シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

47 / 184
ビャッコの覇兎をサンラクとおんなじ対刃剣だと思ってる方、覇兎は双刃刀だよ。


刹那、されど永き時の墓守に終止符を望む 其の八

「いいなーユニークいいなー」

 

「お前そればっかだな」

 

「悔しかったら自分で見つけてどーぞ……っと」

 

オルトとエムルちゃんの紹介をしてからずっとこの調子だ。ユニーク関連だったことが原因なんだろうがこれがずっと続くと少々うざったくなってきたな。当のオルトは俺の肩に乗っかって移動の労力削減中、エコロジーだな?歩け重い。俺は兎の止まり木じゃねぇんだよ……兎の止まり木ってなんだ?

 

「いいなーユニークいいなー、俺も兎をもふりたいなー」

 

「はいはい、その為のレベリングだろ」

 

「今現在ユニークのためにパワーレベリングするって事忘れてねぇ?」

 

「自分で見つけるのと他人が見つけたやつに乗るのは別物だろー……お、あれじゃない?」

 

ギャーギャーギャーギャーと「自発と助太刀は違う」理論を並べ立てるカッツォが不意に一点を指差した。視線を向ければそちらには、風化や劣化の気配を感じるものの今まで見てきたどのエリアとも全く異なる異質さ……SF要素がありますよと言わんばかりの扉があった。

 

扉の向こうにも道はあったが道の先にはどう考えても飛び越させる気の無さそうな特大の亀裂が走っている。運営さんの想定通りってところか?あまり気に留めるようなものでもないだろうに何故かサンラクがやけに亀裂を気にしている。どうしたサンラク、なんかこの亀裂に思うところでもあるのか?

 

「はよ行こうよ」

 

「ん?あぁ……」

 

「何だよサンラク、とうとう変態であることに嫌気がさして飛び降り自殺でもしたくなったのか?」

 

「ちげーよ!というかそれならお前も似たり寄ったりだろ……!」

 

「斬新な開き方してるけど、これ自動ドア?ってやつ?」

 

「ねじ切れた上で歪んでるのを開けると言うのは間違ってると思うぜカッツォ。世紀末でもこんな開け方ないだろ」

 

「そりゃそうか」

 

「はぁ……ったく。さて、中に入ったらまずは地下2階?まで行けとのことらしい」

 

「じゃあ行こうか」

 

俺withオルト、サンラク&エムルちゃん、カッツォが明らかに長い年月を過ごしたことにより役目を放棄せざる得なくなった扉を潜り、神代の鐵遺跡へと足を踏み入れるのであった。

 

◇◇◇◇

「うわすっげぇ、ここだけ別ゲーみたいだ」

 

「黒い板がぐいーん!って動いてますわ!」

 

「……いや、明らかに出てくるジャンルがファンタジーよりもポストアポカリプスじゃ……」

 

どう考えても出てくる作品を間違えている気がする。どこの中世にこんなSFしてる遺跡が出てくるってんだ。

 

「これに似た光景どっかで見た気がするんだけどな……ああそうだ、ブレイヴ・ギャラクシー・ファイターのラスボスステージだ」

 

「何そのゲーム」

 

「ちょっと知らないゲームですね……」

 

「全世界で評価されたSF格ゲーの金字塔なんだけどなぁ」

 

何だよ格ゲーじゃねぇか!俺が知ってるのは音ゲーだよ!音ゲーなら神も凡も良もクソも知っているが流石に全くの別カテゴリにおける特定ステージとか分かるわけないし知ったこっちゃないんだよなぁ……。

 

「うぉぉ……目の前にこういうのが出てくるのはビックリするなぁ。ファンタジーしてないけど」

 

目の前をスーーっと通過していく浮遊する黒色のプレート……らしき金属板を眺めながら俺は呟く。この遺跡というエリアがこれまでのファンタジーを由来とするものであると言うならば、こちらはファンタジーはファンタジーでもサイエンスなファンタジーだ。

 

風化し錆きった扉を越えて……恐らくは元々エスカレーターだったのであろう所々が崩落した階段を降りた先に待っていたのは、マジで誇張表現抜きで「黒い板が空をそこそこの速度で浮遊する」広大な地下施設であった。

それもその黒い板、どうもただの金属製ではないらしい。サイバーチックに線をなぞりながら発光する金属板(プレート)が宙を浮遊し、時に着地、壁に延々とぶつかり稽古をする光景……。

たったそれだけでもゲームエリアとしては及第点、だと言うのにここを作ったゲームデザイナーはその程度じゃ満足ができなかったのか更に荒廃要素を加えたらしい。

元々は金属のみが構成するエリアだったろうに、この場所はギリギリ文明こそ維持しているものの風化と劣化により生じた亀裂から日光が差し込んで征服欲が旺盛な植物がSF空間に根を伸ばして無機質な空間に生命の息吹を吹き込んでいる。

 

「こういう滅んだ系のエリアは個人的に好きだな」

 

「ああいう動くオブジェクトってバグると面白い挙動するよな」

 

「お前マジでクソゲーのやり過ぎで脳みそイカれてるんじゃねぇかな……にしてもなんつーか、ノーツみたいな……」

 

「一回眼球丸ごと洗浄してそのクソゲーフィルターと音ゲーフィルター洗い落としてきなよ」

 

ついさっきまでここを格ゲーのラスボスステージだとかなんとか言ってたやつが何言ってるんだか。

 

「サ、サンラクサン!なんかこっち来てますわ!」

 

エムルちゃんが何やら騒ぎ出したのでふいっと目を向ければどうも本当にエネミーらしい。

 

「うぉ、場所も場所だな。警備ドローンとかそんな感じなのかな?」

 

ちょうどサンラクの頭辺りの高さを飛行しつつこちらへやって来るのは正三角形の形をした金属の塊、どういう原理で浮遊しているのかとても気になるピラミッドのミニチュアみたいなの。

 

「どうするオイカッツオ」

 

「ぶっちゃけ俺がやったほうが速いんだが……」

 

「あー、とりあえず俺が殴ってみるよ。経験値欲しいし」

 

そう言って素手のまんま飛び出したオイカッツオを見送る。ミニチュアピラミッドが突っ込んできたカッツォを敵と認識したか、フリスビーよろしく回転しながらカッツォに向かって突っ込んでくる。

 

「素直な動きだ、カウンター練習用のエネミーかな?」

 

お?そんな呟きを聞いた次の瞬間ミニチュアピラミッドが透明な壁に阻まれたかの様に弾き飛ばされる。……んん?もしかしなくてもあれレペルカウンターかな?他人が使うのは初めて見たかもしれない。

 

「赤!」

 

……魔法か?あれ。オイカッツオの拳が何やら赤いオーラを纏う。次の瞬間オイカッツオがノックバックして空中姿勢を崩しグラつくミニチュアピラミッドの真下に潜り込むかの様に肉薄し重力などクソ喰らえと言わんばかりに拳を振り上げる。

 

「クラッシュアッパー!」

 

「おー」

 

「はーー、中々エグいアッパー」

 

「砕け散りましたね」

 

「い、一撃ですわ!?」

 

まぁオーラ的なものを見る感じ普通の素手によるアッパーなんてものではないだろう。恐らくバフとやらなんだろうが……まさかのワンパンとはね。ミニチュアピラミッドがポリゴンと化し、アッパーを振り上げた状態で余韻に浸るオイカッツオの拳から赤いオーラが消え去る。

 

「なんの職業だ?」

 

「修行僧(拳気使い)……いわゆるモンクだね。武器を装備できない代わりにバフで素手を強化しまくって殴る職業。ちなみに今のはSTRとVITに補正入れる【拳気「赤衝」】って魔法」

 

「なんだそりゃ、魔法(物理)職かよ」

 

「魔法職(物理)を公式がやっていくのか……」

 

うーん、面白そうだけど俺にはあんまり合わなさそうだな。ただ拳にオーラを纏わせた上で戦うというとは浪漫を唆られるな。しかも赤……恐らく「色」が詠唱、魔法のトリガーだったのだろう。発生が早いという意味でもカッツォ自身のプレイスタイルにも噛み合っていると言えるだろう。

 

「でも武器の補正が受けられないのは結構痛いし、あんまり硬い敵相手だと逆にダメージ受けることもあるから、中々上級者向けかな」

 

「成る程ね……ちなみにステ振りどんな感じ?」

 

「あー、それ俺も気になるわ」

 

「軽戦士ビルド……からAGIに振る分をHPとVITに振った感じ、カスダメ食らうこと多いからタフネスさを伸ばしてみた」

 

格ゲーマー的な思考回路をどうもありがとう。カッツォは格ゲーばっかりやってるしな。殴り殴られ、ゲームシステム的なものもあるだろうが根本のスタイルからして基本的にはダメージを前提とした戦い方……めちゃくちゃ簡単に言うならば「やられる前にやれ」かな。サンラクは大方「当たらなければなんてことはない」だろう。

ちなみに俺は「ノーツも攻撃も等しく捌くもの」だ。

カスダメの蓄積で気づいたら死にかけという危険性を加味しても回避スキルを使う分の挙動にかかる時間やコストを攻撃にオールインできるのは中々にデメリットに見合った性能なのではなかろうか。

 

「サンラクは……ああ、言わなくていいよ。どうせ紙装甲STR・AGI特化でしょ」

 

「残念!AGI・LUC特化の幸運戦士でした!……っていうかそれより俺はビャッコの方が気になるわ。あんまりこういうジャンルのゲームしないだろうしステ振り中途半端になってない?」

 

「俺か?AGI多めに攻撃周りのステータス中心に振ってるよ。どうせ上半身裸だし防御振ろうが体力振ろうが大して変わらんだろうし」

 

「うわぁ、めっちゃ分かる」

 

その後もやいのやいのとステータス談義に花を咲かせ、エムルちゃんとオルトが「ヴォーパル魂」を連呼するもんだからカッツォが疑問符を浮かべ……わかるよカッツォ、なんなんだろうなヴォーパル魂って。まぁ兎にも角にもひとまず万全の状態で地下2階に到着したのだった。

 

「……なんていうか、荒廃具合が悪化してない?てっきり下は無事なのかと思ってたんだけど」

 

「確かに。俺も下に行けば行くほど設備が無事なタイプだと思ってた」

 

「下から崩落したんじゃない?底が抜けた鍋みたいな」

 

「その例えは絶妙によく分からないかな……」

 

…………ちょっと分かる俺はおかしいのだろうか。

 

一度周囲をぐるりと見渡し、一応兎らしく耳が良いらしいオルトとエムルちゃんが周囲を索敵した後でサンラクがインベントリから地図を引っ張り出して俺とカッツォに見せて来る。

 

「このフロアから隠しエリアに行けるらしい」

 

「隠しエリアねぇ……なんか俺って本来自分で探す要素を他者から提供されっぱなしな気がするんだけど」

 

「今のご時世ゲームプレイ前に攻略サイト見る奴だって珍しくはないんだ、気にするだけ無駄だろ」

 

「そもそも音ゲーなんて見てみろ、攻略サイトがないとまともにクリアできない高難易度譜面がゴロゴロしてやがるぞ」

 

どんな神曲であったとしても譜面が理不尽であれば途端に沼る。神ゲーは攻略サイトが充実してて素晴らしいね。クソゲー側の音ゲー?馬鹿かお前は、そんなもん出回ってたら俺は泣いて感謝するよ。無いかあっても馬鹿みたいに情報が少ない、以上だ。

 

「んじゃあまぁ行きますか」

 

俺が先陣切って一歩を踏み出す。

 

 

カチッ。

 

 

「は?」

 

なんか踏んだ?

 

「ちょっ!?おいビャッコ……!」

 

「ビャッコ!」

 

うわぁ、足元の感覚が途端に消え去ってるぅ。あっはっは、なんだこりゃ地面に穴が空いて……うん、おのれ重力。そして…………

 

「だぁぁれだこんなSFチックな空間に落とし穴なんてくっっそシュールなトラップ仕掛けた野郎はァァァァァァァァァァァァァァ……」

 

「「ビャ、ビャッコ――――ッッ!!」」

 

俺とオルトはそのまま無事落下していった。無事とは。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。