。おはよ…………う…………」

 

そこまで言って俺はキョウが下着姿であることを認識した。は?

 

「お前なんでそんな格好してんの!!!?!!!!?」

 

「逆にじゃあなんでドア開けたのさ!?!?!!!」

 

ご尤もだったわ畜生!ごめんなさい!!

 

 

 

 

 

 

弁明は?(無かったら殺す)

 

「何も…………ありません…………っ!!」

 

「分かったよこーくん、今度木刀で頭をかち割ってあげる」

 

終わった……取り敢えず各々シャワーを浴びて朝食を作り、その席での会話がこれである。夜道に気をつけよう、万が一龍宮院の兄弟子連中の耳にこの件が入れば最後俺は死ぬ、間違いなく死ぬ。

あぁ母上様、父上様。先立つ不幸をお許しあれ……これから生まれてくるであろう音ゲー達よ、叶うことならば多くの人に愛されるゲームであれ、我が部屋に収まりし音ゲーの数々よ永遠なれ…………よし、辞世の句はこんなもんで良いだろ。

 

「煮るなり焼くなり好きにしてくれ……っ!」

 

「まぁ美味しい朝ごはん作ってくれるから全然許すんだけどね、ところで今好きにしろって言った?」

 

「しまった嵌められた」

 

そうじゃんまだお叱りの言葉がないじゃん。木刀で頭がかち割られることが確定してるだけじゃん。というか朝食作るだけで許されるのならこれから一生作ってやろうか?

 

「そもそも鍵もかけずにシャワー浴びようとしてた僕にも非はあるしねぇ……ところで今日の晩ご飯は冷しゃぶが良いかな!」

 

「っつったって母さんいるだろその時間帯には……」

 

「こーくん昨日フルダイブしてたから知らないのも無理ないね、夫婦水入らずで何処か出かけてくるってさ」

 

「流石行動力の化身……分かったよ、晩飯は冷しゃぶな。取り敢えず俺はまた暫くの間フルダイブしてるから……」

 

「僕ももうあと少ししたら練習さ、楽しんできなよ」

 

「おう、キョウも頑張れよ」

 

さて冷蔵庫で冷やしておいたエナドリをグイッと一飲み……ふぅ、やはりトゥナイト、トゥナイトは全ての眠気を凌駕する最強のエナドリ……!

早くも巡り始めたカフェインが俺の身体を蝕む眠気と倦怠感を叩き潰し覚醒の一雫を脳に垂らす、ような感覚がするが間違いなく合法だ。

 

さぁて死者蘇生(ネクロマンス)完了、供物として捧げるは暴徒の血ってな。それではいざ、ログイン。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

「頭のネジがダース単位で外れているとは思っていたが、まさかカートン単位とは思っていなかった」

 

「初手罵倒とかふざけてんの?」

 

事前に渡されていたマップに従ってフィフティシアを進み上層部に建てられた邸宅へ。もちろん門番……守衛?どっちでもいいや、に止められたから「当主が依頼した者の連れだ」と言ったらあっさり……あっさり?通してもらえた。

そういえば執事さん表情は崩さなかったけど内心多分すんごいビビり散らかしてたな、リュカオーンの眼とジークヴルムの呪いの影響だとは思うが。

 

「罵倒されて当然の身なりをしている方が悪い……改めて確認するがそういう趣味でもあるのか?」

 

「大体はジークヴルムのせいだな、つい数週間前ヤツの逆鱗ぶち抜いたらこうなった」

 

「眼は?このゲームオッドアイに出来るキャラメイクはなかったと思うんだが」

 

「リュカオーンが悪いな、片目を抉り取ったら俺の片目がこうなった」

 

「…………どちらもユニークモンスターか……やはり頭がおかしい。…………お前の横のNPCは?」

 

「連れ」

 

「オルトと申します」

 

「NPCの女を連れた上裸、なるほどやっぱり頭がおかしいな」

 

シャラップ撃破時間。ユニークだろうがなんだろうが結局のところ物理攻撃が効く以上大した違いはない、まぁリュカオーンは厳密には物理攻撃が効かないんだけどな。

脳筋になって取り敢えず叩くことは音ゲーでも確かに推奨されているがそれは脳が筋肉で構築された者……それ以前に二流三流のパンピー、一流というのは効率と速度と正確さを以て殴るのだ。…………にしても。

 

「ブレークロック、ねぇ……絶妙に呼びづらいからブレクロじゃ駄目か?」

 

「好きにしろ、その前に今回の依頼だ……よろしくお願いします、当主」

 

「えぇ、わかりました」

 

あ、やっと上座でニコニコしてた婆さんが喋り出した。

…………何だこの変な威圧感、NPCだよな?貫禄だけで気圧されるとでも……?この婆さん、出来る。

 

「開拓者様、どうか老いた私の願いを聞き届けて下さいまし」

 

 

『ユニークシナリオ「別れ難き深淵の都(ルールイア)」を開始しますか?』

 

――――YES。

 

シナリオを受注し、ウィンドウが自動で閉じられる。そして老婆は語り始めた。

 

「まず、私の名前はクタル・ルールイアと申します。そしてルールイアというのは、かつて在ったとされる伝節の都の名前でございます」

 

「ん?都市名がそのまま家名に……ってことは?」

 

「お察しの通り、私の先祖はかつてその都を治めていたとされています。ですがルールイアは……「深淵の盟主」により海底深くへと沈んでしまいました。私の望みは、かつて在ったというルールイアが実在したという証明。我らが一族の故郷を一目見たいと私自身若い頃は冒険者として活動してきましたが、老いたこの身では最早叶いません。どうか、どうか貴方方開拓者様達に調べていただきたいのです」

 

「なるほど……で、アテはあったりします?流石に何も手掛かりがないのではどうにも……」

 

「勿論ございます、我らが一族に伝わる盟約にはこう記されています。『遥かなる未来、果たせぬ誓いは無く、望めば我は深淵へと誘おう』…………「深淵の盟主」が当時の当主に向けて送った言葉だそうです。つまり、私達一族の望みがあれば盟主が深淵へ……ルールイアへと誘ってくる」

 

 

 

◇◇◇◇

「じゃあ何で行かなかったんだあの婆さん?」

 

「メタなことを言うな…………まぁ俺も思わなくはないが」

 

だよなぁ。婆さんに見送られながら邸宅を出て暫くしたタイミングで思わず出てしまった疑問だがやっぱりメタすぎるだろうか。一応設定的にはつい最近偶然家の書物庫からひょっこり現れたらしいがゲーム的ご都合展開というやつだろうか?さてまぁ頼まれたからには行くしかない、確か婆さん……クタル・ルールイアの家から船が出されるんだっけ?港に向かえとのことらしいから取り敢えず行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時の俺は知りもしなかった。ここから吐くほど忙しい1週間が幕を開けることを。




評価バー、全部赤く染めたいよなぁ…取り敢えず40人目指すか…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。