シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
さて、ここで俺の祖父を紹介しておこう。
彼の名は
この
そして……俺は爺ちゃんに1度も勝ったことが無い。いや、何回かはあるのだがそれは全て爺ちゃんがその前の晩に深酒して酔っ払った時だからちゃんとした勝ちとは呼べない。
そしてもう1つ特徴がある。それは……何というか、「新しいもの」好きであると言う点だ。
まぁ兎にも角にも新しいものが大好き、最新機種だとか最新作だとか新戦術だとか……「新」がくっ付けば割と何でも良いまであるくらいには新しいもの好きだ。齢70をとうに過ぎていると言うのにスマホをバリバリに使い熟しタッチレス決済はお手のもの、それでいてボケてはいないからその手の詐欺なんかに引っかかることもない……というか詐欺に遭った時しれっと逆探知して警察に通報する前に発信元へ行って詐欺犯を叩きのめしたこともある、爺ちゃんに電話をかけた詐欺の方はそれはそれはボコボコにされたそうで思わずちょっと同情してしまった……自業自得と言えばそこまでだが。
そしてここからが本題、今から十数年ほど前にフルダイブVRゲームという最「新」のゲームジャンルが生まれた。勿論新しいもの好きの爺ちゃんは「面白そうじゃな!!」って言って食らいついた訳で、今では剣道場の運営の傍らもっぱらVRゲームにのめり込んでいるという訳だ。
うん、だったらさ?
「もう割と長いことゲームやってるんだから!ネチケットくらい覚えやがれクッッソ
「ごっふぉ!!?!」
笑顔で俺のリアルネームを呼びながら駆け寄ってくる
◇◇◇◇
「ちょっ!?ビャッコ君何やってるの!?」
「ペンシルゴン……いや、ちょっと一瞬冷静さを欠いてた、悪い」
「君のお爺ちゃんとは限らないんだよ!!?」
いや、ペンシルゴン、それだけは多分限りなく0%に近い。確かに見た目は完全に別物だ。歳に見合った枯れた木の枝の様な現実世界の爺ちゃんとは全くの別物……筋骨隆々、とまではいかないまでも鍛え抜かれた細身の体に均整の取れた顔立ち。その顔の上には白のメッシュが入った黒髪がフサフサと生えている。ここだけ見れば爺ちゃんとは認識できない。ここだけ見ればな。
だが俺には分かる。どれだけ姿形が変わろうともクロスカウンターで床に叩きつけたこの男が俺と血の繋がった祖父であること。何で分かるかって?ネチケットがないところ、刀を2本持っているところ、あとは魂。
「何すんじゃ虎堂!!爺ちゃんに向かっt」
「手が滑ったァ!!!」
確定だわこの野郎。全力で頭に手刀を叩き込む、最悪殺してしまってPK扱いされたって構わないぞ俺は。
だが残念、地面に這いつくばっていたとは思えないほど軽やかな挙動であっさりと回避してみせた爺ちゃんは「本気で70超えてんの?」と言いたくなるレベルでニヤリと笑いながらこう言ってきた。
「はっはっはっ、甘いのう虎ど……ビャッコ。今の手刀程度じゃわしは伸されんよ。腕が鈍ったんじゃ無いかのう?」
「VRで鈍ったもクソも無いでしょ……というか、何でここにいるの?
ワンジって何だワンジって。まさか
「あぁ、儂、黒狼におるんじゃよ。百……いや、団長殿に誘われてのう」
「え、嘘でしょ?」
思わずサイガ-100の方を向くと静かに肯定された。爺ちゃん嘘だろ、トップクラスのクラン入ってたのか……てかシャンフロやってたのか。
……いやまぁ既存のゲームからぶっちぎりで超進化したシャングリラ・フロンティアなんてゲームを爺ちゃんが触ってないわけないか。
「…………でまぁ、シャンフロやってるのはわかったからさ。ワンジは俺に何の用があるの?」
「うむ!実は天覇のジークヴルムとやり合ったと聞いての!
「え、お前も?ってことは……」
「うむ、ほれ見てみろ」
そう言ってワンジが首を指差す。あ、本当だなんか十文字の赤い傷跡がある。
「いやぁ首を彼奴の爪でスパッと落とされてのう!直前まで割と良い勝負できとったからかリスポーンしたら頭の装備がつけれんくなっておった!」
「へぇ、そうなんだ……俺は……」
何気なく自分がどうやってジークヴルムの呪いが付与されたか、を話そうとした時ふっと視線に気がついた。
視線はペンシルゴンのもの、内容は……「はぐらかせ」、か。次にちらっとサイガ-100の方を見ると一見こちらではなくサンラクの方を見ている様に思えるが意識はこちらにバッチリ向いている……あー、なるほど、そういうことね?
「…………俺も、まぁ爺ちゃんと似たり寄ったりだったよ。最後は焼かれたけどさ」
「ほう、そうか?てっきり
「いやいや、本当にそれぐらいしか言うことないんだよ。焼かれて死んでリスポーンしたらこれ、装備付けれないのは大変だねぇ」
当たり障りのない会話をしながら思考を巡らせていく。
まぁまず間違いなくワンジが仕掛けてきたのは誘導尋問的なやつだろう、爺ちゃんがそんなこと考える訳ないし……そこのサイガ-100から指示を受けたと考える方が自然かな?まさか本当に何も考えずにこんなこと聞いてくる訳ないだろうし……
「そのことなんだが、ビャッコ君」
「…………何ですか?サイガ-100さん」
「こちらのサンラク君にも話したことだが、私達には君達の
「…………」
呪いの解呪、か。俺の顔面と胴体に刻まれたこの忌々しい火傷……装備を付けることができない、低レベルモンスターは逃げ出す……メリットはあるもののやはりデメリットの方が目立っていた。それを情報提供だけで何とかできるかもしれない、というのは実際有難い話ではあるんだよな。一応覚えておくと同時に黒狼というクランの評価を上げておこうかな。
「とわ……ごほん、ペンシルゴンがつるんでいるプレイヤーと聞いてどんな人物かと実際に目にして確信した、君達は今後も
「ねぇ「黒狼」さん、その
俺達の会話を遮る一声。ペンシルゴンやライブラリクランリーダー、キョージュの声ではない。あの2人は今真理書関連で交渉を繰り広げているところだ。あそこ一帯の空間だけシャンフロとは全く別のゲームジャンルな気がするが気のせいだろう。サイガ-0は……不動、ここがリアルでなければ寝落ちを疑うほどにみじろぎ1つしないが……なんで来たんだ、あれか?「下手な動きしたり反抗したら殺すぞ」っていう威嚇行為か何かか?
オイカッツォは何故かサンラクに向かってフォークの投擲態勢に移っているし……と、なれば消去法で今の声の主は1人しかいないわけで。
――――――「SF-Zoo」クランリーダー、Animalia。
シャンフロ内屈指の動物好きが集まるモンスター撮影クランの「園長」殿の目が危険な色を含んでギラリと光る。
ちなみに爺ちゃんは何も考えずに発言しています。
100さんは「え、聞くの!!?」みたいな感じで内心びっくりしてたらしい。