シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「ぶっちゃけ迎えっていうか幽霊船じゃねぇかなぁ、あれ……!」
「全くだ……!」
突如海中から現れた謎の船、一応迎えの船らしいんだが海の中じゃああいう廃船がトレンドだったりするのだろうか?であれば地上に生きる俺達とは絶望的に感性が合わないらしい。
マストはへし折れてるし船体は見えるだけでも10数箇所の大穴が空いている。なんなら船首なんて最早ない、まるで船の姿を模った怪物が大口を開けて俺達を喰らおうとしている様にも思えるしニタニタと大きく口を開けて笑っている様にも見える……デザイン気合い入ってますねデザイナーさん。
どう考えても損傷度合いからして力学的に航行不能であるはずの「迎え船」はこの荒れ狂う荒波の中を突っ切り今俺達が乗っている船とその隣にある「赤鯨海賊団」の船の中間に突っ込んできた。
「チッ……オルト!乗れ!!攻撃に回らなくていい、俺とブレクロの支援メインで頼む!」
「承知しました」
「俺は1人でも戦えるぞ!」
「出来ればそうしてもらえる方が助か、るぁぁぅう!!?」
クッソ、波が激しすぎて足場が安定しない!これ本当に気を抜いたら滑って海に落ちかねないな、どう考えてもあの「迎え船」には俺達を歓迎する心優しい
「…………ッ、最低限の援護はオルトに飛ばさせるからな!!」
「助かるな……何せ、色々と扱うもので」
ズルリ、とブレクロが取り出したのは……何だありゃ形状こそ大剣のそれだが刃が明らかに潰れてる、重みで叩き斬るのが大剣の使い方だがあれは度を過ぎてる……まさか、鉄鞭?
「俺のジョブは「戦王」……!色々と武器を扱う関係上、どうしても隙が生まれる時があるからな。そこで援護してくれ」
「だそうだオルト……俺よりブレクロの奴を気にかけててくれ」
「了解です」
どうやら俺やオルト、ブレクロは問題ないらしい。問題はこの船に乗った船員達だがあちらも問題無さそうだ、一瞬怯えの波が広がったが船長の一言で指揮系統は乱れてない、自分の身は自分で守れるだろう……多分。
「迎え船」が更に接近し距離およそ25メートルほど、そこでとうとう俺達を歓迎しようと待ち構えている方々がぼんやりと見え始め、眩い黄金の閃光が光った時ハッキリと視認できた。
「1Dいくつロールすりゃ良いんだかわからねぇな……!」
「正直まともな感性の持ち主なら、この時点で終わりだろう」
「確かに、言えてるなそりゃ」
「………………何ですかあれ、気持ち悪いです」
それをニンゲンと呼ぶにはあまりにも醜く冒涜的で、あまりにも悍ましく目に映るものであった。人の形はしているがそれだけだ、腐った肉を押し固めて人間型にでもしたのかと思うほど全身爛れている上に鱗がびっしりと覆われている。
顔は……あ、ダメだ人間じゃねぇやこいつ。眼窩と眼球のサイズが明らかにあってない上に焦点もあっちゃいない、目玉だけ引き付けを起こしたかのように忙しなく周囲を見回すように蠢いている。極め付けは口だな……鮫やら鯱やらとは全く違う針のような歯だ。肉食性深海魚の歯を彷彿とさせるそれらが不規則に生え並びガチガチと音を鳴らしている。
出迎えは異形……いや、見方を頑張れば半魚人に見えなくもないか?だがじっと見つめるのはやめておこう、正気度が削られそうで怖い。
異形達は皆半魚人とも言えそうな体にボロ切れ同然のような衣服を纏っておりそれは水底に沈んだ水死体達が蘇り魚の怪にでもなったかのような……その存在は俺の本能の中にデフォルトで搭載されている恐怖に対して這い寄り、原始的恐怖心を煽る。
――――――
「ひっ、お助けをぉぉ…………!!」
「正気度削れるのは良いけど錯乱して味方に攻撃だけはなしな!!」
所詮はゲームと割り切った俺とブレクロとは違いNPCはやはり恐怖を感じるものか、割と肝が据わってるオルトですら拒否反応示したくらいだしな……発狂とまではいかないが若干錯乱状態に陥りかけてるのは何人かいる、船長殿にメンタルケアを任せるとしますか。取り敢えずまずは目の前にいる重症寸前の患者を何とかしないとな……あらよっと。
「精神治療(右ストレート)!!」
「ぐっぼぁ!!?!!」
悪く思うなよ、回復魔法を俺もオルトも覚えてなんかいないんだ……何せ当たったら死ぬ儚き生態なので。
さぁ取り敢えず近場のケアは終わった、それじゃあお前ら、ぶちのめしてやるよ。インベントリより展開するは二振りの小太刀、龍宮院式の構えを取り宣言する。
「迎えだろうがなんだろうが向かってくるやつなんぞ殴り飛ばすしかねぇわな……!」
諸々のちょっと余ってた素材をふんだんに突っ込んだことに生まれた沼潜の短刀、そして雲斬氷刀。これら二振りはいずれも名を変え新しい力を得た。その名も――――
「沼潜の短刀改め「
世を呑まんとした怪物がいた、狭いながらも世を救わんとした獣がいた。そしてそれらの残滓は拠り所を求めていた。
名刀と呼ばれる刀がある。妖刀と呼ばれる刀がある。これらは全て唯一無二で、並び立つものなどなく、あるとするならば其れは最早影打以外あり得ない。世を呑む村正、世を救う正宗。その身は小さくとも、いずれ神座にも至る神刀へと成る。
この二振りの小太刀は、そんな神へと至る前の刀だ。これまでの戦いを立派に戦い抜き、俺の過酷な使用にも耐えてきた沼潜の短刀と使う機会こそ少なかったが要所要所で確かに仕事を果たしてくれた雲斬氷刀、こいつらにはそれぞれ「万呑の魂魄片」と「群天狼の氷化心臓」をベースにありとあらゆる素材を叩き込んだビィラック渾身の作品達だ。どうも作ってる真っ最中に制作意欲に火が付いたらしくしれっとサンラクから貰ったらしい素材を放り込んでたがあれ本当に良いんだろうか?まぁ本人知らないらしいしビィラックがやったことだし俺は知らん。
そして呑世村正は「クリティカル攻撃が成功した場合相手に追加ダメージを付与し、ステータス補正が使用者に付与される。失敗した場合相手に与えたダメージの5分の1耐久値を回復する」という効果を、救世正宗は「相手の装甲を無視してダメージを与えられ、クリティカル攻撃が成功した場合耐久値が減らず、尚且つ「氷狼残影」が貯まる」という効果をそれぞれ持っている。それぞれ効果自体は長ったらしいが要約するとバカだ、何だこのぶっ壊れ武器はと説明文を読んだ時は乾いた笑いが出てきた……おい金龍、赫竜、ライバル出てきた上に今の所お前らが上回ってるの合体できる部分くらいだぞもっと頑張れ。
「船員達は全員何人かにまとまってそいつらの対処を!俺達が前線で大方対処するから数は減る筈!!!!」
「あらかた吹き飛ばせば、多少は楽になるだろう……!「
俺より少し前に陣取っていたブレクロが何やらスキルを発動し、持っていた鉄鞭にドス黒い凶暴なエフェクトが載る……そしてその鉄鞭を振り抜いた瞬間、黒い獣がブレクロの背後でオーバーラッピングし凄まじい衝撃波と共に前方10メートル圏内にいたであろう異形数十体が消し飛んだ。
「エグい火力してやがる……!?」
「これでもまだ本出力じゃない、対多数じゃ今のスキルが最適だと判断したまでだ」
「ちなみに本気は?」
そう言うとブレクロは少し考え込んでこう言い放った。
「やるつもりは一切無いが、恐らくフィフティシアの3分の2は消し飛ばせる」
と。………………お巡りさんこっちです。
だがこっちも負けてはいられない、というわけで更にその前から異形共をぶちのめしてくれよう。
「迎えって言うならせめてちゃんとした出迎え寄越せやバーーーーカ!!」
遮那王憑き起動、強化された跳躍力を持って一気に異形犇く船の中に飛び込む。
着地、周囲確認、敵は……すぐに対処できるのは4、5体ってところか?十分!!!!
「異形っつーかよく見たら半魚人……まぁ良いや、カチコミでーーす熱烈歓迎ありがとうございまーーすっ!!」
そう叫びながら素早く身を落とし脚を斬り飛ばす、さて呑世村正よりかは救世正宗メインで戦っていきたいところだ。どれほどの長丁場になるか分かったもんじゃないからな。
◇◇◇◇
「オルト!俺達の船に乗り移りそうなやつから優先的に叩き落としてやれ!」
「マジックエッジ!!」
何となく考えていたことであるが、シナリオ名は「別れ難き
もし仮にそうでなかったとしても船員らが口々に「迎え」だの何だの言っていた時点で何かしらのイベントであることは間違いない、であればこれこそシナリオにおける転機であり何かしらのボスが出てくる可能性も十分に考えられ
る。まぁ流石にそれがユニークモンスター並の強さしてるとはとても考えにくいしオルトであれば最悪再構築で離脱も可能だろうということでこっちに来させた、それに余程のことがない限り俺の上に乗っていた方が安全だしな。
小太刀二刀流はあまり経験がないが二刀流の経験自体はある。短剣を二刀流で扱うよりはよっぽど刀の方が扱いに慣れているので動きやすいな。
とはいえ立ち回りは似てるようで結構別物と化す、救世正宗メインの立ち回りにすると決めてはいるものの手数や周囲から湧いて出てくるモンスター、火力バランスなんかを鑑みるとそうも中々言ってられないかもな。
錆切ったサーベルやメイスを振りかぶってくる半魚人2体に思い切り斬り掛かり獲物を握りしめていた手を両断する、そのまま前蹴り2発で手を両断した2体を海に叩き落とす。
すぐさま後ろを振り向いて今正にサーベルを振り下ろさんとしていた大柄な半魚人に呑世村正を突き刺す、錆びていたもののまだ原型を保っている鎧を着込んでいたがそんなもの知るかと言わんばかりに深々と突き刺さった……おっ、クリティカル。基本はクリティカルメインで立ち回りたいよな、幾ら呑世村正自身の耐久値がそれなり以上に高くても連戦が続けば損耗していくだろうし。
半魚人を薙ぎ倒しふと見ればおかわりが後から後から出てくる、無限沸きか……いくら何でもマジの無限ってことはないだろうし、終わりのトリガーはあると思うが。
「どう思うよオルト」
「どうもこうも窮地では?」
「大丈夫だろそれは……後ろだって1人暴れ散らかしてる奴が」
ゴウンッ!!!と俺のすぐ真横を凄まじい衝撃波が通り抜けた、範囲内にいた半魚人がゴリュッと音を立てて文字通り身を抉り取られていたがちょっとバイオレンス過ぎやしないか?
「ごめん、あいつの攻撃の予兆だけ俺に教えて?」
「帰っていいでしょうか」
「待って許してごめんって」
返事は放たれたマジックエッジが雄弁に語っていた、すなわち「さっさと終わらせましょう」だ。
「迎え船」……もとい幽霊船で刃が舞う。切って落とされた海賊船と幽霊船、そしてクタル家の船の激突は頭上で荒れ狂う黒雲が齎す荒天の如く激化の一途を辿るのであった。
そして俺はまだその時知らなかった。海賊船に誰が乗船しているのか。そして……今俺が戦っている幽霊船の反対側で誰が暴れているのかを。
呑世村正
「万呑の魂魄片」を混ぜ込んで打ち直された妖刀。
全てを呑み込む意思は衰えることなく、沼より這い上がりしソレは天を睨め付けた。未だ妖刀、神座へ至る道は遠い。
・クリティカル攻撃が成功した場合対象を喰らって追加ダメージを与える
・クリティカル攻撃が失敗した場合対象を喰らう意思を以て与えたダメージの5分の1耐久値を回復する
救世正宗
自らの生きる世を救わんとする意思は氷の心臓に受け継がれた。雲を断ち斬るソレは未だ地を睨み付けている。未だ名刀、神座へ至る道は遠い。
・相手装甲を無視してダメージを与えられる
・クリティカル攻撃が成功した場合耐久値が減少しない
・クリティカル攻撃が成功した場合氷の心臓が脈動し「氷狼残影」が蓄積される
名刀シリーズ
神座へと至る道の始点に立つ資格を得た刀達の総称。他にもかなりの「名刀」「妖刀」が存在し、フレーバーテキストの最後に「天」もしくは「地」を睨みつけている。「神刀」に至る道は遠く険しい、殆どの名刀達が夢半ばで散っていく。
小太刀なのに村正と正宗と思ったそこの方、大丈夫、僕も書いてる途中に思いました