シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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永劫想うは心の内にて、永き墓守に終止符を。
特異体験:連鎖反応


脳波を正常値に戻すために早めに寝て、早めに起きた俺は取り敢えずシャンフロにインすることにした。理由は致命の包丁の修理……流石に一本は粉々に砕け散り、もう一本は楔にしたせいでもう耐久はほぼ0、なんとか無事な三本目も半壊状態だ。これでは沼潜の短刀しかまともに使えないのだがその当の短刀も短刀でものの見事に破損……はは、まずは修理だな。お金足りるかなぁ……?というか武器屋のおっさんに怒られないかなぁ……?

 

そんな訳で武器屋に向かったのだが。まぁ、流石は神ゲーというべきか何というか。

 

「へ、閉店…………!!?」

 

いやまぁこんな朝早く(3時)に空いてる店なんて滅多にないか。仕方ない、宿屋に戻ってもう一眠り……ん?

 

「…………あれってヴォーパルバニーじゃ……」

 

運がないと思いながら辺りを見回していたら視界にふっと映り込んだそれに意識が向けられて、それまでの思考が全て強制的にシャットダウンされる。周りにもほんの数人だがプレイヤーがいるが、そのプレイヤーが俺のことを見ていたならそれはそれは綺麗な二度見を披露していただろう。

建物と建物の隙間、カタギの人間じゃまぁ入りたがらないような裏路地に続く道。その隙間から明らかに俺を見つめているそれは間違いなく俺が解体しまくったであろう割と見慣れた二足歩行の兎。

しかし俺が捌いて開いて解体処理をしたヴォーパルバニーと言えば二足歩行の兎と包丁だ、今路地裏から俺を見つめているヴォーパルバニー(仮称)は身も蓋もなく言えば全裸だったヴォーパルバニーとは違いなんかこう……そう、人参の意匠があしらわれたマリンキャップを被り、マリンルックを着込んでいる。前髪(?)は一房だけ黒く、そこがとても印象的に見えた。

 

「街の中にモンスターがポップするなんて聞いたことないけどなぁ……」

 

街中にモンスターがポップするなら定期的に悲鳴が聞こえるとても賑やかな街になっているだろう、NPC諸君の断末魔で盛り上がる街とか見たくねぇ……街中でも常に気を張り詰めさせておかないといけないとかおちおち安心して宿屋でセーブもできない。まぁ取り敢えず、エアエネミーかも知れないし狩ってみるか?

 

一歩踏み出す、その次の瞬間。

 

『ユニークシナリオ「兎の国からの招待」を開始しますか?』

 

「は?……………………なんて!!?」

 

思わず大声をあげてしまう、早朝とは言え夏休み故に数人に見られてしまった。まぁその数人は俺の上半身裸の姿を見るなり目を逸らしたが。大半のプレイヤーが今頃ログアウトして寝こけているのと、数少ないこの時間帯までやっているプレイヤー(廃人)がまだまだ先にいる事に今更ながら感謝した。

 

 

 

ユニークシナリオ――――

シャンフロが神ゲーと呼ばれる最大の所以にしてアンチが攻撃する最大の弱点。

出現条件も受諾条件もほぼ不明、しかし与えられる恩恵は最大。

シャンフロの大まかなストーリーは「世界の開拓」なのだが、それとは別にほぼ無限に存在するサイドクエストがある。その中でも「ユニーク」の名が冠されたシナリオやクエストはどこで誰がいつどのように何がフラグになっているのかわからない5W1Hもへったくれもない未知のシナリオ。

ただしクリアした時の恩恵は凄まじく、武器、防具、スキル、魔法、アイテム……ぱっと思いつく限り例を挙げてもこれらのうち一つ、下手をすれば複数のものが貰えるわけだがそれら全ての性能は一級品の性能を誇り、血眼でユニークシナリオを探し求めるクランもあると聞く。

 

……まぁこれらの情報は全て音ゲー中に仲良くなった対戦相手の人だったり難曲の攻略中の雑談で聞き齧った話だ。クソゲーをプレイしている時にこの手の話題になるとみんな大体「それに比べてこのゲームは」から始まっていたなぁ……。

 

「…………塞翁が馬ってやつだな」

 

あの金ピカドラゴンに装備欄を二つ潰された事は控えめに言って不幸な事件だった、だが条件は知らないがユニークシナリオに遭遇できたことはこれ以上ない幸運と言えるだろう。もしかするとユニークシナリオの発生条件は「装備欄が二つ潰れること」だったのかもしれないし、若干凹んでいた心持ちもちょっとは上がってくるもの。少し怖いのは致命の包丁も沼潜の短刀もボロボロなところだろうか、まぁ手斧(残弾)がたくさんあるし問題はないだろう。

 

「よっし、じゃあ目標はユニークシナリオクリアだな!」

 

どんなシナリオなのか少しワクワクしながら俺は「はい」を押した――――瞬間、爆速で走り去っていった件のヴォーパルバニーを見て慌てて追いかける羽目になってしまった。

 

 

 

よくよく考えてみれば俺はまだ少しばかり天覇のジークヴルムとの遭遇から浮かれていたんだろう。

シナリオ名のその隣に表記された数字と一文には気付いていなかったのだから。ユニークシナリオ……もとい人によっては「魔境」とも評されることのあるシナリオに何の考えも無しに飛び込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

シナリオ名 

「兎の国からの招待」

 

推奨レベル……80

 




クリスマスプレゼントは3話投稿だよ、達成できなかったら?そりゃもう1週間毎日2話ずつ投稿よ
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