シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「正直な所、サンラクがリアクター持ってるし俺やることないんだよなぁ……」
ラビッツに戻ってから思ったことはそれだった。いやもうほんと、やることがないのだ。やることがあった墓守のウェザエモン討伐戦準備期間はあっという間だったが、やることがなくなった今となってはウェザエモン討伐戦準備期間がとても恋しい。仕方ないのでまずは
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PN:ビャッコ
LV:83
JOB:戦士(二刀流使い)
15,9800マーニ
HP(体力):30
MP(魔力):50
STM (スタミナ):100
STR(筋力):130
DEX(器用):60
AGI(敏捷):150
TEC(技量):115
VIT(耐久力):5
LUC(幸運):104
スキル
・
・バスタードナックル
・マッハレッグLv.MAX
・ドリフティングフット
・セツナノミキリ
・
・
・遮那王憑き
・アサシンピアスLv.6
・オプレッションキックLv.9
・赫衣竜装【戦燼】
・ムーンジャンパー
・
・オフロードLv.6
・致命剣術【半月断ち】肆式
・リミットオーバーLv.1
・ゴルドフィニッシュLv.1
・
・アサルトセンスLv.1
装備
右:覇兎【金龍】
左:覇兎【赫竜】
頭:ジークヴルムの呪い
胴:ジークヴルムの呪い
腰:
足:
アクセサリー:ウカの孤面
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信じられん、とうとう5つのステータスが大台の3桁台に到達したぞ。
どう考えてもステータスポイントが上がったステータスに比べて多かったが、ユニークモンスターを倒したからだろうか?インベントリアはどうも格納空間に転移する際MPを消費するらしいので軽くMPにも手をつけてみたがここまで来ると最早立派な紙耐久戦士だ、見てくれこのゲーム開始時点から一切成長を見せないVITを。装備品などで本気を出せば3桁くらいは届きそうなものをそれでもこの貫禄の1桁は誇って良いレベルではなかろうか。まぁこういう形を選んだのは俺なんだけどね?
「ご一緒にぃ、スキルの秘伝書なんかはいかがですかぁ?」
「すまんなエルク、お金がないんだお金が」
「ぷぅー」
ぷぅーじゃねぇんだよ銭ゲバ兎。お前から買った半月断ちは確かに有用だったがあまりにも高いんだよ。隙を見つけて何とか買わせようとするのは商魂逞しいが勘弁してくれ。
さて、スキル関連は今回あまり弄らないことにしたが唯一組み合わせたスキルがある。それこそが赫衣竜装【戦燼】だ。ウェザエモン戦でも大活躍だった黒衣武装【戦角】と
「最近は黒染矛双ばっかり使ってたからな……沼潜の短刀、お前を強化しよう」
そう、割と初期からずっと支えてくれていた沼潜の短刀君を強化するのだ。
◇◇◇◇
「さて、と。というわけでやってきましたシクセンベルトっと」
ここは神代の鐵遺跡を抜けた先、シクセンベルト。以前の鰻狩りのタイミングでしれっとランドマークを開放しておいたので転移することができた。
お目当てはここからテンバートへ向かう為のエリア、「雲上流編の雲海地」である。ビィラックに沼潜の短刀の強化に丁度いい素材は何かと聞いてみれば雲上流編の雲海地で採れる鉱石と素材が良いと言われたのでやって来た。
そういえばサンラクと入れ違いになったな、まぁリアクター云々はあいつに任せたほうが良いと思って挨拶だけしてすれ違ったが。
さて、来たはいいもののここで1つ困ったことになった。身バレではない、身バレなら化かしの枝葉でいつも通り対処済みだからな。今回問題なのはそれではない。
「参ったな、まさか攻略に必要な前提魔法がここまで高額とは」
どうも雲上流編の雲海地はエリアの性質上非常に見通しが悪く、攻略するには【アクティブソナー】と呼ばれる魔法が必須らしいのだが……何と
「えっ、嘘!?【アクティブソナー】の値段勘違いしちゃってた……!」
「何やってんだよ、いくらくらい違ったんだ?」
「えーっと、大体10万マーニかな?」
「えぇ……仕方ないですね。2人とももう一度神代の鐵遺跡へ向かって金策しましょう」
………………おや、これはチャンスでは?
男性1人女性2人という見る人が見たら歯をギリギリ言わせて血涙垂れ流しそうなパーティーより先に店を出てオルトに変身してもらう。さて、交渉の時間といこうじゃないの。
「すみません、そこの……えぇと、ソーマさん、カッホさん、リーナさん?」
「え、俺達?何か用……ですか?」
おぉ、初対面でちゃんと敬語を使えてる。声的に恐らく中学生、マナーをきちんと守ろうとしているところはとても好感が持てるぞ。
「えぇはい。実は自分達も雲上流編の雲海地を攻略したかったのですが、少々所持金が足りず……先程貴方方も攻略すると仰っていたのでここは1つお金を出し合ってアクティブソナーを購入しませんかと思いまして」
「えぇと……私達、本当にお金少ないんですけどそれで良ければ是非」
「それは良かったです。こちらは12万マーニほど出せるのですが……」
「えっ、そんなに!?…………でしたら、アクティブソナーは……えぇと、
「えぇ勿論です」
よっし交渉成功。アクティブソナー自体も譲るつもりでいたがどうやら向こうから譲ってくれるらしいのでありがたく貰っておくとしよう、良かったなオルト使える魔法が増えたぞ。
◇◇◇◇
非常に濃く視認性の悪い純白の雲に覆われている地表は、現実であれば高い山嶺の山頂でしか見ることの出来ない光景が平地に広がるというとてもファンタジー感に溢れるエリアだ。
しかし問題はその純白の雲にある。どれだけ大きく見積もっても1メートルあるかないか程度の分厚さであるそれの視認性の悪さは凄まじく、地形そのものを9割方隠してしまう。雲の分厚さというボーダーラインを通過した岩や、やけに特徴的な木々の先端のみが白一色のフィールドからポツポツと顔を出していた。
そんな光景を目にした俺とオルトを加えた一同はほうとため息を漏らし、口々に感嘆の声を上げる。
「すげぇ!真っ白だ!」
「綺麗……こんな景色、見られるなんて思っても見なかった……」
「本当に幻想的……あ、オルトさん早速ですがお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかりました、効果時間を延ばすために完全詠唱を行うのでしばらくお待ちください」
「すげぇ……本当にNPCなんだよな?本物の人と喋ってるみたいだ」
まぁ実際オルトは兎だしな。魔導書を開き構えるオルトが詠唱を開始する。
「……見えぬ姿、聞こえぬ静寂、物言わぬ存在。我が目は波となり我が身は風となり我が口は万象を
詠唱が終わった瞬間、【アクティブソナー】の効果が俺にも付与され周囲の地形が薄ぼんやりとだが示され始める。……やっぱり【
事前にオルトに併用できるか聞いたところ、「出来はするが効果が弱まる」と聞かされていたから分かってはいたがまさかこれ程とは。
まず大前提として、魔法の発動条件は基本的に「MPが足りているかどうか」であるわけなのだが魔法そのものの質もMPに依存しているそうなのだ。簡単な例を示すとするならば、俺のようなMPを全く使わない脳筋ゴリラのMPを5とする。次に魔法を極めようとするガチガチの純魔法使いのMPを100とする。
ここでMP消費が5の魔法を同時に放つと、威力は後者に軍配が上がるらしい。オルトの話、つまり世界観的な角度から言うならば「魔法を使う為の種火とそれを更に燃え盛らせる為の薪」こそがMPなんだとか。
さて、と。お話はここで終わりにしようか……なんか近づいてきてやがる。
「皆さん警戒を、モンスターです」
「えっえっ!?どこ、どこ!?」
「おっしゃ俺がぶっ倒してやる……!」
威勢はいいがソーマ氏、君の背中だ。
「…………ふっ!!」
「えっ、後ろ……!!?」
オフロードとマッハレッグを使って速やかに移動、その間に取り出した黒染矛双を振り抜いて雲海の中から襲い掛かろうとしてきた流線的なフォルムの何かを切り裂く。
「何だこいつ!?トビウオ!?」
「雲を泳ぐ魚……ファンタジーしてるけど、ちょっとこれ数が多いな……?」
「やばいって!どんどん増えてるよ!?」
周りを少し見渡せばアクティブソナーの範囲内に入ってこちらに接近してくる何かの群れ。
(というか……こいつら俺の
でなければ適性レベルを大幅に上回った俺を確実に避ける筈なのだからこの推測は間違っていないだろう。…………っと、そんなことを考えてる場合じゃないな。上等だよ魚共、纏めて捌いて刺身にしてやる。
「3人とも!背中をお互い守るように固まって!オルトをそっちに行かせます!」
「トラタロウさんは!?」
「こっちは大丈夫……です!!」
純白の海から見るからに獰猛そうな歯並びをしたトビウオが数匹俺の方へ向かってくる。沼潜の短刀君は少し不利か、であれば覇兎……いや、全部纏めて斬り倒せばいいか。黒染矛双君だな。
「セツナノミキリ……」
パリングプロテクトから進化したスキル、セツナノミキリ。発動直後に放った攻撃を相手の攻撃より確実に早く命中させて
スキル名からしてあのセツナと関わったから的なアレを感じるが……細かいことはいい、1つ言えるのはこのスキルが普通に有能だってことだ。
俺を食らいつくさんと迫りくるトビウオ共に向かって横薙ぎに刀を振るう、次の瞬間同時にポリゴンを撒き散らしてトビウオ共が爆散する……ヒット判定が同時に発動するのは多対一の戦闘下ではめちゃくちゃ優秀では?ちらと目を向こうで戦っている3人+オルトの方を見る、どうやら丁度戦闘が終わったらしく手を腰に添えたり杖に寄りかかったりとしている。
「皆さん大丈夫ですか?」
「あ、トラノスケさん。大丈夫でしたよ!オルトちゃんが居てとても助かりました……!」
「いえ、開拓者の皆様が注意を引いてくださったおかげです」
「NPCにレベルとか負けるのなんかめっちゃ悔しい……!」
ソーマ氏、その気持ちめっちゃ分かるよ。
◇◇◇◇
なんだかんだと雲海から襲いかかってくるモンスターを捌きつつ、鉱石やら素材やらを確保してボスがいるエリアまで到達することに成功した。
この雲海地に足を踏み入れたその時から視界には入っていたもの、つまりは岩に囲まれたドーム型の地帯。そこからもわもわと噴き出す大量の雲が雲海地とテンバートを隔てる雲の壁を形成しつつ、その余剰分となった雲がこのエリア全体を覆い尽くす雲となっている。
「…………あのドームって突破出来たりしないのかな」
「トラノスケさん、私達ここのエリアの聞き込みをしたんですけど……それはあまり得策じゃないと思います」
俺が抱いた素朴な疑問にリーナ氏が答える。
「あのドーム、冷気の塊?らしいんですが……触ったらダメージを受けるそうなんです」
あ、それは確かにダメなやつだわ。無理矢理突破しようとした
「それだけじゃありません」
「それだけじゃない?」
「はい、あのドームの中には危険なモンスターが大量に潜んでいて……それだけならまだしも、雲の壁の中には
より詳しく話を聞いてみればどうやら揃いも揃ってレベルは100を遥かに超えているらしい。はっはっはっ、冗談だろ?まぁどう考えてもプレイヤーの横着を防ぐ為の措置なんだろうがやり過ぎではなかろうか。少し身震いした後改めて今回討伐するエリアボスの情報を纏める。
「えぇと……ここのエリアボスはアイシクル・シープと呼ばれているそうで、毛の部分が今俺達が浸かっているこの雲で出来てる羊型のモンスターだそうです」
「えっ何それ、可愛い……!」
あぁ、これはおそらくファンシーな見た目の羊を想像しているな?残念ですねカッホ氏……仮にもボスモンスター、そんな可愛いものの訳がないんだ……。
「前方向に大きく突き出した角でプレイヤーを突き刺しに来る上にそもそものサイズ自体が巨大……具体的に言えば大型自動車並みのサイズらしいですよ?」
「やっぱり可愛くない……」
俺達の「次」を阻む為のモンスターこそがエリアボス、であればその性能は当然プレイヤーをボコボコにすることが可能なスペックであって然るべきなのだ。
「身に纏っている雲……氷雲に触れちゃうと凍るそうで、基本的に自分とソーマ氏、カッホ氏のような物理職は頭しか殴れないそうです。ただ……」
「ただ?」
「魔法、それも高火力な火の魔法は氷雲に対してとても有効なんだとか。高火力であればあるほど良いらしいので今回リーナ氏にはオルトと一緒に氷雲を対処することに注力して欲しいんです。一定以上の火力で氷雲が消えるので物理攻撃が通るようになり、そうすれば物理職の自分達が一気に畳み掛ける……こんな作戦でどうでしょうか?」
「トラノスケさん…………」
え、なんかやらかした?やっぱり野良パだとこういう出しゃばりは要らないのだろうか?
若干不安を感じた俺に対して、3人が口々に賞賛の声を上げる。
「凄いですね……!自分達だけじゃ絶対何にも考えず突撃してました!」
「やっぱり作戦って立てた方がいいよな〜、難しいの俺嫌いなんだけどな〜」
「そう言って前に蜘蛛に食べられたの、もう忘れたの?あれが嫌だって理由でわざわざ別エリア攻略し直してこっちに来たって言うのに……」
「わ、分かってるって!えーと、トラノスケさん、俺達それで大丈夫っす」
「あ、はい。では……いきましょうか」
「「「「おう!!」」」」
なんかそういう雰囲気だったので音頭を取ることになった。…………何で?
岩に囲まれたドームは基本的には雲に満ち満ちている、だが一箇所だけその雲が薄い場所があり……それこそが入り口。俺達5人はそこからドームへと侵入し、それと相対する。
「…………何もいない?」
「…………え、本当に何もいないぞ」
拍子抜けしたようにソーマ氏とカッホ氏が構えをやめる、だが俺とオルトとリーナ氏は油断なく刀と魔導書と杖を構え警戒する。他2人は気づいていないが……間違いなく、いる。
白一色で構成されたフィールドはエリア全体と全く同じ雲海に覆われ、青空に浮かぶ雲も含めてしまうと雲に覆われていない部分は視界の4割かそこら程度しかない。
覆い隠された6割の白の中に、
その雲の塊には脚があって、頭があって、何よりその塊のモチーフとなった動物と同じくるりと巻いた形をしている癖にその先端が正面を向き、「今からこれで突き刺すよ!」と言わんばかりの長さを持つ角が生えていた。
「…………っ、2人とも構えて!来る!!」
「メェェェェェェェェェェェェ…………!!!」
「でっっか!!?大型自動車どころじゃなくない!?」
カッホ氏がそれを見上げる。…………うん、俺も確かに大型自動車だとは聞いていたよ?ただ……
それにこっちは時間制限も込みだ、さっさと倒してこの3人と別れないとまずいことになる。
「…………オルト、マナポーションは?」
「残り6本ですね、
5分か…………ウェザエモンよりはマシだろ!!