シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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斬雷轟き華開け雷華

アーラムから聞いた時ふと「暴走してる魔力を更に刺激したらポン刀カジキはどうなるんだろうか」とふと疑問に思った。

例えるなら奴の体内は今原子炉が壊れて暴走状態……メルトダウンに陥っている状態なのだろう。問題は外殻の役割を果たしている肉体が内側からの負荷にある程度耐えれているってところだ。

外殻たる肉体がゆっくりと劣化……つまり自滅するのがこいつの辿る末路、それまで目につくもの全てを溢れるエネルギーを後先考えず……いやもう先なんて考える必要がないからこそ全力で運用している、それが「斬雷轟くアトランティックス・マールィアン」というモンスター。

 

――――――であるならば、その外殻の崩壊を速めてやれば自壊速度は急激に加速するのでは?

 

だがそんな頭の悪いエネルギー暴走をも完全とは言えずともある程度の時間抑え込める強度を誇る肉体の崩壊速度をどうやって速めるのか。俺の見立てでは恐らくサンラクの持っていたガントレットの超排撃(リジェクト)でも不可能だ……となると俺の手持ち武器では到底不可能。最早詰みか?いや、違う。

 

俺の提示する作戦はこうだ。

 

「まず奴を誘導し可能な限り塔の近辺まで戦闘エリアを動かす。そしてあの塔の反射性質を利用して……()()()()()()()()()()()。内側からのエネルギーと外側から自らが圧縮して放ったエネルギーであいつの自壊を加速させる、今出来ることはそれくらいしかない」

 

「………………無茶なことを言う。大体、塔が攻撃を反射すると言っても当てるのはかなり難しいぞ」

 

「その通りだ、だからチャンスは1回と考えて良い。そしてその為に今から俺は少し用意をする。その間奴の注意を引きつけてもらえないか?」

 

「………はぁ、仕方ない、か。ここまで来たんだ、ここで退くのは竜人族(ドラゴニュート)の……ひいてはあのお方に連なる眷属としての恥。さっさと済ませろよ、そう長くは俺も保たんぞ!!!」

 

1つ溜息をついたアーラムがサッと前を向き、その背中に生えた大翼を大きく広げ地面を強く蹴り飛び立って行った。ポン刀カジキは目に映るもの全てを破壊し尽くす……大事な吻の仇たる俺を見れば優先して襲いかかってくるだろうがそれ以外では基本視界内で動く存在を優先する、長いようで短い戦闘時間から弾き出した仮説だったがどうやら正解だったらしい。容赦無く降り注ぐ雷の雨と華を掻い潜りながらアーラムが俺から遠ざける様に、しかし塔からは離れず寧ろゆっくり近づく様に移動させている。あれだけ頑張ってくれてるんだ、NPCである以上アイツは死んだら終わり、さっさと用意を終わらせないと……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

まさか生きている内に深淵の盟主に誘われて深淵の都に足を踏み入れることになるどころか、深海の王達すらおいそれと手を出すことのない凶念に呑まれ荒ぶる怪物と対峙しあまつさえそれを打倒する手助けをすることになるとは()人生とは分からないものだと、アーラムは心の中でそう呟いた。

 

雷華が咲き誇り、斬雷が降り注ぐ地獄の空中(水中)をビャッコに指示された通り出来る限り塔に誘導する為に目の前でわざと旋回するなど注意を引く動きに徹し、徐々に徐々に塔に近づけていく。

 

「さぁ来い斬雷の哀れな化け物よ、俺はここにいるぞ!!」

 

怪物……アトランティックス・マールィアンの目の前でそう啖呵を切り再び回避に徹する、目の前に降り注ぐ落雷を竜人族(ドラゴニュート)の中でも並外れた感覚神経を以って事前に回避し咲き乱れる雷華の発動地点をこれまた優れた視覚で敏感に察知し回避していく。

 

(せめて()()があるならばもう少しまともに立ち回れたが……ないものねだりは好きじゃない。しっかりしろアーラム、今己に出来ることを全力で熟せ!)

 

ふと思い起こすのは己の愛刀にして苦楽を共にしてきた相棒たるダガーであったが、今は考えている場合ではないと生来の気質である真面目さをしっかりと発揮して空中での回避と誘導に全神経を注ぐ。

 

(翼を広げすぎるな、何かの拍子に翼に雷が掠っただけでも俺は死ぬ……改めて何でこんな博打に乗ったんだ俺は!?)

 

ぐっと翼を()()()気流(海流)に乗り加速、高速飛翔に移行した後回避を繰り返しながら再び誘導を再開。ここまでの精密な飛行を行えるのは竜人族の中でも数少ない、並の者であればものの数十秒後には斬雷に撃たれて無惨に斬り裂かれた次の瞬間周囲一帯に雷華が狂い咲きそこにはかつて生物として存在していた何かの欠片程度しか残らないという壮絶な最後が待っている。なおこれでもまだマシな方であることを追記しておくが。

 

「にしても限界というものはある……!!早く終わらせろビャッコ…………!!」

 

が、どんな生物にも疲労というものが存在する。いくら種族的な問題で竜人族にとって飛ぶことが歩くことに等しいものであっても気を抜けば最後斬雷と雷華に晒され人生に幕を引くという状況下においては全力疾走をひたすら続けているに等しいものである。精神的な疲労は集中力を削り取り、それにより回避が難しくなった攻撃の嵐に焦りが募りまた集中力が削り取られていく悪循環。

その上ポーションなどを用いた上である程度傷こそ回復したものの人間用に調整された回復薬は竜人族には効果が薄く完治しきってはいない状況下であった。

 

「ーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

「なっ――――不味い!!!」

 

その結果見落としてしまった、気づけなかった。華開き、散っていった雷華の残滓が残り続けていたことに。怨嗟は留まり、全てを破壊し尽くすという狂気の思念が撃鉄となって残滓が連鎖しながら炸裂していく。

 

「〜〜〜〜〜〜〜ッうぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁあ!!!!」

 

斬雷と未だ咲き乱れる雷華、そしてその残滓の炸裂。三重の攻撃の嵐に曝されたアーラムのとった行動はルルイアスの限界高度ギリギリまで一気に上昇し炸裂と雷華から逃れようとするものであった。

翼を広げなければならない以上被弾の確率も上昇するうえにこの海中(空中)に於ける気流は海流である以上風に乗って急上昇することも難しいが故に今まで選択しなかった択をアーラムは取らざるを得なかった。

 

ひたすら上昇する、雷撃の嵐を避けるが為に。ひたすら上昇して、上昇して、そして気づく。

 

「………………攻撃が、止んだ?」

 

下を見る。そしてその先でアトランティックス・マールィアンと思しきそれなりに大きな粒と、何やら金と赫が混ざったような炎を纏った点が目に映った。その正体に気づいたアーラムは己の役割を完遂したことを理解し大きく息を吐いて呟いた。

 

「…………後は頼んだぞ。ビャッコ」

 

 

 

 

 

 

 

「最速で…………!!駆け抜ける!!」

 

アーラムが塔周辺までポン刀カジキを引きつけてくれる、だから俺は可能な限り速く塔に到着しちょうどいいタイミングでポン刀カジキに気付かれる必要がある。

だが屋根を伝っての移動は気付かれるリスクが高い……故にこそ都市部の路地裏を主な移動ルートに、渡影もフル活用した高速移動で可能な限り最速かつ最短ルートを通って備えておく必要がある。

 

路地裏を駆け抜け壁に体を擦り付けるか擦り付けないかの瀬戸際のラインで曲がり塔への視界を確保してから影に触れ渡影起動、渡影は一応スキル扱いなもののどうやら操影に付随するオマケのようなものでリキャストタイムは存在せず、代わりにMPを消費するという魔法の性質を持ったスキルなのが助かった。これがリキャストタイム付きならこれほどまで速い移動はできなかった。

 

(操影はリキャストありなんだよな……まぁこっちまで無しにしたら反応できる限り攻撃全部回避できちゃうもんなぁ……というか時間的問題で検証できなかっただけで、渡影の影判定が何処まで及ぶのかは調べれてなかったからもしかしなくてもぶっ壊れでは……?)

 

もし渡影の判定が俺の想像と同じなら大変なことになるぞ……具体的には、夜間戦闘が。

 

「いやそんなこと考えてる場合じゃねぇ……!よっし、塔の目の前!!」

 

良かった、俺の移動中に出現目標地点の建物を粉砕されようものなら大変なことになっていた……MP消費の問題で影の潜航時間すげえ短いんだよな、割とカツカツのラインで管理してるもんだからもし壊されようものなら影の中から出られずに溺死……そ、想像もしたくねぇ。

 

「さぁここからはお祈り……!頼むぜポン刀カジキ、気づいてくれるなよ……!!」

 

アーラムの努力の賜物によりポン刀カジキは塔に随分近づいてる、この状況下で見つかったら全てが台無し……!

 

遮那王憑き、フリットフロート、いい感じの強化倍率になってきた天覇宣言(バスターコール)覇貫炎燼(バルカンエンジン)……攻撃スキルよりもぶん回しているあまりにも鉄板の移動スキルとバフスキルを重ねて跳躍しタワークライムへと移る。

 

跳び上がってそのまま壁を踏み抜きそのまま上昇、飾りとして作られたのだろう出窓の縁を蹴って更に高度を上げ、壁に刀を突き刺し強化されたSTRで片腕1本で全身を持ち上げそのまま更に上昇を……というか、今刺して置いて行った刀って呑世村正……いつもいつもお世話になっています。後で拾うから許してね……恨むならなんか地味に凹凸が少なくて登りづらかったこの塔を恨んでくれ。

 

 

「尊い犠牲もあったが到着……後は高度、か……?」

 

(偶々空いていた隙間を何気なく覗き込む)

 

(なんかやたら密着している2体の半魚人)

 

見なかったことにした。向こうも首突っ込まれるのはゴメンだろう、というか……その、あれなんだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

少々調子を狂わされたがさっさと高さ調整……オッケー!

3分もヘイト押し付けちまって悪かったなアーラム!!死んでねーよなアーラム!?さぁ気付けイかれた発狂カジキ!!お前が憎くて憎くて仕方ない相手はここにいるぞ!!!

 

反応するかどうか非常に怪しいがインベントリから取り出したるはゴブリンの石斧、肥やしになってたのがここで生かされるかもしれないとなると俺が斬り捨てたアイツらも多少は浮かばれる……筈。ついでに今回の要となりうるインベントリア用にMPポーションを飲み干して回復、これ忘れたら終わるからマジで今のうちに飲むしかない。

空き瓶を投げ捨て狙いを定め、全力で放り投げた石斧がポン刀カジキの横腹に直撃する。何の痛痒も感じてない様子ではあったがほんの一瞬だけこちらに意識を向け――――――今までアーラムが背負っていたであろうヘイトが一瞬にして全てこちらにのしかかってきた。

 

これまで割れてる攻撃パターンは雷撃、斬撃、それとさっきチラッと見た雷の華が散った後の炸裂、そして雷の斬撃を飛ばしてくる例の攻撃。

 

「そこはお前次第だ……!頼むぜポン刀カジキ、撃ってこいよ…………!!」

 

あの攻撃は溜め時間が確か3秒そこら、そこから判定に移るまでが1秒、攻撃判定は持続で4秒……溜め時間の秒数が若干曖昧なおかげでそこは一発勝負の直感勝負だ、なんてギリギリな博打だよクソッタレ!!

 

(あの時の距離は50メートルそこそこで1秒くらいで攻撃が飛んできてたな。今は大体80メートルくらい、なら1.5秒とかその辺りに攻撃が届く……!)

 

 

「さぁ…………来い!!!」

 

 

そしてポン刀カジキ……いや、アトランティックス・マールィアンは俺を確実に殺すべく抜刀の体勢へ移った………博打勝ったよやったぜこの野郎!!後はもうひとつの博打に勝つだけだ!!!

 




夫婦だからね仕方ないね。
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