シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜   作:トレセン暮らしのデュエリスト

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雲中狼領〜大口を開けて牙と穴〜

はい、2回目のトライです。ここに来るまでに毎回毎回2、30分ほどかかるので死ぬほどキレそうですクソが。だがしかし俺はゲーマー!負けない、折れない、屈しない!例の狼がレベル100越えである以上あのエリアの攻略推奨レベルも100を超えると見ていい、ならばあそこからドロップする素材はとんでもない希少価値になっているはずなのだ。だがしかしエリア地形を殆ど把握できないまま死んでいったからな、今回はできるだけ身を潜め隠密行動でエリア探索に励むべきだ。その過程で何かしらのアイテムを入手できれば御の字、何も発見を得られなくとも……まぁその時はその時だ、その後も何度か挑戦を繰り返せば問題ない。

 

「ん?あれ……何だ?」

 

全力で息を潜め、気配を消して移動する。すると何やら他の地面とは明らかに色が異なる場所……いや違う、あれは……穴?しかもかなりデカい。

マジの大穴だ、向こう側の縁が雪で霞んでよく見えないレベルで。もっとよく見ようと身を乗り出した瞬間。

 

「あっ、どうも」

 

バレて死んだわ、次行ってみようか。行け第3の俺!

 

◇◇◇◇

はいどうも、第15の俺です。なんかもう行き道のチャートが最適化され始めて2、30分掛かってたのが15分台にまで短縮されました。コツは雲上流編の雲海地に着き次第スキルを適切なタイミングで発動して出来るだけ地面に着地する回数を減らすことですね。今度は10分切りでも目指してみるか?え?2との間にいた筈の3番から14番まではどうしたって?えーと確か、3から11まではあっさりと噛み殺されて、12、13は何とか抵抗しようと戦闘してみたら器用に脚の腱を爪で切り裂かれて身動き取れぬまま子狼の狩りの練習にされ、14はなんかもう何も認識できないままに殺された。何されたんだ14番目の俺、唯一わかってることと言えば姿を認識する前に頭を消し飛ばされたことくらいか?なお合計14回のトライで穴を拝むことが出来たのは2回目のトライを含めると6回だ、何で俺はこんなムキになってるんだか。

 

「これで何の収穫もなく死んだら……俺はこのエリアの攻略をすっぱり諦める……!」

 

そしたらその後はどうしよう、なんかサンラクも「水晶巣崖」とかいうエリア攻略してるって言ってたよな、そっちにお邪魔してみるか……?

 

「まぁ、こっちの結果が出てないのに後のこと考えるのは不毛か!おっし行くぞ!!!!」

 

それでは15回目のチャレンジにイクゾー!!

何やらBGMが流れてきそうな雰囲気になりつつ俺は雲斬氷刀で雲の壁を切り開いていく、さぁ……チャレンジスタートだ。

 

 

 

 

 

 

「ううぅぉぉぉぉぉぉぉっしゃぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

15回目のチャレンジ!今回はスキルを回せるだけ回して超高速でフィールド上を駆け抜け何かしらの発見をする!叶うことなら穴に到達、そして飛び込めれば飛び込む、どうせなんかあるんだろ分かってるんだよ!

 

「ハロー狼共!俺の邪魔すんじゃねぇぞぉ!!」

 

前後左右から降り積もった雪を踏み締める音と荒い獣の息遣い、時折増援を求めているのか遠吠えが聞こえる。というか前から狼共が数頭突っ込んできてるのがもう見えるわ、はっはっはっ簡単に食い殺されると思うなよクソッタレ共が!

ムーンジャンパー起動、狼の頭上を飛んで俺に確実な死を与えてくる牙を回避し前進。マッハレッグで加速して更に何かないか見て回る。

銀色の花、何やら不思議なエフェクトを纏った小石……宝石?どっちかは知らんが小石などなど。目についたものを片っ端から拾ってはインベントリアに叩き込み全速前進、ここで天覇宣言(バスターコール)起動、一応追い回されてる時も戦闘扱いになるのは大体8回目の挑戦で気づいてたからな、大体5分かそこらしか逃げ回っていないから十分なステータス補正とは決して言えんが贅沢は言えないし覇貫炎燼(バルカンエンジン)はこの状況下じゃ使えない、発動すれば最後ステータスがダウンして狼にモグモグされるだけだ。だがここから更に天覇宣言の効果時間を伸ばす手段がある。

 

「リミットオーバー!!」

 

リミットオーバー、発動中のスキルの効果時間を伸ばすスキルだ。代償として次の発動までのリキャストが2倍、持続時間が半減するが構ってはいられない、できるだけ距離を伸ばすだけ伸ばして目的を可能な限り達成するしかない。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ意地でも穴の中身を拝ませてもらうからなぁァァァァァ!!!」

 

雪を跳ね飛ばし積もった雪を踏み付け吹き荒れる強風にも屈することなく穴に向かって突き進む、色々見て回ったがやっぱりあのクソデカ穴しか無さそうだ。中に何があるかは知らないが突っ込まないと始まらない。後ろから迫り来る狼の群れはハッキリ言って迫り来る死神、死の暗喩……ごめん嘘だわ直喩だわ、たった今俺の首筋掠った斬撃何?爪で攻撃したの?何で飛ぶの?まさか純粋なフィジカルで腕振ったら飛ぶ斬撃出たとか言わないよね?大型犬とは比べ物にならないサイズのクソデカ狼が放つ攻撃とか控え目に言って恐怖でしかないんだよ?だが……!

 

「見えてきたぞ大穴ァァァァァ!」

 

色々見て回って遅くなったが大本命だ、さぁもう少し!あと少しで大穴に到達できる!

だが運命の女神様は非常なり、よりにもよってここでリミットオーバーによって引き伸ばしていた天覇宣言(バスターコール)の効果時間が終わりを迎える。ガクッと速度が落ち、次第に背後の足音が大きくなっていく。

あと少し、あと少しなんだ……!気合いと意地見せやがれ俺!

 

「UUUUUUUUUUUUUU!!!!」

 

唸り声がすぐ真後ろまで迫ってくる、このままだとあと2、3歩の所で完全に追いつかれ俺の身体はバラバラに噛みちぎられコイツらの餌になることだろう。だが残念だったな。

 

「俺には遮那王が憑いてるんでな!!!」

 

遮那王憑き発動。真後ろに迫り来る大口開けた死神共、その先頭を走る狼の鼻先を思い切り蹴って加速し勢いそのまま穴にダイブ。

落ちていく中仰向けになって確認したのは穴の縁で悔しそうに俺のことを睨みつける数十頭の狼達……へっ、ざまぁみろ!と、思うものの……

 

「困った、落ちたらいいけどここからどうするかな」

 

落ちた後のことなーんにも考えてなかったわ!!

 

 

◇◇◇◇

 

――――――――ひゅーーーーーーーーーー…………

 

「いやマジでどうしようかな」

 

現在落下中である。いやーマジでなーんにも考えずに飛び込んだからなぁ、ここからどうしたものか。底にたどり着けば確実にグチャリコース、挽肉より酷い姿になった後ラビッツにリスポーンすることになるだろう。

以前も落下する羽目になったがあの時はオルトの【再構築(イノママニ)】があったからまだアレだったし施設のセキュリティが安全に最下層まで運んでくれていた、まぁ途中まで作動しなかった点はこの際水に流すが。だがこの大穴は自然にあるものだ、あんな都合の良いシステムは備わっていないわけでつまるところ下手をせずとも俺は死ぬ。

 

「遮那王憑きのリキャストは20秒、ムーンジャンパーのリキャストは……あと10秒か。20秒間落ち続けて底が見えないってわかってるなら落ちても良いんだが」

 

そんな都合の良いことあるわけな……あっやばい底が見えてきた!死ぬ!20秒以内に最下層の地面に直撃して死ぬ!!!!

どうする、どうする?このままじゃまず間違いなく即死する。最悪遮那王憑き無しで飛ぶしかないがムーンジャンパーだけで切り抜けられるか?結局ムーンジャンパーは跳躍力を増すだけのスキル、だからこそ欲しいのは安全な場所だ、跳躍した後の着地に最適な安定した足場。今の速度で落下し続けたらどんな場所でも即死するだろうが確率は0.1パーセントでも上げた……ん?安定?

俺の脳細胞が今煌めいた気がする。

 

「賭けにはなるが……!やってみないことには始まらない、か!!」

 

装備するのは帝蜂特殊武装:脚甲(エンパイアビー:タスクフォースレッグ)。こいつは地面に触れてさえいれば確実に踏ん張ることが可能な装備だ。で、ここからが論点になるのだが……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

俺の答えは『壁も結局地面と続いているんだし実質地面』だ。

 

「ホイホイホイホイホイ!!!」

 

アニメとかで見るような平泳で空中を移動し壁に出来る限り近づく、底の部分に近過ぎれば減速しきれずにミンチ、割とギリギリを攻める必要がある。遠過ぎたら?今度は壁から離れて頭から地面に突っ込むと思うぜ。

 

「さぁ、検証のお時間だっ……!」

 

壁に足裏を向けガリガリと擦り付ける。僅かな出っ張り1つ逃さないように全力で力を込めて踏ん張る。

一瞬でも良いんだ、必ず踏ん張れるということはつまり必ずブレーキがかかるのと同じこと。普通の装備でこれをやったら足がもみじおろしになること間違い無しだがこの装備は踏ん張ってさえいれば部位欠損の心配はない、ちゃんと減速しきって死なずに最下層の地面を踏み締めないことには死なんぞ俺は。

 

「うっ、ぉぉぉぉぉおぉぉぉ!?」

 

ヤバい壁から足が離れ始めた!結局落下してるのには変わりないからちょっとずつ壁からは離れるか!

決断しろ、ビビるな、飛べ!!!

 

「っ!!」

 

覚悟を決めて壁を思い切り蹴り抜き跳躍するその瞬間ムーンジャンパーを起動する。

一瞬の浮遊感を得つつ向かい側の壁に向かって飛ぶ。…………あっ、やばいちょっと距離が足りないか?

 

「うぉぉぉすまん黒染矛双君、後で絶対に直してもらうからな……!」

 

リーチ的にギリギリ壁に届く黒染矛双君を突き立てガリガリ言わせながら何とかして減速しようと試みる、おっ、ちょっとだけ減速してる!これいけるんじゃないか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただここで乱数の女神様は盛大に俺のことを笑って、中指立てて突き落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――あ」

 

ガキンッ、と。恐らく壁の一際飛び出た出っ張りに引っかかったのだろう、黒染矛双が弾かれ俺もそのまま引っ張られて壁から離れてしまう。

あぁくそ、あのまま行ってれば一度踏ん張って減速して底に安全に着地できていたはずなのに。クソッタレ乱数、15回目のチャレンジもあと1歩で終わりか……

まぁそもそも安全確保も碌にできてない、落ちた後のことを考えずに飛び込んだ時点でダメに決まってるな。しゃーない16回目以降のトライをする前にそれを考え……安全?

 

思い出せ、あとほんの数秒で俺は硬い岩盤に叩きつけられて死ぬ。安全地帯……つい最近聞いたことはないか?つい最近……これだ!!!

 

「【転送:格納空間(エンタートラベル)】!!」

 

次の瞬間世界が切り替わった。死を俺に齎そうとする岩盤はもうどこにもなく、何やら近未来感ある一体どんな金属で構成された奇妙な空間。インベントリアの格納空間、文字通りセーフティルームとなる絶対の安全圏。

 

「お"るぇっ」

 

なお現実空間で働いていた物理法則と体勢は引き継がれるようで俺は落下ダメージをもろに喰らった、なんか幸運の食いしばり発動して助かったけど発動してなかったらやり直しだったんだよね。怖すぎ。

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