シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
◇◇◇
『さぁエキシビジョンマッチ、シルヴィア選手と
『謎の覆面選手最後の3人目……それまでの2人が傑出した実力を見せてきた以上期待を隠せませんね』
『ところで魚臣選手、3人の覆面選手との関係性を伺っても?』
「雇った傭兵ですよ、言っておきますけど素性は内緒ですからね?そっちの方が面白いじゃないですか」
普段のこいつの振る舞いを全世界に暴露してやりたい。
そんな思いが名無しの覆面と顔無しの覆面の胸に宿るも前者は下手なことをすれば道連れにされる為黙る他なく、後者は疲労困憊につき思考能力が最低限スレスレを割っているかいないかの辺りを彷徨いている為それ以上頭が回っていない、よって魚臣 慧の本来の性格は秘匿され続けることとなった。
『なるほど――……では、っと、互いにキャラクター選択に突入!!やはりというか何というかランファン選手は予想通りバッドテイルですね!!』
『バッドテイルはそのキャラクターのバックボーン上他のヒーローキャラと比べてかなり異質なキャラですね。オールマイティでどんな状況にも対応可能なステータスが売りのキャラです、ですがシャンフロエンジンを搭載したことによるシステムの激変により一部テコ入れが入ったとの情報も入っていますが……え、
解説が冷静さをかなぐり捨てて驚愕の声を漏らす。その目線はディスプレイの中に立つ男、紛れもなくバッドテイルの宿敵である存在……ジャスティスダイルに注がれていた。
『
会場と実況席が湧く中名前隠しが魚臣の耳元で囁く。
「ぶっちゃけ調べた限りじゃそれこそシルヴィアちゃん相手にカースドプリズン当てるより無謀なことしてるよね?本当にあれ勝算あると思う?」
「無謀……なんだよね、ほんと。ランファンは元々ヴィランキャラ相手の勝率は95%そこそこのヴィラン殺しで……それがジャスティスダイル相手だと
ぐったりしていたカボチャ頭が気怠げに首を縦に振り呟いた。
「ぶっちゃけ……他のも考えたんだけどさ?なんつーか……鉛筆と同じタイプだったんだよ」
画面を睨みつけながら顔隠しはこう言った。
「まぁ、要はさ。アイツとジャスティスダイルの相性が恐ろしいほど噛み合ってたんだよな」
◆
「…………ん、よし。行きますか」
目を覚まし混沌の世界の路地裏に1人ポツンと立っていることを認識。すぐ目の前にはキッチンカーかキャンピングカーか判断がつきにくい妙な車が1台止まっているのみだ。
「はーーい、よいしょっと…………」
本来の役割をぶっちゃけるとそれは
「…………『
あまりにも冷徹で、絶対の誓い。自らの追求する正義の為ならば他の何を犠牲にしても良いという正しい正義とはかけ離れた正義。
だが俺はこの正義を掲げて戦わねばならない、
「この街に遍く者達よ…………悪く思うな、全ては、大義の為に!」
そして俺は摩天楼の内の1本を頂上から叩き砕いた。さぁ来いランファン、いや、バッドテイル!!!
「砕け散れッ!!!!」
メインストリートに降り立ち振るった腕が空間を捻じ曲げてそのまま砕く、次の瞬間通りにいた市民やら建造物やらが巻き込まれて吹き飛んだ。警察消防への通報よろしくな!!
(ダイアグラム2:8で超不利対面……なんならランファンが相手の場合勝率0……!!改めて考えると酷い博打だな!?!?!!!)
だが俺が戦うとなった以上これほどまでに使いやすいキャラもいなかった、他のキャラも回せはしたがジャスティスダイルほど馴染むキャラもいなかった。だから博打、俺とジャスティスダイルの適合率と相手との相性差のどちらの方が上かの博打だ。時間稼ぎの方はもう既に考える必要はない、雇い主殿からも「全力でやれ」との指示を貰ったし何よりィ…………!!!
「燃え盛れ黒きカフェイン!!俺ごと喰らい潰してなァ!!!」
内で燃えてるカフェインがそんな大人しいことを許してくれるわけがない。今の俺は勝つまで戦うことをやめない
「来いヒーロー、「私」は「私」の正義に殉じるまでだ」
「…………いいね、なら「オレ」も「オレ」の正義に殉じるとしよう」
目の前に降り立った不倶戴天の敵である此奴になんとしてでも勝たねばならない。
◆◆◆
ランファンはつい数分前まで凄まじく機嫌が良くなかった。
いや、この際それはもうあまり気にしない方向でいこうと自分を律し切り替えようとしても突き付けられた事実が頭の中で鎌首をもたげてくるのだ。
(あの子……間違いなくホテルでも見た、来ると思っていた。なのに
このエキシビジョンマッチが始まってから……どころかそれ以前、控室に入る辺りから客席を見渡し探していたあの青年がどこにもいないのだ。あれだけのギャラクシア愛を見せた彼が来ないわけがない、そう踏んで探し回っていたのに自分の番が来るまで見つけられないとは思っていなかった。そもそもそれを見つけやすくする為にVIP席を開けさせたのにその席には誰も座っていないときた、もしやスタッフのミスか?と思うもののその考え方は良くないだろうとヒーローとしての自分を少し表に出して落ち着かせる。
だが残念なことに当然お目当てたる青年……もとい虎堂は彼女が客席を探し回っている中コスプレをして堂々と舞台上に立っている為見つけられるわけがない。
(いや……そもそも何故私はこうもあの子を探し回っているんだ?それはーー……そう、あのシリーズが好きで真っ先に好きなキャラにジャスティスダイルを挙げることが珍しいだけであって別にそれ以外の感情はないというかいや何言ってるんだ私は??)
自分のおかしな言い訳に自分で疑問を示すがそれに対しての回答を残念なことに彼女は持ち合わせていなかった。
それよりも試合だ試合と切り替えて慣れた手つきで愛するキャラクター……バッドテイルを選択し続いて相手の選択キャラを確認し目を見開いた。
「…………ジャスティスダイル!!?」
己に対してそのキャラで向かってくるということは即ち自ら負けに行くことということと理解しているのか定かではない、だが敢えてジャスティスダイルで挑んでくる皮を隠した何処かの誰かにランファンの興味は向けられた。
「…………良いだろう、ならこちらも一切手加減無しで行くとしよう!!!!」
そしてその30秒後、混沌の街で激突する。
◆
「最初から最後まで!!フルスロットルだッ!!!!」
「それ以上街は壊させない!!!」
知るかよ、俺のヴィラニックゲージ稼ぎの為の糧となってくれ。まぁこれあんまり効率的な貯め方じゃないんだけどさ。
(ジャスティスダイルのゲージ稼ぎの最適解はヴィランの癖して善行をすること……もっと具体的に言うなら局所的には悪行でも全体で見れば善行になる、いわば一より全を優先した善行な訳で。達成条件が難しい分獲得ゲージ量が多い、積極的に狙わない理由はないがいかんせん相手が相手……ッ!!)
「
「うぉおっぶねぇ!?!…………ごふっ!!??」
顎辺りを掠める右脚の鋭い上段蹴り、上体を逸らして回避した次の瞬間左脇腹を抉るような衝撃が俺を吹き飛ばした。嘘だろオイ、あそこから左脚で追撃入れるのかよ下手したらすっ転んで隙を晒すだけだぞ?
「その程度かジャスティスダイル!!!」
「ざけんな!!!」
ぶっ飛んで地面に転がる前に手を着きバク転を数回、自分でも予想が出来ない形で着地するよりもこちらの方が予想できる分まだマシだ。追撃にも対処しやすいしな……ここっ!
「お返しだァ!!!」
手を地面に着けた状態でバク転姿勢を解除、わざと肘を曲げて体勢を低くしブレイクダンスの要領で回し蹴りを叩き込む。ダンス型音ゲーの経験がここで活きるとは思っていなかったが上手いこと決まって良かった。
だが。
「やっぱ厄介だなその
「これがなければまともに喰らっていたことの方がオレにとってはよっぽど怖いよ……!!」
間違いなく直撃するはずだった回し蹴りを捌かれる、追撃の手を止めさせたことだけは及第点だが……ダメージレースで負けた以上全体的な面で見れば落第点としか言えない。改めて思うが……バッドテイルの
「
「オレの眼は聖なる次元より全てを見通すのは知ってるだろう?邪なる非道に堕ちた者よ」
「当然」
だがたった0.2秒という時間は短いようでこういう人間が扱うと凄まじい凶暴さとなって襲いかかってくる、さっきの回し蹴りだってあの0.2秒の思考の引き伸ばしによって強引に回避したのだろう……厄介すぎる。0.1秒まで削っても良いぞこれ。これがあるからガン不利対面だって言われるんだよマジで、全シリーズ通して弱体化続けても尚これだぜ?だが弱音を吐くばかりでもいられない……!
「それじゃまぁ、お前の言う非道な道から正義を執行するとしますか……【
【正義執行】……スピード、攻撃力、耐久力の3つの選択肢の内どれか1つに割り振り底上げを図るスキル。上昇率はそれなりだが速度特化のミーティアスのような速度を得たいならばスピードに極振りする必要があるし攻撃特化、耐久特化にしても元よりそれらに特化したキャラに比べて一段ほど劣るという言ってしまえば器用貧乏なスキル。
「さぁ行くぞ、お前の罪を俺の正義で裁いてやる」
「独りよがりな正義に誰が裁かれるものか!!」
「言ったなお前!!!」
どの口が言いやがる、お前だって基本ヒーローぶってるくせに裏では自分の善と悪を両立させる為に色々工作してた自作自演マンじゃねぇか!!挙句それをバッドテイルの表側が認知してなかったのがなおのこと悪い、だから俺はバッドテイルではなくジャスティスダイルを愛するようになったんだが。
(【正義執行】でステータスを攻撃メインに切り替えたが……!!当てれなきゃ意味ないか!!)
いやだが落ち着け、最悪このラウンドは落としても良い、次のラウンドでこいつの動きを見切れるようにする方がリターンはデカい。力で優っている以上鍔迫り合いとカウンターには押し勝てる、そこを狙うしかない!!
「くたばれェ!!!」
腹に正拳突き、手1つで捌かれ逆にカウンターの発勁を喰らう。足払いは小ジャン1回で対処され顎に掌底を叩き込まれた。
一瞬揺らいだ視界でなんとか認識出来たのは全身の捻りを利用した……崩拳!!!
「まぁぁってましたァァァ!!!」
「なっ、がっ!!?!」
ランファンの扱うバッドテイルは既存のコンボに加えて独自の……というか、自前のプレイヤースキルとして搭載した中国拳法がある。そして今の一連の動きはそれを誘いコンボ締めとなる崩拳を確実に捌き逆にカウンターを叩き込む為の対ランファンカウンター!!今のジャスティスダイルの補正により今のカウンターはそれなりにいいダメージとなりHPバーをガッツリ削った。おらここからが起点だどんどん攻めてくぞ!!
「喰らえ!!」
「喰らうものか!!」
追撃の延髄斬りは見切られ切り返しの下段蹴りが襲いかかってくる。右足で爪先を思い切り踏み付けロック、そーらその骨へし折ってやるよ!!!
「ふんっ!!!」
「あぶっ……!!?」
チッ、抜けられたか。強引にロックしていた脚が引き抜かれバックステップで1度距離を取られる。追うか?機動力は現状向こうのほうが上……HPはこっちが優勢である以上待ちの構えで行くか?
「なるほど……君も中々やるようだね」
「お褒めに預かり光栄だよ全米最高、だが……まだこんなもんじゃないな?」
「…………そう思うかい?良いね、面白くなってきた……!!」
そう言うとバッドテイルは腰を深く落とし左手をフラットに、右拳のみを構える特有の構えに切り替え宣言した。
「ギアを、3段ほど跳ね上げる。ジャスティスダイル、オレがお前の正義を否定してやる」
「舐めやがって……さっさとギアを全開にさせてやる。受けて立とうバッドテイル、私は私の正義を貫き通す」
一瞬の静寂……そして。
「疾ィッ!!」
「ふんっ!!!」
黒い英雄と白い悪が互いの掲げる正義を貫く戦いが始まる。
聖邪の眼
0.2秒の認識加速を行うクソスキル、元々は1秒だったのが笑えないポイントその1。前作でも充分以上にその猛威を振るい世界大会でもその上位8名のうち5名がバッドテイル使用者だった、なお全員どこぞの流星の一口おやつにされた。
【正義執行】
ゲージを消費することで攻撃、スピード、耐久力のうち1つを任意で底上げ可能なスキル。ここまで書くと強そうだが他の特化キャラに比べてやはり器用貧乏感が拭えないどちらかと言えば産廃寄りのスキル。
正義を成す者が非力であるはずもなく、故にかの者は自らの正義を体現するべく【執行】を宣言するのだ。
????
我が名において正義を執行する。
漫画の趣味が合うだけで色々惹かれる女、チョロすぎか…?(書きながらずっと思ってたこと)