シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「お前仮にもここにいたんだからもうちょっと周囲のこと考えろよ……あっぶな!!」
そんなこと知ったことかと言わんばかりに撒き散らされる4本の即死光線……ありていに言えばビームを回避し、4本の腕から繰り出される拳の上に飛び乗りラッシュを避ける。
俺1人では防戦一方で攻勢に転じる余裕もない。武器を展開するという隙を晒した瞬間ビームか拳かで俺は消し飛ばされるだろう……であるが故に。
「やったれオルトォ!!!」
「マジックエッジ!!」
オルトの魔力を喰って生み出された魔法の刃。それはまっすぐにゴーレムに突っ込んでいき……カンッと弾かれた。
「「えぇ…………?」」
いや嘘だろお前魔法耐性的なやつまで搭載してるの!?戦闘に特化し過ぎてない!?だが……!
「一瞬でも動きが止まるなら取り出せるぞ……!もう一回ぶち込んでやれ、その後は離れてろ!」
「了解です!……【
魔力の刃が再び直撃する。その一瞬においてウィンドウ操作し、俺は覇兎や沼潜の短刀とは異なる一本の
ラビッツにおける武器屋の解放……そしてその武器屋で1番初めに作った武器は物量に押し潰され頭蓋を毟り取られた哀れな(ただ巣を半分崩壊させていたからイーブンの可能性あり)クワッドビートルの素材から作られた武器。沼潜の短刀君ももちろん強化を施したが先ほどのマジックエッジの弾き方などを見るに少々分が悪そうなので今回採用したのは新しい方だ。
「さぁ、振るって見せようじゃないか……戦角武刀【
大太刀……と言うには余りにも刀身がゴツい、やっぱり刀っていうよりも大剣とかの方が近いかもしれないが一応カテゴリ的には太刀らしい。なんでも鋼を造る時にクワッドビートルの素材を燃やした上に折り返し鍛錬の時に角を一緒に混ぜ込んでいるらしいが詳しいことは知らん。サンラク共々寝てたしな。
ただ分かるのはコイツが業物だってことだな。
「おっしゃいくぞ……!」
鞘から抜き払い構える。剣道の心得?HAHAHA何を言ってるんだ、モンスターにそれが通用するとでも?
「シィッ……!」
構えたまま肉薄、ビームと拳を避けながら一閃叩き込む。スキルとかないから単純に素のSTRで斬りかかった訳だが……
「良いねぇ、面白い性能してるなぁとは思ってたよ……!」
レベルがそろそろ90代に届こうかというオルトの攻撃をものともしない装甲に確かに刃が通っていた。
戦角武刀【黒染矛双】……この武器はクリティカルによるSTRの補正や覇兎の様な効果は無い。ではどんな効果なのか?それは「攻撃時の移動距離と速度に比例して耐久値減少を軽減し、与ダメージを増幅させる」というものだ。
たった10数メートルかそこらの距離であの装甲に一太刀入れられるだけで評価が爆上がりしたな、暫くはこいつに頑張ってもらうとしよう……唯一残念なポイントは俺のジョブ的な問題で太刀系の攻撃スキルを取得しづらいことか?
「いやいや、それは自前の剣術スキルで補えば問題なしってやつだろう……!」
先程の発言は忘却の彼方に置いてきた、これから先の戦いにはついていけそうにもないからな……そこぉ!!
「アクセル……!」
アクセルはAGIとSTRを強化するスキル!STRは力……つまり!
「踏ん張る力だって上がるんだよなぁ……!」
振り下ろされた拳を真正面から受け止める、はっはっはっ潰されることはねーぞぉ!!
「そこ、大事なもの詰まってたりしないかぁ……!?」
狙うは腹部、どうも見た感じ他のところよりも装甲が厚い感じがするし……何よりお約束だよね、真正面のやけに硬いところが重要機関って。さて、ではそんな装甲をどうやって剥がすのかって?簡単だよ、剥がれるまで殴れば良いんだ。
「胴……!!」
拳を最小限の動きで見切り腹に一閃叩き込む、まだ壊れない。ビームを姿勢を低くしながら室内を駆け抜け回避、股抜きを敢行して下から腹を斬り上げる。まだ壊れない、というか罅すら入らない。振り下ろされた左腕を支柱代わりに周り込み刀を振り抜く、まだ壊れない。そのままの勢いで一度離れて体勢を立て直し肉薄、振り抜かれた腕を蹴って斬り下ろす、まだ壊れない……あぁぁぁかってぇぇぇぇ!!かくなる上は……!
「オーケー、お互い腹を割って話してみようか……被弾覚悟!当たれば即死!ぶった斬ってやるよデカブツ!」
構えたるは抜刀術……が、距離がバチクソに開いてるのでこの距離からは絶対に当たらない。まぁわざと距離とっただけなんだけどね?
【黒染武双】の距離による与ダメージアップとシャンフロの優れた物理エンジン……通称「シャンフロエンジン」による慣性の法則をフルに活かす為には大体30メートルは離れる必要があった。さぁ、躱す以外の道は無し!お前のビームと拳の密度がどれだけ厚いかが勝負の分かれ道ってなぁ!
「さぁいくぞ、アクセル!」
AGIを底上げし突進、上半身は抜刀術の体制を維持したまま超低姿勢で駆け抜ける!
ビームが飛んできた、見切って回避。
拳が降ってきたし振り抜かれた、余裕で回避。
ミサイルが飛んできた……ミサイル?
「隠し玉なんて用意してんじゃねぇよ馬鹿野郎!」
うおおおしかも8連ミサイルじゃねぇか!マジでこんな研究室みたいなところに置いておいて良いもんじゃねぇだろお前!くっそこうなればヤケだ、
アクセル発動中のみ現時点の俺のステータスならばジャンプレッグとの合わせ技でほんの一瞬ではあるが壁を走り抜けられる!
「おおおおおお……っ!今!」
ロターテムーブ起動、飛んでくるミサイルを回転しながら躱し右から振り抜かれたストレートを紙一重で見切る。
「距離はちゃーんととっておいたぞぉ……!おら喰らいやがれぇぇぇぇぇぇぇ!」
振り抜いた刀は確かに装甲に罅を入れ、そのままの勢いで粉砕した。中に隠されていた炉心だか機関だか……まぁ恐らくこのデカブツの活動に重要だろう何かが露出する。
その瞬間。
「え?」
青白いエネルギー的なそれが露出した何かからスパークし始める。あれこれって暴走的なあれじゃ……
『G,GGGGGGGGGGggggggggg!!!!!!!』
「ちょっ、おおおおおお!?」
やばいやばいやばいやばい!発狂しだした!十中八九腹の装甲を粉砕することがトリガーだろうがこの狭い室内で暴れられるのは非常によろしくない!
待機させていたオルトを拾い上げ回避に努める、さっきまである程度の予測がついていた行動は今や拳をやたらめったらに振り回し足踏みをしながらビームやらミサイルやらをそこらじゅうに撒き散らす災害じみたものに変容していた。
そしていくらセキュリティが生きていてもやはり何百年、何千年と放置されていたが故に耐久性が落ちていたのだろうか。とうとう床に亀裂が入り始め、天井からパラパラと破片が降ってくる。
亀裂の広がりが止まらない。本能的に崩れることを察知した俺はオルトを絶対に離さないように抱き抱え【黒染武双】をインベントリに送り崩壊に備える。そして……ミシミシと嫌な音を立てて床の亀裂が致命的なまでに広がり俺とオルトと下手人たるゴーレムを巻き込みながら完全に崩壊した。
◇◇◇◇
その頃、オイカッツオとサンラクは釣りをしていた。それはもう気が狂ったかのように竿を振り、鮭を釣り上げ時折セットでやってくる鰻を解体することに精を出していた。
「おおおおおぉ……」
「なー、
「ウルセー!俺の今の気持ちがわかるかよ!」
とある要素について無知であったが故にもしかしたら今までの苦戦した戦闘も多少は楽になったかもしれない、というかスキルに関して疑問を持っていたにも関わらずそれを放置し続けていたこと……大前提自分が半裸の鳥頭でチュートリアルの街すら通り越してしまったのが全ての原因ではあるのだが、それら全てをひっくるめてサンラクは釣りという単純作業によってなんとか後悔を振り払おうとしていた。
そこでふとサンラクは今はここにいない……ついさっきまで共に行動をし、よく分からない落とし穴に兎共々落ちていった上裸の狐面……ちなみにその時はオルトのことは心配すれどもカッツォ共々爆笑していた。を、思い出す。「あれ?そういえばアイツもチュートリアルすっ飛ばしたって言ってたような気が……」と思いながら。
ここでサンラクの頭はどうやって煽り倒してやろうかというとても
「おっ、当たった!」
「マジか!鰻が来てくれるといいんだが……!」
結論から言えば鮭と一緒に鰻……正確にはライブスタイド・レイクサーペントは確かにやって来た。が、しかしそれとほぼ同時に振動が始まった。
「は!?え、なに地震!?」
「そんなのまであるのかこのゲームは……てか今は非常に困るタイミングなんだが!?」
次の瞬間。天井に特大の亀裂が走り……
「「………………ぅぅぅぁぁぁああああ!!?」」
1羽と1頭……訂正、1羽と1人、それと何やら特大の
「は!?ビャッコ!?ってかお前なんだそいつは!」
「ちょっ、これ下手したら崩れるんじゃないのここ!?」
「ごめーーん!なんか元からヤバかったのにさらに発狂したやつをデリバリーしちゃった――!」
――――鰻よりも強いな、あれ。
即座にそう判断を下したクソゲーマーとプロゲーマーは1度鰻を8割以上意識の外から追い出し代わりにビャッコが連れて来たゴーレムに対して意識を向け、戦闘態勢に移行するのであった。
◇◇◇◇
「つ、つっかれた〜……」
「魔力がすっからかんです……」
「なんでもいいけどお前、あんなえげつないもん一緒に連れてくんじゃねぇよ……」
「正直アタシやオルトの魔法を当ててもピンピンしてる時はライブスタイド・レイクサーペントより心が折れそうになりましたわ……」
「鰻以上にタフだったね……」
あの後なんだかんだゴーレムの討伐に成功した俺達は地面にへたり込むしかなかった。というかこいつ経験値は美味いが素材落とさねーし何やら重要そうな場所ぶっ壊しやがったしプラスマイナスがっつりマイナスのクソモンスターじゃねぇか……
「レベルどんだけ上がったよ……俺は35から41だったわ……」
「俺さっきまで鰻狩り続けて36とかだったのに40行ったな……」
「俺まだ29とかだったのに38まで行ったよ……」
素材がない時点で半分クソモンスターだったが他2人の話も聞く限り経験値だけは美味かったな……2度と戦いたくはないが。
それとこの「涙光の地底湖」とやらが崩落しなかったのも良かった。レベリング場所がなくなったとなればペンシルゴンが何百回でもリスキルしに襲いかかってくるだろう。
一息つく俺にそういえば、と思い出したようにサンラクが俺に声をかける。
「
話を聞いてみればレベルアップなどで自然に習得したスキルを組み合わせて合体特技とやらを作る要素らしい、選択肢の幅が体感2倍は増える上にスキルのレベルアップがあとどのくらいで出来るのか、進化条件などなども教えてくれるほぼ必須級の施設とのことだ。
………………あれぇ?俺ってもしかしなくても死ぬほど大事な要素見落としてたのぉ?
その後こっそりカッツォから聞いたがどうやらサンラクも知らなかったらしい。聞き齧った知識をさぞ当然のように披露してんじゃねーよ!
創造神「は?」
調律神「はぁ!!?」
仲介神「胃薬…胃薬ぃ…」