シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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深淵の蒼廃都、静寂は終焉を迎える

意識が浮上し、その機能を停止させていた五感がそれぞれ再び再起動を始める。

まず触覚が帰ってきた、そこで俺は今自分がどこかの地面に寝そべっているということに気づいた。次に嗅覚が帰ってきた、そこで俺は今自分がいる場所は潮の匂いがかなり強いことを理解した。聴覚が帰ってきた、とは思うのだが微かな音すら聞こえない、つまり周囲には誰も何もいないということだ。味覚……は、食べるものないしどうにもならないな、うん。

 

「…………強制気絶?気絶の経験は何度かあるがゲームで気絶は初体験だな」

 

そして目を開け、視覚を取り戻した。

再起動を果たした全ての感覚が一気に情報を俺の脳に送り込んでくるのを感じつつ、それら全てを1度追い出してゆっくりと噛み砕きながら1つずつ現状を把握するべく1度頭を大きく振りながら立ち上がる。

 

「まぁ、誰もいないわな」

 

乗っていた船の残骸らしきものはいくつか俺の近くにもあるが、そもそも俺とルストさんとクソチビは船からは離れた状態で捕まっていた。となれば周辺に2人はいてもおかしくないと思ったのだが……残念、人の気配は感じられない、か。

ふと頭に「俺以外の全員が全滅した」というフレーズが過るがまぁ、流石にないだろうとは思う。多分、きっと、メイビー。

あの半魚人共は……いない、のか?あれだけの数がいたんだから幾ら何でも1体くらいは付近にいる可能性がある。

慌ててすぐそこに突き刺さっていた白雪の狼槍(ブランシェス・ガングラスター)を握りしめて周辺確認……ん?

何だあの魚の塊。

 

「…………まさか、あの半魚人共だなんて言わないだろうな……?」

 

いやもう半魚人というかただの魚だな。陸に打ち上げられて身動きが取れずにバタバタとのたうち回るアジらしきものだったりカマスっぽいものだったりをツンツンと槍先で触れ、もしものことを警戒し態々氷結させてからインベントリに放り込む……流石に魚をインベントリアに突っ込むわけにもいかない。

そしてインベントリを確認、そこに記されていた名前は「ディープアビス・ホースマカロ」……こいつアジだったのか、いやそれは兎も角。

 

「どうなってるんだ、ただの(アイテム)になってる……?」

 

どっちがどっちだ?半魚人が魚になったのか?魚が半魚人になったのか?卵が先か鶏が先かのような問題だが……いや、そんなことを考えるより優先すべきことがある。

 

「引き摺り込まれる直前に「いいえ」の選択肢なしで強制的にシナリオが始まった……であれば、何らかの影響がある可能性?」

 

クターニッドに繋がるユニークシナリオではあると思っていたがまさか直通かつノンストップの片道切符だったとは思わなかった、あまりにも予想外で初見殺しすぎる。強制イベントなんてそんなものかと言われればそうだが。

 

見上げた先にあるのは青空ではなく黒い……岩盤?海底洞窟的な場所なのだろうか、ここは。

夜空も青空も見えず、ただ星の光のようにチラチラと輝きを放つ何かがあちらこちらに見えることだけは間違いない。…………そういえば、空気があるんだよなここ。

 

「エアーポケットのような空気だまり……いや、その線は薄いと見た方がいいか?となればシンプルに海底洞窟?」

 

にしても何か違和感があるんだよなぁ、何か……こう、引っかかりそうで絶妙に引っかからない妙な違和感。

だが悠長にそんなこと言ってはいられない、俺は確かに得体の知れない違和感を感じつつも今分かる限りでの情報をまとめていく。

 

ぱっと見は地下にある巨大都市、海底に引き摺り込まれたわけだからよくある有名な「アトランティス」の方が適切だろうか?それにこのエリアの感じは覚えがある。

 

「サードレマのような立地してやがるな、このエリア」

 

とどのつまり中央に巨大な城を建てて、その周りを囲うようにして円形に建物が配置されていく形式。そういう場合は裏道や脇道が豊富だと思うんだが……何だ何だ、スニーキングミッションでもやれってのか?

少なくとも今この場で収集出来る情報と言えばこの程度のものだろうか、あとはそうだな、今の俺の現在地が都市の外縁部であることくらいか?それと……中世風の建物が多く目立つ、それが示すところとしては。

 

「少なくとも神代文明以降に出来た都市ってことだな」

 

ユニークシナリオEXで連れてこられたということはまぁつまりここがクターニッドのホームグラウンドってところか、オルトを連れて来たのは失敗だった……リスポーン不可のNPCを少なくとも他にもあと3人は連れて来てしまっている、俺もサンラクも秋津茜も出来ることなら連れて行きたくはなかったろうがこんなことになっては対策のしようがない。

あまりにも良いようにされて少々腹が立って来た、これアレだな、いつもならなんてことない筈の6鍵がその前に来るノーツにリズムを狂わされてGOOD判定出された時みたいな……メンタリティが高難度譜面攻略の時に近づいて来たぞ、負の感情を薪にしてテンション上がってきたなぁ。

 

「やっぱりあったか特殊状態……「深淵の刻限」?」

 

ある意味予想通りというか何というか、ステータス項目欄を確認しているとリュカオーン討伐時に追加された「勇気の灯火」項目の下に更にもう1つ項目が追加されていた。

そういえば今思えばあのウェザエモンの強制レベル50固定、確認する余裕なんて微塵もなかったからあれだったがあの時にも特殊状態とやらは付与されていたのだろうか?

 

開いてみるとそこには目減りしていく何かの数字のみ。

167:56:35……日にちに置き換えると7日か、丁度白雪の狼槍の超排撃(リジェクト)のリキャストが上がるのもその頃だったか……?

そしてこの発見は俺にある1つの事実を突きつけた。

 

「というかこの7日間結構予定がパンパンに詰まってるんだが……これ大丈夫か?」

 

えーと、キョウの大会にGGC、これだけで大体3日か4日は拘束される。つまりはルルイアスに滞在できるのはどう頑張っても最長4日ほど……大丈夫か俺、全部終わったら干からびて灰にならないようエナドリだけはちゃんと補給しとけよ未来の俺。

 

というか7日継続ログインはどう頑張っても無理なわけだしセーブポイントが用意されていると見てほぼ間違いないだろう、であるならばまずはセーブポイントを探し出すことが急務、いつの時代も寝床がある場所はセーフティゾーンとはよく言ったものだ……!

 

遮那王憑きを起動して跳躍、都市の外壁を飛び越して無事内地に着陸……っと、うわスゲェ、何だこの()()()()()()()()()。そういえばよくよく思い返してみれば俺が寝っ転がっていた砂地や岩も青色だったような……気のせいか?

 

「さて、試してみますか……「渡影(とえい)」」

 

ズブリと俺が影に、夜に沈む。

スキルを発動すると同時に強制的に発動した「魔力の流れを観測する力」を使い影と影を通る魔力の流れを見つけ出し、手繰る。

 

「…………ぷはっ、影に潜る時間はスタミナ依存で、影を渡るのは魔力の流れ依存とは……こういう環境じゃ、若干使いづらいな?」

 

今後はスタミナにも振っていく必要があるだろうか?だがその分移動距離は信じられないくらい長い、内壁がもうあんなに遠くだ……今俺はどこにいるんだ?どの方角の壁を見ても距離が一定っぽいから中央部分か?

 

「にしても、劣化が少ないな……こういう廃都市の道路とか建造物とかって大体崩れ落ちてるようなものじゃないのか?

外縁部は何ヶ所か壊れていたがアレは多分潮風による風化と劣化のダブルコンボだろう、確かに内壁部にもパッ見崩れ落ちそうな建物があるがあそこまで酷くはない。それより目を引くのはこの()だ。どうも色調を統一するとかの目的ではなさそうだが……木材石材金属その他もろもろその全てが青色なのは可笑しいだろう。

 

誰もいない廃墟は真っ青な青の街並み……うーむ、これだけならまだなんとも幻想的な風景で済ませられるのだが。

 

「これがちょっとネックだよなぁ」

 

そう、家屋が封鎖されているのだ。それも外側から。

ちょっと、いやかなりきな臭くなってきたがこの廃都にかつて外側から住宅のドアやら窓やらを木板やら何やらで封鎖し外に出さないという奇祭もしくは奇行が流行ってる可能性もある。

もちろん白骨死体辺りが出たらスリーアウトだが。

 

それに黒狼の目で大まかに観測した程度だが、ここの魔力の流れは少し妙な気がする。

 

(………………何だこれ、ラビッツコロシアムで検証してた時はこんなの1度も見なかったが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

いや、見渡せばもっとだ、魔力の大半が建造物や地面……青に吸収されている。何とも言えない不気味さを醸し出しているが、今はそっちよりもこっちか。

 

何とも言い難い声と姿と、クーラーボックスに放り込んで忘れて放置し続けた結果である腐り切った魚のような強烈な匂いを漂わせてやってきたるは半魚人、良かったな、シャンフロの対象年齢がもうちょい上かつグロもOKだったなら今俺が嗅がされてる比にもならないもん嗅がされていた可能性もある、そんなことになれば俺は何が何でもその原因をこの世から鏖殺してみせるが。

半魚人共らは船内と比べ更に腐敗度が上がっているのかちょっと触るにはお断りな肌をさらにヌメついた体液でコーティング……絶殺だわアイツ。

最初から警戒してたのはちょっと「ん?」と思わなくもないがまぁ大した問題じゃないだろう、半魚人共が一斉に奇声を上げながらこちらに突っ込んでくるのに対しこちらも戦闘体制に……体制、に…………?

 

「いや待て、待て待て待て。第一陣、第二陣は分かるんだがな……その後続の群れはどうなってやがる?」

 

第一、二陣が俺の前に陣取った、その後ろから第四、第五第六……待て、ステイ、落ち着けよ……嘘だろ?

 

「一体どんだけ来るんだ馬鹿野郎共!!!!こっち今ソロだぞ!?!?!!!」

 

あーはいはいそうですよねそんなことそっちが知ってるわけないですもんねクソが!!こっち1人!ソロ!作戦変更、あんな大軍はどう頑張っても捌ききれない。

 

恐らく人生の中で最も美しい180度反転を半魚人共に見せつけクラウチングスタートの構え、はいよーいレディゴーーーー!!!

 

 




少々変則的にはなりますが、深淵サイドは午前0時に、摩天楼サイドは正午に投稿とさせていただきます。
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