シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「んで、これ何?」
「ふっふっふっ……開けてからのお楽しみってやつだよビャッコ君」
「ちなみに確認した限りだと怪しげなカウント音はしなかったから爆発物の類ではなかったぞ」
「ならまぁ大丈夫……か……?」
「何でそこ2人とも怪しむのさ」
お前の普段の所業を知ってるからだよ間抜け。
というか爆弾でないにせよお前のことだからビックリ箱に火薬を仕込むくらいはやってのけるだろ?
「はぁ……んで、もう1回聞くけどこれ何なの?」
「んー? ほら、私色々バレるとお仕事の方でアレがアレだからさ、当日コスプレしようと思ってるんだよね」
「なるほど」
「あー……コスプレの方がバレにくいのか」
顔だけ隠してもお前の場合バレる危険性あるものな、一部熱狂的信者は見切れに見切れた写真でさえも「これはトワ様だ」と即座に看破してみせると聞く。となれば顔だけだとバレる可能性が大いにある、と……そうは言ってもそれやる場所を盛大に間違えてるような気もするけどな。
「そんなわけで昨日の晩に発注したコスプレ衣装をさっき受け取りに行ってたわけ、いやぁ運送の発展は素晴らしいね」
「成る程ね?」
「で、どうせならサンラク君とビャッコ君も巻き込もうかなって」
「ごく自然な流れで飛び火させんな」
「いやまぁありがたいっちゃありがたいんだけどさ……もっとこう、事前申告が欲しかった」
「それだと面白くないじゃーん!」
面白さだけが生きる指針なのどう考えても終わってるぜこの女。自分1人で盛大に爆ぜる分には面白いがいかんせん他人を巻き込んだ上で盛大に爆ぜるのがタチ悪い。
「でもサンラク君、人に見せられるような顔じゃないんでしょ?ビャッコ君……は……ぶっちゃけ顔出してもいい気するけどねぇ」
「そのワードをチョイスするあたり流石の外道ですわーあっはっは、ぶっ飛ばすぞこんにゃろー」
「いや俺も顔出しなんてごめんだけど」
全く……まぁ助かったのも事実なわけで、それじゃあありがたく受け取って……ん?カッツォから連絡?
「なぁおい、カッツォから呼び出しだぞ」
「ん?どこでだ?」
「えーーっと……GH:Cのゲーム内エントランスだってさ」
「ふぅん……?何かあったと考えるのが妥当だけど……取り敢えず集合場所に行こっか」
「だな」
と言って自室にコスプレ衣装が入った箱を抱えて帰還、そのままフルダイブする。さてと、何があったのやら。
◆
「「「「試合に参加できなくなったァ!?」」」
「…………あぁ」
俺とサンラク、ペンシルゴン、そして夏目さんの4人が喜怒哀楽の感情からプラス方向の感情だけを抜き取ったような顔したカッツォから告げられた言葉に思わずハモった。
「主催者がドタキャンって……まさか壮大なドッキリ説が真実だった……?」
「他人事なら盛大に爆笑してたんだけどさ、カッツォ君流石にそれは笑えなくない?」
「ど、どういうことなのよケイ!?」
「上から……つーかスポンサーからの「命令」でRwH6の大会の欠員補充で出場されることになったんだよ……」
「はぁ?」
「ちょっと待て、確か
「それは――――…………」
「つまり何か?ただひたすらに間の悪い出来事が重なった挙句それが上手いこと繋がった結果ってか?」
「まぁ超要約するとそうなるね……」
カッツォから受けた説明はこうだ。
俺達が出場するGGC2日目、それとほぼ同時刻にRwH6の世界大会決勝が始まる。そこまでは良いのだが問題はその決勝メンバーのうちの1人が事故で入院する羽目になったというところだ。
今の医療技術ならば胴体が泣き別れになるだとか首が飛ぶだとか潰れるだとかじゃない限りは割とどうとでもなる。
もちろん後遺症の可能性は十分考えられるがそれもないらしいのでそっちは一安心……なのだが、そうなってくると今度は大会に出場する筈だったメンバーの代役を立てる必要がある。ならば「
――――どうせなら魚臣 慧を追加メンバーにしてよ。
そういう
諸々の「あれこれいけそうだな?」という間の悪さとその口出ししてきたスポンサーの影響力、機嫌を損なってしまった場合の後々の経営がよろしくないことになる可能性が高かった結果がこれだそうだ。
なぜカッツォに白羽の矢が立ったのかと問いただせばどうも昔スポンサーの前でFPSをやったことが1度だけあったらしい、そして中途半端に目立ってしまった結果スポンサーの記憶に焼きついてしまったのではというのが「
「スポンサーの無茶を何でもかんでもホイホイ飲むほどウチの運営だって俺達のことを道具扱いしてるわけじゃない、そりゃ上司からは最初キツく言われたけどね……」
「本来なら無理なところをたまたま重なった偶然が「無理」から「頑張ればいける」に変わったのが理由の8割なんだろうな……」
そしてカッツォは半ば諦めに近い笑みを浮かべ夏目さんが絶望の表情を浮かべる。さてさてさて……プロゲーマーお2人さんや、気づいてらっしゃらないがこの場じゃその顔をしてるのはお前らだけだぜ。
「そ、そうだ、RwH6の大会をすぐに終わらせれば間に合うんじゃ……」
「確かにウチのミリタリー馬鹿どもは強いけどさ、対戦相手がドイツの「シュトゥルム・ウント・エクスプロシヴ」だから、十中八九長引くよね、っていう」
なるほどなるほど、君らの認識じゃカッツォのエキシビジョンマッチ参加は絶望的って形で確定してるわけね?
「試合形式は?試合時間は?あと最悪の事態を踏まえてどれくらいの時間拘束されるんだ?」
「ルールは陣取り、5試合やって1試合30分……休憩込みで考えるならまぁ3時間は拘束されるよねっていう」
「それでエキシビジョンが10時開始、例の決勝が9時から……つまりどう足掻いても1〜2時間は確実に遅刻するってことね」
あれ、つまりはさ……
「全員フルラウンドで戦えば良くない?」
「は?」
「そだね、1試合最長30分……それを私達4人がやれば120分は稼げるよ」
「実際10分丸々時間稼ぎに徹する……というか、時間稼ぎに付き合わさせるのってどうすりゃ良いんだ?全力ロールプレイ戦法か?」
「いいねサンラク、任せろ原作読み込んだ俺が最適なロールプレイを伝授してやる」
「頼むぜギャラヒロオタク」
「とは言っても向こうが乗ってくれるとも限らないわけで……キューブ確保とノックアウトのどっちつかずで10分引っ張るのも視野に入れつつ行動するのが1番ベストかな?」
「その辺の立案は頼むわ鉛筆、何だかんだ1番頭切れるのお前だし」
「おっと、そう言われちゃ本気でやらないとダメだねぇ……」
「ちょっ、お前らマジなの!?マジに言ってるの!?」
そうだよ悲嘆野郎、お前らが諦めてどうするんだよ俺達3人はまだ微塵とも諦めてないってのにさぁ。というかお前……俺とサンラクとペンシルゴンなんだぞ?何言うかなんて大体わかってるだろ。
「アマチュア3人を衆人環視の前に引っ張り出しておいて、自分だけバックレようなんて俺達が認めるわけないよなぁ?」
「ただでさえ「人数足りないので補欠入れました」感が酷いのにここで主役欠員とか派手に晒し者じゃん、私そーゆー目立ち方はあんまり好きじゃないかなーって」
「どうせなら不戦敗よりも華々しく負けるカッツォの方が見たかったり?ほら、他人がボコられてるの見るのって何よりも楽しいじゃん?」
「この状況で俺の足を引っ張りに来る君ら一周回って尊敬するよ……じゃなくて! 流石に言ってることが無茶だってことくらい分かるよね……?」
「私だってただコスプレの用意してたわけじゃあないんだぜぇ?」
そう言ってニマついた笑みを浮かべるペンシルゴン、リアルなら大層美人に映ったかもしれないが残念ながらここはVR空間で、直前に使用したキャラのアバターがそのまま適用されるので今のこいつの顔面はブラウン管のテレビだ。
キャラの名前はMs.プレイ・ディスプレイ、使ってて思ったが多分これ製品版出たら間違いなく最強クラスの性能を発揮する……この2日間では多分両陣営とも使いこなすことができないだろうキャラだ。シンプルに前作には存在しなかった新規実装キャラかつその能力はシャンフロ世代たるGH:Cでなければ活かせないもの……つまるところシンプルにクソ難しいキャラだ。
一気に脳内から溢れ出してくるMs.プレイ・ディスプレイに関する情報を片付けているとどう考えても黒幕モードに突入した外道魔王ペンシルゴン大先生の演説が始まる。
「いい? 今回のエキシビションマッチは極論勝ち負けは二の次、重要なのは「いかにこのゲームが面白いか」を観客に、ネットから見ている視聴者に、後から録画を見る人に伝えることがメインなわけ」
「だからこそこれはバトルではなくエンターテイメント、プロローグで決着する勝利よりもエピローグまで続く山場をこそ望まれる」
――――――では私達の目論見と、このエキシビションマッチの目的の双方を叶えるにはどうすればよいでしょうか。
「…………ッ」
あーあー夏目さんがペンシルゴンの話に聞き入るように前のめりになっちまった、可哀想に。
こうなったが最後最早戻れない、蜘蛛の巣に絡め取られた羽虫が如く奴の口車に乗せられ良いように扱われるだけだ……良くて手駒、悪くて人間爆弾扱いにされる。最低でも、というか絶対条件として操り人形として使い潰される未来は確定した。
(まぁ今回だけは俺達は進んで操り人形になるわけなんだけど、な)
「私たちは最大30分の対戦をするんじゃない、放送時間30分の
◇
「さて…………と」
やることが一気に増えたぜこんちくしょう、やらなきゃ恥だしできなかった後他の奴ら……特にサンラクとペンシルゴンから何を言われるかわかったもんじゃないからやらなきゃいけないんだが。
少なくとも我らが
(前みたいなウェザエモン戦とは訳が違う、あれは俺とサンラクの二刀を最大まで運用して通した戦いだったが今回はありとあらゆる武器を使い熟し目標を達成する必要がある)
人数と時間的ノルマの2つの枷を乗り越えてカッツォが帰ってくるまで耐え続ける。ペンシルゴンから聞かされたどんな
「ぶっちゃけまだ俺達4人でゼンイチ堕とす方法探した方が早い気もするけど……雇い主のオーダーだしな?」
そもそも乗った俺達が悪い。焼けた石が敷かれた道を逆立ちで歩けと言われてるような内容ではあったがそれでも1番可能性がはっきり見えるのはそれしかなかった……あ?
件名: 何故
差出人:モドルカッツォ
宛先:ビャッコ、サンラク、鉛筆戦士
本文:なんでそこまでしてくれるんだ
「っはぁーーー……バカだなあいつ、それくらい面と向かって言えば良いのにさ」
件名: Re:何故
差出人:ビャッコ
宛先:モドルカッツォ
本文:負けたくない相手がいるとまで言われて「残念だったね」って言われることがどれだけ悔しいかなんて俺も知ってる。だからくだらねーことでそんな思い味わう必要なんかねーんだよ……それはそれとして全部上手いこと言ったら俺ら全員連れてどっか良い飯屋連れてけ、代金は全額お前持ちで。
件名: Re:何故
差出人:サンラク
宛先:モドルカッツォ
本文:わざわざ俺たちを呼ぶくらいマジなイベントなんだろ? 華を持たせてやるって言ってんだよバーカ
上手くいったら焼肉な、当然お前の奢りで
件名: Re:何故
差出人:鉛筆戦士
宛先:モドルカッツォ
本文:シルヴィアちゃんとの対戦、カッツォ君にとっては大事な事なんでしょ? おねーさんが一肌脱いであげようってことさ
まぁ実際はコスプレ衣装を着込むんだけどね!
上手くいったら私お寿司食べたいなぁ、カッツォ君全持ちで
◇◇◇
「……宿泊費込みで既に俺が
ごく自然な流れでさらに金を使わせようとする3人からの文面に、慧は呆れと、諦めと、悲しみと……そしてそれら全てを上回る感謝の篭った苦笑いを浮かべて携帯端末をベッドへと放り投げる。
モチベーションで言えば最低レベルで臨むつもりであったRwH6の世界大会とやらであったが、頼もしい友人達が全力で時間稼ぎをしてくれるというのならば。
「上等だよ、シュークリーム・カルト・エクササイズだがなんだか知らないけど、ちゃっちゃと倒して本業に戻ればいいだけってね!」
慧の部屋に設置されたVRシステムに急遽インストールされたソフトを起動し、慧もまた己の成すべきことのために仮想現実の世界へとダイブするのだった。
お疲れ様、ありがとう、大好きだよ