シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「にしても一面青い青い……と、何か怪しいんだよなぁあれ」
半魚人共の処理を終えてスタミナを回復させ万全の状態に戻った後俺はパッと目に付いた家の外壁を攀じ登って屋根に乗り、見渡せる限りでのこの街の全貌を確認する。
「中央には王城、それを囲むような円形都市、かつその四方向には塔があってそれは対角線で交わり王城が交差点の中央にある……」
俺これ知ってる、「あの塔を全部攻略したらボスに挑めるよ」的なやつだ。とは言え1人で攻略できるものかと聞かれたら大体「 NO」と返ってくるものだろう、となれば他にもここにきたメンバーと合流を目指すべき……なんだが、他のプレイヤー達がいる気配が一切感じられないんだよなぁ取り敢えずセーブポイントを探すのが先決か?おやこんにちは、死ね。
先程の大軍勢からかなり遅れてだがこちらにやってきた
「さーーてやっぱりステルスアクション推奨かなこれ……いやまだいけるかな、後2、3回くらいさっきの大軍に絡まれるようならそっちも視野に入れといて、基本移動は渡影で……」
「おい、そこの
「ん?あぁポーションならいくつか在庫残ってるぞ、ほいこr」
ん?
俺はそこで冷静に考えてみた、男の声だな、であればルストさんや秋津茜、オルトは除外されるな。であれば男陣……ブレクロ?違う、シークルゥやサンラクとも違う……クソチビがこんな渋い声なわけないだろ?であればあの時もう1人いたがコミュニケーションを取れなかったあのプレイヤーか?
だが更に俺の冷静な部分が否定する、だってプレイヤーならこちらのことをプレイヤーとして認識する筈だ。世界観に則ってゲームをプレイする没入勢と呼ばれる様な人間でもまさか狐の面を被った人間のことを獣人なんて呼び方をしないだろう。となれば今俺の隣にいるのはNPCなんだが……いや細かいことはいい、まずはコミュニケーションを試みてからだ。
ここまで僅か0,2秒で俺の脳内スーパーコンピュータが弾き出した結論にしてはあまりにもありふれている気がしなくもないがそうも言ってられないのでインベントリアに押し込んでいたポーションを引っ張り出しながら声の方向を振りかえる。
「あぁはいこ、れ……翼?」
「…………獣人かと思ったが、耳が無いだと?」
「これただのお面だよ、そっちは?」
おけ、大丈夫だ俺、動揺を表に出すな。にっこり笑顔をキープだ。
動揺をおくびにも出さずできるだけ朗らかに声を掛ける。するとその翼を持ったトカゲの様な顔……にしてはあまりにも刺々しすぎやしないかと思う顔にくっついていた口が開き言葉を紡ぎ始めた。
「面?
「そうそう、俺人間なんだよ……ところでお名前は?」
「…………確かにそうだな。俺の名はアーラム、誇り高き黒竜様の加護を受けし種族……
「あ、ごめんストップちょっと待って……ヤバい、アイツらまだ諦めてなかったのか?……いや、まさかとは思うが」
「何?」
アーラムそっちのけで先程上から降ってきた半魚人によっって潰れた半魚人の
…………あれ、ちょっとわかりにくいが半魚人の上に何かひっついて……イソギンチャク?まさか、半魚人を引き寄せるフェロモン的な何かを……?
「出会ってすぐだが悪いアーラム、全力で駆け抜けるぞ……
俺の右眼は魔力の流れを観測する、だからこそよーく分かるぜ……俺達に向かって一直線に突っ込んでくる馬鹿みたいにデカい魔力の塊がなぁ!!?
「走れ……走れ走れ走れ走れ走れ!!さもなきゃあの中に沈んで死ぬぞ!!!!」
やたらと音が拾いにくいここじゃこの眼がないと気づきにくいな……!!?
隣の建物が数の暴力を以て吹き飛んだ、そしてその下手人共は俺達のことを完璧にロックオンし深淵に引き摺り込もうと大挙して襲いかかってきた……冗談だろさっき振り切った数倍はいるぞ?
「うおおおおおおおおおおお!!!!??!?!???」
「おいアーラムこっちだあの屋根に飛び移るぞ!!」
遮那王憑きですぐさま十数メートルほど離れた屋根に飛び移り次の逃走ルートを確保するため周囲を確認する……よし、あそこならいけるか?
「おいこらあそこに飛ぶぞアーラム!」
「くっ……傷が……!」
おいおいまさかとはと思い後ろを振り向くとそこには飛ぼうとして失敗したのか屋根に乗り損ね縁に手を掛け踠く光景が目に映った。
「死にたくないなら気合い見せろぉ!!!」
「ぬ、おおぉ!!?」
咄嗟に大きく伸びた角を鷲掴みにして引きずり上げる、そのコンマ数秒後アーラムの頭があった位置に数十体の半魚人共が殺到しあっという間に瓦礫の山が生まれた。
というか思ったより早いなこいつら、数が増えて肉階段を生成する速度が上がったと……?冗談きついっすよ。
「来るんじゃなかった!!!お前を探しに来たことを酷く後悔している!!!!!」
「知るかよ間抜けーーーーーーーーッ!おら回復ポーションやるからそれ飲んでさっさと動け動け動けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
そもそも接触図ってきたのお前だからな!!?完全自己責任じゃねぇか!!!
「恩に着るが原因を作り出したのはお前だからな!!?!!!」
それはそうだわ!!!ごめんね!!!
だがそんな悠長なことを考えている場合ではない、少しでも判断が遅れたらあの肉階段を作ることにも一切の躊躇を見せない奴らに食い殺されるか潰されるかの2択を強いられることになる。
「後だ後だ後だまずはあのクサレ半魚人を振り切ってからだ!!!さっさと走るぞアーラム!!!」
長さ十数メートル程の
「歌……?」
「不味い、
人魚、人魚ねぇ……こういう時の場合どっちなんだろうか、アーラムの様に亜人種がいることはわかったからNPC枠なのか普通にモンスター枠なのか。いやもしかすると敵対するタイプのNPCである可能性も十二分に考えられるな……まぁ聞きゃ済む話か。
「なぁおいアーラム、もしかして人魚ってモンスターだったりする?」
「あぁ、厄介な奴だ……人の上半身に擬態している魚だがな、盟主の力で歪められている」
うーむ、新情報がさらっと明かされた気がするがまぁ置いておこう、少なくとも人魚はこちら側の認識としてはNPCだろうがモンスターだろうが何だろうが敵対している存在であるらしい…………どんだけコミカルだったり絶世の美女だろうが俺は容赦なく殺す、殺してみせる。情けも容赦も後ろで肉階段組み立てながら俺達を追跡してる半魚人共に纏めてプレゼント、いやちょっと待って?人魚が?この都市にいる?
おかしいな、人魚というのは往々にして水棲だと思うんだが。
目標の屋根に着地し半魚人を振り切る為に更に反対側に加速、アーラムついて来れてるのすごいなバフスキルとかそこそこ使ってるのに普通に走ってきてるぞアイツ。いや竜人族なら飛べよって話ではあるが。
「………………ッ、いたぞ!!あれが人魚だ!!!!」
「あれか……!」
見上げる先には優雅に、舞うように宙を泳ぐ人魚の姿があった。
いやぁ、あのモデリングは初見じゃちょっと騙されるわ。擬態にしては大分狙ってる対象のツボを的確に狙いまくってる節があるな、このモンスターのデザイン担当者はかなり性癖に正直な人間らしい。
「耳を塞げ!!!!奴らの歌を聞いたが最「ラーーー」「ル、ラーーーーー」ぐっ、がぁ"あ"!!!?!」
「せめて最後まで言わせてやれよ!!?!」
突然アーラムが耳を抑えて苦しそうにのたうち回る……どう見てもデバフっぽい暗褐色のエフェクトが出てるしマジであの人魚共が元凶っぽいな……?どうにかしないとコイツを捨てる判断を下さないといけない、半魚人共はあと17、8秒もすればここに到達するだろう。挙句こちらの攻撃が届かない空中をふよふよと泳いでいる……今までならどう頑張っても無理だったが今の俺にはこれがある。
「絡め取れ…………「影操」!!!」
空中を浮かぶ以上どうやったって自分の体の下部分は自分自身の影で黒く染まる。俺の金色の眼はその生まれ出た影を決して逃さない。
影を掴むように手を伸ばし、握り、その場に固定する。そうすれば後は俺の距離だ。
「はよくたばれ」
「…………!!?」
塔の効果は戦闘時間が続く限り永続して上昇し続ける。確かに登り始めはマイナス補正なのだが
強化されたステータスとフリットフロートにより踏み込みと跳躍を強化する、塔という試練が続く限り俺は軌跡を刻み続ける。たった一歩の踏み込み?その一歩は数段一気に飛ばす踏み込みだ。
「予め言っておくが俺は顔面が美少女な程度じゃ一切何の躊躇もない」
実際マジで何にも思わない、顔見るくらいなら人の内面を見ろという話だしそもそもゲームやってる以上出てくるキャラクターはどいつもこいつも美女かイケメンかイケオジ……およそ2割半の人間がロボかネタに走る傾向もあるが。そうでなくともボスがイケメンだとか美少女が銃火器持ってるとかいうゲームなんてそれこそレトロから何から星の数からあるわけで。
例えどれだけ好みの顔であってもストーリー上どう頑張っても倒さないと先に進めないボスで、あまつさえ弱点が顔面だというのなら躊躇うことなど一切なく殴り倒す、それがゲーマーというものだ。
空中で動きを止めている人魚3体の喉をピンポイントで掻っ切り素早く武器チェンジ、黒染矛双を引っ張り出して即座に抜刀し目の前の手頃な人魚を胴体から輪切りにして泣き別れにする。
「…………取り敢えずは去ったか」
おっ?なんか半魚人もいなくなってるが……あぁ、あの人魚の声ってもしかして無差別だったり?俺やサンラク秋津茜は奴等にとっては天敵だろうなぁ……なにせあの手のデバフ完全無効なもんで。
「容赦ないな、お前」
「命救ってやったんだから感謝しろよなまったく……」
「感謝しているさ、ところで何だがビャッコ。俺の獲物をここで落としてしまったんだが見てないか?こう、これくらいの刃渡りをしたダガーなんだが」
「知らん、そも俺だってこの海底都市を探索し始めたのはついさっきからで……」
「何を言っているんだお前は。ここが?海底都市?」
は?お前は何を言って……アーラムの方を向き直りそう言おうとする。だがアーラムは心底わかっていない表情をしながらこう言ってきた。
「ここは「深淵盟都ルルイアス」、海中で文字通り全てがひっくり返った
「おっけわかった、ちょっと思考の整理をさせて欲しい」
えーと、確認したいことは……2つ?いや3つか?
「あーー……あのキラキラ光ってる何かが向かっていくのは洞窟の天井とかでなく?」
「
その場でジャンプして現状俺の体感としては正常に働いている物理法則は正しく機能しているのか?
「なら俺らって今上に落ちていくんじゃないの?」
「深淵の盟主……クターニッドの力がこの都市には溢れている、「反転」の力が充満していることによって下が上に、生が死に……反転している」
「今俺らが当たり前の様に息吸ってるのは?」
「クターニッドの力により「空気がない場所」であるここが「空気のある場所」に反転し書き換えられている」
「おけ、わかったありがとう……成る程?成る程ねぇぇぇ…………?」
俺たちをここへ引き摺り込んだあの黒い蛸足を再び思い起こし俺は思わずこう呟いた。
「深淵のクターニッド…………勝てるのか?これ………?」
影操
本質は影に充満した魔力を観測し、己の好きな様に改変すること。
実は本来のスペックの半分も運用できていない…何故かって?夜襲の名を冠する以上ホームグラウンドは夜だから