シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
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罪武器、ジャスティスダイルの代名詞とも言える武器。その特徴はシンプル、それぞれの背負った罪に応じた特殊能力を備えているというものだ。
この戦斧……
「喰らえッ!!!」
振り下ろした戦斧が地面に突き刺さる、次の瞬間地面が文字通り
「…………ッ、何という……!!」
「この程度で驚いてるようじゃここからはついてこれないぞ!!」
1度手を離し徒手空拳、おら斎賀流護身術の洗礼を喰らえ……!
「
人体の大きな筋肉同士の隙間に貫手を叩き込みこじ開けることで悪漢から身を守る……護る?護身術、極めればこじ開けた隙間を掴んで投げ技にまで繋げられるらしいが流石にそんなこと出来る気がしない。
狙うは右腕、VRの身体には一切の影響はないが果たして現実準拠の脳はどういう錯覚をするんだろうな?
「ふんっ!!」
「…………!!」
だらりと垂れ下がった肘から下の腕をチラリと確認したバッドテイルがこちらに向き直り俺を睨み付けた。
「やってくれるね、リアル方面からの攻撃はお仲間さん同様得意技ということかい?」
「あいつらと同類扱いは不服なんだが……勝てるならなんだってやってやるよ」
「良い心構えだ、そういうのは嫌いじゃない……それに」
バッドテイル特有の構えを取り奴は宣言する。
「この程度でオレが……バッドテイルが堕ちるとでも、本気で思ってはいないだろう?」
「当たり前だろむしろこの程度で堕ちられたら困るわ。まずはこのラウンドを取ってからだ」
「上等!!!」
殆ど同時に駆け出し拳と拳がぶつかる。空いた手を握り締め顎目掛けてアッパーカットを放つが回避され、次の瞬間高速の後ろ回し蹴りが叩き込まれた。
地面に着弾する前に体勢を立て直し踏ん張ってカウンター狙い――――バッドテイルがいない?どこに……上ッ!!
見上げればそこには太陽を背にしたどす黒い影。
(何がくる?何が飛んでくる?蹴りか?拳か?まさかヘッドバットなんて言うんじゃないだろうな!?ともかく対空は絶対だ次に繋げやすいのはハイキック……!!)
足に力を入れ踏み切り体勢、飛び上がって足を大きく振り上げバッドテイルにめり込ませんとする。しかし。
「読んでいた!!!」
「なっ……ぐっ!!??」
振り上げた足をすり抜けながら首筋を狙った手刀が炸裂した。視界が揺らぎ暗くなっていく、気絶モーション……体力は五分だったがここからリーサルまで届くか!?
「ふぅんっ!!」
「…………!!」
感触的に顎を蹴り上げられた、次の瞬間胸に拳がめり込む感覚が走る。気絶が強制解除され回復した視界、だが脱力感は抜けない……そして目の前には拳があった。
「がっ!!??」
瞼の裏で星が散り、数メートルぶっ飛ばされたところで漸くタコ殴りは終わった。…………体力比2:3の不利か、不味いな。強欲の戦斧、は、あの位置じゃ回収はできないと見た方が良いな。ラウンド持ち越し自体は可能だからここはすっぱり諦めて2つ目を切るしかない……だがまだ第1ラウンドだ、運よく回収できた2つ目の罪武器を晒すメリットはあるか?少なくともこのラウンドを取れる可能性が上がるというメリットはあるが…それに対しての後半におけるリターンが少ない気がする。
迷いが生まれる、次をどうするかで足を踏み出せなくなる。カフェインで焼けた筈の脳が回っていないような……ッ!!
「疾ィィッ!!!」
凄まじい速度の蹴りが飛んでくる、受け流した次の瞬間その流れを利用されてもう一方の足がしなり俺の顔を思い切り打ち抜いた。
「この程度か……ジャスティスダイルッ!!!」
「がぁっ!!??」
そして一切乱れることなくコンボが叩き込まれHPバーが吹き飛び……第1ラウンドを落とした。
◇◇◇
『1ラウンド目はランファン選手がコンボを決め勝ち取ったーーッ!全米最高のヒーロー、対ヴィラン勝率90%越えは伊達ではない!!!』
『それに加えてジャスティスダイル相手には勝率100%ですからね……どういった意図で
「おいおいおいおいサンラ……顔隠し!!本当に真面目に考えたの!!?」
「考えたよ……あと叫ぶな、うるさい」
「でも実際終始ボコられてたよねあれ、顔隠し君あの辺はどう思う?」
「どうもこうも……エンジン入ってないんだろうなとしか」
「あのヤバそうなカフェインキめてたのに?」
そこでカボチャ頭が頭を振ってボソリと呟いた。
「キめた……キめてた。けどあれ、俺が飲んだ時も思ったけどなんかすごい
「ラグ?」
「そうなんだよ夏目氏……飲んだ直後から凄いカフェインが来るんだけどなんか、脳があまりのカフェイン量の多さに処理が遅くなるっていうか……実際俺もマジの意味でキまり出したのって2ラウンド目中盤くらいからだったし」
つまり、と名前隠しは結論を出した。
「あれって皮隠し君のフルスペックじゃない……ってこと?」
「あぁ……と言っても、相手があれじゃマジでわからんがな」
何ヶ所かどう頑張っても未来予知としか思えない精度で回避した攻撃があった上に
「どうせ俺達の仕事は――……まぁ、成功よりの失敗だし今更だろ、黙って応援してやろうぜってことで」
見つめる先、そこには無言で佇むジャスティスダイルの姿があった。