シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
ヴァッシュがいる玉座の間の前にはサンラクがいた、お前も呼び出された口か?
「ん?ビャッコかよ、てことはお前も呼ばれた感じ?」
「やっぱサンラクも呼び出し受けた感じか、さてさて何を言われますのやら……」
…………うっわぁ、めっちゃくちゃ険しい顔してるぅ。何だ、何かしら地雷を踏んでしまったのか?その地雷を踏み抜いた原因は鉛筆なので俺たち悪くないで通せねぇかなぁ、無理か。
「おう……エムルやオルトから話は聞いたがよう、お前さん等の口から聞かせてくれや………あの
「あー、ええ、厳密には俺達の友人が挑むのに手を貸す感じですかねぇ」
「はい、
…………死に損ないねぇ?俺は墓守のウェザエモンについてそこまで詳しくは知らない、知っているのは攻撃モーションくらいのものだ。ジークヴルムの時も少し思ったがやけにユニークモンスターに詳しいヴァッシュの言葉は脳に刻み込んでおく必要があるだろう。
「おめぇさん等も分かってんだろう? おめぇさん等がまだ
「そうっすね」
「はい、それは承知しています」
サンラクがレベル30そこそこ、俺がレベル35だもんな。準備期間無しのぶっつけ本番なら9割9分9厘即死…………肉盾にすらなれないことは確定だろう。
しかしここは恐らく重要ポイントだ、NPC……それも明らかに超重要キャラであるヴァッシュからの質問だ、高確率でフラグや好感度に直結するだろう。この場で俺とサンラクに求められるのは「2週間あるんでガチガチに準備してメタりまくった上で挑戦するから問題一切無し!」なんてプレイヤー目線からの発言ではない。世界観とキャラ設定に基づいたロープレ、それこそが今この状況下においてのベストアンサーになる。
サンラクもほぼ同時に同じ結論に辿り着いたのであろう、ここで出せる回答を模索しているのが察せられる。
俺も考えていこう、シチュエーションは何だ?「わざわざ死ににいくようなことをする自分を引き止める強キャラを説き伏せる」ってとこか?なるほど、割と王道な展開だな。さてここから浮上する問題は説き伏せる為に何を根拠とした上でどのような形で説得するかになるわけだが……
「…………別に俺は、「勝てる」という確信があって挑むわけじゃあないんです兄貴」
サンラク=サン!?!
「ほう?」
落ち着け、落ち着け俺よ。突発的な譜面の加速や変則的なノーツを対処し続けてきただろう?リアルタイムで変動するコミュターンだって乗り切ってみせるさ……!
サンラクが繋いだ、単語が繋がって文章が出来上がっていく。記憶からヴァッシュの行動言動を思い起こせ、俺の立ち位置を再確認しろ、キーワードは『ヴォーパル魂』…………!
◇◇◇◇
「さっきも言った通り、俺達はあくまでもサブ……補助、主幹となるのは俺達の知り合いです」
…………まだだ、まだ黙っているべきだ。サンラクが俺達の立ち位置を説明して私利私欲などでなくあくまでも友人の助太刀であることを示してくれている、俺がここで首を突っ込むものでは無い。
「今、墓守のウェザエモンがどういう状態かご存知ですか兄貴」
「いや?奴に会ったのも相当前だからぁよう」
スイッチする、任せろ。アイサインを送れば意図を察知したサンラクが俺に発言権を譲る。
「今かの墓守の御仁は人々に悪虐の限りを尽くす殺人者集団を育て上げる為の踏み台……言ってしまえば
PKなんて言っても伝わるわけないし別の例えにしてみた、別にならずものとか普通の悪党とかでも良いがある程度誇張しておくのも時には大事だろう。
「此度墓守の御仁に挑むことを提案したのはその集団の内の1人……ですがそいつは墓守の御仁を本気で倒すつもりです。あらゆる手を尽くして対策を講じている、それを俺達2人はこの目でしかと見届けました」
マジで誇張表現無しなんだよなこれ、じゃなきゃ俺は当然としてカッツォもサンラクも計画に乗ることはなかっただろう。少なくとも今鉛筆に渡されてテキストファイルとして携帯端末に保存されている「計画書」は生半可なものではなかったしギャグやらネタやらの言葉で切り捨てられるような作りでは一切なかった。これで「ドッキリでした〜」なんて書かれた看板を掲げた日には俺は鉛筆との縁をあっさり切ることになるだろう。
「しかしながらそこまで手を尽くして勝率は4割……いえ、3割が妥当といったところでしょうか」
「そりゃあ無謀ってやつじゃねえのかい? 俺ぁ死にに行くことをヴォーパル魂と言った覚えはねぇぜ?」
…………うーむ、どちらかと言えば正しい意見を突きつけられてるのは困るな。スイッチいける?
「ご尤もで。しかし友は……いや、俺ももう一人も負けるつもりはありやせん」
流石だぞサンラク、俺が蒔いた種を完璧なタイミングで咲かせやがった。さてここからが本番というべきか、言葉をロマンティックに……演出をドラマチックに。アシストは任せろお前は挑戦の2文字で済むピザ生地を限界ギリギリまで薄く引き延ばせ。
「俺達も、人も……そいつの
「成る程、なぁ……仁義を出されちゃあ俺も弱い」
おいおいおいおい完璧かサンラクお前、MVPはお前だよ間違いない。
「だがおめぇさん等が弱い事実に変わりはねぇ、そこんとこ……どうなんだよう?」
任せろ。
「2週間……それが俺達が墓守の御仁に挑む迄の猶予です。俺達やもう1人の協力者も未だに木っ端の未熟者ですが……必ず間に合わせて見せます。不遜な
サンラクの120点のロールプレイから援護射撃を繰り出してみたがさて、果たして結果はどうなることやら。まぁ極論を唱えると今回のユニークにおいてヴァッシュの言い分なんて聞く必要がないのだが、好感度を保ちながらウェザエモンの挑戦を認めさせるにはここを問題なく通す必要がある。
唯一の懸念点があるとするならばヴァッシュの背景がイマイチ明らかとなっていないことだろうか、恐らくというかほぼ確定であるがユニークモンスターの一体、ヴァイスアッシュ……もし仲間意識とかそういうのがあるというのならば割と詰みだな。土下座切腹……うーん、いろいろ死に方を考えねば。
「…………おめぇさん等の言い分は分かった」
「っ!」
「話を聞いた時ぁ、ヴォーパル魂を勘違いしたもんかと思ったがよう……おめぇさんの中のヴォーパル魂はくすんじゃあいねぇ。おめぇさんの覚悟、確かに
心の中の俺がくす玉とクラッカーをスタンバイしサンラクがサンバの用意をし始めている、来たか? 来ちゃったのか………?
「可愛い娘等の頼みもある、ちぃとばかし
パンパカパーン! とくす玉が真ん中から割れて中から「祝! グッドコミュニケーション!」と書かれた垂れ幕が露わになり、紙吹雪の中でクラッカーが鳴り響いた。それと同時に心の中のイマジナリーサンラクが超高速でサンバを踊り始めた。