シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「往生しろよお星様、叩き落として色々くっついてる大層な肩書き引っぺがしてやる」
「肩書き自体にそこまで思い入れがあるわけじゃないけどね、けど…………」
――――リアル・ミーティアスの称号だけは、譲れない。
その目が語るのは、自分が世界で最もミーティアスだという絶対の自負。あぁそうかよ、そうだよな、そうだろうな。
「良いぜ、全部纏めてへし折ってやる!!この俺様がなァ!!」
俺はカースドプリズン、お前を挫くための存在として……叩き潰してやる。
左手に持ったプロペラソードを両手持ちして構える、流石にこの状況下じゃもう1本は回収できそうにないからな。
さぁ行くぞ……デッドヒートだ。
「おっらぁ!!!」
アスファルトを抉るほどの勢いでソードを振り上げミーティアスを両断せんと振るう、何だ、いない?
馬鹿な移動した様子は……まさか?振り上げたソードの重みが先ほどまでとは違う、なにやら妙な影が俺に覆い被さっている。そこを見上げればとても良い笑顔をしたミーティアスが拳を振りかぶって……危なっ!?
咄嗟にわざと体勢を崩して肩のタイヤを地面に接地させ回転、コマのようにスライドして回避する。
「曲芸師かよ……!?」
「君にだけはっ、言われたくないね!!」
なにおう、これでも結構ちゃんと練習したしちゃんと理に適った戦法なんだぞ。そりゃまぁ傍目から見たらギャグとしか思えない挙動だったりが多いがそれも愛嬌ってやつだろう、ネコパンチでハメ技だとか妙にキレのあるノーキックが横行するよりよっぽどマシじゃないか?
(ゲージは……お互いほぼマックス!!!!どうする、今切るか?決着をつけてしまうか!?だが効果時間中にこの怪物のHP4割を削れるか!!?!!!…………あっ、チャンスだ)
「死ねぇーーーい!!!」
「こんな単調なパンチに当たるとでも!?」
クッソ、避けられたか。いやまぁ当たるとも思ってなかったから特段何も思わないんだが。死ね。
「ウルト使えるんでしょ!?来なよ!!」
「そのセリフそっくりそのまま返してやるよ!!……ええいちょこまかとっ、逃げるなァ!!」
「まぁまぁ、そう急がない急がない。どうせ貴方の目的の時間稼ぎにもなるんだし時間いっぱい楽しみましょう?」
「そんなもん知るかァァァァァァァァァ!!!!」
クソッタレが、良い空気吸ってそうだなやろうぶっころしてくれるわ。
体力比5:4で俺が微有利……とは言っても気を抜けば一瞬で削り取られる体力だ、向こうも条件は同じだが。恐らくゲージは先に切った方が不利を背負うことになる、俺の場合は色々な複合条件下ではその限りではないが……それでも厳しいことに変わりはない。
「隙あり」
「引っかかったな馬鹿が!!」
俺の一瞬の思考を油断と見たかミーティアスが仕掛けてきた、だがそれは想定内としか言いようがない。
手に隠し持っていたテールローターをミーティアスの首元目掛けて投擲、何?嘘だろあいつ指2本で止めやがった!!
「白刃取りってこれであってるかしら?」
「本来それは両手でやるもんなんだよなぁ………!!?」
「あらそうなの?覚悟!!!」
いやもう怪物すぎる、さぁどう対処する?ミーティアス相手に距離を離そうとする動きは下策も下策……カウンターを狙う?読まれている可能性が高い。なれば!!
「自傷型回避ィ!!」
「何それ!?」
これか?これは視線だけでも回避先を当然のように察知し弾丸やら刃を叩き込んでくる怪物達に対する最終兵器的回避技術だ、何せ俺自身どの方向に回避……もとい転ぶかどうかさっぱりだからな、この極限状態で転ぶなんてトンチキをかました場合大体9割の敵は一瞬混乱状態に陥る、筈なんだが。
「シイッ!!!」
「うぉお容赦ねぇ!!!?」
「当たり前、でしょっ!!!!」
だがこいつはその9割側ではなく1割の方だったらしい、当然か。金魚鉢みたいな箱庭で共食いしあってる鮫と同じ類の人間だもんなこいつ。
目の前に迫り来る拳をこちらも拳をぶつけることにより質量差で押し勝ち弾き飛ばす。
「〜〜〜〜ッ、やるね!!!」
「そりゃ、どう、もォ!!」
早く立ち上がれ、早く、速く。相手は待ってくれないぞ!!
体を跳ね上げバックステップ、何度もやれば隙にはなるが体勢を整えるために今は1フレームだろうが猶予が欲しい。だがその前に距離を詰めて……嘘だろ今までのが最高速じゃなかったのか!?
「はやっ…………!?」
「生憎「最速」を名乗ってるから、ね!!」
蹴りが俺の腹に叩き込まれた。俺がこの試合の中で何度も押し付けてきたゲームシステム的にどうしようもない拘束……怯みが付与される。
「まずっ…………!?」
「はぁぁっ!!!」
背中に一気に回り込んだミーティアスが俺の背を思い切り蹴り付ける、体の重心が前に傾いたと思った次の瞬間気付けば真正面にいたミーティアスが俺の腹に深く拳をめり込ませる。
体力の削れる音、残りは4割割る一歩手前。
非力寄りとは言えスーパーヒーローとして十分な力を兼ね備えたミーティアスにより俺の体が宙に浮かび上がる、バク転の要領で回転したミーティアスの踵が突き刺さった。
残り体力3割と半分。
「がぁっ…………!!」
装甲が弾け飛ぶ感覚、有利に押し進めていた体力比4:3.5で俺が不利を背負う形になった。
「…………これで、
「……だからやけに手緩かったのか、あの局面なら間違いなく俺を落とせただろうに」
「私がミーティアスで、貴方がカースドプリズンである以上、「
そうかよクソッタレ、だが、まぁ…………
「そうか……そうだな。そんじゃまぁ…………」
グッと力を込め、内なるそれを覚醒させんと両腕をクロスさせながら装甲を掴む。ミーティアスが訪れるだろうそれに対しての警戒を最大レベルまで引き上げたか、迎撃姿勢を取った。そして俺は……高らかに叫んだ。
「やってやるかよ馬鹿がよぉぉお!!!!」
「!!?!!??」
あぁそうだな、確かに切らざるを得ない状況だ。だが、お前は1つ忘れちゃいないか?
「俺をカースドプリズンだと言うならば!俺がお前に従うわけがないだろ!?!?!!!」
俺は、カースドプリズンは。どこまでも自由で、何処までも我が道を往くヴィラン。だからこそお前の指図なんぞ死んでも受けん、その前に俺がお前を殺してやる。
「
あぁ腹立つ、腹が立つ。この感情は果たして俺自身のものか?はたまたカースドプリズンのものか?どっちでも良い、だがどうしても譲れないものはある。それはつまり。
「お前にだけは、負けてたまるか」
今この瞬間だけは、この際鉛筆にボコられようがカッツォにタコ殴りにされようがリュカオーンに喰われようがどうだって良い。お前を倒せるなら他は何もいらない。
「…………そう、なら、覚悟は良い?」
「出来てなかったらここには立ってねぇよ」
ミーティアスがクラウチングスタートの姿勢を取った。俺は凶星の引力を引き摺り出して放り投げたプロペラソードを回収、構える。右の剣を突きつけ、左の剣を体に沿わせるいつもの構え。
一瞬の静寂、そして。
「行くぞミーティアァァァァアス!!!!」
「受けて立とう、カースドプリズン!!!!」
激突。
◇
『速い!!!!速すぎる!!!??!!!!?最早実況どころではありません!!!』
『いや……えぇ?周囲の状況からでしか判断できませんが凄まじい戦闘になっていることだけはわかりますね……』
とうとう実況解説が仕事を放棄したぞオイ。
だが気持ちは分からんでもない、何せ俺も何度かサンラクとミーティアスを見失うのだから。
「えぇ……
「…………俺は正直見失うことの方が多い、衝突……というより殴り合う瞬間だけはほんの少し減速するから見えるんだけど。
「俺も似たようなもんだ、辛うじて移動中も見えはするが……あの2人、命削ってるぞ」
サンラクがプロペラウィングを剣変わりに振り回し、ミーティアスが凄まじい速度で回避と迎撃を繰り返す。剣を落とした瞬間爪先だけで拾い上げてその衝突が再び離れる前に手元に戻して斬りかかったのは流石にドン引きだ、お前もTAS積んでんのかサンラク。
逆袈裟、唐竹、胴を突いた、攻撃を片方の剣で捌き切って返す刃で右薙ぎ……これだけの行動を10数フレームの間だけで行っている、恐らくこのラウンドの結末がどうあったとしてもサンラクは間違いなく何かしらの形でツケを払うことになるだろうな。何よりドン引きなのはそれに平然と合わせてきてるミーティアスの方だが。
「うわ凄え、今の動き何を食ったらあんな精密さで通せるんだ、やっぱロボットじゃないかあいつ」
「正真正銘の人間だよ、というか下手したらお前が今度はあれとやり合うことになるの忘れてない?」
「そこはまぁ、信頼ってやつだよ」
「こんな時だけ白々しい……うぉ、あの速度でサマーソルトなんて普通平衡感覚消し飛ぶでしょ、VR適性高すぎない?」
「ちょっとちょっとお2人さん!?君らは見えてるかもしれないけど私達見えてないんだよねえ!!解説くらい挟んでくれたっt」
「超速で接近するミーティアスに対して左手に持った剣で牽制しつつ右手で迎撃、即座に対応したミーティアスが空中でブレーキをかけながらサマーソルトをカースドプリズンの後頭部に仕掛け、それが直撃する前に股割りの要領で体勢を落とし掠らせる程度に止める。1度右手からプロペラを手放しミーティアスの足を引きずって転ばせようとするも…………ってところか、これでもまだ追いつかないんだけど聞く?」
「遠慮しとこっかな!!!!どうぞお2人でお好きなように!!」
「おいおい知ってるか雇い主殿、自分で聞いといて結局理解出来ずに投げ出すような奴が即席とはいえうちのチームにいるらしいぜ」
「そりゃ困った、全国に素性をばら撒けばいいのかな?」
「やっても良いけど君らも道連れだからね」
「「知ってた」」
(とは言っても、だ)
「なぁカッツ、雇い主殿」
「何?」
「ぶっちゃけアイツ、勝てると思う?」
「…………ないとは言えない、今のアイツのテンションは間違いなくミーティアスを凌駕しうるだけのレベルまで上がってる。もしかしたら本当に手が届くかもしれない」
「そっかー――……じゃあ、割と行けそうだな」
「けど、HPバーの最後のドットが削れるまでが格ゲーだ、いつ何が起こってもおかしくない」
『くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
『こっちの台詞だぁぁぁあ!!!!』
ディスプレイの先で赫と蒼が激突する、土煙は晴れずあちこちにクレーターが生まれる光景を眺めながら俺は呟いた。
「…………ここまでやったんだから、どうせなら決めてやれ」
友人に対する応援としてはこんなところだろうか、向こうには届いちゃいないだろうがな。