シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「おっ、あれかな!?」
「……まさかとは思いますが」
オルトの頭の中を俺は覗けないからわからないが多分お前の考えてることで大体合ってると思うよ。
嫌そう、というよりは「嘘だろお前」、みたいな……まぁ俺もオルト側だったら思ってたかもしれない。誰だって目の前に広がるクソでかい巣に背中に直線特攻カブトクワガタを背負った状態で突っ込むと言われたらそりゃ誰だって嫌がるだろう。まぁ俺の知り合いは何人か嬉々として突っ込みそうな奴らがいるが。何なら俺もどちらかと言えば突っ込む側だが。
では化かしの枝葉装備。化ける対象はエンパイアビー・ワーカーだ。
「
エンパイアビーの巣に着地!即座に離陸!
ドガァァァァアンという音。間違いなくカブトクワガタが巣に直撃した音だ!
一斉にエンパイアビー共がカブトクワガタの迎撃に入る。俺?ワーカーに化けてるんで敵判定されないんだなこれが、マジで便利すぎる。
変身状態をさっさと解除してそこら辺の巣がよく見える木で悠々と観察を始めようか。モンスターがお互いの足を引っ張り合う光景は良いねぇ。
「さて、素材掻っ攫うか」
「どんだけ素材が欲しいんですか……」
オルト、ここでひとつ良いことを教えてやろう。人というのは「本当にこれで足りるのか?まだ取れるならもっと取っておいた方がいいんじゃないか?」という思考によく陥るんだ……俺もよく陥る。今みたいに。
「まぁプランはいくつかあるけど……多分あれ、カブトクワガタが勝つんだよな」
見てくれ、エンパイアビーがいくら群がり針を突き立てようとも意に介すことなく薙ぎ倒してるぞ。どうなってんだあの化け物。
まあ本音を言うなら両方共倒れで全部掻っ攫うのが一番楽なんだけど。多分それは許されないしなぁ……
「おっ、あれが女王ってやつかな?……やれやれ虫の王様!針なんかに負けるな!」
カブトクワガタがその身体をフルスペックで運用するには先ずある程度ひらけた場所であること、そして無防備な甲殻の下側を露出する為の一瞬の隙をどうにかすることが必須条件。それだけで恐らく蜂は当たれば消し飛ばされるだろう。
「ただまぁそんな易々と負けるわけもないよなぁ」
そこは流石蜂といえば良いのか、何十匹が殺されようとも果敢に針を発射しその何本かは甲殻に突き刺さっている。強大な個バーサス精鋭なる少数の群と言ったところか。
カブトクワガタがガチガチと顎を大きく鳴らし威嚇する。指揮系統が半壊したエンパイアビー達が女王直々の命令に落ち着きを取り戻し、再び一糸乱れぬ連携を取ろうとし始める。
素材のこととか一回全部忘れて本気で語りたくなるエンパイアビー対カブトクワガタの対決の決着は果たして。
◇◇◇◇
群のおよそ8割が死に絶えながらも、一切統率が乱れることなく連携を徹底したエンパイアビー達の勝利に終わった。どのエンパイアビーもボロボロだが、勝利の証を女王に渡すべく抉り取ったカブトクワガタの頭部を高く掲げる。
ギチギチ、ギチギチギチギチと。生き残ったエンパイアビーが歓声を上げるかのように顎を鳴らし大合唱を始める。
その中に何故か頭に葉っぱを被せたエンパイアビー・ハンターが一匹。
「…………君らの敗因はまぁ、何と言うか」
変身を解く。
「仲間を見抜けなかった事かなって」
カブトクワガタは良くやったよほんと。ハンターはほぼ全滅、タスクフォースやその他諸々の特殊な蜂は女王を除いて皆殺しにしてくれてるんだから。
それじゃあまぁ、全部まとめていただきます。
・クアッドビートルの勇角
クアッドビートルの撤退を知らぬ猛々しき角。非常に頑強なそれは武器や防具に非常に重宝する。
生まれついて好戦的な彼らの生涯は短く、それ故に永く生きた個体は強い。
・クアッドビートルの凄顎
クアッドビートルの立ちふさがる困難を打ち砕く凄まじき大顎。驚異的膂力あっての斬れ味は人が十全に扱うことは不可能。
永く生きた、即ち永く勝ち続けた個体は逃走を死よりもなお嫌う。
・クアッドビートルの重甲殻
クアッドビートルを強者たらしめる重厚な甲殻。重く、硬いそれはクアッドビートル以外が扱うことを考慮していない。
クアッドビートルの素材を使った武具は古来より退却知らずの破軍の象徴とされた。
・クアッドビートルの鱗扇翅
クアッドビートルの身体を浮遊させる強靭な翅。その秘密は鱗のように幾つもの「翅膜」が重なって一枚の翅を形成している。
ただ戦い、ただ進み続ける彼らの死に場所は戦いの場の他にはない。
「はは、やっちまったなぁ?」
「どこか卑怯な気もしますが……」
「何言ってんだオルト。逃げずに立ち向かったカブトクワガタ、それを倒した蜂共を俺が狩った。敵討ちってやつだよ」
「最初からストレージパピヨンの蜜袋を投げていればこんなことにはならなかったのでは?」
そっと目を逸らすことにした。うるせー!金欠なんだよこちとら!
◇◇◇◇
「そろそろアイテムも集まってきたし、エリアボスの所行こうかな」
俺のインベントリに加えて拡張インベントリ…………訂正、オルトのインベントリにもアイテムが詰まってきたようなのでここで一回探索を終えボスに向かうことにした。いやぁ、あと一回戦闘すればどうやら再びレベルアップっぽいしボスでレベルを上げて、溜まっていたステータスポイントを振ろうかな。
「そういえばこのエリアのボスってどんなの?」
「あまり詳しくはありませんが蜘蛛だそうです。何でも上からものが落ちてくるとか」
ものってなんだ?その疑念は結構早い段階で解決された。
「うっわ、タチ悪」
目の前で丸太に潰された剣士を見て思わず合掌してしまった。哀れな剣士、死んでしまうとは情けない。