シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
最初から違和感はあった。「なんか一部の半魚人共が俺とは違う方に向かってるな」とは、確かに思っていたんだ。
だがそれだけでは判断しきれなかった。それだけでは絶対にわからなかった。
ブレクロによる超高出力砲撃と物量に押されるようにして船の中央部分にジリジリと移動させられたタイミングで
「は…………?サンラク!?何でお前こんなとこにいるんだよ!!?!!!」
「そりゃこっちのセリフだビャッコォ!!」
「姉さんまで!?」
「オルトですわ!!?」
わぁ、思ったよりも早い再会だったね?
◇◇◇◇
サンラクもまた、赤鯨海賊団に乗り込みあるユニークシナリオを攻略していた。その際想定外の追加人員が加わったことに関しては今語るべきことではないので割愛しておくが、少なくともユニークシナリオを受けたことは確かである。
ユニークシナリオ名「深淵の使徒を穿て」……ある幼き海賊の船長からの頼みにより突如出現した幽霊船、否、「クライング・インスマン号」から迫り来るゾンビ化した半魚人達の対処に現在サンラク達は奔走していた。
「はんっ、俺を圧倒するなら物量が足りねーよ!」
「いやどう見ても完全包囲ですわ!?」
「後続が前にいる奴を踏み越えながら俺を押し潰すくらいの物量じゃないとお話にならねーから」
「わぁい、そう考えると包囲網がスカスカに見えますわーっ!!」
そう軽口を叩きつつも剣筋に一切の迷いなし、握る二振りの片手剣は名剣魔剣聖剣その他諸々の唯一無二に至れなかったまでも、憧れだけは捨てられなかった刃を持つ。その名を「
後ろからの援護射撃に注意を払いつつ迫り来る魚人達に対して冷静に振り下ろしてきたサーベルを弾き、蹴り付け、斬りつける。
とはいえ物量の差は如何ともしがたく、回避行動を取ることも多い。故にこそ船の中央付近に追い込まれるのも無理はないのだが……サンラクはそこで気付いた。自分がいる甲板の反対側で誰かが戦闘をしていると。
(…………そういえばさっきもう一隻カチあった船があったな、あの中にプレイヤーが乗船してたとか?)
であればとんでもない不運である、まさかシナリオ関係なしに遭遇するなんて恐らく夢にも思っていなかったろうと
その不幸なプレイヤーに胸中で合唱するサンラクであったが果たしてその予想は裏切られることになった。
「は…………?サンラク!?何でお前こんなとこにいるんだよ!!?!!!」
凄まじく聞き覚えのある声である、何ならつい数時間前に聞いた。リュカオーン戦時より遥かに速い超反応で声がした方向へ目を向ければそこにいたのは狐面を被った
「そりゃこっちのセリフだビャッコォ!!」
この返答も致し方ないものであった。
そしてついでにと言っては何だが追加人員である。
「バリスタが尽きた、弓矢で支援する…………あれもモンスター?」
「人間だよ俺は!!?というか誰!!?!!!」
「だーーーーもーー事態がこんがらがってる!!取り敢えず話は後だ後……って何でこっちに移ってきてるんだよルストお前はァ!?」
「……私は「中距離弓使い」、少なくとも魔法弓を使っている間は、ここが私の距離……!」
プレイヤーネーム、「ルスト」。シャンフロでは「魔法弓」と「剛弓」を使い分ける弓使いであり……とある世界では『早暁の女王』などと渾名される程の実力者である。
◇◇◇◇
そのプレイヤー誰?とかそもそもお前なんでこんなところにいるのサンラク?とか色々言いたいことはあるが今はそんなこと言ってられない。
「ん、おっ…………!?何だ、物量と密度が上がったような気が…………!?」
何故だか物量と密度が上がってる気がしてならない、具体的にはさっきまで同時に振り下ろされるサーベルの本数が大体3本とかその辺だったのが5本に……あ、今7本出てきたわ死ねる死ねる死ねる死ねる!!!?
「オルト!!」
「マジックエッジ!!」
最早オルトと呼ぶだけで仕事を果たしてくれる有能さよ、今度何か魔術本買ってあげるからね……っ!!
1度はオルトの魔法攻撃と俺の斬撃によって対処した筈の攻撃が再度物量と共に降り注いでくる、こりゃ堪らんわどう頑張ってもどうにもならない。
短刀2本じゃ流石に攻撃力と性能が良くてもリーチ的な問題で押し潰される、であるならばどうする?こうする。
二振りの刀を即座にインベントリアに叩き込み次に展開したるはリュカオーンすら縫い止めた白き狼槍、あの時
「【
前方数体を冷却し即座にそれを踏み台にして跳躍、スキル展開と同時に周囲を殲滅する為の余裕を生み出す。
「【
救世正宗の効果の1つにクリティカルに成功すると「氷狼残影」が貯まるというものがあった。故にほとんど気にならないものであったが唯一ギリギリ欠点と呼べる部分に「
さて、数だけがやたら多い半魚人諸君。俺自身お前らに何発クリティカルを叩き込んだかもうすっかり忘れたのだが……
「行け、狼doも……手頃な餌だぞ存分ni喰らいやgaれeeeeeee!!!」
「白銀集合」効果で展開される「白銀残滓」共が十数体、一斉に半魚人共へ強襲を仕掛けた。さぁ俺も負けてはられない、暴れまくるぜ!!!!!!
「オルトooooooo!!高速移動するから舌を噛むnaよォォォォォォ!!!」
「了解しまし、たぁ…………ッ!!?」
甲板上に着地、周囲には残滓共が仕留め損なった半魚人が5体……余裕。
サーベルを槍で叩き落として石突を魚の頭をしている関係上それなりに長い顎に引っ掛けそのまま投げ飛ばす。返す刃で反対側の半魚人の胴を両断し速やかに離脱、高速移動しながら目に付いた奴らを片端から切り裂き、突き刺し、時に蹴りや拳でグチャグチャのつみれへと加工していく……無双ゲーの経験はないがなるほどこれは確かに癖になるな、今度サンラクにそんな感じのゲームを聞いてみるのもありかもしれない。
「取り敢えずおmaえらでッ、フィニッshuゥゥゥゥッ!!!」
跳躍し槍を投擲、突き刺さるのを確認した瞬間【
「
時間は少しかかるが逆に言えば長期戦にさえ持ち込めれば純粋なステータスの差で撲殺できるとは少々やってることが蛮族すぎないかと不安になってくるがまぁまだ大丈夫だろう、少なくともまだスキル無しで空中ジャンプなんかは出来ないだろうし。
「…………やっぱりモンスターでは?」
「ルスト、わかる気もするが矢を向けるのだけはやめてやれ!!」
向こうのほうからなんか聞こえるのだが事故を装って頭を吹っ飛ばせないだろうか、PK判定喰らうだろうしやめておこう。
というか目的もしかして一緒だったりする?
「おいサンraク!!!」
「何だビャッコォ!!!」
「そっちのシナリオ対象は何だ!!?!!!」
「
オッケー少なくともある程度の目的は一致したらしい、であるならばまた共闘と行こう、か――――?
ぬるりと現れた
1体は船内から、シルエットとしては「ろくろ首」を彷彿とさせるが……あれ多分ウツボか何かだろ、黄と茶のマダラ模様、やたら大きく目をかっぴらいていること以外何も感じ取れない無表情極まりない面構えからして間違いなくそうだ……と思う。だいぶ前にウチの親父殿が龍宮院の知り合いと龍宮院の遠い血縁の家の方と更にその知り合いと釣りに出掛けて釣ってきたタチウオの亜種とかそんなのが存在しない限りは。
(あっちはそこまでだが…………
というか向こうのウツボよりもヤバいのはこっちだ、明らかに異質な雰囲気……というより半魚人ですらない。
腐り果てた体ではなく筋肉がみっちり詰め込まれているであろう黒色の身体、頭部分はやはり異形ではあるものの魚ではなく何やら甲殻類のそれだ……そして構えたる獲物はガントレット、ん?甲殻類でガントレット?
「お前まさかシャコの――――――」
「シャッ、ゴァァァァァァァァァァァァァアァア!!!」
放たれた右ストレートが俺の頭を正確に消し飛ばさんと迫り来る、咄嗟にしゃがみ込みバックジャンプしつつ距離を…………!?
「そりゃ右ストレート回避されたら左が出てくるよなぁ……!??」
だが待って欲しい、飛ぶ
色々「?」マークが浮かびはするが笑っていられるほど余裕ある攻撃でもない、慌てて
「あっぶねぇ…………!?あいつだけ明らかに調整ミスってないか……!?」
「俺としてはお前のその姿に言いたいことがある」
「は?ブレクロお前なんでここにいるんだよ、船はどうした船は」
「乗組員数名が気をやって無理矢理離脱しようとした、仕方がないからここに乗り込んだわけだ」
「嘘でしょ?」
うわマジだ本当に居なくなってる……あっ、向こうの方でフィフティシアの方向へ向かう船が!!あの野郎共退路をさらっと潰しやがって……!!
「もうこうなると道は2つに1つだ、大人しくやられるかこのままここを切り抜けルールイアに向かうか……」
「んなもん決まっteるだろうが!!!とにもkaくにもまずこのshaコ野郎をどうにかしねぇと話にならねぇ!!!!」
向こうのウツボは……なんかまた知らない奴と……あー、うん。ガワが別物すぎて本当にそうか判断できないけど多分アレは……サイガ-0……だよな?獲物スレッジハンマーて、どんだけ殺意高いんだか。一瞬モンスターに見えたのはきっと他のメンツもだろう。
さて、さっきから気持ち半魚人共の動きが速くなってる印象があるが……コイツらが出てくるということは追い詰められているという表れでもあるのだろうか?どちらにせよ終わりは近いらしい。
「おっしゃブレクro、前は俺がやruから後ろからは相手の出方見て援護射撃仕掛けてくれ」
「先程のアレを期待しているならそれは残念だな、武器の耐久値が早々と限界を迎えて吹っ飛んだ」
「何言ってんのお前?」
「だから…………今度はコイツだ」
ズルリ、と引き摺り出されたそれは、明らかに異質で危険なオーラを放つ一振りの剣だった。ドス黒い刀身に柄の部分には何か丸い物体を嵌めると思しき穴が開いており、やけに存在感を放っている。
「俺のジョブは戦王だが…………どんな人間にも
――――この儀霊剣は、少々特殊でな。
そう言いながら取り出したのは鮮やかな赤に染まった宝玉、それを穴に嵌め込み更に取り出したのは……何だそりゃ、何かのスクロールか?
「離れておけ、コレばかりは加減しようと思っても無理な相談だ」
「ちなみに威力は?」
「手間がかかる分それ以上のリターンだ……狙いが外れたら俺達ごと周囲一帯の全てを吹き飛ばす」
何言っちゃってくれてんのお前?
「いやそれお前、他にも乗ってるプレイヤー居るのにそれは…………」
「それが嫌なら攻撃が外れないように祈るか周りの魚を掃除してくれ……【
「あaaaaクソッタreeee!!!船にいるsuべてのプレイヤーに告ぐ!!!高出力no攻撃をdaすから巻き添え喰らわないyoう警戒を!!」
何だってこんなことしなきゃいけないんだ!!?
◇◇◇◇
(ハクアレンコを顎で使えるとは、中々気分が良くなるものだな)
ブレークロック、否、撃破時間はそんなことを考えながら冷静に魔法の発動準備に取り掛かっていた。
最初は真面目にやるつもりではあったが鉄鞭がスキルの出力に耐え切れず爆散した辺りで楽しくなってきたのも事実、武器自体はインベントリにあと十数本詰め込んでいる為それらの損耗を抑える為にもという意味での
「神秘の剣」という職業は剣士の到達点の1つ、唯只管に剣を振り、その極地に至った剣士たる「剣聖」とは異なる魔道と剣道の2つの高みに登り詰めた者が名乗ることを許されるものである。
シャンフロにおける「魔剣」の定義は即ち剣そのものに魔法が記憶され、使い手が握った時点でその魔法を行使することができる、というものであるが「儀霊剣」は違う。
特殊な触媒として使い手自身の意思で魔法を
勿論触媒が剣である以上発動可能魔法に制限はかかるのと、「賢者」のような魔法特化職には劣るもののあらゆる属性の魔法を使い切り替え戦うという中々にトリッキーな戦法を用いることが可能である。
だが本来「儀霊剣」というものは「神秘の剣」に就いていないと使用不可になる武器である。メインジョブでのみ効果を発揮する為
ユニークウェポン「
そして……この剣で放たれる魔法は通常の出力を遥かに上回る危険なものと化す。つまりは。
「…………“血を捧ぐ”、“儀礼の剣よ”、“魔を執せ”」
――――――【
紅き閃光が前方の全てを喰らい尽くした。
血霊剣
儀霊剣カテゴリのユニークウェポン、「神秘の剣」をメインジョブに置いておらずともその権能を行使可能な唯一の儀霊剣。
その由来はかつて「神秘の剣」に至った者の1人が愛する人を失い、その怒りから自らの血を用いて作り上げた1枚のスクロールを使ったことにある。以来その「神秘の剣」は目に映るもの全てを壊し尽くさんと血に染まった儀霊剣を振い続けた、鮮血と魔に染まった黒き血が染み込んだスクロールを喰らい続けたソレは最早「神秘の剣」のみに仕えるという忠誠すら忘れ去り、血を与えてくれる存在に忠誠を誓うようになった。
宝玉は使用者の血を圧縮して固めたもの、あれをセットしないと魔法は発動できない。その分ストック可能ではあるが体力の99%を消費する上ポーションでは回復できないという中々にど畜生仕様、効率的なのはひたすら血の宝玉を作ってはフィールドに出て死ぬを繰り返すこと。その分頭がおかしくなるくらいの高出力魔法が放てる。
【紅血喰】
最初のダメージ判定を起点として相手のHPが尽きるまで6段階に及ぶ追加ダメージ及びHPゲインが行われるトンチキ魔法、恐ろしい点はゲインしたHPは本来のHPを超えて吸収可能である上にそれら全てが攻撃対象への20%割合であるというところ。HPが仮に100万あったとしたらゲインするHPは数万ほどになる、不死身のゾンビにでもなるつもりか?