シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
◇◇◇
『あ、ラン本気になった』
スターレインメンバーは会場にいる誰よりも速く自分達の中で最年少の少女のスイッチが入ったことを察した。
『ああなったランは止められねぇ、シルヴィでも手こずるレベルの怪物だ』
『それを引き摺り出したあの鰐野郎もイカれてやがる、常に先の先を取るなんざ俺だって無理だ……まして相手はラン、【執行】を満足にする前に狩られちまう』
『ルーカスでも無理なら何であの鰐公はやり合えてるんだよ!?』
『俺が聞きてぇよそんなもん!!』
彼らは知っている、いっそ苛烈とも呼べる程にジャスティスダイルを徹底的に叩き潰すが故に彼女は対ジャスティスダイルにおいて絶対的な勝率を誇っているのだと。
彼らは知らない、いっそ狂気とも呼べる程にランファンの動きを徹底的に検証し尽くしたが故に皮隠しはここまで食い下がることができたことを。
そして皮隠しのその狂気じみた努力を知っている者達はと言えば。
「顔隠し君も大概だったけど結局皮隠し君も大概じゃん」
「同類扱いやめてもらえますー?……というか、ランファン改めてヤバいな、
「否定できないのが何とも酷いねぇ……って言ってもビャ、皮隠しも皮隠しで中々に離れ業やってるけどね。やっぱり変態の類だよアイツも」
「「「HAHAHAHA」」」
向こう側の人間をモンスター呼ばわりしたり自陣営の人間を変態呼ばわりしたりと散々なことを宣っている。
と、ここで唯一残ったマトモな思考回路を保ち続けている少女が疑問を呈した。
「この際あの直感お化けが変態なのはともかくとして……ねぇケイ、貴方から見てどっちが優勢?」
なお今戦っている人間に対しての呼び方ではなかった。
毒され始めてきたなと慧は思いつつその問いに答えを返す。
「正直さっきまでは皮隠し優勢だったけど、今のランファン相手だと相当厳しい……かな。何せあの
「ねぇねぇカッツ
「カッツ
「だけど?」
1つため息を吐いて慧はこう言った。
「らしいってのは、邪悪モードになること自体が少ない上に本人がどういう理屈でそうなるのかが全く分からない……要はいつ暴発するか分からない爆弾みたいなものなんだよね。わかっていることはたった1つ、そうなったが最後全くの別物……化け物になる」
◆
「………………ッ、これはっ、強烈…………!!!??」
速い、違う、先の先の
(イタチごっこ……いや、俺が間違いなく不利側のクソゲーを強いられてる……困ったキツいなんてもんじゃない)
バッドテイルの挙動が今までのどれとも異なる全く別物へ一瞬で変貌していく。先の先の更に先、カウンターに対するカウンターなどという冗談か何かの様なそれが圧倒的な暴力として容赦なく俺に襲いかかる。
首筋を狙った手刀を抑えにかかろうとした次の瞬間放たれる蹴りを予測して踏み付けた所もう1本の脚から強引に放たれる膝を受け止め叫ぶ。
「リズムが掴めねぇなぁ畜生!!」
「――――――――ふんっ!!」
「がっ…………!!?」
な、腹、拳……バカな、硬直時間からして絶対に出せない択の筈――――まさか硬直が付与されるフレームの前に攻撃を差し込んだ?人間がどうとかの域を超えてるだろそれはもはや!!??
「ぐっ…………うぅ……!!?」
深く抉るような一撃に絶対に抗うことの叶わない
「疾ィッ!!!」
「ごっ、がっ!?」
顎を掌底で撃ち抜かれた次の瞬間首に蹴りが叩き込まれ、ミシリと嫌な音がなったような錯覚を覚える。生物としての本能が明確な「死」を電脳世界の仮想の肉体から感じ取り怯みとは全く異なる硬直が走った。
(やばっ……このままじゃ、負ける云々以前の問題として殺される!?いや待て落ち着け怯むな!!そろそろ硬直は解ける、リアルの肉体には何の影響もないんだから動け動け動け――――)
「――――うぅゥゥゥゥごきやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!!!!」
必殺とも呼ぶべき猛攻の中怯みが解除され全身に力が漲るのを知覚するのと同時に下腹部に向けて放たれた蹴りを受け止め逆にへし折るつもりで手刀を振り下ろす……止められた、距離を離すつもりは……ないらしいな!!
「一息入れるとかは……!!?」
「五月蝿い、くたばれ」
「ないですかそうですか!!」
裏拳を横面に叩き込む、もう片方の手で受けられ逆に捻じ上げられながら投げられる……前に強引に離脱、バックステップと見せかけた足払いを放つ。
跳躍回避を見てからを槍を展開し腹に向かって突き出すも未来予知でもしているのか
(何より向こうはさっきからイーヴィルアイもフォクスライも使ってない……シンプルな実力だけでこれだけのことをやってのけてやがる!!ウルトを狙っているのは明白……!!)
凌ぎ切れるか?捌き切れるか?この鬼のような猛攻を……機械を脳みそに仕込んでるかのように的確な反撃を許さない対応を抑え込んで……ッ、いや、違う!!抑え込む、凌駕する、超えてみせるんだ!!ここまで来て……負けるわけにはいかねぇよ!!それにな、そのイーヴィルモードとやらのタネは大方予想がついてるんだよ!!
「いくらお前が強かろうと!!その状態のお前が未知数であろうとも!!」
放たれた掌底を受け止め、矢継ぎ早に繰り出されるラッシュを捌きカウンターを叩き込む。
「…………ッ!!」
簡単な話だ、格ゲーというシステム上お前は俺に勝つ為に殴って来ざるを得ない。俺はそこで生まれる隙を狙ってカウンターを繰り返していたのに対してお前は攻撃と攻撃の隙間を限界以上に削った上で俺のカウンターを更にカウンターする形で対応してきた。…………だがそんな芸当、本当にいつまでもいつまでも続くようなものだろうか?
「お前のそれは!!追い詰められた逆境に於いての言わば
現に今のラッシュを返せた、瞬間的な集中力の爆発的燃焼……お前の公式戦全てを見て、至った結論。イーヴィルモードと呼ばれるそれはそのすべてがファイナルラウンド中盤から終盤にかけて起こっていた。だがそんなことをすればガス欠になるのは必然。
「…………その前に倒せば済む話だ!!!!」
「取り繕えてないなぁ必死さが!!!!!」
超短期決戦特化仕様、そんな所だろう。つまり最初の1番苛烈な瞬間を捌けば……恐らく弱体化するはず!!というかしろ!!してくれ頼むから!!
「――――――――――たすけて、ママ……!!」
「…………はっ!?」
「………………!!!?」
そんな声が俺の背後から聞こえたのは、そんな極限の瞬間だった。
◆◆◆
「おいおいおいおい何であんなところに……!!?」
「あの子……確か……!!?」
「あれ私が爆破したNPCじゃん」
「ちょっと待って私が爆破したって何?まさかそんな外道ムーブ全世界に晒してないよね?」
『な、何とーーーーーーーーッ!?NPCがっ、戦場の只中にーーーーーー!???』
『おいおい同情するぞ……』
『なぁ、俺あのガキに見覚えあるんだが』
『
三者三様、両陣営および実況解説観客席から響く驚愕の声はまるで高波のように試合会場全体を包み込んだ。
本来ならばあり得ない状況下、NPCは基本的に戦闘が勃発した地域からは退避するように思考ルーチンが組まれており、事実両陣営の練習期間においても1度もそんな状況は発生していない。
だがもし、もしも。瓦礫に潰されない程度の大きさのNPCが、足を怪我したことにより身動きが取れず大量の瓦礫に囲まれたとすれば。そしてそんなNPCがいる付近で戦闘が始まれば。
そんなゲームとしての奇跡が、仮想世界を現実として認識するNPCにとっての不運が起こってしまったら。
『………………ッソがぁっ!!!!?』
『…………勝機!!!』
その世界を虚構と知る白と黒の影は己のすべきことを果たす為に最高速度で動き出す。
ちなみにビャッコだけずーーっと「