シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
俺とサンラクはヴァッシュについて来いと促され、今兎御殿の廊下を歩いている。
「あいつはよぅ、不器用なやつさ」
…………あいつ?ウェザエモンのことだろうか、世界観的な角度から情報をもらえるのは随分と助かる、聞かせてもらおうじゃないか。特殊勝利条件も分かるかもしれない。俺はヴァッシュの言葉を聞き逃すことのないよう耳を澄ませた。
「下手くそな嘘のせいで女房を失っちまって、糞真面目で加減をしらねぇもんだからああして死ぬに死ねねぇ身体になってまであの場所に立っているんだぁよう」
死ぬに死ねない、か。考えうるものとしてはゾンビ、アンデッド?アンデッドはちょっと意味が違うかもしれないが恐らく殆どあっているだろう。
「俺等ぁが会った時はまだシャンとしてたぁがよぅ、今となっちゃあ不器用な誓いだけで動く生きた屍よう……」
「……それでも、俺たちは挑みます」
「おう、やってやれ。あいつぁもう自分で倒れることができねぇ、なら誰かが張り倒して寝かせてやんなきゃならねぇ……俺等はあいつ
「――――――…………」
ヴァッシュは他のユニークモンスター(?)にちょっかいをかけるつもりはない、と。各自の設定があるのかどうかは知らないが相互不可侵的な何かがあるのだろうか、それにしたって墓守のウェザエモンを倒すと言っている俺達2人に手を貸そうとするあたり完全に無関係不可侵を貫かなければいけないと言うわけでもなさそうだし……考察が必要だな、こういう考察を頼むとなると知り合いに考察中毒者が1人いたがあいつは今別ゲーの世界観考察に夢中になっていたはずだ、恐らく興味を示すことはないだろうな。
「おう、着いたぜ。ここを使うのはいつぶりだったか……おうおう、ちゃあんと掃除してあるじゃあねぇか」
「そりゃあオヤジに掃除を任せちょうたら炉が埃で詰まっても放置するけぇのう」
「おうビィラック」
「ビィねーちゃん!」
「ビィラック姉さん」
行き着いた先はこじんまりとした鍛冶場。セカンディルで沼潜の短刀を造ったおっさんの鍛冶場やサードレマの鍛冶場と比べると…………何だ?少なくとも炉があって金床があって金槌がある普通の鍛冶場である筈なのにこの拭えない違和感はなんだ?
ヴァッシュやエムル、オルトの反応的にヴァッシュの娘でエムルやオルトの姉だろうビィラックと呼ばれた黒兎が鍛冶場で俺達を出迎えた。というか
(というかもしかして全員違う語尾とか訛りだったりしない?)
口から飛び出そうになった言葉をなんとか口の中で留めて呑み込み、ヴァッシュ以下エムル以上オルトより少し上サイズの黒兎と目線を合わせる。
「ワリャ、オヤジやオルトが言うとったビャッコけぇ……成る程なぁ、イーヴェルに似た目をしちょる」
誰だそいつは。頭がこんがらがってくるから今度何かしらメモを取っておくべきなのか……?
「ビィラック、
「! ……オヤジが久々に金槌握るんけぇ?」
「おう、あの
「へえ……待っとってな、今炉に火ぃ入れるけぇな」
ごそごそと作業を開始したビィラックから目線を切りヴァッシュが俺たちにこう言ってきた。
「おう、ヴォーパルの武器ぃ出しな」
「え、あー、両方?」
「両方でよろしいでしょうか」
「おうよ」
言われた通り俺とサンラクは
「おう、おう……ちゃあんと武器に認められてるじゃあねぇかい、これならイケるだぁな。おう、おめぇさん等手持ちに何か素材を……おめぇさんが苦労して倒した奴の素材はねぇかい?」
咄嗟に頭に浮かんだのは天覇のジークヴルムだったがあれは善戦というより悪足掻きの部類に入るから却下。クアッドビートルやエンパイアビー・タスクフォースなどが脳裏に浮かんだが……うん、やっぱこいつの素材だな。
「苦戦などではありませんが、強く記憶に焼き付いているモンスターの素材を」
「…………やっぱりおめぇさんはこれを使うと思ってたぁぜ」
アイテム欄から
「…………鱗、か。良いじゃあねぇか、モノの価値をよぉく理解してる」
ドゥーレッドバルカンの鱗……翼膜や牙、爪なんかも落ちていたし拾っていたんだが、この鱗が個人的には1番とんでもないと思っている。
あの超速機動、あれを実現させていたのが翼と恐らく心肺機能に由来するモノなんだろうがそれに耐え得る鱗が余りにも硬すぎる。刃が通らないというのはジークヴルムやそれ以前のモンスターで何度か体感したがそんなもんじゃない、ジークヴルムが鎧を重ねて押し潰し圧縮した鱗を持っているならばこっちはそこから更に超合金でコーティングしている。
サンラクは俺も戦った例のクアッドビートルの甲殻を素材として渡していた、確かに角顎も脅威だったがあれの最も凶悪な点はドゥーレッドバルカンに比べるとまだマシだがそれでもアホみたいな硬さとそれを活かした突進攻撃だもんな。
「ビィラック、炉はどうでぇ?」
「ぬくうなってきたけぇ、もうちいとかかるけぇの」
「じゃあよう、先に準備だけしちまおうかい」
ゆっくりと壁に吊り下げられた様々な道具を吟味していくヴァッシュをサンラクと眺めているとくいくいとベルトを引っ張られた。その感触に俺が振り向き、サンラクも俺に釣られて視線が映る。その先にはヴァッシュによく似ている不敵な笑みを浮かべる黒兎。
「ワリャ、運のええ奴じゃけえの。オヤジが金槌握るんのはここ数年なかったことじゃき」
「そうなのか? えーと……ビィラック、だっけ」
サンラクが問いかけると大きく頷きながら黒兎……ビィラックはこう言った。
「ん、アニキがラビッツのこくおー?とかいうのを継いだでな、わちぁオヤジの
え、本業鍛治師なの?
面越しでも俺の表情がわかるようになって来たのかいつの間にか首に纏わりついてきたオルトが説明しにきた。
「確かにビャッコさんは知らないでしょうね、パ…………父上は、鍛治師なんです」
「それもタダの鍛治師じゃあない、鍛治を極めたもんが名乗ることぉ許される「名匠」にして、失ぁれた神代の武器を鍛える「古匠」……そん二つを極めた「神匠」、それがわちらのオヤジじゃ」
目を輝かせるビィラックとエムル、オルト。そして俺とサンラクが見る先、火が炎となった炉の前にいるヴァッシュが、金槌を振り下ろし音を響かせた。
次の回はめちゃくちゃがっつり書きたいのでここで一旦ストップかけます。