シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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心火暴熱:其は流星に打ち勝つ為の

「―――――これ今どういう状況?」

 

「うおっ、カッツ……魚臣帰ってきたのか」

 

「重役出勤もここまでくるとむしろ清々しいねぇ……」

 

帰ってきたカッツォがそう問いかけてきた。それに対する答えはまぁ1つしか持ち合わせていないんだがな?

 

「ディスプレイ見ろよ魚臣、我らが友人殿は盛大に吹っ切れられたぞ」

 

「もうスピーカーから聞こえてくる高笑いから若干察しはしてたけどねぇ……」

 

だったら聞いてくる意味はなかったんじゃ……いや、もしかしたら盛大に眼を背けたかったからかもしれないが。

 

「あの馬鹿本来の役割ちゃんと覚えてる?」

 

「覚えてたらあんなとち狂った挙動しないでしょー、うわすっごい、見てよ皮隠し(ノースキン)君涅槃ポーズだよ涅槃ポーズ」

 

「改めて思うけどやっぱあれ変態のそれだよな」

 

昨夜の練習の時からちまちま練習してたのは見たし実際あれで隙を潰されたからあながち間違ってない、とは思いたくない。やだよカースドプリズンが変態の汚名着せられるの、家に飾ってる7分の1スケールカースドプリズンフィギュアをこれからどういう目で見ればいいんだ。

 

「にしてもあれだけ優位に立ち回ってるように見えても実際はいつどのタイミングでも簡単に主導権を奪い返される可能性があるってのが酷い……やっぱラスボスなんじゃない?」

 

「だから全米最強なんだよ……」

 

そりゃそうか。だがサンラクも上手いことやってる、リズムが変わる前に火力差と初見の動きでゴリ押してラウンドをもぎ取るつもりか。

 

(サンラクは……というか、あの2人は相手にリズムを押し付けて戦局を有利に進めるタイプ。今やってるのは同じ方向性のバトルスタイルの持ち主2人のリズムの押し付け合いってところか?)

 

「……………俺達はみんなシルヴィアの()()()()()()()()()()()()に対応できずに飲み込まれて負ける。だからそのリズムを研究してカウンターを確実に当てるという戦術が最も有効とされてきた。されてきたんだけどなぁ……」

 

「先人達の積み重ねを超高速で破壊してるぞあいつ、他の人間にあれと同様のパフォーマンスをやれってのが無理な話だけど」

 

酷い話だ。打倒シルヴィアを目指して脈々と受け継がれてきたであろう対策を多分ほぼ白紙に戻したぞサンラクのやつ。

 

「シルヴィア・ゴールドバーグへの最善は「カウンター」ってのが定説だった……それが今変わった。本当の最善は「()()()」、あいつがさっきやった対空回避を見越したカウンターが最も刺さる」

 

「…………行動の選択肢を可能な限り絞ってそこに予めカウンターを置くってこと?でもそれをシルヴィア相手にやるなんて……」

 

「人間業じゃないね、うん」

 

シルヴィア以外にやるならばまぁ割と出来るだろうが、これがシルヴィアとなると話が変わってくる。まず大前提としてこちらがリズム……主導権を握る必要があるだろう。

けどそれが出来ないとシルヴィアの常時更新され続ける爆音リズムに飲まれて負ける、カウンターを更に発展させた形である以上可能な人間は案外少なくはないと思う。付け焼き刃のカースドプリズン使いたるサンラクでさえカフェインやら怒りというニトロ積めばあれだけ戦えているのだ、プロゲーマーの上位層は割とやれそうな気がするな。

 

そうしてカースドプリズンとミーティアスが3度目の激突、タイヤによって加速した豪脚がミーティアスの腹を打ち抜き宙を舞う……あ、これは。

 

「勝負あったな」

 

「まさか取り返しちゃうとはねぇ……」

 

浮き上がったミーティアスをダンクするが如くカースドプリズンが地面に突き刺して体力を完全に削り取る、そうしてポリゴンとなってミーティアスが消え、ラウンド終了のアナウンスが鳴り響いた。

 

『ラウンドを取り返したぁーーっ!!顔隠し(ノーフェイス)選手1ラウンド目とはまるで人が変わったような理解不の……実況困難な動きで見事シルヴィア選手をノックアウトしたーーーっ!!!』

 

『いや、ほんと凄い試合でしたね……白バイを取り込んで機動力確保、あれだけのバイクを取り込んだのであればかなり制御は困難になるはずでしょうがそれをああも容易くこなすとは』

 

『これは試合終了後是非お話をお伺いしたいところ……あ、魚臣選手!来てらしたんですか!!』

 

「あはは、酷いなぁ……皆さんどうも、お待たせいたしました」

 

おうおう随分と綺麗な皮を被ってやがんなお前、皮隠し(ノースキン)の名前を譲ってやろうか?

いつもの人を食ったような笑みではなく柔和な人好きしそうな笑みを浮かべるカッツォを見て思わず毒吐きそうになるのを必死に堪え意識を別方向に移す。さてそろそろ第3ラウンド……いい加減例のブツを飲むとしますかね?

 

取り出したるは黒いライオットブラッド、仮面……はうおすげえ、今気づいたが下が開閉するようになってるのか。世界観的にはこの仮面も何かのテクノロジーで生み出されたとかそういうアレなんだろうか?助かるな、完全に上げなければいけない場合トイレに入って飲む必要があったわけだし。というわけでカシュッ、ぐびっとな……おぉ?

 

「…………んぐっ、お"ぉっ?」

 

「どうしたの皮隠し(ノースキン)君そんなR-18指定のASMRとかでしか聞かないような声出して」

 

名前隠し(ノーネーム)これ一応全世界中継なんだよ?ちょっと慎もう?」

 

やけに声が遠い、全身が焼けるように熱い。今まで使ってこなかった……閉じていた感覚を無理矢理こじ開けるような感覚。これは、これは――――そこで俺はカフェインの海に立っていた。

振り向けばそこには半身浴を楽しむ先人達の姿。おーいと手を振られ、振り返し、特に何の疑問も持たずそこに浸かろうとして…………

 

「おーい!?どうした!!?戻ってこーい!!」

 

「ッは!!?!!????」

 

現実に引き摺り戻された。今のは何だったんだ、幻覚?ライオットブラッドで?まさか、そんな……?

 

「サンラクがああなったのも頷けるな……!」

 

「マイク遠かったからまだ良いけど君今大概とんでも発言かましたからね?」

 

「…………あぁ、そっか。すまん。ところで後で1発殴らせろ」

 

「なんで!?」

 

このトンデモエナジードリンク持ってきたからだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆

第3ラウンドが始まった。メインウェポンはまだその姿を表してはいない……第1、第2で派手に暴れ回っていた以上いつ現れてもおかしくはないはずなんだが?もしかしたら俺達が躍起になって探し回っても見つけられなかった確定条件のどれかをまだ満たしてないのか?

 

まぁいい、来ないなら来ないで幾らでもやりようはある。

 

「くたばりやがれ!!そして死ね!!!!」

 

「もう同じ手は喰らわな……危なっ!!?!!!」

 

「踏ん張れ俺の体幹!!!!」

 

拳を叩きつける、バックステップで回避される。それを見越してカウンターの前蹴りを俺がすっ転ぶギリギリの距離まで伸ばす、それも回避される……ええぃ、どうなってんだこの女は!!頭にスパコンとTASを積んでそれをフルスペックで扱える女なんぞいてたまるか!!それにこの状態のカスプリの弱点の1つである微細な挙動が難しい点に気づいたのかさっきから妙に回避に余裕がある、今のように「思ったより速かった」や「予想の上を行くカウンター」は意表を突けているが……多分これこの第3ラウンド中に完璧に対処できるようになるな?

 

(それを押し込んでこいつに勝つには、超必殺技……もしくは………クソ、何で来ねぇんだ!!?もっと派手に街をぶっ壊した方が良かったか!?!?!)

 

「いいね、いいねカースドプリズン!!強さの話じゃない、君との戦いは……そう、とっても()()()()()()()()!!!」

 

「そりゃお褒めに預かり光栄!!死ね!!!!」

 

「左のハイキック!!…………けど、カースドプリズンならもっと傲慢でないとね!!」

 

「そんなもん俺が知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

ビャッコからは確かに軽くカースドプリズンの概要……というよりバックボーンは教わった。だが結局「お前らしいカースドプリズンで行こう」と言われ本当に概要程度しか教わっていない。ロールプレイには必要だったのでビャッコには伝えたのだが。

 

――――あぁ、なんかお前カスプリじゃないんだけどやけにカスプリっぽいから。

 

とのことだった、意味がわからんお前は何を言っているんだ?…………右の手刀、回避、ない、受け止める……カウンター?誘われてる?ブラフか!!!

滑らかとしか形容しようがないステップを刻み、右から手刀を叩き込まんとしていたミーティアスが空中を駆け後方へ回り込む、咄嗟に身を屈めながら超信地旋回で方向を合わせ迎撃に、間に合わないッ!!!

 

「ぐ、ゔぅ……!!」

 

「今の受けれるの!?」

 

「迎撃するつもりだったんだがなぁ……!?」

 

クソ、思ってたよりも速かった!!右腕1本で咄嗟にボディーへの直撃だけを避けて攻撃を受け止めた。ジンジンと痺れが走り、インパクトの衝撃で膝が地面に着きそうになるのを堪えすぐさま攻勢に移ろうと立ち上がり……バックステップを刻んで距離を取られた。ダメだ、この距離から無理に詰めても対応される、ジリ貧になってゲームオーバー……!!

 

「くっ…………!!」

 

「分かってるんでしょ?それだけじゃあ、届かない。「流星」は堕とせない!!」

 

あぁそうだよ、わかってるよこんちくしょう。お前が何を言わんとしているか、言外に何を伝えようとしているのか。要するに超必殺技(ウルト)を切れと、そう言いたいんだろ?だが実際切りたい、切ってしまいたい。

短期決戦に強制的に移行するとはいえその短期間で勝負を一気に決めてしまえる。攻めるべきか?まだ耐えるべきか?機を伺うべ――――――…………この音は?

 

「………………来た」

 

「?」

 

「きたきたきたきたぁぁぁあ!!!!」

 

そして全てがどうでも良くなる。取り敢えずどうする?こいつを振り切って一時離脱だ!!

 

「あばよ流れ星!!ちょっと失礼するぜ!!!!」

 

「なっ…………!?逃すか!!」

 

来ると思ってたぜありがとよ。

 

俺が明後日の方向を向いて逃げ出さんと足に力を込める、その前にミーティアスが距離を詰めてきた。ご丁寧にカウンターしづらい様に踏み込んだ足の反対側から攻撃し逃走させまいと……ここ!!

 

「一撃程度……誤差ァ!!」

 

「何!?」

 

ミーティアスの一撃は決して少ないとはいえない量のHPを確かに削った。だが、重さが足りない。この程度じゃカスプリは揺らがない。

 

「特訓時間は……2時間半!!」

 

何度も何度も、文字通り()()()()()()()()あの攻撃。劣化版だろうと再現するにはそう難しいことではなかった。対人戦において凄まじい魅力を持ったあの掴み。

 

見様見真似(なんちゃって)

 

頭を掴んだ。さっきまでのものだと思うなよミーティアス、これは……かつての英雄の技ァ!!!

 

大時化(オオシケ)ェ!!!!」

 

掴もうとした手が弾かれる前に、掴む。過剰なほどに必要な体の捻りはタイヤを使って足りない分を補い、投げる。

先ほどまでの投げや地面へ叩きつける動きとは速度も挙動も異なる……お前にブッ刺さる初見殺しだよ、なんせ散々見たし喰らったもんな。

 

投げた瞬間ミーティアスから背を向け緊急離脱、逃げるなとかなんとか言ってる気がするが知るかよ今からちょっと大事な用があるんだわ。

 

「…………っと!!()()()2()()使わしてもらうか!!」

 

見上げたるはここら辺で最も高いと思われる高層ビルとその向かいに聳えるそれなりに高いビル、さてさてそれでは行きましょうか?

 

「クライミングの時間だ!!!!」

 

先ずはそれなりに高い方に向かってダッシュ、加速が足りない気がするがまぁそこは何とかして見せようというわけで

 

「壁キーーック!!」

 

斜め方向に力を加えた蹴りが壁をぶち抜くがその前に俺は反対方向へ射出されている。そしてその先にあった窓を叩き割って室内に侵入、今ので7、8階まで登れたか?最上階まで後何回あるかは知らないが……最短最速で行こう。

壁に指をめり込ませ脚のタイヤを回し背面のマフラーから火が噴き出るほど速度を()()()()()。ギャリギャリと床を削るタイヤの音が響く、獣の咆哮じみたエンジン音も同時に鳴り続ける。しくじったら悲惨だぞ?…………それ今考える必要あるか?ないな。

 

「レッツゴー!!!」

 

溜め込んだ全てを解放する。体が浮き上がり上層へと跳ね上がり丁度指が刺さっている位置あたりに体が跳ねた瞬間素早く指を抜く、楔が外れた結果身体が上へと押し上げられていく。目の前に何やら看板らしきものがあった、これ幸いとそこに掴まり半回転、看板上部に着地し素早く跳躍、再び上層へと上り詰めていく。

 

「もっと速く!!もっと速く来いよマジで!!!!」

 

これで……最上層!!!そしてぇ!!ご丁寧に目の前に来てくれてどうもありがとう!!2ラウンド目中盤くらいに来いよ何してたんだよ今の今まで!!!

 

「だが…………待ってたぜ!!メインウェポォォォォォォォォォォォォン!!!」

 

そして俺はずっと待ち望んでいた武器に向かって盛大にダンクをぶちかました。

 

 




多分盛大に物理学的に間違えてる気がするけど「まぁこれゲームやし…」の精神で書き切るクライミングシーン


え?なんか変な幻覚が見えた?やだなぁ勘違いですよきっと。多分。
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