シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
◇
「クズ!!!!どクズ!!!!真性の!!クズ!!」
「サンラク君にも言ったんだけど負け犬の遠吠え語はちょっと知らないっていうかぁー?何言ってるのか分かんないでーす人類の言語取得してからほざいててくだっさぁーい!!!」
「鬼!悪魔!!!!外道!!!!!」
NPCが何人死んだと思ってやがるクソッタレ!!!!俺だって何本か高層ビルを根本からへし折ったがこいつ筋金入りの外道だ、あまりにも邪悪がすぎる……!
「何されたのさビャッコ」
「されたっていうとちょっと違うな……すげえ端的に言うと、人間爆弾?」
「予想の斜め上行っちゃったなー」
「ビルジェンガより人道的な面で悪魔すぎる……」
ビルジェンガ?おいこら鉛筆サンラクとさっきやり合ってたとは聞いてたけど何やったんだマジで。
にしてもこっちの人間爆弾もヤバかった、通り魔的にNPCが次々と吹っ飛んでいく中どこからか響く高笑い……NPC共が「助けてヒーロー」と一体誰から吹き込まれたか……間違いなくペンシルゴンのやつだが……に纏わりつかれたところをドカンと派手に吹き飛ばされた、これの何が悪辣って本人の顔を一度も拝むことがなかったことだ。接敵回数0でこれされたらどんな相手だってキレるしどんな相手だってその悪魔的所業に不快感を滲ませるだろ。
あれならもういっそシンプルに倒しに行けば……いやダメだな、なんかあのNPCの群がり方と爆弾の爆発タイミングから察するに逃走経路まで吟味した上でやってる可能性が高い、能力の条件上逃げる際に周囲の爆弾は軒並み吹っ飛ばしてるだろうし……手練手管が悪魔すぎるだろ。
「さてそれじゃあ……みんなそれなりにこのゲームに触れたと思うからこのゲームの感想を聞こうかな?」
このゲームの触りの感想ねぇ?そうだなぁ。
「対民衆シミュレーションゲーム(バトル要素あり)」
「箱庭タワーオフェンス、なおヴィラン限定」
「ギャラクシアレーベルファンにとっての神ゲーってのがファンとしての感想、悪ふざけの視点から言うと……そうだな、NPCが全員ヒロインみたいなギャルゲー?ヒーロー使う場合」
「自由度がズバ抜けた広い視野での立ち回りが要求される……って私も捻った感想を言わないといけないの?」
「メグはメグのままでいいんだよ、あの3人はニューロンに消せないバグがくっついてるだけだから」
「そ、そう……今の私がいいんだ……」
「ねぇサンラクさんにビャッコさんや、私達はこれに対してどう対応すればいいかな?」
「笑顔で中指立ててやればいいんじゃないか?」
「無言でサムズダウンしながら考えつく限りの罵倒のボディランゲージを見せよう」
お前がギャルゲーの主人公リアルでやってんのな……しかもこれシナリオ中盤くらいのちょっとオチかけたヒロイン出てくるイベント……カッツォさん見せつけてきますね?
けど本人にはそういう感じ一切ないし……あっ、そういうことね?夏目さん頑張って、こいつ直接もの言わないと気づかないことよくあるからさ。
「なんでこんな罵倒の限りを尽くされてるのか分かんないけど……とりあえず本格的な対策は明日として……ヘイサンラク、ちょっと1試合やんない?」
「ん? 別にいいけど」
「ただし1つだけこっちから頼みがあってさ……使用キャラは「ミーティアス」にしてほしい」
「……シルヴィアなんとかさんのプレイ動画でも見てこようか?」
「いや、いい。どうせ前回よりも
「さて、俺らは観戦席ですよと」
「その格好でビャッコ君の声だとなんか凄い違和感あって面白いねぇ」
「うるせぇ
「あ、試合始まる」
「ブレないね恋する夏目ちゃん」
「こっ…………!?」
「やめてやれよ……実際試合は始まるんだし」
現在俺達はカッツォ対サンラクのマッチアップの見学中、それ故に仕様上先程まで使っていたキャラのアバターが参照されているのだが……ええいペンシルゴン視界の隅で煽るな鬱陶しい、それと夏目さんを煽るな彼女だって頑張ってるんだから。……そうだよね?
(にしてもカッツォのやつ……サンラクに「ミーティアス」をピックさせた上で「本気で来い」だと?とうとう例のゼンイチへの対処法を見つけたかあるいは――……)
いや、今は試合を見ることに集中しよう。さてこれは……サンラク側の視点か、今は索敵中なのかビルの屋上にいる。
「にしてもやたらシャラシャラしたコスチューム着てるよねぇ」
「否定はしないな、実際あれ走ってると音が鳴るから捕捉されることもあるだろうし」
あるだろうというか全米トップクラスかつそのミーティアスを使う人間がいる以上その手の対策は当然しているだろう、身内に使い手がいるんだから弱点くらい共有されてるだろうし。
「さて……今回どっちが勝つと思う?夏目ちゃん」
「ケイ、だとさっきまでは思ってたんだけど……
「ふぅむ……ビャッコ君は?」
「ぶっちゃけ初見の適応力ってサンラクの方が圧倒的に上だからサンラクって言いたいけど前作以前のやり込みがカッツォにはあるしなぁ。ま、4.5:5.5でカッツォが微有利だと……とか言ってる間にサンラクのやつ走り出したぞ」
サンラクが今回扱うミーティアスというのは兎にも角にも機動力に全振りしたキャラだ、x軸y軸z軸の全てに精通している。高速ダッシュや壁走り空中ジャンプなどが高水準で備わっていて、その機動力の高さがゆえにステップと曲がることだけが難点となっていること以外特筆すべき弱点は……あ、火力の低さもあるな。
ただケイオースシティという広大なマップを走り回るという点でミーティアスを超える機動力を持つキャラは少ないし、それらもウルトやスキルなんかを駆使して出せる一時的なものだ。
対するカッツォの使用キャラは俺とやった時と同じくアムドラヴァ……俺が使った時扱いクッソ難しくて1晩2晩でどうにかなりそうにもなかったから諦めたんだよな、溶鉄弾の弾速が想像してた3倍くらい遅かったってのもあるが。
だから不意打ちとか対処不能な状況ぐらいしか当てどころはないと思ってたんだがなぁ……それを当ててくるあたりアイツもやっぱりプロゲーマー、魚臣 慧ってことなんだろうな。
(主導権は必然的に機動力で勝るミーティアスが握る……いや、カッツォ的には寧ろそれが狙いか?多分これ例のシルヴィア想定での試合だしなんらかの対策……もしくは確認みたいな感じするもんな)
まぁこの程度のことサンラクが理解していないわけがないだろうな、その上であいつの性分を鑑みればまぁ、言われずとも全力で殴りかかっていくはずだ。
そして、ちょうどサンラクがビルを駆け回りながら索敵している場面でそれは居た。
摩天楼が辺りを囲む中ひっそりと存在する公園、そこを照らす電灯とは異なる輝きを放つ灼光を。
「…………ミーティアスの特殊技、「スターロード」。5秒間の空中歩行を可能にする技だがこれでゲージ技は切れなくなったか」
「地に足つけてないとシャラシャラSE出てくるの最高に隠密に向いてないけど最高にヒーローっぽいねぇ」
同感。けどそこ含めてかっこいいのがミーティアスだしなぁ。
「なんでここで特殊技……?素直に飛び降りてからゲージ技を切った方が……」
「多分それだと硬直判定かかっちゃうからだと思うよ夏目さん。ダメージこそないけどアムドラヴァの目の前で隙を晒してでも高ダメージ与えるより出来るだけ近づいて攻撃判定で地面に着地した方が隙を晒す時間は短い……まぁ、高さ百何メートルの摩天楼から飛び降りて特殊技切って正確に攻撃を叩き込めるっていう絶対の自信がなきゃやらないと思うけど」
対するアムドラヴァ側の選択は腕による防御……ダメージ交換は引き分けってところか。
「サンラク君的には近接戦闘はやりたくないだろうねぇ、下手したらガン待ちカウンターで簡単に負けちゃうし」
「何より機動力をわざわざ自分から潰すヘマはしないだろうな……けどあいつ、アムドラヴァの溶鉄弾発射可能状態かどうかの見極めって出来るのか?」
「え?何それビャッコ君」
いやだってあれ確か……
「アムドラヴァの溶鉄弾が発射できる時って溶岩の腕の色が若干だけど変わるんだよ、それと鉄の残骸っぽいのが溶岩から若干露出してる」
「何それ!?前作にそんな仕様は……っ」
「夏目さんステイ、多分シャンフロのエンジンを積んだ結果より原作に忠実になったんだろうな……原作37巻の幕間に走り書きみたいな感じで載せてあったんだけど」
「それ覚えてるの余程のギャラクシアコミックオタクじゃないかなぁビャッコ君」
だまらっしゃい、良いだろ別に……さてその知識を元にするならば今アムドラヴァは溶鉄弾を放てないわけなんだがミーティアスがそれに気づいているかどうかが問題だな、ブラフかどうかの判別がつきにくい。
じゃあどうするかって……サンラクなら多分
「そうだよな、
ブラフかどうかの判別がつかないならそれが関係ならないようにすれば良い。どうせ離れていたってやることがあるわけでもなし、無駄に警戒するくらいならあると仮定した上で突っ込む。俺でもそうするな。
2人の距離が5メートルを切り、前へと歩みを進めるミーティアスがダッシュ状態へ移行し凄まじい速さで肉薄する。
まぁアムドラヴァは溶鉄弾を撃てないからここは腕の溶岩装甲でガードしつつ殴ってカウンター狙ってくる……ん?
「………………変だな」
「え?」
「何が変なの?」
「あいつなんであんなに右腕だけを見せつけてるんだ?」
呟きは鉛筆に拾われ、奴の邪悪な頭が答えを弾き出す。それと同時に俺の直感がアムドラヴァの左腕だと脳裏で叫んだ……え?なんで?溶鉄弾は撃てな――――いや待てまさか。
「溶鉄弾は撃てない……ビャッコ君はそう言ってたけど違った。実際は
「あの左の手の中、鉄屑仕込んでやがんのか………!?」
そうか、溶鉄弾のチャージは任意だから握りしめたままにするってのもありなのか!!ミーティアスが溶鉄弾が撃てるかどうかの確認ができているかアムドラヴァにはわからない、だからその前段階で止めて確実に当てられる段階で溶鉄弾をチャージしそのまま発射を……!!
お互いの距離は1メートル、これならばどちらも当たるし当てられる。間合に入っている、攻撃が届く。
ミーティアスはジークンドーの使い手、この距離から最速で攻撃を叩き込めば溶鉄弾が放たれる前に……いや、アムドラヴァの方が早い!!
「…………マジかよ」
「えぇ…………?」
「嘘、あそこから…………!?」
アムドラヴァの左手が陰から晒され溶鉄弾を今にも放たんと、それどころか超至近距離での接射を狙わんと振り抜かれる。それをミーティアスはアムドラヴァの右半身側を体を捻って抜けるように跳躍してみせた。
放たれたさながらマグマのように溶けた鉄の散弾がミーティアスの脇腹を掠ったようにも見えるが……それでも直撃は避けた、避けてみせた。そのことに対し俺と鉛筆と夏目さんはそれぞれ異なる驚愕の反応を見せた。
「えぇ……ビャッコ君あれできる?」
「…………出来ないことはない、けど……あれを咄嗟に即興で組み立ててやれって言われるとちょっと……?」
咄嗟の判断力がやっぱりサンラクは光るな、あれを回避して今も尚若干優勢なのはやばすぎる。ミーティアスの胸に溶鉄弾が叩き込まれるがそれを左回転に捻ることで回避しすぐさま身をかがめて回転の勢いを利用してアムドラヴァの膝裏を狙って蹴りを叩き込んでいる。
「いや、そりゃ喰らうしかないよなぁ」
「あの体勢キープしてるのも大概凄いけどねぇ」
「もう何が何だか……」
夏目さん、ぶっちゃけこれで驚くようじゃサンラクの本気の変態機動を見たら多分貴女は卒倒すると思うんだ。だが凄まじいな、この膝裏への一撃で主導権は握ったに等しいここからコンボへ繋げるならばアムドラヴァをなんとかしてカチ上げて…………
「って、なんでカッツォのやつ突然固まって……あっ」
「うわぁ、モロに直撃したねぇ」
「顎にハイキックが……」
◇◇◇
「……で? いきなりノーコン宣言とか何考えてるんだ。お前から対戦希望してきたくせに」
「側から見たら突如アムドラヴァが硬直して蹴り飛ばされたとかいう間抜けシーン見せられたようにしか見えないんだけど?」
「ごめんて、いやなんというかさ……仮想シルヴィア的な感じでミーティアスと戦ってみて確信したっていうか……多分アムドラヴァじゃ勝てないんだよね」
「そうか? 結構苦戦しそうな予感がしたけど」
「俺もそう思うけどな……待ちのアムドラヴァは対ミーティアスに相性いいと思ってたんだけど」
虎堂の言葉に女性陣2人も頷き肯定の意思を示す中、楽郎に煽られながら意見を聞いていた慧が頭を振って実にいい笑顔であまりにも単純かつ明快な「事実」を楽郎の頭に拳を叩き込まんとしながら伝える。
「まぁ、相性だけで言うんなら間違いなく良いと思うんだけどねぇ」
「相性だけ……ねぇ?取り敢えず話はちゃんと聞いてやるからその拳を降ろしてやれよカッツォ、拳が持ってる会話能力はそこまで高くないぞ」
「まぁ大前提はっきり言うとね、シルヴィア・ゴールドバーグって怪物は今のサンラクより速い」
「…………マジ?」
「…………冗談だろ?」
端的に伝えられた言葉は余りにも重みを伴ってメンバーに重く沈み込んだ。