シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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なんでここ数日こんなにお気に入りもUAも伸びてるんだ?と思いながら何気なくランキング見てると唐突に飛び込んでくる自分の二次創作見て目をひん剥く午後4時。

評価お気に入りありがとうございます!


前門の伏魔殿、後門の星雨

「ふぅ…………とりあえずランファンは行ったな?んじゃ俺も良い感じに汗かいたしレストランでも行こうかな」

 

あれから数十分、かなりキツめに負荷をかけた運動の甲斐もあっていい感じに腹が減ってきたのでレストランに向かうとしよう。だが1人で食うのも何かあれだし誰か適当に誘うかと思い立って他のメンバーにメッセージを送ったところどうもカッツォは所属チームからの呼び出し、夏目さんは今回のイベントの為に無理に調整したスケジュールの反動の対応、鉛筆は何か知らんが宅配待ちとのこと。唯一行けるのはサンラクらしい、あいつつい1時間半前とかその辺で朝食を食べてるのにマトモなものが胃袋に収まるのか?

 

「ん、おぉビャッコ。こっちだよこっち」

 

「…………素顔?お前あのガスマスク外したら死ぬとかそういうのじゃなかったわけ?」

 

「俺のことをなんだと思ってやがんだお前らは。流石に公共の場でガスマスクはダメだろ」

 

ご尤も。

 

というわけでレストランに入り席に着いてメニュー表を確認、あれ値段が書いてない……まさか宿泊費に丸ごと含まれてるのか?マジかよすげぇ。

 

「何食う?」

 

「さっき食ったばかりだからなんかデザートでも頼むかなぁ……ビャッコは?」

 

「俺はがっつり運動したしなぁ……やっぱ肉かな」

 

「ゲームに支障が出ない程度になー……っと、個人的にはこのレアチーズケーキ〜真夏の果実スプラッシュを添えて〜とかいうのにちょっと興味が……」

 

「ステーキ900グラム、5人前。ミディアム1人、レア2人、ウェルダン2人、レア1ツトウェルダン1ツニハガーリック多メデ」

 

「それと可能なラ、キムチポテトサラダもつけアワせに出してくれるトありがたいんだが……もちろん大盛りで」

 

「………………」

 

「………………」

 

恐らく今俺とサンラクの思いは合致しているだろう、即ち「何だその聞くだけで胃がもたれるような呪文は」、だ。突如自分達の席の後ろの方で詠唱された広域デバフ呪文に驚きを隠せない。俺達はまだウェイターさんを呼んで注文を行なっていない、であるならば完全な赤の他人のオーダーなわけで……一体誰だこんな高級ホテルに来てフードファイターじみたことをするやつはと好奇心のままに振り返り………そういえばさっきのキムチポテトサラダオーダーした人の声というかイントネーション凄い聞き覚えが。

だがもう止まれない、動き出した首が指定した範囲まで捻られた瞬間視界に飛び込んできた情報量に俺はフリーズした。

 

「…………マッジかぁ……」

 

マッチョにマッチョ、2人飛んで再びのマッチョ。

何だこのホテルでテロか何かが始まるのか?もしくはアメリカンなサイズのトラックがロビーに突っ込んでくる?少なくともそう思わせるだけのゴリラの群れがそこにあって……だからこそそれ以外の2人、ノットマッチョに意識が引っ張られ……そこで俺は黒髪赤目の女を目にしたことでこいつらが誰か即座に把握、ここ1ヶ月で発揮した中でも恐らく最速の反射速度を発揮して全力で視線を逸らしまさか日に2度も使うと思っていなかったジャパニーズ必修技能「気配消失」を再発動する……くっ、リキャストが上がっていて本当に良かった……!

 

サンラクと視線がかち合う、間違いなく後ろにいるのはスターレインのフルメンバーであるということを視線のみで共有するとサンラクも恐らく「気配消失」を起動した、流石日本人空気が読める……僕達は空気で、景色のパーツにすぎませんという体を全力で通した。

 

 

 

 

『しかし、相変わらずシルヴィもランファンもよく食べるなぁ。太らないの?』

 

『ぶっ飛ばすわよプレイボーイ、この後もトレーニングなんだからカロリーが必要なのよ』

 

『女性に体重のことをいうものじゃないよルーカス……さもないとうっかり勢い余って君が恐らく命よりも大事にしているだろう尊厳を蹴り砕いてしまうかもしれないからね』

 

『お、恐ろしいこと言わないでくれよラン……ただでさえ君の蹴りはとんでもないんだから。それに俺らは朝からトレーニングしっぱなしなんだからちょっとくらいジャパン観光をさせてくれたっていいだろう?』

 

『初めて会った時私のことをナンパしようとしてきた君が悪い』

 

『タマを抑えて悶絶してるルーカスな、今でも笑えるぜありゃ』

 

『黙ってろジョンソン!さもなきゃお前のタマを叩き潰してやる!!』

 

『ハッ、どうせ「ああなんてアジアンビューティー! どうだいレディ、僕とディナーでも……」とか口説くつもりだろうがよ』

 

『かーっ! ジョンソンよくもまぁそんな三流の口説き文句で嫁さんにプロポーズできたな! 俺ならそんなクソみてーな文章、丸めてトイレに流しちまうぜ!』

 

『てめーの下半身にぶら下がってる脳みそを蹴り潰してやろうか?あぁ?!』

 

『少し黙ってくれ、彼女の声が聞こえない』

 

『なぁアレックス、それ(LIVE)じゃなくて録音なんだよな? っつーか……それ昨日から数十回くらい聞いてたよな?』

 

『ルーカス、彼女の声はな……マリファナよりも優しく、そして強く僕のハートを掴んでいるんだ。回数だとか録音だとか……些細な問題なんだ、分かるね?』

 

『ドラッグキメてるやつよりイかれてら……』

 

『貴方のガールフレンド、明日来るんだっけ?』

 

『とても良い子だね、愛されてるじゃないか』

 

『あぁ、僕がお金を支払うと言ったのに! 彼女は自身のお金で! ホッカイドゥーから! ここに来てくれると! なんて……っ、なんてオクユカシイんだっ!!』

 

『シルヴィ! ラン!なんでアレックスに燃料を投下するんだ!』

 

『あー、ここから長いぞ……』

 

 

 

「うっわぁ、すげぇ頭の悪い会話してるぅ……」

 

「え、何お前英語わかんの?」

 

「まぁ多少は……?」

 

結構スラングらしきものも混じってるしかなり早口で会話を繰り広げているので全て理解出来たわけではないが聞き取れる範囲だけでもかなり頭の悪い会話内容だ、これが全米一の格ゲーチームかぁ……。ひょっとしたらこれ、普段煽り合いしてる時の俺たちよりうるさいのでは?

ふと周りに目を向けてみれば誰も彼もがマッチョ3頭と非マッチョ2人に視線が向けられている、だがそれは迷惑そうにする非難の目ではなくどちらかといえば尊敬とか驚きとかそういう感情を孕んだ視線だった。

いやまぁプロゲーマーだもんなそらそうだ。けどもっとこうさぁ、有名人なら有名人らしい慎み深さってのを……。というかランファンが完全に背中合わせで助かった、流石に直視されていた場合気付かれる可能性もあったし。

 

 

「お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」

 

「んえっ!? あっ、あー……じゃあ、これで」

 

「かしこまりました、トッピングは如何しますか?」

 

「トッピング? あー……じゃあ全部で」

 

「かしこまりました、そちらのお客様は如何なさいますか?」

 

「…………え?注文?あ、はい注文っすね注文……それじゃ、このステーキお願いします」

 

「かしこまりました、付け合わせなど色々出来ますが如何なさいますか?」

 

「付け合わせ……あぁ、まぁもうなんでも良いんで全部お願いします」

 

後ろが気になるせいで注文が耳に入ってこない、取り敢えず腹も減っているので500グラムのステーキを頼みめんどくさいのでトッピングは全盛り……うん、まぁ腹減ってるし余程のものじゃない限り食べ切れるだろう。

取り敢えず考えるべきは俺が爆薬分隊(ニトロスクワッド)の臨時メンバーであることが露見しないこと……なのだが、そっちはあまり不安視していない。どうせ顔も割れてないのだから。それよりもランファンだ……下手に気取られたら最後果てしなく面倒なことになりかねない。マジで、気づいても無視してくれ。にしても……

 

「ーーーーNo Face?――――…………」

 

「No name――――.――――……」

 

「No Skin?――――Non Skin?――――…………」

 

意味自体がわかる上に割と聞き取りやすい単語だから確実に飛び込んでくる「顔隠し」と「名前隠し」と「皮隠し」……向こうでも謎の匿名メンバー3人組は話題になってるらしいな?

 

(うーん、そこまでリスニング力高いわけでもないけど聞いてる限り馬鹿にされてる感じではない……かな?多分罵倒ならスラング使うだろうしその辺のスラングは多分サンラクが拾うだろ……多分)

 

音ゲーばかりしているとあまり馴染みがないがオンラインゲームになると今のご時世外人プレイヤーとのマッチングはそう珍しいものではない。そして言語によるコミュニケーション障害をシステム側が対処してくれない限りその辺は個々人がどうにかするしかないわけで。そこでサンラクから教えられたのは……確か「どこに行くか」「何をすれば良いのか」「罵倒」さえ覚えておけばなんとかなるだったかな?

いや、Noobコールとジャパニーズ奥ゆかしい罵倒が飛び交うって嫌な国際交流だな戦争がなくならない理由もわかる気がする。

ちなみに京都出身のゲーマーとの煽り合いは食らった最初は大したことないが時間が経つにつれ心に響く遅効性の罵倒らしい、俺も知らず知らずの内に罵倒したりしているのだろうか……染みついた皮肉の出し方は時としてそう思っていない時でも放ってしまうものらしいので。

 

「お客様お待たせいたしました、「東京極氷火山(エレバス)パフェ〜極北のワルキューレ騎行〜」トッピング全盛りでございます」

 

「あれ、俺が注文したのはチーズケー……ひゅっ」

 

「何だその声は……ひゅっ」

 

俺もサンラクも意識を背中側のマッチョ軍団+αに向けていたせいで()()に気づくのが遅れた。ウェイターさんに声をかけられ意識を後ろから前へ戻し……2人とも同時に喉から変な声が出た。

 

何じゃこの……何?山?山って呼んでも良いのかこれ?少なくともこれを山と言い切れるかどうか少々怪しいぞこれ。

 

「いやこれ山っていうか火山じゃ……」

 

「ご、極寒の雪山とも言えるぞこれ……」

 

そこにあったのは俺とサンラクの言葉を繋ぎ合わせるなら「極寒の中燃え盛る火山」だった。火口より真っ赤な溶岩(ジャム)が噴出しその山肌には何本ものスティック菓子が突き刺さっている。その火山の先端には天使を模した飴細工が取り付けられた特大のマシュマロ……えぇ?

 

「ナニコレ?」

 

「当ホテルのパティシエ達を総動員して制作された「エレバスパフェ」に御座います、創業以来、完全武装(フルトッピング)を注文された方はお客様で99人目でございます」

 

「……ちなみに登頂に成功した人は」

 

「ソロでは7人ですね」

 

「登頂成功者いるんだ……ちなみにチームでの攻略の場合は?」

 

「ディオで3組、トリオで5組ですね。スクワッドの場合ですとこちらのパフェ、サイズが倍になるので未だ登頂に成功された方々はいらっしゃいません」

 

何だその素敵な難易度上昇システム。っつーか何でこんな怪物パフェがこのテーブルに運び込まれてくるんだ……?

 

「サンラクお前チーズケーキ頼んでなかったか……?」

 

「…………の、筈なんだが……」

 

そう言いながら2人揃ってメニュー表を覗き込む。あっ、チーズケーキの隣……これはちゃんと注文内容を告げなかったお前が悪いぜサンラク。というかこれマジに人が食べる想定で作られたものなのか?

 

(パフェでこれか……トッピング全盛りにしてるからか?ん?あれ?トッピング全盛り?……なんか、嫌な予感が)

 

大丈夫だよな?本当に大丈夫だよな??500グラムのまぁ少し大きめのステーキを俺は間違いなく注文しただからトッピングが全盛りだったとしても大したものではない筈うんきっとそうだ。

だがその願いは恐ろしい程あっさりと否定された。

 

「お待たせいたしました、こちら「ステーキ500グラム」ーーーー伏魔殿(テラリウム)トッピングになります」

 

「良かった普通の――――伏魔殿(テラリウム)トッピング?」

 

どうも嫌な予感がする、というか見たくない。だが覚悟を決めなければならない……数巡の迷いを乗り越えて目を開ける。するとそこには、文字通りの伏魔殿があった。

 

「ッ――――マジか」

 

焼けた肉がある。だがそれは土台に過ぎなかった。その上に更に肉が2枚乗っかりニンニクがまるまる1つ鎮座している。その周囲はポテトとアスパラガスと人参が取り囲み守るようにスクラムを組んでいる。

そして今目の前で焼けた肉を塗装するが如く大量のソースが塗りたくられた。

 

「えぇと……これは?」

 

「当店の肉料理担当シェフの中でも特に指折りの者が手がけたステーキ500グラム、〜伏魔殿(テラリウム)トッピング〜でございます。創業以来伏魔殿(テラリウム)に足を踏み入れた方はお客様で3048人目でございます」

 

「あ、割といるんだ……というか何で500グラムのステーキが3枚」

 

「それぞれレア、ミディアム、ウェルダン3種類のステーキとなっております、トッピングの関係上ですね」

 

あぁ、もしかして追加のステーキとかそういうノリ?だからといって1500グラム……1500グラムかぁ。

 

「ちなみにソロでの制覇者は1200名ですね、大体の方はその後重度の胃もたれを患われるようですが」

 

「そりゃそうでしょうよ、と…………!?」

 

取り敢えず手元に引き寄せようと縁を握りグッと力を込め……動かない!?いや、動くには動くが圧倒的な質量が……!?何だこれ今から俺は何を食うことになるんだ?

 

「…………サンラク」

 

「あぁ、こりゃ対ウェザエモン、対リュカオーン(クラス)だ……気合い入れるぞ」

 

「……いざ鎌倉ってか?」

 

そして2人とも目に決意を灯しサンラクがスプーンを、俺がフォークとナイフを構える。さぁいざ、この伏魔殿を踏破してみせようか……っ!!

最早後ろのゴリラ共なんぞ気にしている場合じゃねぇ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴフッ……流石に、もう今日明日は食える気がちょっとしねぇ……」

 

「俺も当分甘いものはいらないな……」

 

討伐に要した時間は俺が1時間50分、サンラクが1時間半。俺達より後に来ていたスターレインメンバーが俺達のことを怪物か何かを見る目つきで先に退席するほどの激戦だった。あとランファンが俺を見て凄いニヤついていた、クッソあんにゃろうもしエキシビションでやり合うことになったら絶対叩き潰してやる……!

 

(肉料理に胃袋の容量とか考えてられないから全力で喰ったが……よく腹に収まったなあれ)

 

そういえば何かスターレインのメンバーが話していたような……まぁ、俺が気にするようなことではないだろうから大丈夫か。取り敢えず気にしない方針で。

 

そんなこんなでフルダイブする気にもなれずサンラクの部屋で2人して腹で暴れる伏魔殿と極寒の火山を鎮めることに腐心していると何やらインターホン、サンラクが腹を抑えつつガスマスクを被って応対の為出て行った……あれがホテルの人だったらどうするつもりだったんだろうか?

そしてドア前で少しばかりの会話がかすかに聞こえてきて……現れたのは何やら箱を抱えたペンシルゴンだった。

 

「あれー?あとで君のところにも行くつもりだったんだけど手間が省けたね、ラッキーラッキー!」

 

「んだよ鉛筆……俺今腹の肉を鎮めるのに必死なんだが」

 

「噂になってたよ、なんか凄いゴツいパフェとステーキ食べてる2人組」

 

「んなアホな……マジで言ってる?」

 

「マジもマジ」

 

マジか――――……

 




ワイルズやりたい、一生実況やらライブ配信やら見てお茶を濁してる
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