シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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凶星:現界

◆◆

誰かが俺に何かを言った気がした。何を言われたかは知らんが悪い気はしない。

 

ソードを振るう、ソードを振るう、避ける、捌く、ソードを振るって避けられる。当たった、カスダメ、不利は覆らない。

 

「知ったことかぁぁぁあ!!!!」

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

有利だとか不利だとかは考慮に入れない、ただひたすらに目の前のこいつが俺より速く膝をついてポリゴンと化して爆発四散するならどれだけ泥臭い勝ち方だろうが構わない!!

 

「断風ェ!!」

 

「それはもう見た!」

 

1回……正確には2回見せただけなのにもう簡単に対処してきやがるのか、速度がないダウングレード版ってのもあるだろうがそれにしたって適応力が半端じゃない。

 

(このゲームやるためだけに生まれたみたいなスペックしやがって……!!)

 

世の中には結構そう言う奴が多い、このゲームをやるためだけに生まれてきたようなある1本のタイトルにおける完成系のような奴が。残念ながら俺はそれにはなれない、というかならない。クソゲーとクソゲーを渡り歩く渡り鳥的な生活(ゲームライフ)なもので。

そして改めて認識させられた。こいつは、やはり俺が今まで何人か出会ってきた「完成系」の中でも群を抜いて突出してやがる!!

 

振るった刃を必要最低限の挙動で回避された。いっそ滑らかとも言えるレベルで超高速の居合をステップ1つで対処した化け物の膝が俺の腹に突き刺さる。

 

「ぐぅ……まだまだぁ!!」

 

「そこからカウンター狙えるの……?!ぐぅっ!!」

 

ダメージによる硬直を可能な限り最速で解除して突き刺さった膝を掴み顔面を殴り付ける、体力バーが削れたのが見えた。

 

(体力比3:3……イーブン!!切るならここか!?いや、ギリギリ足りてない、さっきから誤魔化し誤魔化し武器を手元に戻す為にゲージを吐いてたからか!!)

 

「隙ありぃっ!!!」

 

「なっ、しまっ……がっ!!?!!??」

 

不味い、駄目だ、意識が一瞬逸れていた。

強引にグラップを解除させられた、横腹に強い衝撃が走り体が絶対のルールにより縛られた。

 

「楽しかった……本当に楽しかったよ、カースドプリズン。けど、これで……(ヒーロー)の勝ちだぁぁぁぁあッ!!!!」

 

ミーティアスが跳んだ、その脚には蒼の粒子が収束していき煌々たる輝きを宿し悪を穿たんと力が集う。

 

(詰んだ?詰ん…………いや、まだだ諦めてたまるか!!

この怯みは拘束時間が短い小怯み!!奴の超必殺(ウルト)が俺に直撃する前に俺の超必殺(ウルト)が間に合えば……あぁクソまだゲージが足りてねぇ、なんだってあんなことしたんだクソが!!)

 

負けるからといえばそれまでだが今は過去の自分が酷く恨めしい、やらなきゃ負ける以上やるしかなかったが……ええいクソ、どうする!?どうする!!!?

 

超必殺は基本的に喰らえば4割、直撃ならば5、6割を平気で持っていく。奴の超必殺は着弾と同時に広範囲が爆発する、仮に蹴り自体を避けたところで爆発ダメージがあるがそこで3割持っていかれることはない……筈!!

完全に避け切れるかどうかは博打のそれ、だがそこに賭けなければ何も出来ずに負けるだけだ。ルート構築、今の俺ならば出来る、出来る。…………オールインだ。

 

「俺を…………舐める、なぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

 

蒼い流星が迫る、赤の凶星を打ち砕かんと真っ直ぐに。

あれが俺に当たった瞬間負けが確定する……だが簡単に負けるつもりは全くない。

 

カフェインが燃え盛る音がする、限界まで研ぎ澄まされた五感とそれを脳と接続する神経が今から起こることのみに集中し俺と奴以外の全てが排除され、視界にはそれのみが映り込む。

 

ミーティアスの超必殺、ミーティア・ストライクとは直撃した対象に流星のエネルギーを流し込み内側から爆散させる技だ。つまるところあの攻撃の直撃という事象において絶対必要条件となるのは「接触」だ。

爆風は許容範囲内、だが回避は許されない……というか今からどう頑張っても避けることはできない。やれることを、出来ることをやる。俺に今許されたのはそれだけだ。

 

盾を作る、盾。戦列を重ねて纏めて連ねて前へ押し出せ……最適解は()()()()だ!!!

 

もはや思考が体に追いついていない、体が先に起こした行動に対して後出しジャンケンで思考側が納得している。

剣を「X」の形に交差させるように放り投げ、テールローター4本もぶん投げる。

装甲の一部も解除して前に押し出し壁を作る……やれることはやった、後は野となれ山となれ、だ!!

 

そして光が直撃する。2枚の大きな壁に4枚の小さな壁。しこうそくどがりんかいてんをこえたか、あたまがいたい、われる、しるか、やききれようがかまわない。

ふんばれ、ガードしろ。押し込め。

 

「――――――――!!!!」

 

何か聞こえる、俺が叫んでいる。視界の端で削れる体力バーが見えた、みるみるうちに削れていく、負ける?負けるのか?ふざけるな、負けてたまるか。

 

思考領域が拡張される感覚、限界まで加速した思考がそれでも尚足らないと叫んだ気がした。

 

プロペラソード越しに衝撃が伝わる、だが直に伝わったわけではない……成功した!!

傍目から見ればクリーンヒットとしか言えないが俺からしたら立派な回避だ、判定として攻撃を受けたのがプロペラソードだからな。

 

壁が食い破られる、その先で己が必殺技を受け切られたヒーローが驚愕に目を見開くのが見えた、そしてその口が喜悦により下弦の弧を描くのまで見えた。

 

そして世界が爆ぜる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

受けられた。ミーティアスは本能的に察した。

 

そして相対する凶星が放つそのオーラは、これより始まるのが消化試合などの類ではなく寧ろここからが最高潮を迎えることを意味していた。

 

土煙が晴れる、そこにいたのは装甲がほぼ全損し防御の役割を果たさなくなった文字通りの瓦礫を纏うカースドプリズン。だが斃れてはいない、僅かな……本当に僅かなHPを残し瀕死と言ってなんら差し支えない状況下であっても膝を屈することはない。何より牢獄の下にある瞳が、そんな劣勢を感じさせないほどに赤く、紅く輝いていた。

 

「ミーティア・ストライクは確かに星の力を対象に注入、爆破させる必殺技……プロペラでガードすれば直撃は避けられるでしょうね。けど……そうまでした理由は何?」

 

「あ"ぁ?(カースドプリズン)のやることに一々ケチつけんのか?避けるよりも分があるって判断したんだよ、それ以上でもそれ以下でもねぇ」

 

「流石傲慢だね、カースドプリズン……改めて、最高だよ」

 

「勝手に言ってろ。…………プロペラソードもない、装甲も瓦礫同然、体力は見ての通り圧倒的不利……だけどなぁ」

 

どちらが有利か、それだけはハッキリしている。

 

「超必殺技、使ったな?ヒーロー」

 

「…………そうだね、来なよ、「カースドプリズン」を倒すには……!!()()に勝たなきゃ意味がない!!!!」

 

「漸く……こっちのターンだ」

 

カースドプリズンは他キャラとは毛先の異なる超必殺技のタイプをしている。その理由はシンプルであり、それがカースドプリズンというキャラクターの設定に密接に関係しているが為である。

カースドプリズンとはそもそも「ギャラクシア・レーベル」に登場するヴィランであり、同作品におけるデウス・エクス・マキナ……もとい「大体こいつが悪い」枠ことギャラクセウスとの因縁がある。

 

遙か悠久の昔、地球。全能存在たるギャラクセウスすら予期できなかった本物のイレギュラーとして生まれた()()は想像を絶する強さを己が欲望を満たす為だけに振るっていた。

本来であればそのまま全てが破壊され尽くし、滅亡の一途を辿るかと思われたがここで待ったをかけたのがギャラクセウス、呪われた牢獄を暴れ回るそれに装着させた。

不自由な自由を与えられた囚人はそれより幾億年、抑圧された自由という何物にも変え難い屈辱に晒され続けることとなる。呪われた牢獄の虜囚、それこそがカースドプリズンである。

 

そしてかつて地球で暴虐の限りを尽くした存在を模倣した力を与えられた青年こそがミーティアスであり……カースドプリズンは抑圧された自由からの解放を求め、ミーティアスに襲いかかるのである。

 

ミーティアスのオリジナル、それこそがカースドプリズン。ゲージを捧げ、勝利の可能性を捨て去ることで発動することができる超必殺とはつまるところミーティアスの打倒でしか脱ぎ去ることの出来ない牢獄から限定的ながらも本来の力を行使することが可能な超必殺。

 

脱獄(プリズンブレイク)!!!!」

 

呪われた漆黒の牢獄に亀裂が走った。

 

弾け飛んだ牢獄の下から赤い体躯が顕わになる、無機質な面を引き剥がし……とうとう破壊の化身が混沌の世界に現界した。

 

それはもはやカースドプリズンなどではない、呪われた牢獄に囚われた虜囚は無機物を取り込むことでその性質を変化させ、呪われた牢獄を脱ぎ去った脱獄者は()()()()()()()()()()()

 

「その姿にここまでワクワクするのは初めてだよ、()()()()()()()()()!!」

 

脱獄猶予は30秒、残されたラウンド時間と比べればあまりにも短いものではあるが……その力も、速さも……何もかもがミーティアスの完全上位互換である。

 

「クライマックスだ、ケリをつけてやる」

 

「勝つのはいつだって……正義(ヒーロー)だ!!」

 

蒼の流星と、赫の凶星が最後の激突を始める。

 

 

 

 

 

長く短い、超高密度の30秒が今カウントを刻み始めた。

 

 




最高密度の30秒を。
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