シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
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叩き壊した。灼熱が俺を喰わんと広がる、残念ながら効かないな。凶星の引力が全身から放たれる。不必要と判断したパーツは除かれ、元々装着していた白バイパーツもほとんどがその役目を終え残骸となって失せていく。
さらばだ、お前達のおかげで俺はまだ戦えていられる。感謝するぜ。だがタイヤA君B君とマフラー君らはまだもう少し頑張ってくれ、具体的には壊れて使い物にならなくなるまで。
地上に落下していく。真下に何か落ちているのが炎の間から何となく見えた、情報を精査し切る前に何故だか勝手に身体がそれに向かって手を伸ばしていた。
そして地面に着弾する。
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何だ今のは、何だ今のは……何だ今のは!!?!!!
今までの掴みとは比べ物にならない速度で掴まれ、比べ物にならない速度で投げられた。そのすぐさま追撃ではなく一目散に逃走したのが不思議なほどあの攻撃は勝ちへの執念に満ち溢れていた!!
どういう仕組みを持ってあれが出来るのかは理解できる、だからこそ、アレはカースドプリズンではないと強く意識せざるを得ない。
何故ならカースドプリズンに技巧なんてものは存在しないから。ただ己の振るうことのできる全力を気ままに振るう、どこまでも無邪気で純粋な悪。
(これまで、何人ものカースドプリズン
今まで対戦してきたプロゲーマー達と比べてそこまで突出した技能はない。カウンターはロシアのあいつよりかはお粗末だし、グラップルはブラジルのあいつの方が面倒くさい。シンプルな格闘技能はフランスのあいつの方が厄介だし総合的な面を見ればアメリアなどには遠く及ばないだろう。
(これまで戦ったどの相手よりも、ミーティアスとカースドプリズンの戦いというものを強く意識させてくれる)
彼女は求めていた。己と対をなす存在を。「リアル・ミーティアス」と称される自分の対極の存在を。「リアル・カースドプリズン」を。どの相手も、何処か違った。何かが違う、何処が違う?ずっとわからなかった。
ずっと探し求めてきた存在は、ここに居た。そうか、そうか――――……ここに居たんだねとミーティアスは微笑んだ。
あぁやっと、お前だけは何が何でも倒すという叫びを、ミーティアスとしての叫びを浴びせられる。
「やっと見つけた……カースドプリズン!」
そして爆発音。目線を向ければそこには爆炎が広がっていた。そしてその中に何かがいる。何かは分かりきっている、何をしているかもわかる。だからその爆炎は着替えを他者に見せないプライバシーを守る為のカーテン。
秘匿する為の幕は今、破られた。
そこに居たのは、白バイを取り込んだ重騎士の姿をしたカースドプリズンではなく白い侍。恐らく取り込んだものはヘリコプターであろう、プロペラウィングが左右の手に1本ずつ握られ、腰部の左右にはテールローターが4本短刀のようにそこに収まっていた。各部を覆う装甲は恐らくヘリのそれではなく……警察車両だろうか?赤と青が差し色になった装甲が全身を固めている。
「悪かったな、一時的とは言え逃げ出しちまって」
「いいよ、それを見せたかったんでしょ?」
「お色直しってやつだな……今までのバイク型もいいが、こっちの方が馴染みがある。全力出すにはもってこいだ」
「
シルヴィア・ゴールドバーグは端的に言って最強である。そしてそうあれと望まれた時以外は常に全力を出している。だが今この試合に於いては足りない。
故に。
「
全てでは足りない、絞り尽くして、もう出ないなんて言わせない。満足ができない。
さぁ、勝負だ。
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思わぬ収穫もあったが漸くメインウェポンが手に入った、これで勝てるとまでは言わないが勝利は若干見えてきた、若干な。
銃じゃ足りない、ステゴロは確かに良かったがそれでも勝ち切るには届かない。じゃあシンプルに近接武器を積むしかない、それでようやっと対等かそれより1段下かそこらだ。
(特殊オブジェクト「報道ヘリ」……やたら低い位置で飛行しているのとビャッコからの原作助言から偶々発見したのがこれだが)
カースドプリズンの特性上強化されたこいつは下手な銃や拳より火力が出るし何よりリーチもある。そして何よりシャンフロが二刀流メインである以上今これほどまでに馴染むのは存在しない。
「3枚下ろしにして刺身にしてやるよ……魚は好きか?」
「サーモンならね!!」
おや子供舌?どうでもいいか。背中のヘリエンジンが唸り、マフラーから黒煙が吐き出される。全身に力が漲った、いくぞオラァ!!!
左から強襲をせんと接近するミーティアスに向かって右のソードを振り抜く、身を捻ることでソードを軸に回転するように回避してくる。甘いぜ2本目を忘れたか!?
回避先に向かって左のソードを叩きつける、空中ジャンプで対応され……ここ!!!
「喰らえやテールローター!」
「うぉっと!!?」
右手のソードを手放して腰の左側に差していたテールローター2本を苦無のように投擲、蹴りだけで対処される、ええいドラゴンだろうが神だろうが当ててダメージ入れれば死ぬんだ、それよりも柔らかいこいつの方がまだイージーだろう!?何せ当てればガッツリ削れるんだから!!
「帰ってこい!!!!」
「取り込みモーションで手元に戻したか……!!」
凶星の引力からは逃れられない、テールローター2本が軌道を変えて手元に帰ってくる。左手に握りしめたプロペラソードを両手でガッチリ握りしめて坂袈裟に振り抜く、バク転で回避され大振りの振りにより生まれた隙に逆に攻撃を喰らった。
「負けを認めるかい?」
「言ってろ!!」
ええい、この程度のダメージなど誤差!!無駄に体力だけは多いんだから向こうからのカスダメを喰らい続けても確実に攻撃を当てるしかない、ダメージレースは向こうが有利だが1度でもコンボを決めれば有利差はあっという間にひっくり返る、燃えろカフェインニトロの如く!!
「ドス黒い煙を上げてなぁ!!!」
怯みは詰み!!繋がりかねないもの以外はノーガード!!
攻撃の行動判定が終わっていない間にこちらの攻撃を確実に捩じ込むしかない。2本目のプロペラソードすらも手放して両手をガッツリ組んでミーティアスの背中に一撃ぶち込む、地面に着弾しその衝撃で跳ね上がったミーティアスの横腹を全力で蹴り付け吹っ飛ばしその隙にプロペラソード二振りを回収した。
「この程度で……私を止められると思うなァッ!!!」
「お前じゃなくてお前の息の根止めてぇんだよバカタレがぁ!!!」
「両方おんなじ意味じゃない!!」
「うるせぇ死ね!!!」
右ソード、薙ぎ払い、ほんの少しのディレイを挟んで左ソードを素早く十文字を描くように振り抜く。全て最小の動きを持って回避された、ミーティアスの姿が掻き消える、上?――――した――――――まずい!!!
視線を下に向ける、ミーティアスが見えた、バネのように体が撓む、蹴りが俺の顎を打ち抜かんと迫る。
させるか。負けてたまるか。
「ぐぉおおおお"お"お"お"っらぁぁあ!!!!」
VRの体に限界など存在しない、腰が砕けるかもしれないなんて感覚はリアル準拠のものでありここでは考慮に入らない!!本能を捩じ伏せろ、勝利に貪欲であれ、お前がカースドプリズンを扱うならば!!
海老反りで頭から地面に落ちる体勢に入り、肩のタイヤで逆立ち式超信地旋回だ。ブレイクダンスのような挙動で俺の身体が回転し遠心力で脚を開く、ミーティアスの横腹を俺が打ち抜いた。
「ぐふっ…………!!?」
「テンションフルMAXで行こうぜ!!!!」
アドレナリンとカフェインが体から溢れ出すほどに爆発する感覚、今まで知らなかった領域に触れ、そこへ至らんと扉をこじ開けんとする俺の今出せる最高のパフォーマンスが天井知らずに更新されていく。
ミーティアスの体がぶっ飛ぶ前に手を地面に突いて体を跳ね上げ頭の先が向いている方向を正常な状態へ戻す、体力比6:5.8でほんの少し俺が微不利なこの状況をひっくり返す為に!!!
目醒めろ、振り抜け、今の俺ならばやれる筈!!!
「
俺が喰らったあれが全てを断ち切る必殺の一撃であったとしても……一筋の風だけじゃこいつには届かない、だから風は2回吹き荒ぶ!!
「
肩のタイヤにプロペラソードを挟み込み、回転による加速込みで本物に限りなく近い速度を再現した一太刀を脳天に叩き込む、吹っ飛ばされて視界も間違いなく揺らいでいる筈なのに何故か回避してきやがった、どうなってんだこの化け物は。だがその回避挙動は俺にとっての勝利に近づく為の大きな1歩になり、お前にとっては敗北という名の崖へ落ちていく1歩だ。
回避先、腰だめに振り抜いた一撃が直撃した。ミーティアスの体力バー……半分切った、ここで退く?
「ナンセンス!!!」
まだやれる、まだいける!!!!ここで退けばそれこそ負けかねない、いけ、いけ!!こいつを、今!!!!ここで、倒すんだ!!!!
右手に握りしめたプロペラソードを放り投げて力の限り握り締める、覚悟は良いか?
「喰らいやがれッ!!!」
「誰が喰らうものかぁッ!!!」
振り下ろした拳をポールダンスのように回避しミーティアスが駆ける、一瞬にて距離を離され視界外から消える……だがSEだけは聞こえる、現在空中機動中か!!
(どこだ?どこにいる?音を聞き分けろ、そう長くはない、最低でもある程度の位置を割り出さないと……!!)
「…………!!」
「ッ、そこか!!」
ギリギリで補足、その頃にはもう目の前にミーティアスが迫り踵落としを仕掛けようとしていた。
(体を逸らす?喰らったらアウトか?コンボルート……踵落としが起点のコンボはなかった筈、だが硬直から最速で放つのは恐らく肘打ち、それならば…………!!)
顔面に踵が直撃する、視界がブラックアウトし全身から力が一気に抜けていく。おうコラ俺、意地でも左手のソードだけは手放すなよ?手放したらぶっ殺してやる。
「貰っ、たァ!!!」
「…………ッソがぁッ!!!」
腹に衝撃が入る、鎧のお陰でカスダメに抑えられた、気絶状態が解除される。全身から抜けた力みがあっという間に全身に回ってブラックアウトした視界が回復する。
膝……はついてたか、だがよくぞプロペラソードを手放さなかったぞ俺。体勢を立て直す余裕は無いがやるしかない、喰らったら詰み一歩手前、知るか考慮に値しない。俺ならやれる、出来る!!!!
その肘が入る前に俺が差し込んで見せる!!
「嘘……!?差し込めるの!?」
「これぞイアイフィスト流差し込み術……!!」
意地を見せつけた俺自身を後で全力で褒めちぎるとしよう、取り落としていたら出来なかった。逆手に持ち替えたプロペラソードを盾がわりに構えて肘打ちを防ぐ、ミーティアスが驚愕しながらも膝蹴りを叩き込もうとしてきた、咄嗟に腰の右側に差し込んでいたテールローターで蹴りの軌道を逸らし逆に横腹に突き刺そうとするもバックステップで回避された。だが……!!
「凌ぎ切ったぞコラァ!!!」
「くっ…………!!
あと1秒……間に合っても負けてた可能性はある、だがまだ勝敗は決まっていない。体力比4:5で俺有利、このまま押し切らせてもらうとしよう。
視点切り替えが多い分書く分には楽しいんだけど読む分には「テンポ悪いな…?」ってなる悩みを常に抱え今日もポチポチ書いていく
ここすき感想ありがとうございます