シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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それを人は悪足掻きではなく抵抗の意思と呼ぶ

さてここで突然ではあるが俺個人が勝手に考えている「力とはなんぞや?」の答えの一例を発表したいと思う。

 

力とは即ち努力、努力とは即ち己の積み重ねでありそこにどれ程の困難辛苦が詰め込まれていようともそれは必ず己の未来に繋がる。

俺の場合剣道とかの人生の8割ほどのウェイトを占めるマトモな部類のものは大抵努力すればちゃんと報われてきた人生を送ってきたからこその考え方ではあるがまぁ物事には当然例外が存在する。例えば俺がいくら努力しようがキョウの絶望的ネーミングセンス及びファッションセンスに改善の兆しは現れないし俺がいくら努力しようがBPM480の化け物譜面は人間の限界的にちょっと無理がある、これをちゃんとした正規曲として実装するってマジですか運営さん冗談キツいっすよとその音ゲーで知り合った人らと笑い飛ばしあっていざ本当に実装されたらあまりの鬼畜さに心がへし折れ引退したプレイヤーが続出し結果そのゲーム自体がサ終となったあの忌まわしい事件だって俺の努力ではどうにもならなかったろう。

つまりどういうことかというと、力とは即ち努力ではあるが理不尽には理不尽の応酬で返さなければいけないということだ。オールウェイズカウンター、反則上等だよ先にやってきたのはそっちなんだから。

 

 

 

であるからして今俺の後ろに迫り来る理不尽共にも理不尽で対応せざるを得ないのだが……残念、あの物量に返せる理不尽はねーわあっはっは……

 

「上等じゃねぇかこの野郎」

 

VR音ゲーマー舐めんなよクソッタレ、世の中何をとち狂ったかストーリーモードで音の弾幕を物理的に叩きつけてくるとかいう最早音ゲーじゃなくていいだろと言うしかない音ゲーだって存在するしなんならそのノーツから逃げ回ることがクリア条件とかいう訳のわからんものだってあるんだぞ。

 

「まさかあれらの音ゲーとも呼べない謎ゲー達に感謝する日が来ようとは……!」

 

一応音ゲーのジャンルに入る上に1度買ったゲームから逃げることは己のプライドからして無理だったのでキレたり文句を垂れたり悪態をついたりしながらクリアしたあの苦い思い出は今この場において役立つ経験となるとは……わからないもんだ。

 

一応モンスターと接敵している以上戦闘扱いになってるのが地味に痛い、塔のアルカナムの影響で若干ステータスが下がってるからな。とはいえそれでも普通に走れてるあたりあいつらの移動速度自体には勝ってる、そしてここからさらにこうする。

足を中心に赤いエフェクトや体全体から火花が噴き出すようなエフェクト、金色のオーラやその他諸々のスキルエフェクトが噴き出て俺に力を与える、さぁ走り抜けるぞ…!

マッハレッグにフリットフロート、イグニッション、先程リキャストが上がった遮那王憑き……今の時点でまともに運用可能な移動系スキルを総動員して下がったステータスをカバーし振り切ってみせる。

 

瓦礫は俺の足場に、崩れて原型を無くしたり建物を支えていただろう大きく太い柱は俺の軌道変化の為の起点に。あたりを少し見渡すだけでも裏路地や入り組んだ地形が多いここで俺をそうそう簡単に捕まえられると思うなよ。

3次元的に動き回り後方の半魚人共を撹乱、振り切っていく……つもりだったし、ある程度はうまく行っているのだが。

 

「うわ、前の奴らを踏み台にして……こういう時思いやりの心と人権がない奴らは容赦ないね」

 

見たことある光景だな、そう、まるで俺達外道4人が1人ないし2人3人の足を引っ張る時のような光景だ。だがあれに比べれば俺達の足の引っ張り合いなんて可愛く見えてくる、塵も積もればとは言うが前の個体を踏み潰して力技で高低差を突破しようとしてくるとは。

俺にその腐った手を届かさんとするべく前の同類のことなど一切意に介すことなく踏み潰し、踏み潰されて強引に足場を形成している……自分のことはどうでも良いって言う自己犠牲の面を評価するべきなのかこれは?

 

少し目を凝らして俺の通ったルートを確認してみれば何箇所か立派な死体の山が生まれている、そういえばあの超大軍勢も気付けば半分以下程度までその総数を減らしている……まぁあのゾンビアタック(直喩)を何度も繰り返していれば当然数は減るか、一切止まることなく突き進んでくるけどこいつら死の恐怖とかその手の概念ないの??

また足場を蹴り抜いて跳躍しかなりの高さがある建物の屋上に乗り、その上を駆け抜ける。飛び降りる寸前チラリと後方確認するとちょうどその醜悪な魚頭が見えた所だった、怖すぎるだろあいつら。

 

「AIがバカで本当に助かった……!」

 

愚直に突っ込んでくることしか考えていなさそうだから前はあまり気にしなくて良かったからな、時たま前からヌッと現れてくる個体もいたが顔面を即座に殴りつけて黙らした。

「回り込む」だとか「待ち伏せ」だとかの思考ルーチンがおそらく存在しないのであろう半魚人共は俺を素直に追いかけてくれるからこそ御し易い、縦と横と奥行きの3つの次元を持って撹乱してやれば巻くこと自体は簡単である。

裏路地の細い道にある2枚の壁を使ってほぼノンストップで屋根まで駆け上がり登って再び降りてをしたり逆に直線移動と見せかけて一気に反転したり壁ジャンプで進行方向を一気に変えたり……スキルとステータスによって支えられた俺の動きは現実のパルクールを凌駕した挙動へと変化し半魚人共を振り切っていく、物量は正義だがその物量を生かす脳みそがこいつらにはない。ズルズルと人数を消費して無意味な屍の山を築き上げていく。

 

「おつかれ、引導を渡してやる……【凍付かせよ(Freeze-up)】!!」

 

さぁ数もかなり減ってきた、これなら1発で仕留められるだろうという確信を持って白雪の狼槍(ブランシェス・ガングラスター)を使って辺り一面を氷結化させ半魚人共を制圧していく……例えこいつらが無限湧きのような形でスポーンするタイプの敵だったとしてもこのレベルのバカさ加減ならいくらでもやりようはあるしな。

 

「今度からはちゃんと密度を高めて、搦手を覚えてから襲いかかってこいよー」

 

いや別にやって欲しい訳じゃないが、フラグ発言にしか聞こえない?何を言っているんだい君は。……はぁ、にしても、誰でも良いから誰かと合流したいところではあるな。

 

 

 

 

◇◇◇◇

「………………?何だ?深淵の眷属達が……??」

 

()は酷く疲れていた。

この廃都に引き摺り込まれてから1日ほどが経過し、それ以前の疲労と怪我も相まって凄まじく弱っていた。

何とかかんとか身を隠せるような傷みの少ない一軒家に身を潜ませ持ち前の自然回復力で傷を癒そうと目を瞑り回復に神経を注いでいた所で外が騒がしいことに気づいた。

 

傷ついた身体に鞭打って周囲に眷属らがいないか待ち合わせた鋭敏な感覚器官を稼働させて索敵し外を覗き見る……と。

 

「…………何だ?獣人(ビーストマン)か?」

 

屋根を駆け抜ける人影、いや、その顔と風体から察するに狐の獣人だろうかと推測した。

あの様子からして眷属達から逃げ切ることは可能だろう、であるならばみちづれにするのはどうだろうか?とふとした思いつきが彼の頭の中に浮かぶ。1人であればどう頑張ってもここからの脱出は望めない上、この怪我をした体では索敵も中々儘ならない。である以上何でも良いから誰かと行動を共にしたほうが安全なのではないかという思いが彼を突き動かす。

 

「…………くっ、やはり付け根あたりの傷のせいで思ったより上手く羽ばたけないか……だが……!」

 

己の背中に生える漆黒の翼、翼膜を展開して軽く羽ばたいた時に痛みに顔を顰めそれでもまだ尚生きることを諦めない彼は先程屋根を駆け抜け眷属からの追跡を振り切ったであろう狐の獣人を探しに出向いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその数分後。

 

 

 

「来るんじゃなかった!!!お前を探しに来たことを酷く後悔している!!!!!」

 

「知るかよ間抜けーーーーーーーーッ!おら回復ポーションやるからそれ飲んでさっさと動け動け動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「恩に着るが原因を作り出したのはお前だからな!!?!!!」

 

「後だ後だ後だまずはあのクサレ半魚人を振り切ってからだ!!!さっさと走るぞ()()()()!!!」

 

彼…………いや、アーラムは酷く後悔していた。

 




あしたはやすませて(か細い鳴き声)
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