シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「さて。思いの外早いというか何というか……」
まさに光陰矢の如し。普通のなんてことのない1週間は延々たらたらと続くというのに連休に入った途端あっという間に過ぎ去って気付けば明日が最終日なんてことはざらにあるものだ…………うーーむ、時間というものは待ってはくれぬかくも残酷なものだな。そんな哲学的思考を脳内で展開しつつ遂にやって参りましたペンシルゴン主催の「墓守のウェザエモン討伐戦」。待ち合わせ場所はここ、「蛇の林檎」だ。毎度毎度どうしてここが待ち合わせ場所に指定されるのかふと疑問に思い尋ねてみたところどうもここのメニュー、シャンフロにおける味覚制限が何故か例外的に解除されている上にペンシルゴンのようなレッドネームプレイヤーも受け入れる中々珍しい店なんだとか。
初心者中級者……下手すりゃ上級者でもこんな裏路地の目立ちにくい場所知らないし大体上級者は知っていたとしてももっと先の似たような施設を利用するのでここはメチャクチャに穴場スポットだということだ。……あーなるほど、道理でカッツォはここに来るたびケーキを頬張ってる訳ねふさげんな俺にも食わせろ。
「んー、雑に甘い!」
「俺はこういう大雑把な甘味嫌いじゃないよ」
「へぇ……中々美味しい」
「はいはい……わざわざ朝集まってもらったのは他でもない、作戦決行における予定の再確認だね」
モシャモシャパクパクとケーキを頬張っていて話せない俺を尻目にサンラクとカッツォが予定を思い出しつつ復唱する。
「とりあえず俺達はサードレマで待機、そんで11時半になった時点で樹海窟に行く……だろ?」
「今の俺達なら大体15分あれば例の場所に着くから入り口前で待機」
「そう、私はフィフティシアに行く阿修羅会のメンバーを足止めする罠を仕掛けてから向かうから、大体55分予定……そして日付が変わるその瞬間が、決戦の時」
何をどうやって便宜したのやらNPCの強面おっさんがニッコニコの営業スマイルと揉み手をしつつ案内してくれた個室にて俺達4人は凄まじく良い笑顔を一様に浮かべながら悪巧み中だ。
レベリング完璧、スキルもきっちり整理した上で効果検証を済ませ、武器防具は真新しく新調し、元々持っていたものに関しては修理済み。…………覇兎…………いや、過ぎたことだ、何も言うまい。
そういえばオイカッツォは何やら隠し玉とやらを用意したらしいがそれもまぁいい。俺は俺ができることを最大限やり抜くだけだ。
あれ以降もちょくちょく挑みしばかれ続けた結果現時点の俺ならばほんの僅かな空気の揺らぎすらも読み取り相手の攻撃を避けることもやぶさかでは……ごめん嘘。それでもわずかな予備動作から相手の動きを見切ることだって十分可能な筈だ。多分、恐らく。
それどころかスキル検証も兼ねてあれ以降も涙光の地底湖で釣りをし続け、呪いを活用して釣り上げたライブスタイド・デストロブスターを狩り続けてスキルも鍛え上げた。そんな今の俺のステータスとしては。
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PN:ビャッコ
LV:56(20)
JOB:戦士(二刀流使い)
98,600マーニ
HP(体力):30
MP(魔力):10
STM (スタミナ):60
STR(筋力):90
DEX(器用):60
AGI(敏捷):100
TEC(技量):65
VIT(耐久力):5
LUC(幸運):74
スキル
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・ブレイブナックル
・マッハレッグLv.5
・ドリフティングフット
・パリングプロテクト
・
・
・八艘跳び
・アサシンピアスLv.2
・オプレッションキックLv.5
・黒衣武装【戦角】
・ベストステップ
・
・オフロードLv.5
・致命剣術【半月断ち】
装備
左右:戦角武刀【黒染矛双】
頭:ジークヴルムの呪い
胴:ジークヴルムの呪い
腰:
足:
アクセサリー:ウカの孤面
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………………えぇ、えぇ!買わされましたよ!買わされましたとも!というか買わないと夜道で刺されそうな何とも言えないぞくっとした気配を感じたんだよ!
いやそんなことはこの際どうでも良い。見てくれこの輝かしい黒と金で縁取られた装備達を。ティッシュ(極薄)装甲から木材くらいまでは進化したぞ。偉大すぎる、水で溶けることが少なくとも無くなった。まぁ中身が
「そういえば罠って何するつもり?どうせお前のことだから碌なことじゃないと思うけどさぁ」
「ちょっとちょっと!私でもそんな酷いことはしないよ!上位クランに阿修羅会のクランの場所をチクるだけだって!!」
「「「うわぁ」」」
それが酷くない?この女化け物か何かか?
「多分上位クランが知らない場所、つまり例の場所に逃げ込んで来るだろうけど、少なくともあいつらが襲撃を受けてから即その答えにたどり着けるとも思えないし」
とんでもない発言してやがる、この一戦の為だけに自分が所属しているクランを潰すのか……バレれば間違いなく
「とりあえずエリアに入るまでの作戦はこれで行くとして……本題は戦闘中の作戦」
「俺とビャッコがウェザエモン担当で」
「こっちが騏驎担当、ペンシルゴンはサポートだよね?」
「そう、それについてのさらに詳細な確認だよ。まずサンラク君とビャッコ君」
いつも俺の首周りを陣取っているオルトが今はいない、なんとなーく温かみが消えたことに寂しさを覚えて首の辺りを触っていると俺とサンラクにペンシルゴンが視線を向けてきた。
「まず君達2人には、少なくとも墓守のウェザエモンが持つ大体のスキルを長くて10分……短くて8分そこらで完全対処できるようになってもらうよ」
「マジか」
「冗談キツいよそれは……」
「泣き言言わない。10分経過するまでは私とカッツォ君がアシストに回れるから、兎にも角にもあいつの動きに対処できるようになってほしい。多分後半に行くほどサンラク君もビャッコ君も対処できなくなるから」
うーーん……事前情報でどんな攻撃があるのかを知っていてもやはり実際に体感すればまた対処も変わってくるだろう。最初の10分は最悪肉盾としてカッツォを犠牲にすることを許されたのであれば寧ろ積極的に酷使していくべきか。
「というわけでよろしく頼むぞ肉盾」
「右に同じく、よろしく頼むぞ解体ショー」
「任せろふやけたダンボール。ビャッコ、俺は鰹だけど大人しく解体ショーされるようなタマじゃないよ。寧ろそっちの方が怖いよ薄い木材君、簡単にぶった斬られないでよ?」
無言でメンチを切る俺とサンラクとオイカッツォの漫才をもはや無視したペンシルゴンは、次にオイカッツォへと視線を向ける。
「カッツォ君、多分だけどキミは相当回数死ぬことになる。だから10分経過して騏驎が来た時点で私は実質カッツォ君の専属サポートになる」
「……ヤバい、とは聞いてたけどそこまでヤバいの?」
オイカッツォは10分経過時点で出現するとかいう戦術機馬【騏驎】、それの
「なんていうかな……馬とか牛とか、そういうイメージは捨てたほうがいいよ。あれはなんていうかもう……足の生えたダンプカーだと思った方がいい」
「予想の二段階くらい上行っちゃったなー」
足の生えたダンプカー……?それはもうただの殺戮兵器では?ドン引きだよ。ペンシルゴンが警戒を抱かせるハイパーデンジャラスロデオになるらしい、それに挑むことになったオイカッツォが不敵な笑みを浮かべ堂々と宣言する。
「まぁ俺はこれでもプロゲーマーだからね、そこの悪食アマチュアゲーマーと悪食音ゲーマー2人がロボ武者にボコられてる間優雅に馬と戯れているさ」
「言ってろ、精々後ろ足で蹴り上げられないようにな」
「ほざけ、振り落とされたら笑ってやるよ」
「あ、騏驎の後ろ足で蹴られたら死ぬし振り落とされたらそのまま踏み潰されるよ。阿修羅会のタンクが掠っただけで消し飛んだし」
「…………」
おいおいどうした、不適な笑みが引き攣ってるぜプロゲーマー。
◇◇◇◇
「決戦は夜か……であれば、諸用を済ませてリアルも万全の態勢で迎えるべきだな」
ペンシルゴンから貰った
「よっしゃ、んじゃあちょっと寝るか…」
俺はそう言いながら布団にダイブするのであった。