シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
◇◇◇
――――――ズバリ、ifも含めたギャラクシアコミックの全キャラクターの内最も強いのは誰でしょうか?
そう質問したインタビュー記事が数年前、とある海外のエンタメ雑誌に掲載された。それに対してギャラクシアコミックの作者は少し悩みながらこう答えた。
――――――とても難しい質問だね。それぞれのシリーズごとに最強と呼べるキャラクターが何人もいるし……何より僕自身彼らの中でナンバーワンと呼べる存在がはっきりわかってないんだ。
――――――ということはつまり、ギャラクシアコミックに最強は存在しない、と?
インタビュアーに作者は笑って、こう言い放った。
――――――そうは言ってない、ある1つのカテゴリに絞るなら最強はいるのさ。
――――――では、その最強とは?
――――――本来呪われた牢獄の囚人は牢獄を破らない限り流星を破ることは出来ないが……ifの彼なら、それが可能だ。つまり、ifカテゴリにおける最強にして最凶。それこそが、世間一般で言うところの「エクリプスフォーム」であるカースドプリズンだよ。
〜3ヶ月前のギャラクシア・ヒーローズ:カオス製作陣〜
「カスプリのフォームはどうする?」
「殆ど向こうさんのAIがやってくれてら、こりゃすげえ……デバッグにだけ集中できるしアイデアを出したら俺達と一緒に煮詰めてくれるぞ」
「けどそれじゃ面白くないしなぁ……あ、「エクリプスフォーム」は俺達だけでやってみないか?」
「いいね、どうせならゲームバランスぶっ壊すぐらいのヤケクソ調整しよう」
そんなインタビューと、開発陣の本気の悪ノリを経て生まれたカースドプリズン「エクリプスフォーム」。
超低確率で発生する特殊イベントである「カースドプリズン撃破部隊」で出現する対
対人戦闘ヘリ「ホワイトレンジ」3機の内8割を取り込むことで完成するその形態は一体どのような暴威を振るうのか、全世界に発売する前にその全容がたった2人の人間の前に明かされた。
「ちょっ、何だよ、これぇ!?」
「あっははははははははははは!?!すげぇ、マジで「エクリプスフォーム」最強じゃねぇか!!!」
接敵までに十分すぎるほどの鉄を溶かしストックしていたアムドラヴァの溶鉄弾が空を焼きながら呪われし監獄へ向かってその走行を溶かさんと進んでいく、それを意に介すことなくただ腕で
「実際の試合でこれをお祈りするには流石に博打だから実戦云々は抜きにしてぇ……!覚悟しろやクソッタレがぁぁぁあ!!!」
「ガードの上から……ッ!?」
レッドストライプに取り付けられていた大量のジェットが火を吹き凄まじい変則的な挙動でアムドラヴァに肉薄する。その速度はマッハを優に超え、瞬く間に懐へ入ってみせたカースドプリズンが顎を打ち抜く姿勢に入る。
咄嗟に両腕をクロスさせガードするもその規格外のパワーがガードを貫通して顎を打ち抜き高く高くアムドラヴァをカチ上げた。本来であれば腕に触れた時点でアムドラヴァのパッシブによりスリップダメージが入る筈が現在カースドプリズンは何重にも重ねられた鋼鉄に身を包んでいる為その本体にまで届かずノーダメージである、その事実を認識したアムドラヴァは速やかにヒットアンドアウェイと待ちによるカウンター戦術を破棄し次の策を練り始めた。
(カウンターはもう無理……!というか何アムドラヴァのパッシブ貫通してノーダメージなんだよ!!?いや、今考えるべきはそれじゃない本当に今必要なのは今後の対応……!)
「溶かしてあげるよ……っ!!」
「そんな鈍い弾に当たると本気で思ってやがんのかァ!?」
「ですよねーーっ!!」
ヤケクソで放った溶鉄弾を大量の鉄屑を纏って肥大化したとは思えない速度でカースドプリズンは回避してみせる、次の瞬間両手を前に翳しそして叫んだ。
「発射ァ!!」
「ミサイルまで撃てるのかよ……っ!!?」
凶星の引力により周囲を浮遊していたミサイルがカースドプリズンの号令により一斉に発射されアムドラヴァを墜とさんと容赦無く降り注ぐ。だが日本トップクラスのプロゲーマーが操作するアムドラヴァがミサイル程度に対応できないわけもなく、可能な限り回避し不可能と判断したものは溶鉄弾で溶かし、溶岩の腕で逆に溶鉄弾のストックを貯めにかかる。
「流石プロゲーマーってか!?」
「そう簡単にアマに負けてたまるかってーの……!」
◇
強い、ヤバい、速い。
諸々言いたいことを全部ひっくるめた総評としてはシンプルに「「エクリプスフォーム」ヤバすぎる」だなこれ。なんかアムドラヴァのパッシブって本来腕に触ったら問答無用でスリップダメージ喰らうはずなのにそれがなかったんですけど……?
(これ、正直修正しても良いんじゃねぇかなぁ……3、4戦やって出てくる程度の確率じゃゲームバランス盛大に破砕しかねないぞ)
いやまぁ俺の運が良かっただけかもしれないがそれでも「出る」こと自体は確定しているこんな怪物世に出してはいけない気がする、ほら見てくれよ……こんなミサイル乱射やって良いと思うか?なんか明らかに取り込んだ数以上撃ってる気がするんだけど多分気のせいじゃないよね?その割にはなんか全弾対処されてる気がするんですけど?あっミサイル尽きた。
「やっば……!?」
「たっぷり貯めてあるんだよなぁ!!!」
溶鉄弾……喰らっても問題ないか?でもちょっと待て、外装溶かされるのはシンプルにパッシブ有効化されるのと同義だから回避するのが妥当か?いやどうせ最後の隠し球はそんなの関係な――――あ、これ避けないとダメだ。
「これ、なぁにィッ!!?」
「単発に見せかけた2連続溶鉄弾!これ初見回避したのそれこそランファンくらいなんだけど!?何で避けれるの!?」
勘!!
とにかく己の直感を信じて避けたことは正解だったらしい、カッツォの発言からすると喰らったら二重の判定でHPを削られかねなかった……最近なんとなくだが直感が鋭くなってきた感覚がするな、こればっかりは気のせいではなくマジで。
溶鉄弾を回避、なんか地味に避けていいやつと受けていいやつが混ざってる……嫌らしいぞカッツォ、仕返ししてやる。
「インファイトと洒落込もうじゃないの……!?」
「近づい、てか速っ!」
右ストレート、ガードされる。左フック、これも受けられる。頭がっつり掴んで膝を腹に叩き込もうとしたら逆に腕掴まれて投げられそうになった。投げられると本気でお思いか?
「わかっちゃいたけど重いねぇ!」
「諦めろカッツォ、ウェイト勝負じゃ勝てねぇから……というか、この距離感だとお前はもうほぼ詰みだよ」
「へ?」
気づいてる想定だったんだが……エクリプスフォームのインパクトがデカ過ぎて頭から抜けてたりするか?
「
「あっ」
さぁ溶岩野郎、ここから30秒を存分に味わってくれ。
赤く輝く俺の腕がカッツォの腹を思い切り殴りつけたのはそこからコンマ0.2秒のことだった。
◇◇◇
「お、メグじゃん。その様子じゃあアイツと戦ったみたいだけど……どうだった?」
「…………負けたわよ、そっちは?」
「俺もボコられた、いやーー完全に頭から抜けてたところを反撃許さずばかすか殴られてさぁ」
「ケイまで負けるなんてね……あの子達ホント何者?」
「さぁねぇ……そういえば、どんな感じで負けた?」
「途中から動きがしっちゃめっちゃかになった挙句にすごい勢いで煽り出してきて……」
慧はそこまで聞いてチームメイトが己と同じく負けパターンに引っかかったことを理解し、ガスマスクの友人とガスマスクではないが中身はそれと同等クラスに頭がおかしい友人を想起し苦情を漏らす。
「言ったろ?サンラクはシルヴィア・ゴールドバーグと似たバトルスタイルをしてるって。10秒ごとに戦闘スタイルと技を丸ごと切り替えてくるようなやつだよ、こっちもそれに合わせて対処しないと余裕で負ける」
「…………言われたわね、じゃあ貴方が戦ったビャッコって子は?」
「あれも説明通り、ランファンみたいなやつだよ。テンションでパフォーマンスが上がるくせして獣じみた直感で致命的な攻撃を回避するし予想外の方向から攻め立てられる……それに加えて、さっき分かったけど筋金入りのギャラクシア・レーベルのファンだ、キャラの理解度が凄まじい」
魚臣 慧から言わせればサンラクという人物は1つ1つに必殺級の火力を備えた十徳ナイフであり、ビャッコという人物は凄まじく切れ味の鋭い名刀を携えそれを高精度で振り回してくる獣だ。
サンラクはあらゆる手段を用い、時に組み合わせることでこちらに向けて大量の選択肢を叩きつけてくるのに対しビャッコは叩きつける選択肢こそサンラクには劣るがそれを通すことに特化している。恐ろしいほど鋭い直感(本人談)で通せるタイミングを見極め、時に少ない手札を組み合わせ更に強靭な一本の刃として正確にこちらの首を落とさんと狙ってくる、そんなスタイルである。
変わらない点と言えばどちらも対処に手間取れば最後一方的なタコ殴りが待ち受けている点であるが……裏を返せば対処に手間取ることさえなければ、向こうの手札を全て把握しこちらの必勝パターンを差し込むことさえできれば拍子抜けするほどあっさり勝てる。
「
ビャッコに至っちゃその必勝パターンを差し込む隙間がない上に思考回路が
何をどう考えたら前者は「プロゲーマーに勝つために攻撃の8割にフェイントを絡めよう」なんて思考回路に行き着き、後者は「プロゲーマーに勝つために差し込まれる隙間を減らそう、それには攻撃の7割を居合のカウンターにして残り3割を死角からの抜刀術にしよう」なんて極端な思考に辿り着くのか……それを初めて聞いた時慧は真剣に耳を疑った後に改めてこの2人のカテゴリを「狂人」枠に叩き込むことになった。
とはいえサンラク考案の多段フェイントは実際かなり有用だったし、ビャッコの七三カウンターは何度も慧の窮地を救ったから侮れない。
2人とも効率よりも派手なロマンを選ぶ為に予想外の敗北を喫するし、それが原因で自爆したりするし、動きを特定すること自体も容易なのだがその先が詰められない。故に単純に興味があるのだ。
「あれをスターレインにぶつけてみたらどうなるのかが単純に興味があるってのもあるんだけどね」
「……じゃあ、天音 永遠も同じくらい強いの?」
「いや……あれはもっと邪悪な奴だよ」
なにせ「自由度」を与えると爆泳しだすマグロじみたプレイヤーがサンラクで、密林を縦横無尽に駆け巡り凄まじい速度で木に激突するのがビャッコだとすれば、それはもう悪辣な巣を作り始める蜘蛛が鉛筆戦士というプレイヤーなので。
「カースドプリズン撃破部隊」は4096分の1の確率で発生します。
色違いかな?