シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「あっはっはっ、あー楽しかった!!!!」
『どうなってんだありゃ!!バグだろ!!!!』
見事なまでに対照的な目覚めなことで。
悪巧みの全てが完璧に決まりとても満足げな笑みで帰ってきた者と、その悪巧みの全てに完璧に引っかかって不満げな顔で帰ってきた者。前者に関しては教えたのにも若干の原因がないとは言えないので何にも言えない。
「そりゃ結構なことで……時間もまぁ、思ってたよりは稼いでたしな」
「いやぁ、流石にその辺は弁えてるけど……ああもベストすぎる立地だとつい魔が差しちゃって。んふふふ、凄かったでしょ?」
「凄すぎて俺ら以外ドン引きしてたよバカタレ」
「いやホント、ギャグみたいなスイカ割りだったよねぇ! これ映像記録欲しいなー、後でもらえないかなぁー」
この時ほどエイトさんが向こうにマイクとカメラを向けていて良かったと思うわゲームの中で、現実のことではないとは言えNPC数十万人単位の殺戮を何食わぬ顔でギャグだと言い切りやがったぞ。
夏目さんはなんかモニョついた顔してるしサンラクはまだ若干どっち飲むかで決めかねてるし……ええいさっさと帰ってこいよカッツォ!!
向こうを見てみれば恐らくことの真相を知って脱力したアレックスと何やら駆け寄ってくる女性、例の彼女さんかな?可哀想に。
そりゃまぁ「ビルでドミノ倒しして終点のスタジアムに集まったNPCに甚大な被害与えてゲージ振り切って超必連打」なんて説明された日には俺でもキレるしバグの類だと思う、というか思いたい。
「んで? 楽しさ優先して3ラウンド目をカップ麺が完成するよりちょっと遅れて終わらせた作戦立案者殿、何か言い分は?」
「まぁなんとかなるでしょ」
「根拠の「こ」の字すら満たしてねぇな」
「実際25分くらい稼いでるから何とかなりそうなのがな……ただし次の試合はちゃんとギリッギリまで稼げよ?」
「まかせてよ……っと、じゃあついでに追加で時間稼いでくるね」
そう言いながら意気揚々とエイトさんの下へ向かいノリノリでインタビューを受ける辺り次の試合はきっちり時間を稼ぐ腹積りらしい、そこら辺のラインをきっちり見定める辺り腹立つな。
さて、と。
「なぁサンラク、次の対戦相手誰だっけ」
「忘れた、夏目氏分かる?」
「…………ジョンソン・ショーン・アンダーウッド、カウンター主体の技巧派よ」
「…………あぁ、「妻帯者」か」
そこまで言って漸くサンラクは誰か分かったらしい、いやもう残ってるのあの黒人ゴリマッチョとランファンとシルヴィアしかいないんだからさっさと気付けよ。っていうかだな。
「んで、結局どっち飲むか決めたの?ぶっちゃけそろそろ飲まないと上手いことキマらないと思うけど」
「そう、なんだよなぁ……ビャッコはどっち飲むか決めたか?」
「………………例え合法堕ちしたとしても、ユーザーとしての好奇心が「これを飲め」って」
手に持つは漆黒のライオットブラッド、あまりにも異質な気配すぎてやっぱりダメなものが入ってそうな気もするがやはり好奇心には逆らえない。
少々余裕を持たせていつもより早く飲むつもりではあるがこの仮称劇薬ライオットブラッドの即効性がどんなものであるか全く不明なため博打に等しいな。
「…………そう言われちゃ俺も飲まなきゃじゃん、しゃーない覚悟決めて飲むかぁ……」
覚悟が決まったようで何より。
真剣にいつ頃飲むのがベストかを吟味し始めたサンラクを横目にそういえばと俺はこれからの展開に思いを馳せた。
(――――――「妻帯者」相手なのは良いんだけど鉛筆のやつ、どう戦うつもりなんだ?)
まさか外道戦法……は十中八九使うだろうが、どういうふうに攻めていくのやら。
『うわさいてーー!!奥さん居るのに
『きっさまぁぁぁぁぁぁあ!!!!』
『私のお尻追っかけ回すかそこで爆弾に囲まれてる民間人助けるかどっちか選びなよアッハッハッハッハッハッ!!!』
『クッソォォォォォォォ!!!!!!!??!!!!?』
「やるとは思ってたけどまさかここまでとは」
「爆弾じゃなくて言葉の暴力でリアル方面にダメージ与えるスタイルに完全に切り替えやがったよあの外道」
「あっ、助けに行った…………爆発した」
「どっちが最低なんだか」
間違いなく最低なのは鉛筆だろ。にしてもこれは酷い。
人という生き物は臨界点を突破すると絶句した後真顔になり、更にそこから振り切れるとまともな恥ずかしさが湧き上がってくるのだということをこの日学んだ。
「あいつの後の俺達もあんな感じのことやると思われてんのかな」
「多分そうだろうな……」
「私も匿名参加すればよかったぁ……ねぇどっちか2人今からでも良いからそのヘルメットかお面……」
「おっと夏目さん画面の先のアレに毒されたかな?相当外道レベル高かったよ今の発言」
凄い流れるようにとんでもない発言したな、俺らのプライバシーとかどうでも良いからそれ寄越せはかなり終わってるぜ夏目さん。いやでも今画面の向こうで起きてる外道行為よりかは遥かにマシなわけで………いや待て、そもそもこうなったのはあのクソガツオのせいなわけだ、つまりあいつが全部悪い。
「ほぼほぼ俺らからしたら分かりきったことではあったけど「嫁さん居るのに女の尻追っかけるなんて最低」なんて角度から攻撃仕掛けるとは……」
「やっても精々「嫁さん見てるのにそんなことできるのー?」だと思ってたらリバーブローかまされた気分」
多分あれ使い切りの匿名プレイヤーとして割り切ってるだろ、今日限りだから何言っても良いわけじゃないんだぞお前。
「なんつーか、さっきまでの大悪党っぷりを見た後のこれだとみみっちく感じるな」
「噛ませ犬のチンピラレベルじゃないの……」
「ここで問題になってくるのがそのチンピラが事をずっと有利に進めている現状なわけでぇ……」
最低極まりないなあの女、今から自分が何をやるか宣言した上で少し待ってあげるからとか抜かしたぞ。
『そんなもん信じられるわけがねぇだろうが……!!』
『ふーーん?良いのかなぁ、私わざわざ頑張って
『キッサマァァァァァ!!!!』
『一児の父にもなろう人が!?!見捨てちゃって良いのかなぁ〜〜〜!!!』
「いや、そんなん言われたらいくしかないわけで……あっ、建物ごと爆砕したぞあいつ」
「ゲージが溜まって、また……」
今日だけで何回見たかわからない間抜け顔の超巨大ピエロ爆弾が展開される。そしてそれは発動から数秒の間までなら移動させられるらしくサッカーボールよろしく蹴り込んで爆ぜた。
「うーむ、非道の道を往く女」
「俺達あれと同類扱いされるのか……」
「私今後のプロ活動に支障が出そうなんだけど……」
「大丈夫夏目さん、諸々ひっくるめて全部バカッツォのせいだ……あの倫理観地球外生命体を引き摺り込んだのは全部奴のせいだし」
「どうせここからすぐ後に挙動地球外生命体と直感地球外生命体が暴れ回るんでしょ私知ってるんだもん……」
「ちょっ、きょどっ、挙動てオイ、人を笑顔で砲塔にくくりつける外道共と比べたらまだマシだろ」
「直感地球外生命体って何?直感に地球内も外も存在しないでしょ…………ってあの親子さっきの試合で名前隠しに初っ端爆殺された親子じゃね?」
「なんて不運な……」