シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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悦楽の果て、狂楽の喝采、悪意は迸りて

これより始まるは、たった数十秒の最短にして最大のクライマックス。

 

喜劇となるか悲劇となるかは演者次第、紅き魔眼を宿し、狂い笑うは道化。己の在り方に悩み、それでも尚世界を救わんとする英雄。

 

両雄並び立ちて今、最後の幕が上がる。

 

 

 

 

◆◆◆

(1ラウンド目も、2ラウンド目も結局はこの第三ラウンド目の仕込みでしかない……ごめんねみんな?私やっぱり()()()()()の方が性に合っててね!!)

 

与えられた30秒を、派手に、大胆に。どこまでも騒々しく()()()()ことこそが彼女にとっての至高、己の組み立てた作戦を土台から投げ捨てて高らかに笑った。

 

「さぁさ遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ。クロックファイアさんによるスペシャルパレードの始まり始まり……ってね」

 

彼女が2日間の調整期間において検証していたものはケイオースシティ生成における規則性。ランダム生成と言っても完全ランダムになることはなく、どこかしらに一定したものが存在することは速い段階で把握していた。

例えば網目状に整備された道路。例えば連立する摩天楼、ビル内部の構造やNPCその他もろもろ……ありとあらゆる気をつけなければ気付かない規則性が散りばめられていた。

そして偶然の産物とはいえクロックファイア……否、アーサー・ペンシルゴンはケイオースシティにおける条件がそろえば出現する究極の爆弾を発見するに至った。

 

停滞より前進を、安牌ではなく博打を、彼女は何よりも刹那的快楽をこそ尊ぶ。故にこそ……彼女は天音 永遠であり、アーサー・ペンシルゴンであり、そしてクロックファイアなのだ。

 

「貯金は貯めるよりも使うもの!溜め込むだけで使い道がないんじゃ意味ないってね……!んふふ、テンション上がってきたよ……さぁ派手にやろう!!!!」

 

己は道化師、だが脇役ではない、主役。主役が陰でコソコソしているなどあり得ないと言わんばかりにケイオースシティのメインストリートの中心、乗り捨てられたタクシーの上に乗って助演を待つ。

 

「どうした!?またお得意の騙しか!?」

 

「ノンノンノン!!言ったでしょ!?()()()()()()()()()()()()、最高に派手に騒ぎましょうか!!!!」

 

彼女の根幹はそこにある。自分が楽しければ良し、周りも楽しければ尚のこと。内輪ノリでチマチマ楽しむ?馬鹿かお前は、どうせなら全部巻き込む方が楽しいに決まってる。今だけは私が主役、今だけは――――私が世界の中心に立っている!!!!

 

「成果も、被害も、何もかも!!勝ちとか負けとかそういう問題じゃない……私は「最高」を求めてる!!!!」

 

 

 

 

熱が、全てを喰らう。

 

 

 

 

「ハァイエブリワン!!誰もが1度は考えたことがあるんじゃない?やってみたいと思ってそれは無理だと諦めたことは?」

 

ハイドロハンズが周囲の水をかき集め、集約し、制圧せんと動き出す。元最強としてのアレックスの勘が盛大に告げていた――――野放しにしていたら、危険だと。

 

「そんな貴方に朗報!ここなら、ここでなら!!ヴィランであるなら遠慮せずに出来ちゃう!!!!」

 

1ラウンド目はNPCでの撹乱によりアレックスを撹乱しつつヘリなどを用いてエリアマップとNPC達の動きを把握、いくつかのビルの柱を事前に爆破。

 

2ラウンド目、NPCの避難先の誘導。結果として彼等は今ケイオースシティのスポーツスタジアムの中に逃げ込んでいる。

 

そして第3ラウンド目。1ラウンド目に仕込んだ亀裂により通った視線の先。亀裂の入ったビルの基礎に仕掛けられた爆弾が爆ぜた。

 

 

「さぁビャッコ君、君の知識が役立つ時だ……ヘイ()()()!!!!」

 

「………………!!」

 

決して露見してはならないハイドロハンズの素性、それを容赦無く看破してみせたクロックファイアは邪悪な笑みを浮かべこう宣言した。

 

「ドミノ、スタート!!!!」

 

爆発が連鎖し、足元がズタボロの満身創痍となったビルがゆっくりと傾き隣のビルに寄りかかる。そして隣接するビルもまたその重さに耐えかね崩壊、ゆっくりと、しかし着実に街が破砕されていく光景を見てハイドロハンズは思わず脚を止め茫然とその光景を眺めることしかできなかった。

 

「なっ…………ウッソだろオイ……!!」

 

街が平坦になっていく、さながら本物のドミノ倒しのようにあっさりと倒れていくビル群を眺めながら思わず呟いた。

 

「何がどうなってやがるこりゃ……?」

 

「んふふ、気づいてないねぇ、私の勝利確定演出だよアレは」

 

「………………ッ、ふざけやがって!お前を倒せば全部カタが付く話だろうが!!!!」

 

「ノンノン()()()、もう忘れたのかな?「笑う爆弾テロ」をさ!!」

 

「ーーーーーーーーまさか」

 

 

 

 

 

 

「お前……あいつに何吹き込みやがった?」

 

「クロックファイアの1番代表的なヴィランムーブ、「笑う爆弾テロ事件」……大体2、3巻かけて続いたギャラクシア・コミックシリーズの中でも1、2を争うくらいのトンデモムーブ」

 

端的に説明すればハイドロハンズを炙り出す為街中の消防署に超高威力の爆弾を仕掛けて次々爆破させていくという内容なのだが……あれには攻略法はあった。

 

「道化爆弾の起爆条件は「誰かを笑わせること」……もしくは「道化が自分の滑稽な姿を見せ終わった後」。幕引きのような形で辺りを消し炭にする火力で吹き飛ばす、だっんだけど……今回の困ったところはどう頑張っても止められないってところかな」

 

まさかこんなところで変則的な原作準拠を叩きつけることができるとは思ってなかったが……ペンシルゴンには教えてよかったかもしれ……いや良くないわ。

 

「さぁ、平等に理不尽が叩きつけられるぞ」

 

 

 

 

◆◆◆

「私にとっての勝利条件は「場所」を知り、「仕様」を知り、整えること……さぁ、不平等な戦いを始めよっか!」

 

そう言ってこちらに向けて走り出したクロックファイア、ハイドロハンズに走る動揺はプロとしての矜持と理性が押し込めて制圧に身体をシフトさせる。

近づいてくるなら好都合、何もさせずに捻り潰す。そう決めたハイドロハンズにとてもいい笑顔を向けながら彼女はこう宣言した。

 

おはよう、私の道化師(ウェイクアップ)

 

「ゲージ技!!?!!!」

 

なるほど確かに先程から続くビルの倒壊によるヴィラニックゲージの増加によりゲージ技は切れるだろう、だがそれはハイドロハンズにとって。

 

「決着を、焦ったな……!!?」

 

笑う爆弾テロに少々身構えたが何のことはない、所詮は1つだけだ。何よりアレックスは自らのキャラを扱う上で、プロとして、キャラの性能程度全てを把握している。

 

「その技の弱点は……!「頭上」が安全地帯であること!!」

 

ウェイクアップクラウンは腹に大量に詰め込まれた爆弾を撒き散らし広範囲に被害を齎す技。であるからして上空に対しては効果が薄い為ハイドロハンズは水を操り上空へと押し上げられ……勝ちを確信し笑みを浮かべた。

 

「くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

しかして返答は笑みであった。それはまるで引っかかったと言わんばかりの、それはそれは邪悪な笑みだった。

 

「――――――決着を焦ったね」

 

そして()()()()()()()()()()()

 

その瞬間今度こそアレックスは動揺と混乱の中に溺れた。

 

(何だ!!?!!!何故超必がまた発動している!?バグか!?何故!?どうして!?!)

 

「貴方の敗因は私がどうしてビルをドミノしたのか、本当の意図に気づけなかったところ。それじゃ、バイバーイ!!」

 

次から次へと生み出される範囲殲滅型ピエロ爆弾、それらに包囲されたアレックスは混乱の中何が起こっているかも分からず爆殺された。

 

 

 

 

総試合合計時間23分と45秒。

第3ラウンド所要時間、4分23秒。

 

 

何故ゲージが減らず超必殺技を連発することが出来るのか、会場中がバグだと騒ぐ中そのタネを知っている俺達はため息を吐いた。

 

「流石にその発想はなかったっつーか……いやほんと、えげつねぇなマジで!」

 

「そりゃヴィラニックゲージの貯め方としては割と真っ当だけど……盲点の更に盲点を突いた、アレ再現なんて無理だと思ってたから、いや、うん……やっぱアイツ怖いよ」

 

強いて言うならヴィラニックゲージを貯める為に態々ビルをドミノしたってところで気づけたかもしれないな、ただ貯めたいだけならビルを丸ごと爆砕するだけで事足りる。

そこに関して考えておけばあるいはアレックスは勝てたかもしれない。

 

大型ディスプレイでは2人しか映されていないから分かりにくいかもしれないが、向こうの世界ではそれ以外もキチンと演算されているわけで。

 

『ここここここれは!!?一体どういうことでしょうか!?!?!!!』

 

「………………名付けるなら「ゲージバースト」」

 

「見てるか制作スタッフ、見てるか世界。ぶっちゃけ修正すべきだと思うぜ」

 

そして俺はつい数時間前を思い出していた。

 

 

 

「あ、これ根本的な原因がヴィランにあるならゲージ貯まるんだ」

 

そのきっかけは鉛筆が周囲を吹っ飛ばした時転がったガスタンクが数分後爆発した時ゲージが上昇したことに気づいてからだった。

その時のヤツの顔は今でも鮮明に思い出せる、なんて非道い顔だってな。ここでミソなのは酷い、じゃなくて非道いだってところだ。

 

直接的でなくとも二次災害なりなんなり、ありとあらゆる悪行がゲージとなって糧となる。この事実が発覚してから2分後に行われた「有人ビルジェンガ」はSAN値が消し飛びかけた、何せビルから投げ出されたNPCの悲鳴やら中で逃げ遅れて瓦礫に潰されたNPCの悲鳴やら……思い出すのはよそう。

 

「まさかあれからさらに進化させてるとは思わないじゃん……」

 

「唯一の救いは「有人ビルジェンガ」と違ってマップ生成時の乱数に依存してるってところか……?」

 

この手品のタネは酷く簡単で酷く悪辣だ。つまるところ……

 

「大量のビルが崩れ、その大質量が避難誘導先のスタジアムに一気に上から流れ込む。そして大量の……あーー、被害が出る。恐らく過去類を見ないレベルでの大悪行によりゲージがオーバーフローする勢いで充填されていき……超必が連打可能になる」

 

「クロックファイアの超必殺技判定の終点が「ピエロ爆弾が出現した時」だから成立してるんだろうな……遠距離恋愛(アレックス)氏に同情するわ」

 

心中お察しだな、散々弄ばれ、リアル関連を突かれた挙句狂気の爆弾包囲網……帰ってきた時の荒れ具体が今から想像できるってものだ。

 

 

 

 

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