シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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隠れ狐、暴れ鳥。

色々とごたついたが結果的には何とかなったのでモーマンタイ、そしてアーラムに「安全確保できる様なところない?」と確認してみたところどうも1日隠れていても見つからなかったという廃屋に案内された。どうもあの半魚人達は基本的には敵感知の大部分を視覚と聴覚に頼り切りの状態であるが故に壁1枚隔てるだけでも余程のヘマをしない限りは安全なのだそうだ……なるほど、躍起になって安置を探す必要はなく見つからない限りはこの都市の全ての廃屋はセーブポイントになりうるのか。

それってしれっと言ってるけどかなりキツめの初見殺しでは?と思わなくもないがまぁ笑って水に流すとしよう、そしてこの安全地帯を手に入れそこで忘れ去られてボロボロになったベッドに横たわることでリスポーンポイントを固定した。これで安心だ、そしてこれからの目的はこの都市での可能な限りの情報収集だ。

 

「どんな譜面も情報が無いと安定はしない、高難度譜面だとクリアも怪しい。だから情報が欲しい」

 

「譜面?音楽でもやっているのか?」

 

「そういうことじゃないんだけどなぁ…」

 

まぁ兎にも角にも、俺がさっき見渡した限りでも4つの塔に王城、円形でかつ()()()()都市、空中を泳ぐ人魚に無尽蔵に湧いて出てくる半魚人に理性的な竜人族……これら全てはユニークシナリオEX「人よ深淵(ソラ)を見仰げ、世界は反転(マワ)る」におけるアクセントでありスパイスであり重要なキーパーツになっている筈だ。

 

「つーか何でそんな安全地帯云々についての情報知ってるんだよお前、まだここに来て1日とかそこらなんだろ?」

 

「人伝である程度の情報は得ていたからな、何をすればいいかは知っていたんだ。だが……ここに来て隠れ潜む廃屋を見つける前に奴らに見つかって傷を負わされた上に獲物を失った。何とか撒いて傷を癒す為に隠れたのがたまたまここだったんだ」

 

で、その近くをたまたま逃げる俺を見てポーションか何か貰えないかと付いてきたってか……にしてもこのかくれんぼは少々クソゲーがすぎる、見つかったが最後数十人規模(時間経過で増加)の半魚人に追いかけ回されて追跡を振り切ることも困難とまでは言わないがイージーではない程度の難易度、かつ前方が開けた屋根部分に登ったら登ったでデバフを浴びせかけてくる人魚が大挙して押し寄せてくる…厳密には隠れ鬼かこれ。

半魚人共自体は3度追いかけ回された経験から都市部の高低差をフルに活用することで解決する、なら重要になってくるのは人魚への対処なんだがまぁ呪いの効果でその辺全部無効にされるから俺自身はあんまり考えなくて良いな、これから先どこかで合流するであろうサンラクと秋津茜以外のプレイヤーとNPCのことを気にするべきか。

 

さてここからが本題なのだがどうもあの半魚人共や人魚はクターニッドの「反転」をフルに活用して生まれた存在らしいということ。例えば半魚人ならば「人ではない生きた魚」が反転して「魚ではない死んだ半魚人」に、人魚ならば「人ではない死んだ魚」が反転することによって「魚ではない生きた人魚」へと変貌する……改めて考えるとこじつけだなオイ。

真っ当な存在であれば口にすることしかできない屁理屈を実際にやってのけるあたり流石はユニークモンスターと言わざるを得ないがここから浮かび上がる事実が1つだけある。即ち……

 

「鮮魚や魚の死骸を元にモンスターを出せる以上無限湧きはほぼ確定と見て良いな……勿論この周辺の魚が全て根絶やしにするくらい殺し回ったら良いのかもしれないが」

 

だが現実的ではない、クターニッドの「反転」の効果範囲がどれほどのものか分からない上にどれだけ狭くてもこの海中じゃ魚なんてものはそれこそ星の数だけあるだろう、更に「反転」効果範囲外からも魚は入ってくる以上この海域全てを消し飛ばすくらいやらないとあの半魚人共や人魚は一生湧いて出てくるだろうな。

どう考えても無駄に終わる可能性の方が遥かに高い、その先に得られるのは斬り捨てた魚共の屍の山と装備の消耗、それと疲弊した精神ってところか。人魚だけドロップアイテム落としたが……「人魚の血合」?赤身肉に白身肉もあるんだろうか。というかこれ食人になるんじゃないか……?上の体は「反転」してるだけの魚な上に下半身の魚部分だからセーフってか?

 

「深淵の盟主は殺す目的でルルイアスに引き摺り込むことはない、かの者にとってここは遊戯盤の上でしかない以上引き摺り込まれた俺達は盤上の駒してかの者を楽しませる他ないのだ」

 

「なるほどねぇ……楽しませるってのは具体的には?」

 

「わからん」

 

「ふざけてんのかお前」

 

「伝聞でしかない以上俺も分からん!!!!そもこれは俺が蜥蜴人族(リザードマン)であった幼少期に耳にしたものだからな」

 

「そうか……それじゃあ、もういくつか聞きたいことがある」

 

 

 

もういくつか聞きたいことを聞き出してから俺は慎重に外を確認して周囲に半魚人も人魚もいないことを確認する、黒狼の眼の魔力観測は……街中魔力の流れでいっぱいである以上付けっぱなしは頭が焼け落ちそうになるからやめておこう、索敵に短時間起動する程度に留める方針で。

 

「ちょっと行ってくる……アーラムはここで待ってろ、ポーション使ったとは言え丸一日負傷してた奴が多少なりとも疲れてないはずがないだろ」

 

「助かる……が、何をしにどこに行くんだ?」

 

「俺の仲間……で良いのかな?兎に角、仲間が多分この都市の何処かにまだいる。それを探すのと……ついでにお前の武器っぽいのも探してやるよ」

 

リス地の固定は済ませた、情報は粗方アーラムから引き摺り出したがまだ足りない……後は実際に自分の眼で調べる、知るしかない。開拓者魂見せてやろうじゃねーか……

 

「まぁ、つまりなんだ。……潜入捜査ってやつになるのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特攻とは言ったもののまぁ馬鹿正直にそこの道のど真ん中を爆走するなんてのはナンセンスだ、消耗やら何やらを考えるとどう考えても「隠れ進む」ことこそがベター、だと思っていたのだが。

 

「あんなバカをやらかす人間でここに引き摺り込まれたであろう奴は残念ながら1人しか心当たりないな……」

 

青一色の廃都市に響き渡る轟音、黒狼の眼で魔力観測をしてみると空中にもいくつかの魔力の塊……つまり人魚がいた。それらが妙な軌道をして吹っ飛んでいるのから察するにあの轟音の発信源の最前列にいるのは我らが鳥頭、サンラクだと思っていいだろう。

 

「…………かいるかぁぁぁ………………」

 

「あぁうん、多分サンラクというか間違いなくサンラクだわあれ」

 

少々聞き取りづらかったが音ゲーで鍛えられた聴覚を舐めるでない、あの声は間違いなくサンラクだった。となれば考え得るサンラクの現状としてはヘマやって大量の半魚人を引きつれる羽目になったかわざわざ危険を冒して他のプレイヤーやNBCを引き寄せるビーコンになったのどっちか、であるならば行かない通りはないな。

 

「待ってろサンラク……今行くからな!!!!」

 

フリットフロート、遮那王憑きを起動して廃都を駆け抜ける。途中半魚人や人魚にも遭遇したが誤差だ誤差、半魚人の喉元に展開した救世正宗をクリティカルで突き刺し歌いながら両腕を広げて俺に向かってきたやたら美形の人魚の顎をカチ割り突き進む……おいコラ人魚、お前は設定的には上半身の人部分は擬態であり一種の擬似餌みたいなものなんだろ?歌によるデバフが効かないのがわかってその後人間よろしく眉を顰めるなんて器用なことするな。

 

顎をカチ割り頭をカチ割り、時折半魚人を斬り倒しつつ突き進む。サンラクを見つけたらそのままアーラムがいる臨時拠点まで避難する、あそこが少なくとも見てきた中では1番損傷が少なくて広かったから他のプレイヤーも見つけ次第そっちに連れていくのが得策だろう。さてでは今追っかけまわされているであろうサンラクはどうやって回収したものか、俺1人なら逃げきれないこともないが向こうもそれは同様だろうし……いやそんなことは後でいい、もうじき音の発生源だからなその時のことはその時――――――

 

「おいおいマジかよ」

 

逃走予定を組まなかったのは幸運かもしれない、多分どれだけ完璧なものを組んでいたとしても間違いなくガラガラと音を立てて派手に崩れ落ちていただろうから。

俺の目の前で展開されている状況を説明しよう、まずエムルちゃんとオルトがいる……ここまでは問題ない、クソチビがセットになっているのもまぁこの際NPCがシークルゥを除く全員を発見できたと考えれば良い。次にサンラク、そしてその後ろの半魚人数百体と人魚。ここまでは良い、ここまでは十分予想できた。

()()()()()()()()()()()

出会ったばかりの頃、俺はオルトになんとなく聞いてみたことが1つある。

 

「このランダムエンカウンターって魔法、どういう効果なんだ?」

 

と。

それに対して返ってきた答えはあまりにも実用性が少なく、オルトもほとんど使ったことがないと言っていたのでほぼ記憶は風化して忘れていたのだが今その効果を鮮明に思い出した。

 

「この魔法は私達ヴォーパルバニーやケットシーと言った種族の者の中でも一部の者が習得できる魔法です、まぁ私自身使ったことは1度たりとも使ったことはありませんが……自分だけの力ではどうしようもない時、この魔法を使う(唄う)んです」

 

 

 

ランダムエンカウンター

・発動者の周囲に存在する発動者自身よりもレベルの高い非アクティブ状態のモンスターを一体召喚する。召喚されるモンスターは発動者の発動時点でのレベルの1.(スキルレベル)倍の数値以下のレベルを持つモンスターの中からランダムで選択される。

 

 

 

アーラムはなんと言っていた?「反転」の力によって人魚達は「海の上の島」であるここを「海の中の島」としたルルイアスを更に「水中でない」場所を「水中でもある」場所としてさらに捻じ曲げられた為に泳げると言っていた。

向こうからすると俺達は水中を走り回ってるように見えるわけだが……いや、それは良い。問題は恐らくエムルちゃんとオルトがランダムエンカウンターを発動したという事実だ。

 

効果範囲がどこまでなのかはさっぱりだが少なくともあの2人のレベルより高いモンスターをシステムが探し出して発見、ここに呼び寄せたことだけはハッキリ分かる。

深海にあるここ、ルルイアス。ここから発動したランダムエンカウンターは確かに発動者の望み通りの効果を発揮したのだろう、そしてその魔術によって呼び出されたそれらは……

 

「お前らからしたらここは……()()()()()()()()()()()()()()()()()…………!?」

 

 

 

 

 

「だずげででずわぁぁぁぁぁ!!」

 

「お姉ちゃん良いから走って!!!!追いつかれたらそれこそ終わりなんだよ!!?!!!」

 

モチーフは多分、リュウグウノツカイだと思うんだが……ごめんちょっと魔改造のされすぎでどう頑張っても君は東洋に出てくる龍の括りに入ると思うよ。廃都の家屋やら何やらを軒並み破壊しながら兎2羽とべそをかいているクソチビを追跡している……仮称メガリュウグウノツカイ。

それとえーと……こっちは多分、モチーフは旗魚(カジキ)なんだと思うんだがこっちもこっちで吻が魔改造されてやがる、なんだそのチェンソー的挙動は。

凄まじい轟音を上げながら空気(水中)を切り裂くそれは恐らく雷属性か何かの魔力を放ち周囲に電光と電熱を撒き散らしている、偶々吻に触れた建物が黒焦げになったかと思ったら消し炭になったがあれは本当に曲がりなりにも生物なのか?どう頑張っても生きた兵器としか呼称できないが……仮称チェンソーカジキ。

 

いや、おいおいおいおい。

 

「おまっ、なんつーもんを呼び寄せてるんだお前らはぁぁぁぁ!!」

 

「呼んで良いものと悪いものがあるだろうがバカタレェェェェェェ!!!!!」

 

俺とサンラクの絶叫が青い廃都に木霊して、弾ける。

 

 

 

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