シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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ドギラゴン超1パックから出てきた記念更新


楽園の暗闇を照らさんとする者

名前からして8番目の街……「エイドルト」。本来なら俺とオルトはここに繋がるエリアを踏破していない為に来ることができない街だったがそこはエムルちゃんがゲートを通したことにより無事解決、何の問題もなくここを訪れることが可能になった。

さて、この街を見て最初に思ったのはズバリ「どこを見ても水晶がある」、だ。夜道を照らすランプも水晶だしその辺の店の軒先には水晶で作られた像が飾られている。建造物の屋根も水晶製の瓦で覆われ、果ては石畳代わりに水晶、柱の代わりに水晶、防具屋武器屋には水晶製の剣や鎧……正面で見ても横から見ても下から見てもどこもかしこも水晶まみれ、この街の住人は何を考えてこんな街中を水晶まみれにしたんだか。

 

「水晶巣崖の水晶は日々水晶群蠍によって増え続けていきます。放置しておけば辺り一体がいずれ水晶に飲み込まれる……それを防ぐ為この街の住人は水晶を採掘(間引き)して採れた水晶をこういったふうに活用している、と聞いたことがあります」

 

「へぇ……世界観的な根拠があってこういう風景になっているのか」

 

なんというか……うん、このゲームを作った奴の気がしれない。「ここはそういう街なんですよ!」で済ましとければ良いだろうに……この場合は水晶巣崖というエリアの設定を成り立たせる為にエイドルトを生み出した、と言ったところか?いや、エイドルトという街の風景の理由を作る為に水晶巣崖を作った……どっちだ?

まぁそんな卵が先か鶏が先かなんて問題は割とどうでも良い、今はそのぉ……サンラク、うん、ごめんな?

 

「何で俺はまたこれを着なきゃいけないんだ……」

 

「いやほんと悪かった……化かしの枝葉の在庫切れかけてたの本当に忘れてたんだ……」

 

周りを見渡せば俺……正確には俺の隣にいる何やら白い布、というよりかは壁画とかに描かれてそうなヤツ(サンラク)のことを遠目に見る他プレイヤーの諸君がいるわいるわ。

 

「ところであんなにスニーキングしてたのに何で今回は堂々と歩いてんの?」

 

「なんつーか……見つかったら見つかったでシラ切り通せばいいんじゃないかなって最近思い始めたんだよ。っつーか普通に街の設備使いたいのにわざわざ自分から使えない状況に突っ込むのも本末転倒だなって」

 

「ふーん……でもお前その布の下()()()()()()()()()()

 

「3匹……おいこらお前ら、動くんじゃない」

 

「ふはは、今の僕はまさに借りてきた猫! 吹き荒ぶ旋風は今ひと時は頬を撫でる夜のそよ風……!」

 

「暴れるないうちょるじゃろうに……!」

 

暴れてる、ビィラックさん暴れてるっす。

今現在サンラクの装備している……ええと、祭衣・打倒者の長頭巾(フェスタ・メジェ・カフィエ)?の下には2匹の兎と1匹の猫がいる。具体的に言うならば後頭部にエムルちゃんが、背中にビィラックが張り付き両手でアラミースを担いでいる状況だ。

いやもうほんとにすまなかった。人数分あるかと思いきやまさかのラスイチ、そういえば補充しよう補充しようと思いながらなんだかんだ後回しにしていたな……これがツケってやつか。

 

3匹の獣共が長頭巾の中で暴れ狂う姿は外から見れば明らかに不審者、というか化け物か何かだ。おかげでプレイヤーが逆に近寄ってこないが……この際感謝しておくか。

何より、ヴォーパルバニーはともかくケット・シーは見つかったら不味い気がする。時折サンラクの方へスクショ許可を求めに来るプレイヤーが出てくるがそれに関しては割とちゃんと答えている。まぁ無断スクショ食らうよりマシか。

 

「あの、そのアイテムどうやって手に入れたんですか?」

 

「なんかサードレマの路地裏にいた怪しい露天商から買いましたね。ランダムエンカなのか、毎回はいなかったけど」

 

「そうなんですか、ありがとうございます!」

 

スクショと長頭巾の入手法を聞いてきたプレイヤーが離れたのを確認してサンラクが小声でエムルちゃんに話しかける。

 

「ピーツってサードレマで人化して露天商やってるんだよな?」

 

「はいな、サードレマは人が多いしちょろい開拓者が多いから割り増しでふっかけられる、って前言ってましたわ」

 

「商魂たくましいな」

 

(エルク)に似た気配を感じるような……」

 

「ビャッコさん、エルク姉さんは商売上手ですがピーツは商売に関してはへったくそと言っても全く差し支えありません」

 

ほへー、やっぱ下手くそかあいつ。まぁ化かしの枝葉なんてアイテム通常じゃあんまり使い道見出せないもんなぁ

お、さてとそろそろエイドルトを抜けて去栄の残骸遺道に辿り着けるな……「もし、そこの2人」お?

 

「少々お時間よろしいかな?」

 

やけに渋い声だな……なかなかご高齢であらせられると見た。まぁあんまり驚きはしないかな、何せ身近にゲームばっかりやってるジジイ(祖父)がいるし。

さてと振り向いて……およ、いない?右を向く、居ない。左を向く、居ない……いや違う待て、何か視界の下の方にピンク色の頭頂部が見えたような気が……!

 

「私は考察クラン「ライブラリ」のリーダーをしているキョージュと言う者でね、ユニークモンスター「墓守のウェザエモン」を倒したと言う君と、あと3人にも是非話を聞きたいと君を呼び止めたのさ」

 

「おおぅ……」

 

ピンク色の髪をツインテールにして、碧眼に白磁の陶磁器を思わせる白い肌。魔術師?いいえ私は魔法少女ですとでも言わんばかりのフリルが多用された衣装に身を包み……

そこまでいけばなんだただの魔法少女かぁ、で済むのだが。

その口から放たれる声からでも十分に察することのできる凄まじく知性的(インテリジェンス)な気配を感じさせる老成した男性の声。この1点のみがそれ以外を全て完全に破壊し尽くしていやがる、この野郎狙ってやってるのか……?悔しいが笑ってしまうじゃねぇか。

 

「…………んっ、ふっ」

 

「そちらのお嬢さん、何かありましたか?」

 

「い、いえ。何もありません」

 

オルト我慢しなさい!俺も笑うの必死で堪えてるの!

 

「ぷふしゅっ」

 

「ん?」

 

「失礼、クシャミです」

 

フルダイブVRでクシャミかぁ……そうだね、人だもんね。クシャミくらい出るよねそんな訳ねーだろアホか。

 

「ゲーム内でくしゃみ、ねぇ……まぁいいとも。で、今から時間は空いているかね?」

 

「……今はちょっと」

 

「ほう!」

 

あ、お前馬鹿。その発言はダメだろ!しかもこのぱっと見の見た目美少女中身おっさんプレイヤー、この感じからするとペンシルゴンと同じ類……悪知恵は聞くし弁は立つしの厄介なタイプのプレイヤーだ。その答え方だとその拒否は「今」しか通用しないことになる。だからこそここから続く言葉は間違いなく……

 

「ふむ、では差し支えなければ空いている日時を教えてもらえないだろうか?」

 

まぁそう来るわな。「今」が無理なんだから別日に繋げる……あまりに自然な流れだ。これは他人に擦りつける方向性が無難か?

 

「あーー……それ、多分こいつの方が話しやすいと思いますよ」

 

「ちょっ、おまっ?!?」

 

「君は……」

 

やりやがったこの野郎!化かしの枝葉を取りやがった!サンラクが俺の目を見る目つきは間違いなく「お前に押し付ける」の目だ、この野郎自分だけ逃げ切るつもりか。だったらこっちは……!

 

「てめぇふざけやがって……!全く……キョージュさん、「墓守のウェザエモン」に関して知りたいと思うのであればアーサー・ペンシルゴンを探してください。多分あいつの方が俺達より遥かに詳しいので」

 

「成る程、彼女か……黒狼が接触すると言っていたし便乗してしまうか……」

 

悪いペンシルゴン、全部押し付ける方向になってしまったが何とか乗り切れ。

 

「成る程、とはいえ君にも聞きたい話はある。今ここでとは言わないが君達2人の時間が空いたのなら、是非話を聞かせてほしい……君がその頭巾?の中に隠しているだろうものと……君の隣にいるそのマリンルックの()()についてもネ」

 

「「「ははは……」」」

 

バレてやがるよくそったれ……

日本人必修技能かつ日本人のみが習得可能な固有スキル「曖昧に笑って流す」を発動、だが残念ながら効果は薄いと言わざるを得ないだろう……キョージュが少女の見た目からは想像がつかないほど老獪な笑顔を浮かべつつウィンドウを操作し始める。

 

 

『キョージュさんからフレンド申請が来ました。

「この世界の未知を解き明かすため、是非君の話を聞きたい」』

 

このゲーム(シャングリラ・フロンティア)におけるユニークシナリオ……これの発生条件に疑問を覚えたことはないかい?普通のゲームであればイベントなどでプレイヤー達に示されるものが、このゲームではほぼないと言ってもいい。私達開拓者(プレイヤー)が自ら道を切り拓きイベントフラグなどを見つけ出す……まさに開拓者のゲームだ」

 

「……………」

 

「だがしかし、私達だけでは考察に限界があってね……我々は暗礁に乗り上げていた。しかし君達の成した「墓守のウェザエモン」討伐によって新たな道が開けるかもしれないんだ。……色良い返事を聞かせてもらおう。では()()

 

軽い足取りで去っていくピンク髪の少女の後ろ姿を眺めながら俺は静かにため息をついた。

 

「なぁサンラク、取り敢えずお前が俺のことをナチュラルに売った件に関しては俺がピーツのとこから化かしの枝葉を買い占める形で流してやるから……」

 

「ちょっと待て、悪かった。謝るからそれだけは勘弁してください」

 

「許さん、まぁ兎にも角にも……あの中身シルバー紳士の魔法少女は狙ってやってるのかね」

 

「分からん……ただ、言ってることは間違っちゃいなかったよな」

 

…………確かに、あのキョージュが言っていたことは少なくとも間違ってはいない。このゲームのユニークシナリオの発生条件はお世辞込みでも親切とは決して言えない。それなりにこのゲームをプレイし続けて分かったのは他のゲームとは根本的に違う点がいくつかある。俺は基本的に音ゲーしかしないからあれだが、どんなゲームでも普通であればどういった過程であれイベントにはスタートとゴールの道が定まっているものだ。きっとそれはMMORPGというサービスが終わるその最後の瞬間までゴールが存在しないゲームであっても同様であるはず。……だというのにシャングリラ・フロンティアにはスタートすら定まっていない。いや、自分自身で見つけ出す必要があると言った方が適切か。最初から巧妙に隠されたフラグを自分自身の力で見つけ出して始めてスタートに立つことが許される。

示された光の点を目印に進むだけのゲームではなく、どこまでも深い闇の中を懐中電灯1つ持って宝探しするゲーム……それがこのシャングリラ・フロンティア。そしてその深い闇(せかいかん)を照らし出す懐中電灯こそが考察であり――――キョージュの所属するクラン、「ライブラリ」が行なっているものだ。

 

あの時、ゆっくりと消えていく「遠き日のセツナ」が残した「二号人類」、「バハムート」という単語。只管に敵を倒しレベルを上げスキルを鍛えるだけではただ攻略の最前線に立つだけなのだ。このゲームは世界観が重要で、ユニークモンスターは多分……この世界を深く知り、理解しなければ越えられない。天覇のジークヴルム、あいつをぶちのめす為のシナリオもきっと世界観を知らなければ辿り着けない。

点と点を繋いで線を作り、シナリオという像を結ばなければいけない……であるならば。

 

「開拓者らしく、人との関係も切り拓いていくべきだよな。サンラク」

 

「世捨て人プレイも飽きてきたしな」

 

そういって俺達2人は似非魔法少女が送ってきたフレンド申請を受諾した。

 

「ふぅ……まぁ、色々あったけど取り敢えず本来の目的地に行くか」

 

「だな」

 

「ですね。……ところでビャッコさん、周りの目は大丈夫でしょうか?」

 

「えっ?」

 

周りを見回した。サッと何人かが目を逸らしたのが確認できた。…………あぁ、うん。まぁそうだよね、ガッツリ化かしの枝葉取っちゃってるから分かるよね……はぁ……

 

「サンラク、化かしの枝葉の買い占め期間は俺の気が済むまで……つまり、期限はないってことだ」

 

「嘘だと言ってくれなぁ頼むよビャッコお願いだ」

 

「オルト、入荷したら最優先で俺に伝えるようにピーツに(ことづ)けといてくれ」

 

「わかりました」

 

「分かったから!許してくれ!頼む!」

 

お前も同じことされたら同じことやり返すよなぁぁぁぁぁぁ?




シャンフロ二次創作者が増えて嬉しい反面めっちゃ面白い文章繰り出されて下唇噛む感情が湧き出してくる……俺は、弱い…!
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