シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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あぁでもないこうでもないと頭を捻りながら覇兎のビジュアルを考える受験生の姿が見られたとか何とか。いっその事誰か具現化してくれません?


刹那、されど永き時の墓守に終止符を望む 其の十二

…………まず俺が抱いた感想としては「ゼロとイチの文字列はここまで進化したのか」という感嘆だった。期待と拒絶にほんの少しの……何とも言えない感情が加えられた眼差しを向ける「遠き日のセツナ」。制作者の気が知れないよ、言い方が悪くなってしまうが少なくとも単なるNPCがしていいレベルの感情表現ではないと思うよこれは……え?ここからどうやって自分達のこと話せばいいわけ?

 

咄嗟にオイカッツォ、サンラクとアイコンタクトを交わして誰が初手に自己紹介をするか譲り(押し付け)合う。

 

 

「あー……どうも、ペンシルゴンの愉快な仲間達技の1号サンラクだ、こっちはエムル」

 

「ヴァイスアッシュの娘のエムルですわ!」

 

「ペンシルゴンの愉快な仲間達力の2号オイカッツォ、宜しく」

 

「ペンシルゴンの愉快な仲間達、力と技の3号ビャッコです。こっちはオルト」

 

「エムル姉さんの妹……同じくヴァイスアッシュの娘のオルトです」

 

「馬鹿ワンツースリーとマスコット2匹だよ」

 

じゃお前は何なんだ、馬鹿の黒幕(フィクサー)か?

眼力だけで俺とサンラクとオイカッツォがペンシルゴンにガンを叩きつけているとセツナが俺達の顔をゆっくりと1人ずつ確認した上で口を開く。

 

「なんというか……凄いのを集めたわね、アーサー」

 

「まぁね、今でこそ雑魚だけど決戦までには仕上げるつもりだよ」

 

「そうじゃないわ」

 

セツナがサンラクへ視線を向けて胸を指し示し、次いで俺の顔……恐らくはウカの孤面の下に隠されているジークヴルムの「呪い」を指し示す。

 

「クロちゃんの強い気配を2つもつけてる人に……私は実際に会ったことはないけど、ジークの…子供って呼べば良いのかな?とにかく、ジークの子供の強い気配を2つつけてる人……それに灰被りちゃんの子供2人と一緒なんて……ふふ、懐かしい人を思い出しちゃった」

 

「ええと」

 

「つまりどういうことで?」

 

「ああ気にしないで、ただの郷愁……ずっとずっと、昔のね……」

 

ペンシルゴンをちらっと見てみれば若干困惑の色を隠せていない。どうも普段とは全く違うフラグが進行しているらしい。さて視界の隅で顔芸を披露するだけならまだいいがオイカッツォ、落ち着け。

 

「もう彼女はとっくに死んでいるのでしょうけど、あなた達のお陰で懐かしい記憶を思い出したわ、ありがとう」

 

「え?あー、どういたしまして?」

 

「まぁ、それなら良いんですけど……」

 

なんて返答を返せば良いのかとんと分からない。そんなこんなしてる内にタイミングを完全に逃してしまったらしくセツナは俺達2人から視線を外してしまった。多分ここで無理に聞き出すのは愚策だな、好感度が下がる予感がする。サンラクもそう判断したのだろう、アイコンタクトをペンシルゴンに送って話の先を促す。

 

「セッちゃん、3人にもあいつの事を話してあげて欲しいかな」

 

「……分かった」

 

 

 

『ユニークシナリオEX「此岸より彼岸へ愛を込めて」を開始しますか?』

 

…………これか。俺達3人は躊躇うことなく「はい」を押す。するとセツナは1度頷いて言の葉を紡ぎ始めた。

 

「彼は……ウェザエモンは私の恋人。ちょっとしたすれ違いで私が死んで……それからずっと、彼は私のお墓をずっと……そう、ずっと守り続けているの」

 

「なるほど、それで墓守」

 

「生きていた頃の私が死んで、どれだけ経ったのかは分からないけれど、気づいた時には私はこうなっていた……別に私は死んだ事を未練に思っているわけじゃないの」

 

セツナが見上げる先には、先ほど通ってきた千紫万紅の樹海窟や周りに咲き誇る彼岸花達と違う、余りにも異質な気配を放つ一本の枯れ木。

 

「死とは終わり。終わってしまったものは過去であって、誰かの今を……未来を縛るものではないわ。だから、私はあの人が今も私の(過去)に縛られ続けていることが耐えられない……」

 

だからこそ、そう言ってセツナは枯れ木から視線を移し、更にその上……柔らかく大地を照らし出す満月へ視線を向けた。

 

「彼は私が構築したプログラ……ええと、魔法を使ってここに結界を構築した。月光の魔力を利用し、座標を次元の裏側に「反転」させることで誰にも干渉させないように」

 

プログラ……?凡そ今の話の内容に似つかわしくない、というかゲームジャンル的に出てくるところを間違っていそうな単語が聞こえかけたがめちゃくちゃ簡単にまとめると俺達が今立っているのが片面に色がつけられた紙の表側……つまり色がついている方だとして、ウェザエモンは色がついていない裏側にいる、そういう認識であっているのだろうか。

 

「でも月がその光を失う時……新月の夜だけは結界に綻びが出来る。彼のいる裏座標へと通じる綻びが生まれるの」

 

「そこに飛び込んで戦う……ってことだね」

 

オイカッツォの言葉にセツナが頷き、俺達4人をまっすぐに見据える。

 

「どうか、ウェザエモンを……あの人を、眠らせてあげてください」

 

セツナが頭を下げ、俺達に願い出た。さてこういう時の返答はどうすれば良いのか……少し返答に困ってしまうな。

 

「あーー……」

 

「任せてよセッちゃん、あのへたれ共とは違う。この三人でセッちゃんを悩ませるあんにゃろーを張り倒してくるからさ」

 

は??お、おかしいぞ。少なくとも仕草や口調だと言うのにペンシルゴンらしくない外道臭の一切漂ってこない言葉だと?

思わずオイカッツォ、サンラクと同様に目を丸くして顔を見合わせる。

 

冗談だろ?あれ本当にペンシルゴンか?音響地獄で笑いながら同じ初心者に向かって大量のモンスターを叩きつけた上で「街に行けばヘイトが切れる!」なんて大嘘ぶっこいて最終的に街中のNPCの家屋からどさくさに紛れてアイテムを掠め取り、巻き添えを食らった他プレイヤーの装備を根こそぎかっぱらったあの鉛筆奏者と同一人物なのか??

 

「あのラスボスよりラスボスしてたペンシルゴンが、NPCと談笑……!?人の心を取り戻したというのかっ!?」

 

「冗談じゃない、明日はきっと槍の雨が落ちてくるんじゃ………いや核爆弾あたりでも全然ありうるぞこれは」

 

「サンラク君にビャッコ君流石にそれは失礼ってやつじゃないかなー?」

 

「コノキモチ……コレガ、ココロ……?」

 

「おいプロゲーマー」

 

数秒の沈黙の末に耳を真っ赤にしながらも極めて普段と変わらない笑顔を浮かべたペンシルゴンが取った行動はどう見ても何かしらのユニークだろう何やら神々しい槍を握りしめることだった。

 

「よっしゃ貴様ら3人ともウェザエモン戦前の練習だ、レベル上限の暴力を脳髄に刻み込んであげよう」

 

表面はまともなのに内心が玉突き事故起こしてる……そんな表現ができてしまうのは神ゲーすぎないか?うん、それとセツナさんや。その微笑ましげな表情はどういうAIを積めばそうなるのかな?

数々の音ゲーにおいて俺に立ちはだかってきた難曲達が親指を上に向けて俺ににっこり笑顔を見せる幻覚が見えた。そのままその親指は下を向いた。よく分からないが1つ確信できるのは…これが走馬灯ってことだな。

 

「おまっ!明らかにやばそうな武器を雑魚3人に出すんじゃねぇよ大人気ないぞ!」

 

「まずいサンラク目がマジだよあれ!PKする気だ!」

 

「くっっそ!せめてお前らどっちか生贄になりやがれ!」

 

「「お前が生贄だぁぁぁぁぁ!!!」」

 

「ぴゃあああああなんでアタシ達までぇぇぇぇ!?」

 

「ひとまず退避しましょうお姉ちゃ……姉さん!」

 

HP9割5分で何とか許してもらった。オルトとエムルちゃんはモフられてた。そしてその様子を微笑ましげに、本当に楽しそうにセツナは見ながら目を細めていた。

 

◇◇◇◇

「全くもう、墓守のウェザエモン挑戦前じゃなかったら5回はリスキルしなきゃ気が済まなかったところだよ」

 

「聞いたかオイカッツォ、ビャッコ。これでこそペンシルゴンよ」

 

「ああ、馬鹿正直に侵攻してくる分ラスボスの方が有情とまで言われたペンシルゴンが帰ってきたね」

 

「その通りだな、下手なラスボスよりラスボスしてる畜生外道こそがペンシルゴンだ」

 

「10割いっとく?」

 

3人と2匹が最速で降参の意として背中を地面に付けて両手両足を天に向ける。そうすればペンシルゴンはため息をついてその武装を解除した。

 

「そりゃライオンが家庭菜園作ってりゃ笑……おっと、我々は同じ志を持つ同志だ、話せばわかるそうだろう?」

 

「サンラク君、拳で伝わる青春もあるとは思わない?」

 

「全力で煽ってくサンラクのスタイル嫌いじゃないよ」

 

「無自覚なら治せないけど自覚あるなら治しなよ、それはそれとして俺もちょっと笑った」

 

「アタシにもとばっちりくるからやめて欲しいですわ……」

 

「全くです……」

 

そんな風に軽口を叩きながら歩く帰り道、少しの間口を真横にしっかりと引き結んでいたペンシルゴンが呟いた。

 

「あー…………その、ね。たまにはNPC相手にカッコつけたいっていうかさー……こう、なんというかセツナって名前とか背景的にこう、他人事に思えないというか……えぇそうですぅー、私だってゲームに本気で感情移入することくらいあるわけでぇーっ!」

 

…………ふーん?それ俺達に言うわけ?どうも他2人も同じことを思ったらしい、全力で鼻で笑う。

 

「ゲームに本気になる?大いに結構だろ。何事も本気で取り組めるなら本気で取り組んだ方が楽しいに決まってる」

 

「たとえどんなにクソだったとしても、がお前の場合は枕詞につくとして……まぁ、それに関しては同意見かな。じゃなきゃ音ゲーやっててもつまらないしさ?」

 

「そうそう……本気で遊ぶからゲームは楽しいのさ、というか俺それがお仕事なんですけど?」

 

「え、プロかつ本気で取り組んでユニークの一つも自発できていないんですか……? やめっ!指で目を狙うのはやめろ目は!」

 

目潰しを敢行しようとするオイカッツォとそれに抗うサンラクを見て笑う。何でこんなところに本気出そうとするんだよプロゲーマー。

暫くその光景を見ていると横から何やらくつくつと笑い声が。

 

「ふ、ふふ……ああ、そうだったね……君達も大概だったね、ふふふふ……あははは!」

 

すっきりとした晴れやかな笑みを浮かべた後、全くいつも通りの刹那的快楽大好き鉛筆らしい不適な笑みを浮かべこう宣言する。

 

「相手は畜生ストーリーボスもビックリなレベル差150を強制するユニークモンスター! それでも私達ならできる、本気でやって勝ちに行こう!」

 

 その言葉に俺もサンラクもオイカッツォも……ついでに流れ的に乗ってきたのかオルトとエムルちゃんが無言でサムズアップする。

 

「馬車馬の如く扱き使って死んでも休ませないから覚悟してもらうよ!」

 

 決戦まで残り2週間を切り、俺達全員が慌ただしく動くことになる。

 

「まぁ3人ともレベル50になるまでは魚釣り続行だけどね」

 

知ってた。まぁ全員そろそろ終わるしあんまり問題ないか。

 

◇◇◇◇

「ぁあ、ふ……」

 

布団から上半身を上げつつ欠伸を上げる。

昨日……厳密には今日も含めてだが割とギチギチにスケジュールが詰まってて大変だったな。

あの後ハイテンションに振り切った鉛筆に追い立てられながら魚釣りを敢行、していると何やらレアモンスター「ライブスタイド・デストロブスター」なるロブスターを釣り上げてしまい大変な目にあった。本格的に洒落にならない強さだった為ペンシルゴンとオルトに引き受けてもらっていたところカッツォとサンラクも釣り上げてしまいめでたく3尾にまで増えて地獄の鬼も逃げ出す光景が生まれてしまったわけだ。

 

まぁそのロブスターの討伐したことにより結果的に俺達全員かなり早い段階でレベル50を突破したことでお開きとなって、スキル関連の為に俺とサンラクが離脱した。

 

これが深夜2、3時あたりまでのログインで起きた出来事を簡単にまとめたものだ。

 

「…………取り敢えず、飯でも食べようか。今日のログインは夕方からで……」

 

やるべきことはスキル関連かな。……それにしても。

改めて昨晩出会ったセツナを思い出す。仮定として、もしめ俺がペンシルゴンだったとしたら……例えそれがゲームというフィクション(虚構)であっても、単なる偶然の一致だとしても、確かに本気で取り組みたくもなるだろう。それも人と遜色がないような反応をする神ゲーのNPCともなれば余計に。

 

「永遠に近い時間を過ごした刹那(セツナ)、刹那主義者の永遠(トワ)……か」

 

偶然の一致だとしても、確かにこれは他人事とは思えないなぁ……うん、俺ももっと気合いを引き締めるか。

そう考えながら俺は麦茶を取り出したコップに注ぎ入れて一息で飲み干すのだった。

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