シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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凶星進撃止まること勿れ、流星灼撃堕ちること勿れ

鈍重な鎧を脱ぎ捨てたことで体が信じられないほど軽い、可動域の狭い装甲を纏い続けていたのもあって今の解放された姿がどれだけ取り回しの良いものなのか文字通り身をもって味わっている。

 

「はやっ…………!!?」

 

「なんだなんだァ!?無敗の女王様は誰かに追い抜かされた経験もないのかァ!!」

 

「生憎私より速い人間がいなかったものでね!!」

 

じゃあ俺が最初の例になってやる、ついでに諸々も精算させてくれ。

1ラウンド目のタコ殴りとあの腹の立つ顔、2ラウンド目はやり返したがそれでも尚鬱陶しかった、3ラウンド目はこの姿になる前まではボコスカボコスカ殴りやがって、今から全部ひっくるめて億倍返しだ。

ミーティアスがバックステップを2回刻んで3メートル距離を離し、プリズンブレイカーがステップを1回刻むと3メートルきっちり距離を詰めるどころか追い越した。

そのまま背骨に向かってヤクザキック、体勢が崩れ転倒するより早く両脚を地面から離して体を捻り後ろ回し蹴りのような形でミーティアスの脇腹を蹴り抜いた。

吹っ飛ぶミーティアスに向かって追撃のために跳躍、そこでミーティアスが心底から驚いたような声を上げた。

 

「驚いた……貴方、そっちが本職なのね!!?!!!」

 

「俺のバトルスタイルは色々取り込んだ悪食スタイルだよ!!」

 

そのゲームによって最適解は異なる、魔法職だろうがゴリラだろうが覆面海パン素手装備だろうが半裸の鳥頭だろうがなんだってやってやる、最後のやつは不可抗力による致し方ないやつだが……ええいおのれリュカオーン、やっぱお前が全部悪い。

吹っ飛ぶ最中空中で体勢を変えたミーティアスが空を蹴り抜き空を駆けんとその足にエフェクトを纏うがそんなものはお見通しだしどこにどう飛ぶかも予測済みだ、やぁこんにちわ、空中ですっ転ぶ気分はどうだい?

 

「随分愉快な転け方をするなぁ!!!」

 

「くっ……厄介なことを……!!」

 

空を駆けんとしたミーティアスに対して冷や水を振りかぶって全力でぶっかけるが如くミーティアスの足首に俺の足を引っ掛け転倒させる、いやもうこの際冷や水ぶっかけるより冷や水入ったバケツで殴った方が効果的か?どうでも良いわぶっ飛ばす。

 

転んでもなお体勢を即座に立て直しミーティアスが空中ジャンプで距離を稼ごうとする、プリズンブレイカーがその程度のことを出来ないとでも?2回空を踏み締めミーティアスに追いつくどころか追い越し、3歩目を蹴り抜いて首をへし折る勢いで回し蹴りを叩き込む。

 

「手錠掛けられる前に俺がお前を文字通りの星にしてやるよォォ!!!」

 

「…………っ、ふふ、ふふふっ!!!まだ……まだ、ここからだよッ!!!!」

 

マジで言ってんのかお前、今までのが最高速じゃなかったとでも……いや違う、まさかとは思うが()()()()()()()()()()()()()()っていうのか!!?くっ、良いだろうクソッタレ!!黒いライオットブラッドから来たりしカフェインよ燃え上がれ!!ニトロの如く!!!!俺の全てを焼き尽くしてでも!!

体力、そして発動した超必殺(ウルト)の性質的にももう止まれない、そして既に10秒が経過した……残りは20秒。攻めて攻めて攻めまくってこいつとの力押しに勝たねば逆にこちらがあっという間に押し込まれて負けるだろう。縦横無尽、今までの1.5倍速で動き始めた怪物相手に追随して攻撃を叩き込む。

 

(くっっっっそ…………!!?キャラのスペック差では確実に優ってるっていうのに中身の性能差が桁外れに違いすぎて押し切れねぇ……っ!!)

 

だがキャラスペックでは間違いなくこちらが勝っているのだ、向こうだってやりづらさは間違いなく感じているはず。であるならば俺はそれを取っ掛かりにして勝ちに行くしかない!!!

 

そしてミーティアスが動き出した。

 

「決着を……つけましょうか!!!!」

 

「やってやろうじゃねぇか!!!」

 

周囲に人影なし、乗り捨てられた車、ひしゃげた道路標識……ここが決戦のバトルフィールドってか。オブジェクト=足場となる俺達にとっては最高のパフォーマンスを発揮できる立地だ、良いだろう覚悟しろよ。

 

「ちょこまかと……っ!!」

 

ミーティアスが凄まじい速度で地を駆け、空を踏み締め、車を蹴り抜きひしゃげた標識を支点に鋭角のターン、加速に加速を重ね目で追うことが困難なレベルまで加速する。

ここまで来ると回避以外の対処が出来ない……何ならそれすら難しい。勘でミーティアスの着地タイミングに再び足払いを仕掛ける、回避された、()()()()()()()()()

 

「ふぅんっ!!!」

 

「がぁっ!!?!??」

 

足払いを回避する為に着地の瞬間跳ねることを予想して頭が来るであろう位置あたりに攻撃を置く、ビャッコに感謝だな、奴の置きカウンターやらのテクニックを見ていなければここまで高精度な予測はできなかった。

ビャッコなんて言ってたっけか……心火を鎮めて河川を舗装するとかなんとか言ってたような気もするんだが今はそんなことに思いを馳せるべきじゃない、殴れ殴れ殴れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「この程度で……(ミーティアス)は斃れない!!!!」

 

「斃れろやぁぁあっぶねぇぇ!!!!?」

 

冗談だろ、殴られて吹っ飛ぶと認識した瞬間吹っ飛ぶベクトル方向とは逆方向にスターロードを起動して切り返して勢いそのままフルスイングで蹴りを放ってきやがった。

 

(喰らったら死ぬ!!)

 

咄嗟に首を捻って腕でいなす形で蹴りが向かう方向を変更、体力は削られたものの直撃よりかはよっぽどマシだ。

逆にもう1度吹っ飛ばしてやる、振り抜かれ伸び切った脚を掴み腰を軸に全力で回転、ジャイアントスイングを行う体勢へと移る。

 

「残りは10秒ォォ!!!」

 

覚悟しろよ一番星!!!ここでケリをつけてやるッ!!

ミーティアスがジャイアントスイングを逃れんとする動きを見せた瞬間頭を掴んで地面に叩きつけ――……なっ、足首を掴んでた腕がミーティアスの足の「暴れ」で解除された……ジャイアントスイングじゃないと勘づかれたのか!!

 

バク転を数回バックステップを1回次の瞬間瞬間移動かと錯覚する速度を持ってミーティアスが俺を急襲する。

思考が今までの人生の中でこれ以上ないほどに加速する、体内の黒いカフェインが恐ろしい速度で燃え尽きていく感覚が全身から脳に届く。

お前が俺から抜け出した時点で既に体は次の手を打っていた、急襲してくることも理解していた。

地を駆け空を踏み締め空中殺法を仕掛けてくるミーティアスに対して取る選択肢はハイキックによる対空、防がれても尚スペックのゴリ押しで少なくとも一撃は叩き込む。

防がれた、振り上げた足を可能な限り折り畳んで地面と足裏を平行にして空を踏み締め上へ跳ぶ。上空からの攻撃に対するアンサーとして対空せざるを得ないだろう?ガードで耐えるつもりか?イアイフィスト流を舐めるな。

 

「12フレームの隙間があるならば……()()()()()ッ!!!」

 

0と1のデータで構築された電脳空間にのみ存在することを許されたキャラや世界、だが結局そのキャラを動かすのは生身の人間に他ならず外部からの攻撃に対して常時100%の解を出し続けるなんてことは不可能、絶対にどこかで虚構(ゲーム)現実(リアル)のズレが起こる。

そして俺が体得したイアイフィスト流とは即ちそのズレを的確に突く盤外戦術だ。「人の形」を捨て去ることがまず第1歩という意味のわからんゲームだった……ともかく、人の形を捨て去った化け物達のズレを的確に突くことで無理矢理「人の形」と言う名の鎖で括り付けるとしよう。

 

幾度となく続く拳の衝撃、一撃ではダメだが何度も何度も殴ることでほんの少しの隙間が認識できる。そこを穿つだけ……!!

 

「そこだぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

「がひゅっ……!!?」

 

拳ではない、蹴りでもない。ピンと伸ばした5本指がミーティアスのガードを抜け腕の隙間を無理矢理にこじ開ける。驚きに目を見開いたミーティアスの喉に俺の指の先端が喉元を突き刺す。

生物としての本能として、己が急所を穿たれた場合死を覚悟することと同義であるがゆえに一瞬ではあるが人体は硬直する。そしてそれは無敗の一等星も例外では無い。

 

「くぅぅぅぅうたばれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

固まった、今か?今だ、今しかない!!!!

突き刺した腕を強引に引き抜き全身に力を込めて体を捻り遠心力を加える。右足を軸に1回転、全身全霊ありったけを込めた左脚による後ろ回し蹴りを放った。

 

 

 

――――――――勝った。

 

 

 

確信、今この一瞬だけ全てがどうでも良くなる、頭の中に残るのは「勝利」の2文字のみ。この一撃をミーティアスのどこでも良い、どこでも良いから叩き込むこと1本に思考を絞りそれを延ばして細くして鋭くして、ただこの一撃のみに全霊を賭ける。

 

 

 

 

 

「なぁぁぁぁぁあめるなァァァァァァァアッッ!!!」

 

 

 

 

ミーティアスが動いた、本能を勝利への執念とこれは虚構だと認識している理性が組み伏せ力業で復帰したミーティアスが動く。殺意すら感じる叫びに気圧される、知るか、勝った方が正義だ。

ただの前蹴りでは威力が足りない回し蹴りは時間が足りない……ハイキックしかない。結論に達したタイミングで恐ろしい勢いで放たれたハイキックを阻む()

 

「なっ――――――――…………!!????」

 

「ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!!!」

 

呪われた牢獄が脱獄した虜囚を再び捕らえんと集う、そして偶々、本当に偶々ハイキックの位置に鎧が吹っ飛んできた。そして鎧によってハイキックが阻害される。

 

「うごぉっ!!?!」

 

「ぐふっ……!!」

 

俺の脚がミーティアスに突き刺さる、次の瞬間俺の横面に衝撃が飛んできた。何だ、何が起こったんだ。……まさか、ハイキックが阻害された次の瞬間脚をしならせて顎を刈ったのか?

 

互いの蹴りが互いをほぼ同時に炸裂した。

俺の顎を刈った踵は俺の脳を揺らし気絶の強制スタンに追い込んだ。最後に感じた感触は奴の脇腹の骨のない部分に直撃した、感触の、筈。

 

今どうなっているのかがわからない。あの一撃では足りなかったろうか?だが気絶が解除されないということは向こうも攻撃できる状況下でないことは明らか、ならば今はお互いの蹴りによってお互いが弾き飛ばされ地面を転がったところだろうか?

 

暗闇の中で何十年も待ち続けるような気分を味わいながらその時を待つ。

そしてその結果は今出力された。

 

「ぐ………………っ」

 

()の全身から力が抜ける感覚、間違いなく体力が全損した時の虚脱感……負けたのか、いやまさかあそこから後の先取って切り返すとか化け物がすぎる、下手な怪物よりもよっぽど怪物だ。

 

(…………視界が戻ってきた、気絶の状態異常が時間制限で解除されたのか?だからって何だって話なわけだが……あ?)

 

目の前にミーティアスが立っている。その姿は威風堂々間違いない強者の風格……そしてそんなミーティアスが、今。

 

「ぁ……………………」

 

全身から力が抜け落ち倒れていった。

 

 

 

 

 

 

 




さぁ、結末を見に行きましょう。あなたはどのような未来を望まれますか?
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