シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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アベンチュリン単発で当てた記念


会議は踊り巡るは思惑、相対するは血縁者

まぁ逃げ続けてもいつかは捕まる、なら早い方がいいだろうということでサンラクと観念して捕まることにした俺。まぁ兎にも角にも街に戻らなければ始まらないと言うわけでエイドルトに帰還、ビィラックとアラミースをラビッツに返したわけだが……何でエムルちゃんとオルトを残るように言ってきたんだペンシルゴンのやつ。

 

「荒ぶるアニマリアちゃんを止めるならエムルちゃんとオルトちゃんいないと多分ハザードになるよ」

 

「そんなゾンビ映画じゃあるまいし……何故遠い目をして黙り込むオイカッツォ」

 

「なぁおいオイカッツォ何されたんだ、おい答えろ!」

 

「………………」

 

やめろ馬鹿お前が纏う雰囲気からどれだけヤバい人間なのか何となく察しちまったんだぞ!サードレマの門前の一瞬しかエンカウントしなかったから印象が薄いとはいえぱっと見は真っ当な人だったぞ!?今そんなに荒ぶってるの!!?

 

「もうメール送っちゃったからそのうち来るとは思うんだけどねぇ……」

 

「今からでも遅くないだろうしオルトラビッツに帰しても良いかな」

 

「そんなことしたらまず真っ先に君が殺されると思うよビャッコ……」

 

余計会うのが怖くなった。

はぁ、とため息を吐いたり愚痴を吐いたりすることおおよそ10分ほど経っただろうか。

蛇の林檎ではないが故に薄味な仕上がりとなっているケーキを食べて顰めっ面をしているオイカッツォを眺めていると()()は現れた。店のドアが開いた瞬間その場の空気が一変する、成る程俺の傷跡(呪い)に怯えるNPCは皆こんな気持ちなんだろうな……今すぐ逃げたい帰りたい。

 

「レッツゴースケープゴートズ」

 

「死に晒せノーユニークマン…………あ、あはは、あんまり面識はないですけどサードレマの門前以来ですね?」

 

ゆらゆら、ゆらゆらとこっちに近づいてくる何かの動物の歯だか骨だかなんだかよくわからないものをケモ耳のように頭装備に付けているプレイヤーを筆頭に……うっっわ!後ろにもなんか似たような状態の奴らが山程いるんですけど!?この前の大規模アップデートで状態異常「ゾンビ」的なのが実装されたの!??

ゾンビが群れをなしてやってくる、そしてその先頭に立つAnimalia(アニマリア)氏の目は真っ直ぐ俺とサンラクの()を見つめて……いや違う、違うぞあれ。まさか……オルトとエムルちゃんを交互に見ているのか?

兎の本能か、はたまた自らの生命に致命(ヴォーパル)的に関わる何かを察知したのか。サンラクの首で必死でマフラーのフリをするエムルちゃんと、普段は人化で誤魔化しているというのにそれすら忘れて左足に引っ付いてモコモコの街で見かけたら「あったかそうだなぁ」と思う()()()()()()()()のフリをしているオルトを交互に超高速で凝視している。怖い、怖いよぉ……

 

「オルト、強くなりたいんだったよな?頑張れ」

 

「強くなりたくとも獣の群れの中に自ら飛び込むのは蛮勇と言うのです、闘いと自殺は違うんですよ……!」

 

遂に俺達の目の前に立ったAnimlia氏、はは、シャンフロって凄いね。目の血走りを再現したゲームなんて今まで見たことがないよーーあっはははは……ペンシルゴン聖水残ってない?最悪ニンニクと十字架でもウェルカム。

 

『Animaliaさんからフレンド申請が来ました。

「とりあえずスクショと握手からお願いします」』

 

 

ベリッ(足に引っ付いてたオルトを引っぺがす音)

 

ババッ(オルトが一瞬絶望したような顔をした後覚悟を決めたかの様に全力で抵抗する音)

 

「ごめんなオルト、どうもクライアントが求めてるのは俺じゃないみたいなんだ」

 

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!?!!」

 

Animalia氏がオルトとエムルちゃんを抱き抱えた。次の瞬間後ろに控えていたプレイヤー達が一斉に群がった。あれパニックホラーとかじゃ食い散らかされるやつじゃ……ま、まあ?動物がだーいすきなクランと聞いているしそんな酷いことはされない筈……筈だ。

 

「新鮮なお肉に群がるゾンビ的な……」

 

「しっ、カッツォ君世の中には心の中に秘めておいたほうがいい言葉もあるんだよ!」

 

「俺も思ったけど黙っておいたのに……けどなペンシルゴン、お前もそれ言っちゃ心境フルオープンしてるのと大差ないんだよ」

 

と言っている間に人が集まってきたな。まぁ恐らく例の「黒狼」とやらのプレイヤーだろう。

 

 

「随分と急な呼び出しだなペンシルゴン」

 

「やっほモモちゃん、相変わらず詐称が激しいね」

 

「やかましい!!」

 

お出ましになられたのはペンシルゴンを剣の一振りで消し炭にした巨躯のアバター、あの時の邪悪さは何処へやら、白金の鎧をその身に纏ったプレイヤー……サイガ-0。

そして……うん、多分ペンシルゴンの知り合いなんだろうな。会話のフランクさがそれを物語っている。要所要所をアーマーで固めたロングコート、ペンシルゴンが持っていたあの「聖槍カレドヴルッフ」と酷似したデザインの剣を革ベルトで吊るし、赤毛をロングストレートにした女性プレイヤー……サイガ-100。

 

(サイガ……うーん、嫌な思い出が)

 

具体的には相手が納得するまで試合を繰り返すなどと言う正気の沙汰ではないことをしたりフルマラソン×3したりした思い出が。まぁ他人だろうがな。あの女は確か出版社に勤めているとか何とか言ってた筈、立派な社会人がまさかそんなシャンフロトップクラスの超大規模クランのクランリーダーなんて務めてるわけがないだろ。

 

「おや、私が最後だったかな?」

 

ひょい、と。そんなSEが付きそうな感じで他所のテーブルから椅子を引っ張ってきた見かけ魔法少女が俺達と同じテーブルにつく。よっこらせなんて言いながら座る姿には実にオッサン臭を感じざるを得ないのだが見た目だけは魔法少女だから見方によってはロリババア……うーん、この問題は深掘りすると何か深い沼に踏み入れそうな気がするので終わりにしよう。

 

「やぁサイガ-100君、ウチの家内は迷惑をかけていないかね?」

 

「…………マッシブダイナマイトさんは新大陸挑戦組です、一番はしゃいでましたよ」

 

この人の嫁さんもシャンフロやってんの??で、プレイヤーネームがマッシブダイナマイト?プロレスラーのリングネームとかの間違いじゃなくて??

 

「いやはや、まさかフレンド申請したその日のうちにお呼ばれされるとは思わなかった。お陰で年甲斐もなく全力疾走してしまったよ」

 

「まぁこういう集まりの時に呼ばないのもあれかな、と思いまして」

 

いやぁ、ペンシルゴンからの視線が心地いいぜ。お前に全部おっ被せる為に呼んだんだからなへへへ。というかこのテーブルにシャンフロにおけるトップクランが集まってるの凄いんじゃないか?考察トップの「ライブラリ」、攻略トップの「黒狼」、………………えーと、うん、ヤバいやつトップの「SF-Zoo」。1つだけなんかとんでもないものが混ざってる様な気もするが多分きっと気のせいだろう。

 

 

「えー、というわけでこの度はご足労いただき感謝いたします。僭越ながら最近足を洗って綺麗さっぱりPKを卒業したアーサー・ペンシルゴンがこの場の進行役をさせてもらいます。あー……そこの動物好きクランも要件があるんでしょー、人間性を取り戻してねー」

 

「人間性を取り戻してね、って普通に生きてたら聞かない言葉だよなぁ」

 

「あっ、サンラクにビャッコこの野郎! 離せ!」

 

「離すわけないじゃないかぁ……カッツォ君だけ逃げれるなんてぇ、本気で思ってるのかぁい……?」

 

「ビャッコお前2度とその口調するなよ、マジで」

 

え?何で?何がコイツの地雷を踏み抜いたのだろうか、まぁやるなと言われた以上今後はこいつの目の前でやらない様にしておくか。へいへいへいへいところでオイカッツォさんよぉ……羊に手を噛まれるのは想定外だったか?詰めが甘いと言わざるを得ないな馬鹿めが。

 

「まぁ、ウチの人間ツチノコことサンラクがようやく捕獲されたので、お三方からの打診に一気に答えちゃうべく今回集まってもらいました」

 

「誰がツチノコだ!」

 

「サンラク君さ、自分が専用スレ立てられてること知ってる? 捜索班とかいるんだよ?」

 

「え、まじで?」

 

へぇこいつ捜索スレなんて立てられてるんだウケる。

 

「ちなみに君もだよビャッコ君。付け加えると君はノギツネさんって呼ばれてる」

 

野狐……?おい待てそれ暗黒面(ダークサイド)側の呼び名じゃねぇか。しかも俺虎だし。

 

「まぁそれはどうでもいいとして、少なくとも「黒狼」からの打診の半分と、「SF-Zoo」からの打診はサンラク君にしか解決できないんだよね。ビャッコ君はまた別にして」

 

「…………」

 

おい、じゃあ俺マジで呼ばれる意味なかったじゃねぇか。まさかとは思うがオルトを差し出す為だけに呼ばれたなんてことはないよな??まぁ大方サンラクに聞きたいことなんてリュカオーン関連のことだろうし……Animlia氏は察した。あれ多分兎関連だな?

 

 

「お先にどうぞ、我々SF-Zooの打診は後で結構」

 

「良いのか?」

 

「少なくとも今現在非常に満ち足りているから」

 

さっきまでのゾンビムーブが嘘の様に非常にツヤツヤとした満ち足りた表情のAnimalia氏……うん、ところでさ?さっきからエムルちゃんとオルトの声しなくない?ギリギリ断末魔の悲鳴みたいなのを上げ続けてたのにとうとうそれすらなくなったんだけど?人がはけたらぐちゃぐちゃの肉塊が転がってたりしないよね?

 

「では単刀直入に言おう、我々クラン「黒狼」はユニークモンスターについての情報が欲しい。特に、君が戦った夜襲のリュカオーンの情報を」

 

まぁそうなるわな。

 

「我々「黒狼」の最終目標は「夜襲のリュカオーンの討伐」……なんだが恥ずかしい話、今の今までユニークモンスターとまともに戦ったことがない。さらに言えばユニークモンスター「墓守のウェザエモン」を君達が倒した今現在でも、ユニークモンスターについては強い、以外の情報を持っていないんだ」

 

無論それに見合う報酬は用意する、そんな言葉で締め括った後サイガ-100に見つめられているサンラクを見て静かに同情した。

 

正直リュカオーンとやらの情報を答えること自体は簡単だろう、なんならウェザエモンの件はペンシルゴンでも伝えられる。が、俺達にはもう1つ……「致命兎叙事詩(エピック・オブ・ヴォーパルバニー)」がある。特大の情報アドバンテージ、匂わせるだけで価値があるそれを持っているからこそ、本来なら何とかなったろうが……

 

(ペンシルゴンがいるのが問題だよな)

 

情報の1欠片でもこいつの前に落とせば超優秀な警察犬か何かのようにサンラクの……そして、連鎖的に俺の手札も暴いてしまいかねない。

 

「……まず最初に、ユニークモンスターはただ戦うだけでは倒すことはおそらく不可能だと思う」

 

サンラクが話し始める。多分この様子だとヴァッシュ……ヴァイスアッシュという切り札は温存する気か?最早割れ切った手札である墓守のウェザエモンから札を切っていくつもりだな。

 

「恐らくだがユニークモンスターには専用のシナリオが存在する。例えば俺達旅狼(ヴォルフガング)が倒したユニークモンスター「墓守のウェザエモン」、奴に挑むためには前提条件として「ユニークシナリオEX」というものを受注しなければならなかった」

 

「それに関しては私の方が知識量は上だから引き継ぐよサンラク君。ユニークモンスターはEXシナリオの中核を為す特殊なモンスター、黒狼は必死こいてリュカオーンを追ってるみたいだけど多分何処かでシナリオのフラグを立てないと永遠に倒すことは出来ないと思うよ……まぁ、よくて撃退が精々かな?」

 

ここがミソだよな、ヴァッシュやウェザエモンのフラグが偶々この大陸で立てられたってだけであって他のユニークモンスターも同様とは限らない、他のユニークモンスターがどんなものであるにしろ、こちら側よりも未知の多い新大陸サイドにフラグが埋まっている可能性も否定できない。

 

「そうだね、墓守のウェザエモンが如何なるモンスターか知りたいのなら……私が抱える借金を一番多く肩代わりしてくれた人にこの「世界の真理書〜墓守編〜」をあげちゃおうかなぁ?」

 

「ほんと抜け目ないねペンシルゴン……」

 

とてつもなく自然な流れで2、3回ほど読んでしまったらほとんど価値の無くなる真理書を高値で売り捌こうとしているペンシルゴンに俺とサンラクとオイカッツォはため息をつく。

考察クラン(ライブラリ)の長の目がキラリと光る中、最前線を行くクラン達への弱小クランからの説明会は続いていく……

 

 

「あ、それとビャッコ君」

 

「ん?何ですかねサイガ……100さん」

 

「君と会いたいという人がこちらに1人いる、呼んでも構わないかな?」

 

「え、あぁまぁ構わないですけ」

 

ど、と言おうとしたその時だった。

 

「こどおおおおぉおおおおおおおおお!!!こっちでも会えるなんて思ってもなかったぞ爺ちゃん感激だぁぁぁぁぁ!!!」

 

「は!!?え!???爺ちゃん!?!!!!」

 

というか名前を呼ぶなジジイ、ネチケットってもんを知らんのか!!?




ホタル実装とのことですので徳を積むべく何をすれば良いか考えた結果「読者の方々お腹いっぱいにすれば良いんじゃないかな?」という結論に至りました。土日で4回行動します。
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