シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
・ エンパイアビー・ワーカーの貯粉毛
エンパイアビーの中でも花粉や蜜を集める事を使命とする個体に生えた柔らかな毛。
花粉を始めとした粉末を溜め込むその毛は戦闘よりも日常生活でこそ重宝される。
・ エンパイアビー・ハンターの狩針
エンパイアビーの中でも狩猟及び外敵への攻撃を使命とする個体の針。
その特性上毒を使うことができない為、針から生えた返しによって突き刺し、毟り抉る事で敵にダメージを与える。
・ エンパイアビー・ハンターの大顎
エンパイアビーの中でも狩猟及び外敵への攻撃を使命とする個体の顎。
彼らの顎そのものに求められたのは、鋭さではなく、硬い攻殻をも砕く頑丈さだった。
・エンパイアビー・タスクフォースの射出針
エンパイアビーの中でも狩猟及び外敵への攻撃を使命とする個体の中でも最上位、巣における防衛や他地域への潜入工作などを行う個体の腕部から発射される針。射出された針は相手に致命の毒を流し込む。
「いやぁ、とても信じられなかったよオルト。まさか腕からマシンガン感覚で針が飛んでくるとはなぁ」
「それを当然のように弾き返すビャッコさんも大概ですけどね」
「いやいや、発射速度こそ速かったけどエイムが良すぎるよあれは。弾道がわかりやすい」
いや虫ってほんとすごいんだなと思わされるわ、一点特化型の殺意に満ちた進化による爬虫類、哺乳類、魚類鳥類……それらと比較すればあまりにも呆気なく死ぬものだからこその悪足掻きとでも言えばいいのか、生きる機能を最低限に攻撃性能に特化するという進化の仕方は何かこう……なんというか親近感を感じてしまうな。真っ当な哺乳類としての進化を果たそうとしてたのにどこぞのクソドラゴンのせいで特化する必要が出た俺になんとなく似ている気がする。
…………つまり俺はビーでありビーは俺であったという事だろうか。成る程ある意味で鏡、俺と似て非なるものだったということか……まぁなんというかあれだけどさ、ドロップアイテムと経験値美味しいです、まぁ経験値は適正レベルとっくの昔に越してて死ぬほどまずいんだけどね。
「やっぱり生命って偉大なんだな」
「それは構わないですがビャッコさん、あれを見てどういった感想を述べますか?」
「そりゃ殺意の塊みたいな奴らを喰うんだからそれと同等、もしくはそれ以上の殺意を重ねるのなんて基本中の基本だよなぁって」
いやぁ、素晴らしいな殺意の塊……俺たちから少し離れたところで俺と戦闘を行ったエンパイアビーとはまた違う役割を持っているんだろうか、それが
…………あっ、ごめん訂正するわ。そういえば思い出したハナカマキリだあれ……モチーフとなったやつを授業か何かで見た気がする。
「はーーー…………流石に、初見でこれ攻略できるかわからんな」
「花が変形した……?いえ、モンスターが花に擬態していたんですね」
オルトの言葉は誇張ではないな、俺はエンパイアビー・何某の生け贄がなければ気付くことができなかった。それほどに見事な擬態だったな、素晴らしい擬態能力だ。わざわざご丁寧に自分の体色を変えた上で更に花畑に絶妙に隠れる姿勢……困った困った、これじゃ気楽に進める気がしない。
「取り敢えず狩れば済む話かな」
というわけでアイテム屋で購入した投げナイフ投擲、うっ、この存在さえ知っていればクソ鳥の悪夢はもう少しマシだったのではと思わせてくれる。いや、嫌な記憶だ思い出したくない。
外部から与える衝撃……それもダメージを伴う攻撃だ。大質量による擬態の看破、花に擬態する特性上耐久力が低いんだろうかハナカマキリは花弁の如く弾け飛んでいっ…………ほう?ほっほーーん?
「へぇ、物理で轢き殺すのがベストなんだなぁ……」
「あれは確か……クアッドビートル?」
甲殻は装甲と呼ぶに相応しい。頭部より伸びた4本の角はまさに王者の証と言えるな。蜂と比べると本当に同じ虫かと疑問に感じる。無駄な部分のほぼ全てを削ぎ落とし軽量化を図った蜂と違いその超重装甲を支え維持し続ける重く、そして体に響き渡るような低音の翅音。
「はっはっはっ、とんでもねぇなおい。カブトムシとクワガタのキメラってか?ファンタジーしてんね」
どーなってんだあれ、左右の
「んーーー……あれは無理かな、逃走一択で」
「
「わぁ蛮族だぁ……まぁ戦ってみてもいいけど、ちょっとどうにもならないよあれは」
「流石に冗談ですよ」
いやまぁどちらかと言えば結構戦いたい欲があるんだがさまざまな要因を加味した上でこの……えぇと、オルトが言うにはクワッドビートルだっけか?クワッドビートルと戦うにはFoEっぽいクソ強モブというのは少々デメリットが多い気がする。
まず大前提、目立つ。サンラク共々追われている真っ最中の俺はそろそろサードレマを既に出ていることもバレる頃だろうか。何より千紫万紅の樹海窟にもそろそろ人が来る頃だろう。なによりあのハナカマキリですら手こずりそうな感じがしたんだ。おそらく十数分、いやそれ以上の足止めを喰らう羽目になるだろう。このサイズのモンスターとドンパチやることになるなら音は確実に響くだろうな、プレイヤーから目立つこと間違いなしだ。
次のデメリット、ただただ純粋に不利。ドチャクソに不利。これが地上での戦闘であるならばやりようはまだなんとかなるだろうが向こうは空飛ぶわ超大質量かつ一撃でハナカマキリを爆砕することが可能なウルトラ馬力を飛行中に発揮可能だ。軽戦士?AGI特化?そうですね、だからと言って三次元起動可能な暴走車を相手するつもりはない。それも込みであの重装甲を突破できる気もしないけどね?投げナイフもそんなに数買ってないんですわ。
「…………んー、逃走経路確保よし。さぁレッツゴぉぉぉお!!?!?」
ヒューーーッ!!なんだそりゃ!ロターテムーブ使いながらその大質量で突っ込んでくるとかギャグじゃねぇか!?顎と角込みだととんでもねぇなぁ!
「失礼しますね」
「うぉっ……!」
首元にオルトが飛びついてくる、ちょくちょくそこ乗るけど気に入ってるの?
回避!ふはははは直線起動しかしてこない脳筋の攻撃なんぞ簡単に避けれるわ……は?
ちょうど目の前で頭ひとつ分のすぐ隣を急停止した上で反転、再突撃を敢行したカブトクワガタの角が目の前を通過する。
「ひえっ、訂正するわ普通にやばい」
「ビャッコさんってよくとんでも挙動する敵と当たりますね」
「やだよそんなの……」
いや、とはいえエグいな。攻撃モーションの感覚が想定より速い。スタミナ管理軽く間違えるだけで死ねるわ。貧乏性がここで出てしまうな、ハナカマキリのドロップアイテムは回収させてもらおう。カブトクワガタが再び反転し俺の元に突っ込んでくる。残念そこにもう俺はいないんだなぁこれが!
「どこみてるんですかねバカ虫がよぉ!」
「煽るの好きですね、ちなみに下手したら死にますがその口を閉じるつもりは?」
辛辣だねオルトさん、ごめんよつい癖でさ。
◇◇◇◇
殆ど音ゲーに篭ってばかりなのでアクションゲームは専門外と言っていいのだが、「樹海」というフィールドは比較的合っているんだな。なんて事を頭の隅の方で考えながら現在逃走中。
正直大樹やら蔦やらが俺の盾となり逃走のための隠れ蓑になる。ただまぁここまで脳筋だとは思わなかったかな、ちょっと誤算だったかも。
「障害物の言葉の意味を辞書で引っ張ってきてくれ……!」
大樹を俺とクワッドビートルの間に挟むたび破砕音、ちらと後ろを振り返ってみたところどうも大樹など意にも介さずひたすら突撃を敢行しているらしい。このエリア、少し見渡しただけでもやけに倒木が多いんだなとは思っていたが下手人はお前か。
「これどうします?一生追いかけてきますが」
「うん、俺もちょっと考え中」
特大の、それこそ俺が数十人乗っても全く問題なさそうなサイズのキノコ達のカサの上を遠慮なく飛び跳ねながら考える。どうもこいつあまりにもしつこくないか?音響地獄で鍛え上げられた擦り付けの技術をもってしても全て失敗し、化かしの枝葉を死角で使っても俺と看破し突っ込んでくる。運が悪いだとか執念深いとかとはベクトルが違うし少々妙だな、大方俺がなんらかのフラグを踏んでるんだろうな……うーん俺がここでやってた事?おっとあぶね。
「採取効率アップだなぁ」
「言ってる場合じゃありませんよ」
それはごもっともだな、まぁそろそろこれ以上動くと動きに影響も出そうだしそろそろ本気で逃げ切る作戦を考えるべきだな。
「えーーーーっと……俺がやった事……やられた事……あっ」
蜂、蜜、ここ樹海……カブトムシとクワガタのキメラみたいなもんだし樹液……?いや、それこそが蜜ってわけね。
わぁ思い当たる節あったよ、多分このストレージパピヨンの蜜袋が原因だわ。
まぁそうだよな、その図体じゃちまちまちまちま飯を食うのは嫌なんだろう。そんな食い方するくらいなら略奪したほうがよっぽど効率がいいって訳だ。……世紀末円卓からの出身か?……
道理でここまでしつこいわけだ、自分の飯は効率よくありつきたいし確実に食べたいよなわかるよ。だからって他人のインベントリ内の食物わかるってどうなってるんでか。
「投げて楽しむ……なるほど、こういう用途なのね」
「ちなみに投げるつもりは?」
「毛頭無いかな」
「…………なぜ?」
「金欠」
「あぁ、なるほど」
というわけで投げるつもりはないな、それにもう攻略法には見つけてしまった。ほーらそこの労働者くん、