シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
件名:折り入って頼みが
差出人:モドルカッツォ
宛先:サンラク、鉛筆戦士、ビャッコ
本文:交通費参加費諸々を持つから、3人ともグローバル・ゲーム・コンペティションに遊びに来ませんか?
「…………何言ってんだ?こいつ」
シャンフロにログインする直前ふとメールボックスに入っていた新着メッセージに書き込まれていた内容を確認した時、俺はまずなりすましの線を疑った。付き合いがまだ浅い方の俺はまだしもそこそこ長い付き合いをしているだろうあの3人組も今まで基本的にリアルで関わり合うことは無かったという。その関係性に大きな石を投げ込んだ形であるのだ、それにこの文体からしてどうも裏があるように思えてならない。GGC……確か「グローバル・ゲーム・コンペティション」が正式名称だったか?これから制作される、された、制作が決定したというのを外部にアピールし「投資頼んだ」という形で様々なジャンルのゲームが発表される一大イベント。今年は音ゲーが発表されないというのは事前に知っていた為見るつもりも現地参加の予定もなかったのだが、何だか今までとは違った形でGGCに参加することになるかもしれないな。……まぁ他の外道共の反応も確認してからかな?
というわけで我らが外道随一の
その短いやり取りをさらに要約したのがこれだ。
俺「カッツォの狙いってぶっちゃけなんか分かる?」
鉛筆「さぁねぇ?サンラク君からも似たようなメール届いたけど、まぁ内容次第でどれだけ貸を作れるかの方が重要じゃない?」
俺「諸々全額負担って言い切るあたり切羽詰まってるのだけは分かるからそれなり以上の貸は作れるんじゃないか?」
鉛筆「お仕事がひと段落して本当に良かったよ」
う――む……やはり鉛筆、狂人の類であることは間違いないな?こっちは目的を聞いてるのに向こうは乗った後のことしか考えていなかったぞ今の。
「ま、開催地が日本なだけマシだと思うか」
何せ2、3年前までGGCの開催地はアメリカやイギリスが主だったからな。まぁここはスポンサーの強さが垣間見えるってやつだろうが去年今年と続けて日本開催だ、何故かって?シャンフロが発売されたからだ。というかシャンフロが出なかったらGGCが日本で開催されることなかったんじゃないかとすら思えてくる。
アメリカやイギリスの大手ゲーム企業が億どころか数十億単位で金を注ぎ込んで自信を持って発表したであろう大作ゲームは幾つも存在するし当然神ゲーに名を連ねることも多い、音ゲーもちょくちょく出してくれるから愛してるぜ、だがそれらも所詮「ゲーム」の枠を出なかった。じゃあシャングリラ・フロンティアはどうだって?火を見るよりも明らかだ。文句のつけようがなさすぎる。
シャンフロが出るまで世界各国で生み出されていたゲームのバランスは大きく分けて3つだった、クオリティ重視のアメリカにキャラとストーリーに重きを置いたアジア、斬新なシステムのヨーロッパ。
ここにさらに細かく分類はあるものの大体はこんな感じでそれぞれのお国柄も見せつつメタが回ってるような印象だった……ちなみにお国柄の代表例として多分ゴリラかライオンの遺伝子が2〜4割の比率で混じってるキャラばかりだったり美少女にやたらデカい武器を持たせたり、あまりにも独創的すぎて現行人類の価値観が付いていけずおおよそ数年後にやっと理解が追いつき再評価されたり……まぁ、こんなところだ。そういえばアジアのゲームはキャラや世界観をかなり深い所まで作り込むことが多いがシャンフロもやはりというか何というか悍ましい量の設定が詰め込まれている、お国柄とは中々抜けないものなんだなぁ。
まぁそんなわけで良きも凡も悪きも含めて様々なゲームが展開されていたわけだが、その全てを纏めて薙ぎ払ったのがシャングリラ・フロンティア、アジアや世界規模で展開する大手ゲーム会社でも何でもない「日本」の一企業が諸々全部を叩き潰していくのは当時の音ゲー中毒者の俺ですら「やりすぎじゃね?」と苦笑いしたのを覚えている。今のところではあるがシャンフロは現行ゲームからおよそ3、いや6世代は先を行っているわけで、その上でシャンフロ発売から半年程で日本国内どころか世界各国からシャンフロ
少し話が脱線したな、まぁ要するに資金力の面で言えば日本に比べダブルどころかトリプルスコア近く差をつけていそうなアメリカなどがゲーム業界を牽引する中1つだけ全てを置き去りにして独走状態を続けているのがシャンフロというわけだ。基本的に良ゲー神ゲーが発表される上に時折音ゲーも発表される為俺も中継配信を見るがカッツォの奴は流石プロゲーマーというべきか、実機プレイの為に実際に会場に呼ばれたりもするらしい。で、サンラクがカッツォを締め上げて吐かせた情報によるとどうも仕事で呼ばれたらしいのだがその対戦相手が因縁マシマシの相手、絶対に負けたくないというのに当初予定していたメンバーがほぼ全員欠席になった結果俺達を呼ぶことになったらしい……
「ユニークは自発できないのにマイナス方向にユニークな体験リアルでするなよ……ウケる」
向こうからしたらウケてる場合じゃないだろうがな、俺やサンラク、ペンシルゴンからすれば身内の誰かが苦しむだけで白米3杯はいけるもんなんだ。きっとカッツォだって逆の立場ならニヤニヤするだろうしな。
さて、まぁこの誘いをどうするかなのだが。
「まさか開催地が首都圏かつ開催日が明後日とはな……キョウの大会確か首都圏な上にGGCの翌日とかその辺じゃなかったか?」
カレンダーアプリを起動していざ確認、うん、やっぱりそうだ。つまりはキョウの大会応援のついで、前日入りするだけというわけだ。
カッツォからのオーダーを要約すれば欠員による不戦敗だけは何が何でも回避したいからその埋め合わせというわけなんだろう……いや何で俺らなんだとは思わないでもないが。今日やることと言えばシナリオをひとつ消化するのみ、まさかユニークモンスターと戦うわけでもなしエリア1つ2つを強行突破しないといけないなんていう頭の悪いことをしないといけないなんて切羽詰まった理由もなし、GGC自体は3日間の開催だが俺達が出ることになる「親善試合実機プレイ」はその初日、拘束時間はさしたものでもないだろう。
「何より、かの魚臣慧が諸々金出してくれるっていうんだから喜んで行かせてもらいましょうかね?」
さてじゃあメール返信、その誘い、乗らせてもらう…………っと。あ、でもよく考えたら。
「サンラクはともかく……これ
有名人なのは間違いないのだろうが何というかこう、メールやらゲームやらをしてる以上レア感が薄い。普通顔見るだけでもファンからすれば一生ものなのだろうが。
…………まぁ一応サイン色紙でも持っていくか?
◇◇◇◇
そんなことを思い返しながら現在海上にて例の深淵の盟主云々の為船の甲板に出ている。
「オルトはその格好的に船が似合うな」
「そうですね」
「まさか例の兎連れまでお前とはな……」
オルトは街中は普通に人化してもらっていたが流石に普通のプレイヤーがいない中続けているのも意味はなし、ブレークロックには他言無用と釘を刺している。
にしてもこのゲーム本当に作り込みどうなってるんだ一体。
「なぁブレクロ、お前が今までやったゲームの中で“mobがちゃんと船を動かす”なんてとんでもないのあった?」
「…………ないな、本当に驚かされるばかりだ」
だよなぁ、俺達共通のゲームとして「Record:beast」があるしあれもかなり物理演算は細かかったが要所要所は3Dモデルにテクスチャを貼り付ける形をとっていたはずだ。
だというのに多分この船に使われてるデータ量だけで下手なPCに積んでるメモリ程度余裕で吹き飛ぶぞこれ。普通こういった部分は妥協するだろうに……恐らくこの船だけじゃない、「新大陸」に向かう調査船とやらも「船」というモデルでなく、「木」や「金具」などの船に必要な部品を全て物理演算に則って組み上げてるんだろうな。
大真面目にこれをやるやつは多分頭のネジが軒並み吹き飛んでるか余程自分の作り上げた世界を完璧にしたいと考える完璧主義者か……今まですごいとかとんでもないとか思っていたが今回のこれはちょっと度を越してる、最早悍ましいとすら言えるよどこからモチベーション引っ張り出してるの?
そんなことを思いつつもやることがないのでダメ元でNPCの船員に頼んでみたら釣竿が出てきたので釣り開始、流石にお金が無さすぎる……このままじゃ変装用の化かしの枝葉も買い込めなくなる。
現実のエンジン搭載の船ではなく帆船である以上動きはまだ遅いはず、であるならばそれなりの速度を出す魚……ないしモンスターあたり釣れるんじゃなかろうか?
「ブレクロもやる?」
「…………やるか」
はてさて、何が釣れるのやら?
釣りを始めて数十分経過、未だボウズであるが少なくとも話のタネになりそうなものが見えた。
「ん?何だあの船。船員さん何か知ってます?」
「あ、あれは……!フィフティシアでも有名な海賊団、『赤鯨海賊団』……!!船長がつい最近死んだという噂でしたが……」
へぇ、海賊なんているんだこのゲーム。海賊なんていうぐらいだから船にお宝の1つや2つあるんじゃないの?ちょっと今から
「言っておくが向こうに行くのはなしだ、ぞ…………?」
ブレークロックが俺に声をかけたと同時、疑問符が飛び出て空を見上げた。ついさっきまでこのどこまでも蒼い海に負けず劣らずの蒼空とそれら全てを照らす陽光が照っていたのにも関わらず今やその光は消え失せようとしている。
…………陽の光が弱まったんじゃない、これは……曇り?ついさっきまで雲ひとつない晴天だったのに?
「なぁブレクロ、ちなみにこんな現象シャンフロって割とよくあるの?」
「…………俺が知る限りは、ない」
今や陽光は完全に遮られ雷と暴風を伴った大粒の雨を降らし始めた黒雲を睨みつけブレクロはそう言った、しかもよくよく周りを見渡してみればどうやらこの船と例の海賊船の直上のみにこの黒雲は広がっている――――これは。
「来ました…………「盟主の迎え」です!!」
船員の誰かがそう叫ぶ。次の瞬間俺は何となくこれから起こるイベントに何となく予想がついた。
「なぁブレクロ。海、船、荒天と来ればさぁ……盟主の迎えとやらってもしかしなくても」
「…………なるほど、予想がついた。………………全員何かに掴まれ!!
ブレクロがそう叫んだ瞬間、黒雲から破壊力を伴った金色の光が放たれ海面に直撃した。光の鉄槌によって着弾地点付近の海水が一瞬のうちに蒸発し、破壊力が水面の爆発という形で表現される。
そしてそれとほぼ同時、海面が下からの衝撃によって砕けた。
「どう取り繕っても「迎え」とは程遠いな」
「どうする船員さん、というより船長さん。多分あれがその「迎え」なことには違いないけどこのままだとアンタら死ぬよ?」
「総員戦闘用意!!!」
若干怯えは感じるが十二分に威厳は感じられるからよしとしよう船長、ある程度は俺達に任せていいから自分の命大事にな。さてじゃぁまぁ、迎えだとしてもちょっと向こうの船に乗ってるやつの格好がバイオレンスすぎるのでこちらも武器防具持ち込みOKにしてもらおう、嫌とは言わさん。
…………あ、間違えて向こうのNPC斬らないように気をつけないとか。めんどくさいな地味に。
蛸をモチーフにした家紋を掲げる漆黒のガレオン船と少なくとも外見は全くもって「迎え」向きではないズタボロの幽霊船、そこに加えて赤い鯨の海賊団。3隻が今大海原で相対を果たした。
マジでぇ…?(前回ぼそっと後書きで呟いた一言がトリガーになったか突如評価人数が40人を突破したことに対して)
マジでありがとうございます、夢の評価バー全点灯までこのまま走り続けさせていただきます。
日刊ランキング10位到達!!!!このまま上目指したい!!