シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
◇◇◇
『凄まじい殴り合い!!!!拳と拳の応酬の果てに2ラウンド目を勝ち取ったのは
『何とも派手さには欠けますが……そうですね、格ゲーらしいと言えばらしいラウンドでしたね。どちらかと言えばファイナルラウンドへの準備をお互い進めていたという印象も受けますが――…………』
「…………どう思う?魚臣君、
「まぁちょっとマシになった……ってところかな?」
「控室では結構リラックスしてたからあんまり気にしてなかったんだが……やっぱりあいつもあいつで無意識のうちにって感じだったんだろうな。今はさっぱりなくなってるけど」
この場のほぼ全員が見つめる先、モニターの中ではバッドテイルに向けて真紅の大剣を叩き込むことによって一先ずラウンドをイーブンに持ち越した副将が大剣を地面に突き刺し何かを考え込むように腕を組んでいた。
「…………で、そろそろファイナルラウンドなわけだけどさ。正直皮隠し君って負けても……」
「良い、元々の目的自体はこの馬鹿が盛大に破壊してくれたからな。それに最悪俺が勝つし」
「わるかったってーの……っつっても、今更アイツも負けられないだろうがな。それに何より……」
「何より?」
そこで顔隠しは1度言葉を切り深く息を吸い込んで呟いた。
「――――――カフェインがキマリにキマリまくる頃合いだ、止まろうと思っても止まれないだろうからな」
そこで名前隠し……もとい天音 永遠は凄まじい速度で魚臣に顔を向け小声かつ凄まじい勢いで己になんて物を渡そうとしてきたのかを問い詰め始めた。
「ねぇ魚臣君ほんっとうにそんな劇物この私に飲ませようとしたわけ?ことと次第によってはちょっとオハナシする必要があるんですけど?」
「善意だったんだけどなぁ」
「私にとっては善意にコーティングされた悪意の可能性があるんだよねぇ!!」
「お、落ち着いて……!!ね?!全世界生中継なんだよ!?」
ワイワイガヤガヤと自軍が揉めているのは露知らず、ジャスティスダイルのファイナルラウンドが始まる。
◆
(あ、今俺の調子最高になったな?)
第2ラウンドを奪いファイナルラウンドに突入した瞬間あまりにも楽観的に思えるかもしれないが俺は俺自身のコンディションが最高潮に至ったことを確信した。
俺はサンラクやシルヴィア・ゴールドバーグの様なテンションアタッカーにはなれない。カッツォや鉛筆から言わせれば俺も十分サンラクに近いらしいが俺としてはその評価は不本意としか言いようがないのだ。
確かにテンションによってある程度パフォーマンスは左右されるがそれもある程度のものであり、俺は自分のことを死ぬほど反復練習した行動を100%に限りなく近い精度で再現し精度を高めた行動を培った経験に基づいた直感によって運用することができる……アメリカ側のルーカスに近いプレイスタイルだと自負している。まぁそもそも格ゲーなんて大してやってはこなかったが少なくとも俺はそう思っている。
さて、そんな俺の調子が最高潮になるというのはどういうことか。簡単だ、積み重ねてきた努力を限りなく完璧に近い形で再現できる。ただ今回に限り少しばかり再現のベクトルが違う。
「プレイそのものの練習量は足りなかった、たかが2日3日程度の練習時間じゃ……全ての動きの再現は出来ない」
だから、俺が積み重ねた努力というのは。
「ロールプレイ……このゲームにおける重要な勝利へのピース。さぁファイナルラウンドだ、私の掲げる正義を貫く為に………礎となれ、
感情のブーストはいらない、ただひたすらにジャスティスダイルとして振る舞う。
読み込んだ年月そのものが努力という形に置き換わり、俺のペラッペラなプレイの厚みをキャラに対する理解度が補填する。
建物を壊すなんてことはしない、そこらにいるただ平和に暮らしている人を傷つけることもない。襲うべきは、破壊すべきはこの世界に害を為す悪人のみ。
その為の礎となる彼らを一時も忘れることなく、自らの手が血と悪意に塗れていることを理解した上で尚己の正義を貫くその生き様を、模倣し、再現する。
名付けるなら、そうだな……「
「…………いいね、最高だよ。今まで出会ったどんなジャスティスダイルより君は本物に近しい」
「近しい?違うな」
右足を半歩引き重心を深く落として中腰に、右腕を折り曲げて手を顔の横に沿うように持っていき左腕を伸ばしてまっすぐにバッドテイルを捉える……お決まりの構えを取り
「本物だ」
「そう…………かッ!!!!」
バッドテイルの姿が掻き消える。残ったのは土埃と黒雷の残滓のみ、フォクスライ発動状態か。
周囲から聞こえてくる風を切る音、地面を蹴る音、柱を、壁を車のボンネットを踏みしめる音――――来た。
「ふんっ!!!!」
「があっ!!????」
右側面から伸びてくる5本の指をピンと伸ばして抉りかからんと迫ってくる貫手。だがその貫手か俺に届くことはない、それを認識するよりも先にバッドテイルの脇腹に俺の踵が盛大に刺さったからだ。
ガラ空きの背中はむしろカウンターが来ると読んで敢えて側面から攻撃を仕掛けてくることは読めていた。
だからその場で1回転して回し蹴りを叩き込んだのだ、イーヴィルアイが併用されているかどうかは賭けだったし左右どちらにくるかも賭けだった以上今回のこれは運が良かったな、2度とやりたくないチャレンジだが。
「安心しろ、近しいなんて2度と口にできない様にしてやる」
「ぐっ…………!?」
脚を振り抜きバッドテイルを吹き飛ばす。クリーンヒットしたからな、向こうまで行くのは面倒くさいが仕方ない。
アスファルトを砕きながら前進、ビルの壁面に突っ込み瓦礫に埋もれているバッドテイルを見た瞬間【イーラ】を呼び出し脳天に向かって振り下ろす。
「危なっ……!?」
避けられた、だからこうする。手からイーラを離し再びイーラを展開、特性上罪武器は必ず自分の手元に呼び出される為地面に深々と突き刺さったイーラをすぐさま振り抜ける状態にしバッドテイルが避けた先に向かって振り薙ぐ。
今度は斬るじゃなくて叩き潰す方向性だがな。
「憤怒サンドイッチ!!!」
「何だいそれはぁっ!!??」
壁とイーラで挟み込んで叩き潰すだけだよ大人しく喰らえ、遠慮はいらないから、全額奢りだから。
だが残念なことにイーラを蹴り返されてサンドイッチは不発、お返しとばかりに飛んできた足払いは逆に払おうと伸ばしてきた脚を踏み潰して防ぎ……射程圏内。
「固めたぞ……!!」
「来なよ……!!」
なら遠慮なく。首筋を狙った手刀を捌かれる、カウンターを逆の手で封じ込め捌かれた方の手を素早く構え直し放った掌底は首を軽く動かすだけでいなされた。
(…………1ラウンド目の時と比べて動きにキレが……いや違う、
まさか反応速度が上がっている?そんなバカな、かなりの高速戦闘をこなしているだろうにスロースターターなんて言うんじゃあるまいな?
「どちらにせよ決着は早めに着けねばなぁ!!バッドテイル!!!」
「その通りだ…………オレの勝ちで、決着を着けてやる!!」
言いやがるなこの野郎、だが決着の行方は……私の勝利ただ1つだ!!!
均衡が崩れる、拳2つを引き絞り放った一撃に気を取られたバッドテイルの腹に脚を固定した方の脚の膝をめり込ませ怯み有利を取る、攻め時だっ!!!
ふらついたところに腹に一撃叩き込みそのまま足払いで体勢を崩す。払った方の脚を軸に落ちてくる顎をもう片方の脚で蹴り上げ、最後に踵落としを――――……回避、距離を取られた?怯みが解除された?何故?
「その様子じゃそのコンボの弱点を知らないらしいね……それ、足払いのタイミングでもう1度顎に攻撃しないと途中で怯みが攻撃による強制解除の影響で解けるんだよ。途中までは良かったのに残念だったね?」
ご高説どうもありがとう、何が何でもお前をボコす。
外側をいくら律しても中身はポカポカにあったまるんだぞテメーー!!!
テンションと理詰めの比率が4:6くらい、さらにそこに隠し味の直感。