シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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受験期本番ゆえこれまで毎日投稿を続けておりましたが2日に1回更新とさせていただきます。


暴風の如く状況始動

ははぁ、なるほどなぁ。どうもペンシルゴンの所属している……クランと言った方が良いのかな?クランのリーダー殿は何が何でもサンラクから情報を吐かせたいらしい。俺関係ねーじゃんマジで通らせてくれよ。

 

「3………………いや4人かぁ……」

 

「あ?何だテメェ、用がないなら他所に行ってな。殺しちまうぞ?」

 

「あ、そっちの上裸も(キル)しといてねーーっ!」

 

「………………だそうだ。低レベルキルしすぎるとカルマポイント爆増するからできることならやりたくないんだがな」

 

「そりゃ上の奴らもおんなじだろ、だから俺たち下っ端が実行犯にされたんじゃねーか」

 

ふっざけんなよあのクソ鉛筆…まぁ取り敢えず現状を纏めて今自分に課せられたタスクを分かりやすくするべきだな。

最終目標はサードレマの門を潜り裏路地に駆け込んでラビッツに逃亡、その為の前提目標としては目の前にいる4人のPK達+ペンシルゴンの追撃を掻い潜る必要がある。まぁ中身が恐らくペンシルゴンを除いてアレなので案外何とかなるかもしれないがそれでもハイレベルプレイヤー達がスクラム組んで襲いかかってくるのは面倒な事この上ないな。

位置関係としては門、PK、だいたい3メートル空けて俺、そしてさらにその後ろにペンシルゴンと名前を確認していないが妙に兎に執着している人、そしてサンラク。

そして先ほどポロっと言った言葉……カルマポイント。言い方的に溜まるとあまりよろしくないことだけはひしひしと伝わってくる。いっそのこと殺されまくってカルマポイントとやらを上げるクソみたいな嫌がらせをしてもいいんだが、オルトがいる以上それも出来そうにないな。

見た限りでは全員近接職……はっは、安心しろよオルト。舐め腐ったド三流プレイヤーキラーなんぞにそうそう負けてたまるか。世の中には「ここは始まりの村です」と言わんばかりのNPC感覚で新規のスポーン地点に出待ちしてリスキルするなんて事態が普通に受けいられている世紀末円卓(ユナイト・ラウンズ)やこれがこの世界の流儀だよと言わんばかりに笑顔で他人に大量のモンスターを擦り付けていくなんて事が日常の音響地獄(ロバリー・ミュージック)なんてものがあってだな。

因みに世紀末円卓の方はそうすることによって

「騎士失格」と呼ばれる本来デメリットになるはずの称号が何故かメリット効果になっていたり、音響地獄の方では「爆音鳴らし」なんて称号が貰えたりする。こちらも勿論デメリット称号が何故かメリット効果になっていた。

両方とも運営に「何でこんな称号作ったの?」と問い詰めた所帰ってきた返答は「デメリットになる筈が結果的にメリット効果になっていた」らしい。

そりゃそうだよ!NPCの好感度最低になったら武器持ち出して攻撃してくるからそいつら殺してアイテムも武器もゲットでーすとかよりモンスターを集めやすくなるからさらに大量に他人にモンスターを擦り付けて殺しておこぼれを貰うとかとんでも思考になるとか誰も思いつかんよ!というかそんな称号なんで作ったんだ!!蛮族プレイを推奨したの運営(そっち)じゃん!

 

「いや、悪しき思い出(クソゲー)にそこまで思いを馳せるべき時じゃないな……!」

 

萎びかけたモチベーションはクソゲーやってる時よりよっぽどマシだ、はい気を取り直してレッツゴー!!

 

 

◇◇◇◇

アーサー・ペンシルゴンは内心少々焦っていた。

 

(いやいやいや、普通レベル差50もあれば碌な抵抗も出来ずにキルされるもんだよ?何でこの2人耐えられてたの?)

 

一つの要因として、予想以上にビャッコとサンラクがゲーム上のステータス以上の高さを誇るプレイヤースキルを持って張り合ってきた事。

そしてもう一つの要因は、今この場に於いて目の前に倒れ伏している呪術師である。

 

「いやーー……正直中々に楽しめたよ、流石に動物園の園長さん、アニマリアちゃんだね。モンスターを撮影する為だけにデバフやら状態異常を極めただけあるよ、うん。ねぇそこの鳥頭(サンラク)君もそう思うでしょ?」

 

「ふっつうに逃してくんねぇかな……!」

 

「逃す訳ないじゃん、ほら、向こうの狐面(ビャッコ)君共々頑張ってよ」

 

アーサー・ペンシルゴンは廃人狩り(ジャイアントキリング)なんて小っ恥ずかしい異名をつけられている程には、ハイレベルプレイヤーを相手に勝利を収めてきた。

そのペンシルゴン相手にいくらハイレベルプレイヤーと言えども対人に関しては素人の呪術師とレベルが30にも達していない半裸の覆面が善戦したことは十分賞賛に値するのだ。

ペンシルゴンはステータスに表示された夥しいデバフの数に苦笑を漏らしながらサンラクの攻撃を避け、時に受け流して反撃を加える。

 

「そりゃ、ここまでデバフ叩き込まれたらどんなモンスターだって基本は哀れな被写モデルになるしかないよねぇ」

 

「おいおいおいおい……!マジでデバフ効いてんのか……!?」

 

「おかしい……!スタンや毒を何度も仕掛けたって、言うのに。何故……」

 

「んーー?その秘密はねぇ、じゃーん!対呪術師最強メタユニークアイテム、「応報の藁人形」君のお陰でーす!これないと正直何もできずにサンラク君にキルされてたねぇ、危ない危ない」

 

アニマリアは本来であれば相当なハイレベルプレイヤーである。モンスターを撮影するという目的を持ったクラン、「SF-Zoo」のクランマ(園長)スターたる彼女はスペルスロットをほとんど拘束系で構築しており、動きを止めてサンラクがトドメを刺すことも可能ではあった。

 

アニマリアとサンラクがペンシルゴン相手に勝負を決められなかった原因はただ一つ、ペンシルゴンが諸事情から対呪術師最高クラスの対策アイテムを所持していたという……ただただ運が悪かった。そもそもPKに、対人に精通しているプレイヤーであるならば如何に万全の状態のペンシルゴンと戦闘するかが最悪手なのかを理解することができるのだが、アニマリアは対人に微塵の興味も示さずサンラクはそもそもゲームを始めてまだ1週間も経っていない。

 

「なる、ほど…………」

 

「そんな訳で因果応報呪い全カウンター、実際これなかったら危なかったね。ねぇサンラク君!!」

 

「うるせぇ!良いから死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

さて、どうしたものかとペンシルゴンはサンラクの攻撃を受け流しながら思案する。サンラクを仕留めるために引き連れてきたプレイヤーキラーをビャッコにぶつけるのは流石に誤算だった、というかシャンフロをあの音ゲー狂いがやっているとは思っていなかった。まぁあのプレイヤーキラー達がビャッコを倒せるなど微塵も思っていないし、サンラクを仕留めた後も向こうに加勢するつもりもない。

 

サンラクも、勿論ビャッコも。前者はクソゲー、後者はほぼ音ゲー限定とはいえあらゆるゲームを積み重ねた経験はともすればこのゲームのユニーク以上に価値がある。

自分と同等ないしそれ以下のプレイヤーを囲んで袋叩きにすることしかできない二流も良いところのプレイヤーキラー程度でビャッコが止まるはずがない。

過去に似たような判断を下し、そして痛い目を見たペンシルゴンだからこそ油断はしなかった。対サンラクにそれこそ最善線で廃人とも称されるプレイヤーをキルするような装備で身を固め襲撃をかけた訳だ。

 

(あのバカはチキってるし、そのせいでつまんないプレイヤーばっかりメンバーに増えたし……そろそろ潮時だね、カッツォ君もシャンフロ始めたって聞いたしビャッコ君もいる。()()()()にも現実味を帯びてきたね……)

 

ペンシルゴンが思い浮かべたるはかつて自らが所属するPKクラン「阿修羅会」上位15名による討伐隊ですらいとも簡単に殲滅してみせたあの鎧武者。

「阿修羅会」最大の秘密とも言える()と張り合えるのはかつてたった2人で鉛筆戦士(アーサー・ペンシルゴン)の国を堕とした彼らと、かつてたった1人で「面白そうだしもう一回国堕としするわ」と言って残っていた残党(同志)を軒並み()()()()で殺しきった白い虎以外いない。

あとはタイミングさえ合えば計画は達成される訳だが……そこまで考えてふと視線を倒れ伏すアニマリアへと向ける。

 

「ふむ。ところで園長さん?私の記憶違いでなければ「詠唱丸暗記」と「HP1桁」の時だけ使える呪術使おうとしてない?」

 

「……………………」

 

「よっしゃナイスだアニマリアとやら!行くぞエムル脱出だーーーっ!」

 

「ですわーーーーっ!?」

 

にっこり、と。常日頃から表情筋がバキバキに強張る程には笑顔を作っている天音 永遠(ペンシルゴン)をして魅力的だと感じさせるアニマリアの笑みには確かに「死なば諸共」の意思が込められているのを察知した。応報の藁人形は既にストック切れ、破格のメタ性能と引き換えに所持可能数が圧倒的に少ないのが消費系ユニークアイテムのそもそもの特徴である。

 

「ハナセバワカルヨ、オネガイ」

 

「問答、無用って知らない……?【冥府の旅路は汝と共に(フェロウ・トラベラー)】!」

 

「断撃【破城斬(はじょうざん)】!!」

 

最高クラスの呪術師による自滅呪術がペンシルゴンに向けられ、そして…………それと同時に()()クラスの剣撃が放たれた。

 

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