シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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3話目ぇ!!

10時と言ったな?2時間早く投稿さ!!


親分兎を師匠と仰ぐ

「パ、…………父上!件のヴォーパル魂のある開拓者殿を連れてきました!」

 

「おうオルト、ようやった」

 

門の先は西洋風の玉座ではなく、妙に和風な謁見の間。その上座にそれはいた。これこそ本物のハーレムだぞと言わんばかりに雌兎(多分)を侍らせた、天覇のジークヴルム程では無いにしろ相当の圧と力を感じさせる一匹の兎……。

他の兎とは違い人間と同じくらいの大きさの癖して円らな瞳に全身を覆う純白の毛並みは普通に考えればドスの効いたバリトンボイスとまず間違いなく似合うことはないはず……と、思っていたら片目が潰れた原因であろう傷跡や手触りの悪そうなゴワゴワとした毛という要素と奇跡的なバランスで噛み合って威圧感と愛嬌を両立させている。口に煙管のように細長い人参を齧っている辺りにこのキャラを考えた人の情熱と愛を感じるな。

 

俺等(おいら)ぁヴァイスアッシュってぇんだ。このラビッツでカシラァ張ってる」

 

…………このゲームって一応中世のファンタジーが根本だったよね?場違いすぎるほどに極道じみてるヴァイスアッシュがにまりと笑みを浮かべる、えっ。こっわ、曲がりなりにも兎は草食動物だぞ?下手な肉食動物より怖いじゃねーか。

 

「聞いたぜ?お前さんあの英雄狂い(ジークヴルム)と殺り合って英雄の卵認定された(こんがり焼かれた)んだってな?中々ヴォーパル魂あるじゃねぇか」

 

取り敢えず受け流してたけどヴォーパル魂って何?オルトも言ってたけど。

 

「おめぇら開拓者ってやつらはぁよう、すぅぐ強くなってヴォーパル魂を忘れっちまうから気に食わなかったんだがよぅ、こうも将来有望なやつがいるなら俺等直々に鍛えてやるのも一興と思ってな……っつーわけでどうだい?俺等におめぇさんの時間を預ける気はねぇかい」

 

「…………なるほど?」

 

要するに修行クエストというやつなのだろうか、果たしてシナリオをクリアした時どんな恩恵が受けられるのかは定かではないが鍛えてくれると言うのなら拒む理由もない。……教えを請うというならそうだな。

 

「拒む理由などありはしません、よろしくお願いします。師匠(せんせい)

 

リアルの方の師匠と同じ言葉遣いの方が良いだろう、懐かしいなぁ。舐めた口を聞いた瞬間に竹刀が音速か何かの勢いで顔面に飛んできたこともあったもんだ。

見ればヴァイスアッシュは眼をかっぴらき、咥えていた人参を口から離して暫く俺のことをじっと見ていたが暫くするととんでもない勢いで爆笑し始めた、あのー。周りの兎さん達引いてるんですけど……。

 

「うはははははははははは!こりゃあ傑作だ!お前さん、()()()と似たようなのと言うのか!そうか、そうだよなぁ!教えを請うんだ、俺等が上でお前さんが弟子だよなあ!うはははははははははは!」

 

台詞に起こしてみれば俺が全力でぶん殴っても余裕で許されるような気がする。ただこのヴァイスアッシュの笑い方は俺を馬鹿にしたものではなくどちらかと言えば俺を褒め称える感情の方が濃い気がする、この際「アイツ」が誰なのかは聞かないでおこうかな。

 

「気に入った!気に入ったぁぜ!!俺等のこたぁヴァッシュって呼びな!俺等が認めたやつにゃあそう呼ばせてんだ!うはははは!まさか一日で二人もそう呼ばせることを許す日がくるたぁなぁ!!うははははは!!」

 

「はい。ではヴァッシュ師匠(せんせい)と呼ばせていただきます」

 

どうも好感度選択肢で大当たりを引くことに成功したらしい、当たり前の言葉遣いがまさかここまでウケるとは……。

 

「オルト!おめぇさん強くなりたいんだってなぁ?そいつについていきな、強くなれるだろうしおめぇさんも気に入るだろうさ」

 

「えっ?あっ、はい!パパ……じゃない、父上!」

 

ヴァイスアッシュ……いや、ヴァッシュ師匠に俺と同行するように命じられたオルトの「パパ」呼びはひとまず置いておいて、俺はこのシナリオについて思考を巡らせていく。まずこのシナリオは恐らく「アイツ」とやらを含めて二人しか知らない、向こう側が開示する気があるのかどうかは知らないがどういう条件でどのような形で進行するのかは把握しておいた方が後々役立つだろう。

まず間違いなく発生条件は格上との戦闘……それ以上は定かではないが、俺の場合だと恐らく「ジークヴルムの逆鱗に攻撃をした」ことがフラグになったのだろう。この辺りでもう既に高レベルプレイヤーと初心者、プレイヤースキルが低いプレイヤーは実質的にこのシナリオを受けることができないあたり悪意をひしひしと感じる。

 

「…………えーーっと、ではビャッコさん。これからよろしくお願いします、それでは兎御殿を案内させて貰ってもよろしいでしょうか?」

 

「ん?あぁ、よろしくなオルト。頼んだ」

 

◇◇◇◇

「こちらがヴォーパル(ぢから)を鍛える為に使われる兎闘技場……ここでビャッコさんにも訓練を受けてもらうことになると思います」

 

「うっわぁ…………」

 

ヴォーパルバニーに殺された人達はこの光景を見たら卒倒するんじゃなかろうか、大量の兎が武器を各々手に持ち目の前のカカシ相手にクリティカルを叩き込む練習をしている光景は俺ですら寒気を覚える。

殆どが包丁やら短剣やらなのだが中には……何だありゃ、薙刀?恐らく薙刀で広範囲を薙ぎ払って一度にカカシの首と胴を大量に落としている。

 

「もっと先の場所じゃこういう兎も出てくるのか…………」

 

薙刀どころの話じゃない、スレッジハンマーや鉈、メイス、三節棍……うっそだろあのヴォーパルバニー、メリケンサックだと?

可愛い見た目とは1ミリも合わない殺意に塗れたラインナップに冷や汗を流す。しかも何が怖いってどれもこれも真っ赤なんだよ、まず間違いなく犠牲者の血だよアレ。

 

「父上は常にヴォーパルバニーが弱いと思われているのをどうにかしたい、と話しておられます。ですから我々はこうして日々鍛錬を続けているのです」

 

「初心者どころか油断したらあれ上級者でも死神になり得る奴がいる気がするんだが……?うわ、何だありゃ大刀か?」

 

狩猟ゲーとかにありそうなサイズの刀だな……どう見ても人間相手に使うもんじゃねぇだろ、対モンスター思想で設計されてる気が……えっ、何それ分離!?二刀流……というか双剣になる太刀なんて超欲しいんだけど!?

 

「ビャッコさん、アレはかなり技量と力がないと扱うことが難しいとされる武器なんですよ」

 

「マジかフィジカル技量戦士になる」

 

幸運もHPもいらねぇや、ポイント振り直させてくれ。

恐らくまだユニークシナリオの本番にすら入っていないと言うのに俺はひしひしと伝わるこのシナリオの莫大な恩恵を感じた。

 




師匠にやってたからとさも当然のようにお弟子さんロールをかませるビャッコ君、人も兎もたらしこめる模様。

因みにオルトちゃんは口調的にクールに見えますが実は死ぬほどお転婆です、上の何人かの兄、姉に影響された結果大量の属性を詰め込んだ兎になりました。
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