シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
運営様からお叱りのメールを受け一部を改変、削除させていただきました。敬愛すべき硬梨菜先生の作品の二次創作において起こってはならないことだと猛省しております。削除改変はしましたが運営様の判断によりもしかすると削除処分が行われる可能性がありますので皆様にご報告させていただきます
改めて大変申し訳ございませんでした。
◇
「ユグドライアは……その根や種子によるカウンターなんかがよく見られがちなんだが。その本質は吸収と蓄積だ。原作65巻じゃ街の地下水を流れる水を吸い取って蓄積し根を増やしまくって街を破壊するってのもあった」
「つまりは?」
「夏目さんがやってるのは多分それ狙い、ああなったら止まんないよ。何本生えてくるかは知らないけどさ」
「…………あれってもしかして未検証?」
「流石にそこまで時間なかったしなぁ、どっちかと言えばバックボーン主体で教えてた以上あくまで「こういうのがあるよ」レベルでしかなかったし。ただあの状態のユグドライアは…………」
「ユグドライアは?」
「自分の運命を否定して、自分の想いを貫き通すんだよ」
さぁ行け夏目さん、カッツォとか気にする必要ねーぞ!
◆◆
「ふぅぅぅぅう…………!!!」
大きく息を吐く。ゆっくりと触手全てに意識を巡らせ地に突き刺しその
(ビャッコ君は言ってた、ユグドライアの本質はその種子や触手そのものではなく吸収と蓄積だって。原作……何巻の何話だったかなんて忘れたけど、それを利用して触手の数そのものを増やした回があったって!)
「博打でしかなかったけど……成功したわね……!」
話を聞く限りこのゲームは可能な限りギャラクシア・コミックに登場した全てを再現しようとしている。だから出来ると思っていた、試す時間がなかったからぶっつけ本番になっちゃったけど……!!
4本だった触手が、今は8本。軽く全体を操作してみて最大値を計る……うん、同時に精密操作できるのは6本ね。
ならゲージの貯め方だっていくらでも出てくる。
「私はこういうやり方が1番効率がいい……!!」
周囲のNPCを絡め取り、地面に数度叩きつけて放り投げる。…………あ、パトカー。取り敢えずNPCで壊しておけば良いかしら?溜まり良いわね、次以降の大会にも参考になるかも。
(周囲のNPCが散る前に2人くらい確保して……ルーカスと接敵した時の肉壁を補充しとかないと)
「おいおいおいおい…………!!流石に外道が過ぎやしねぇか……!?」
「お生憎様、今の私は外道なのよ……!!」
来た。そろそろ屋内の捜索をやめると思ってたけど思ってたより早かったわね。
油断なく周囲を警戒していて良かった……さっきのラウンドと同じことをしていたらあっさり負けてた。
(増えた4本の触手は……気づかれてない、かな?気づいてる前提でやろう。意識外から刈り取れる様に設置自体はしておいて…………!?)
「俺と踊ろうぜレディー!!」
「あんたなんかと、誰が踊るわけ!!」
詰めてくるのが思ったよりも早い!!ゲージを貯めてNPCを気にする必要がなくなったから!?
罠種子が起動する、それら全てを超能力を纏った拳で迎撃され……予想通り。
「これならどう?」
「パトカー…………!!?」
罠種子は何も単体で攻撃するだけじゃなくても良い、だから仕掛けた、さっき叩き壊したパトカーに罠種子を。当然迎撃するでしょうね、だからどんどん初見の動きで分析が間に合わない速度で擦り潰す……!
「これあげるわ!!」
「NPC……!?なっ!!」
種子を貼り付けておいたNPCを押し付け起動、流石にそれは予想外だったのかサンダルフォンがあっさり拘束され……ここで体力を削る!!!!
「ぐっ…………おおおおあぁぁぁ!!!!」
「そんなっ、拘束が…………!!」
解除されるのが思ったよりも早い!!ゲージを切って無理矢理回避したのか!!
「やっとだぜこの野郎……!!」
「私は女よ!!!」
というか不味い、NPCがいないから肉盾がない……それにこの距離は!!
「ここは俺のステージだ!!」
「サンダルフォンの間合い……!!」
右の拳が飛んでくるのを捌き、次の瞬間顎を砕かんばかりに振り上げてくる左脚の蹴りを触手でロックし引き摺り下ろす。突貫工事でサンラク君から習った迎撃術だったけど上手く行ってよかった。
「お前そんなキャラだったか……!!?」
「私は、私…………!!ユグドライアよ!!!」
――――――今しかない、全感覚がそう告げる。今まで潜ませていた触手全てを使って攻撃を仕掛ける!!
「おいおいおい何でこんなに触手が出てやがる……!!?」
「答えるなんて本気で思ってるのかしら!?!」
2箇所拘束済み!!体力は8割型残ってるけど触手込みでコンボを叩き込めば削り切れる筈……!!
脚を固めていた触手でバランスを崩させる、重心がずれたところを3本目の触手で叩き伏せてスタン。抵抗なんて許さない、両手を触手で縛り上げる。
「ちいっ………………なっ!!?」
「その携帯電話、古そうね!!リサイクルに出してあげるわよ!!?!!!」
「バッカやめろお前それは!!!」
携帯を弾き飛ばす、サンラク君とビャッコ君と永遠さんから口を揃えて言われた「サンダルフォンなら携帯どっかにやれば押し込める」が実践できるとはね……!!
「マウント取られる気分はどう?スケコマシさん」
「…………悪くないね」
負けを認めたか、脱力したサンダルフォンを見下ろす。じゃあさっさと引導でも渡してあげようかしら……!!
「これは…………!!お母さんにネチネチ言われた分ッ!!」
「おい待てそりゃ八つ当たりじゃぐふぉ!!?」
ゲージ技に加えて操作した触手全てでサンダルフォンの顔面を抉り抜いた。
そして体力ゲージが削り切られ……あれ、そういえば私何か忘れている様な?
◇
『1戦目勝者はぁ…………!!夏目 恵選手!!!』
『いやぁ、中々とんでもない戦術でしたね……今までの夏目選手からは考えられない動きに終始ルーカス選手が振り回されている様な印象を受けました』
「いやまぁ、勝ったのは勝ったんだけど………」
俺達3人は中々素直には喜べんなぁ……総試合時間は18分、稼ぐには稼げたが思ってたよりは短いと言わざるを得ないというか……うーん。
「ただいま……!私、勝てたわ!!!」
「夏目ちゃん、時間稼ぎ忘れてない?」
「…………あっ」
「とは言ってもちゃんとロールプレイは出来てたしあれだけ終始有利に立ち回れるとは思ってなかったから凄いよ夏目ちゃん!!」
「そ、そうかな…………?」
「あぁ、正直触手を増やすのは俺もやると思ってなかった。凄いよ夏目さん」
「情報量を増やしてユグドライアの単調なトラップを複雑化させるのも出来てたしな」
ユグドライアは触手による攻撃と種子による罠という手段があるがそのどれもが直線的で単調だ、だからこそ意識外から当てたりどうしようもない形で攻撃とカウンターを成功させる必要があるがプロ相手だとそれは難しい。
だから初見殺しでも良いからありとあらゆる角度から攻め立てることが重要だ。
ユグドライアの弱点にして長所……サンラクの言うそれはルーカスのようなタイプ相手だと特に刺さるわけだ。
何よりGH:Cは従来のシリーズ作品とは訳が違う。NPCの感情表現が豊かなだけに人質は初見なら余程のサイコパスか慣れた者でなければブッ刺さるし現代都市というただでさえ情報量の多い空間ならありとあらゆるオブジェクトが存在する。
それらを駆使して、時に組み合わせ、時に分解して選択肢を叩きつける。
意識外からの攻撃をどれだけ仕掛けるか、仕掛けることができるか。それこそがユグドライアだ。
「さて、そろそろ2戦目だよ夏目さん」
「あ……そうね。ちょっと頑張ってくる」
そうしてフルダイブしていく夏目さんを見ながら……ボソリと呟いた。
「………………夏目さんには悪いけど多分、負ける」
「そうだね……いくら意識外からの攻撃を意識したとしてもシンプルな実力で押さえ込まれたらどうしようもないからね」
「俺達が教えたのはあくまで初戦を勝つためのもの、か」
「けど勝てる可能性はゼロじゃない、夏目さんの応用力からして俺達の下馬票ごとひっくり返してくる可能性だってある」
「そだね……私達に出来ることは応援することだけだね!」
総合計28分と38秒。それが、2戦目における夏目さんが全力で生み出した時間の全てだった。
「ごめんなさい…………負けちゃったわ」
「いやいや、正直3ラウンド目までもつれ込むとも思ってなかったんだよ俺は。2ラウンド目のあそこでゲージ技喰らった時点で負けだと思ってたからよく取り返せたよほんと」
「キューブ確保匂わせてカウンターでトラップ大量に叩きつけて勝ったやつな、あれは凄かった」
結論から言えば夏目さんは負けた。アレックスという男はあまりにも地力が隔絶していた。2ラウンド目の借りを返すが如くファイナルラウンドは一切のトラップを強引に跳ね除け一直線に夏目さんを叩き潰したのだ。あれをされては初見殺しもクソもない。
「………プロゲーマーなのに1勝しかできなかった私が言う資格はないかもしれないけれど、後をお願い……します」
「んふふ、敬語なんていらないよ。おねーさんにドーン! と任せなさい」
「そうとも、少なくともユニーク自発できないマンに頼まれるよりはよっぽど承諾できる頼みだしな」
「大丈夫、あとは任せてよ」
カッツォは多分これから1度くらい酷い目に遭う、というか遭え。自分の評価が下がるのを覚悟でここまでのことをやってのけたんだからな。これは全部終わった後の打ち上げで何を食いに行くかの論争に夏目さんも巻き込むことになりそうだ。
「さて、と……それじゃあこの「
「程々になー」
「フリじゃないぞ、マジで程々にな?」
全く……夏目さんが勝ったことでかなりの余裕が生まれたもののそれでもカッツォがいつ帰ってくるのか分からない以上可能な限り時間を作り出しておきたい。
それがどれほどの無理難題かは言うまでもないが……正直な話、俺とサンラクはあまり心配していない。俺は俺自身の目で直接見た訳じゃないがペンシルゴン……いや、鉛筆戦士が「箱庭のような世界」で一体何を成し得たのかを知っている。
「天音……じゃない、
「ノープロブレム、確かに格ゲーの実力はぶっちゃけあいつは弱い。多分
「っ、じゃあ…………!?」
「けどね夏目さん、違うんだよ。こと奴に自由度を与えるとと話が変わってくる、それも大幅に」
同情するぜアレックス、お前が外道鉛筆の世界最初の公開処刑対象だ。
『さぁ第二試合、アレックス選手は引き続きハイドロハンズですが謎の仮面プレイヤーこと名前隠し選手の選ぶキャラクターは……』
『クロックファイア、ですね。ユグドライアと同じ設置技をメインとするキャラクターですが、資料によれば近距離カウンター型のユグドライアとは異なり、能動的に動き回るアタッカータイプのキャラですね』
これに関しては本当にたまたまだな、同作品勝負に持ち込めるとは思ってなかった……何せアレックスは何を触ってくるのか分からなかったので。
ギャラクセウスにより力を与えられた消防士な訳だが使いやすさとは比べ物にならないほどの奥深さがあるキャラだ。そうなんだが……悲しいかな、こいつにはそんな奥深さ微塵も出してもらえないだろうな。ストーリー的な繋がりもそうだが鉛筆がクロックファイアの悪辣さを120%引き出せる……正直鉛筆が使う為に作られたキャラなのかもしれないと思ってしまうくらいには相性が良い。いや、発言を訂正しよう。
「あいつとクロックファイアの相性は…………良すぎる」
◆◆◆
「さーてさーて?夏目ちゃんが頑張ってた手前私が舐めた真似できるわけ無くってぇ……それに、せっかく日本に来たんだから日本人としておもてなししてあげなくちゃ」
紺色の燕尾服、そしてシルクハット。左眼には明らかに生物由来ではない眼が収まっている。左眼に収められた物体の名は「ポンペイの滅び」、かつてクロックファイアになる前の彼女が魅入られ自らの手で左眼を抉り出し代わりとしたものである。
そんな奇妙な女こそが漫画「ハイドロハンズ」におけるヴィラン……クロックファイアである。
「んー、とりあえず……よしよし、そこのお嬢ちゃーんお母さんはどうしたのかなー?」
クロックファイアは左瞼を閉じてにこやかに、和やかに、人畜無害を徹頭徹尾貫き通してベンチでアイスクリームを舐めている
「ママならあそこでお友達とお話ししてるよ?」
「そっかそっか、綺麗なママだねぇ。アイス美味しい? 何味?」
「栗きんとん味!」
「渋いなおい……ごほんっ。じゃなくて、そんな可愛らしい君にこれをプレゼントしよう」
ニコニコと笑いながら、どこから取り出したのか間抜け面の可愛らしいクマのぬいぐるみをワンピースに貼り付けた。本来なら物理法則に従ってぬいぐるみは落ちるわけだが、それはどういうわけか落ちない、不思議そうに見つめる少女に向かって和やかにクロックファイアは話しかけた。
「クマさんは……貴女のことが気に入ったんだって、大切にしてあげてね?」
「…………?うんっ」
「それじゃあ私はお母さんとお話があるから引き続きアイスを食べててねー!!」
そうして彼女は踊る様な足捌きで示された少女の母親へと近づきその背中をポンポンと叩く。
「あのお嬢ちゃんのママンだよね?」
「え? えぇ……」
「唐突で悪いんだけど……ほら、あの子のお腹に熊の人形がくっついてるの分かる? これと同じものなんだけどぉ……」
そうして再びマジックの様にどこからかぬいぐるみを取り出し、無造作にそれを放り投げた。
それはてん、てんと間抜けな音を立てながら車道まで転がって行き……偶々通りがかった車が容赦なく踏み潰した、次の瞬間。
ドォォォォンッッッッ!!!!
爆ぜた。
「端的に言おっかママン、ちょーっと私の為に働いてくれないかなぁ?」
横転する車、人間を舐めとる灼熱の炎。爆炎はアスファルトを抉り、砕け散ったアスファルトの欠片が通行人に襲いかかる。瞬く間に平穏な通りに恐怖が蔓延し、人々の悲鳴がいくつも響く中、クロックファイア……
「報酬はあの子の身の安全、そう難しいことじゃないんだもの……断
ヒーローはまだ来ない。