シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
雲上流編の雲海地。
雲が流れて地面を覆い隠し、足場最悪ステルスモンスターの多さなどなどから「アクティブソナーを持ってないやつは来るな」とまで言わしめたエリア。このエリアの特徴として奥へ進むにつれ巨大な雲のドームがそこかしこに存在しているというものがある。だがライブラリが行った検証及び考察結果としては「中には何も存在しない」と断定されていた。検証には有志で募った検証班およそ79人、偶々その場に居合わせた野良プレイヤー12人の計91人のプレイヤーが雲のドーム内部へ一斉に突入した。数十箇所のドームに突入を繰り返し続け調査の結果辿り着いたなんとかかんとか辿り着いた中心部では何の発見もできなかったことから「雲上流編の雲海地の雲のドーム内部には何も存在していない」という結論が下された。――――実際の所、彼らは
次に雲上流編の雲海地のドーム内……名を「雲中狼領」と呼ぶこの地が形成されるに至った理由とそこに棲まう獣達について話していこう。
――――かつて星の海の中で「最強の個」と「最強の群」が激突した。そして二柱の最強の激突の結果は共倒れという形で幕を閉じ、彼らの肉体にはお互いが刻みつけあった傷跡が残り今も尚残り続けることとなった。
時に繁栄を、時に破滅を、時に変化を齎すいくつもの傷……そして、ここにも小さな傷痕がひとつあった。彼らからすれば気にも止めぬ擦り傷、それも「え?傷なんて出来てたの?」と思ってしまうレベル(あくまで彼ら目線ではあるが)の小さな小さな傷だった、しかしあくまでもそれは彼らの基準に当てはめた場合のみである。この地で生きる者達からすればそれは環境に大きな変化を齎す厄災か恵みかわかったものではない特大の厄ネタであり迂闊にどうこうすることも出来ない代物だ。
そしてその傷はどちらかと言えば厄ネタの方だった。
傷口から漏れ出る白の奔流は暴風を呼び、絶死の寒波を巻き起こして周囲の環境を激変させた。長い長い時を経て傷口にやっと瘡蓋……
では続いてこの地に棲まう獣達について話していこう。
まず大前提として知って欲しいことはその獣達は
生存競争に大敗北を喫し、片脚が絶滅のラインを踏み越してしまっている上にもう一方の脚もラインを踏み越えようとする寸前まで追い込まれてしまうという……身も蓋もなく言ってしまえば半分詰みの状況まで追い詰められていた。そんな時彼等は捕食者から逃れる為に続けていた流浪の旅の途中偶々「雲中狼領」に辿り着き、ここで更に偶々何の因果か彼等の持つ種族としての能力が活きた。
彼等の持つ能力とは即ち、「どんな極寒の環境でも生存が可能」というものだった。「雲中狼領」は彼等が棲まうにはうってつけもうってつけ、天国のような環境だったのだ。
何年も何百年も、何千年も。彼等は「雲中狼領」という自分達が確実に守られる極寒の環境で生きてきた。勿論食料もとても少なかったがそこは非力な種族である彼等にとっては何の問題にもならなかった……何せ彼等は
「雲中狼領」という異質な地、そしてその異質かつまともな生物が活動するには厳しすぎる環境に最高にマッチした彼等は凄まじい強さを手に入れることとなった。
小さかった躯体は溢れる生命力を体現するかのように大きく。元々の体毛は黒に近かったのがいつの間にか環境に合わせて白く。食性である同族喰い、つまり種族内での生存競争に勝利する為牙や爪は鋭利に。
そして自分達の縄張りを侵されないように、不遜なる侵入者は鏖殺する為に五感が進化した。
結果
余談ではあるが彼等は本能的に傷口こそがこの地を創り上げる原因であるということを理解し、神聖視している。そして「群」天狼という名の通り
そしてその長は基本的に雄が務めるのだが……今代の長は雌だった。通常であればこれはあり得ないことである。
基本的に
が、どういう訳かこの雌は“異常”だった。雄より遥かに巨大で力も強い。単純なフィジカルだけで勝負するなら「夜の帝王」にも通用する程には。
この雪のドーム……「雲中狼領」という不世出の領域。そしてその中でも異質な不世出の狼の長。未だ世界には「
この狼の名は
◇◇◇◇
「始原白片アイテルセル……」
あっこれあかんやつだ、今の俺が触れて良い案件じゃない。
そう咄嗟に判断した。信じられねぇよ使用用途が一切分からないオールフレーバーテキストのアイテムとか。しかもなんか読めば読むほど訳が解らん度が増していく、噛めば噛むほど味が出てくるスルメイカじゃないんだからさぁ……。とはいえ触れてしまった物は仕方ない、取り敢えずこのアイテムはインベントリアではなく俺個人のインベントリにでも突っ込んでおこう、何せインベントリアはあの外道共と共用だからな、所有権自体は俺にあってもこのアイテルセルの存在を教えたくはない。
さぁインベントリにアイテルセルを突っ込んで……ここからどうしようかな、流石にあの穴をもう1回登るのは無茶だしもう1度あのクソ狼共とチェイスするのはめんどくさい、やっぱ死に戻るしかないか。
「死に戻るにしてもなぁ……どうすれば良いんだろ、やっぱり高所から落ちることが最適解なんだろうけど」
となると1度壁を登って飛び降りることになるんだが……それもう普通に登りきったほうが良いんじゃないか?いやいやでも登り切ったら登り切ったで待ち受けているだろうクソ狼共……うーむ、どうやって死んだものか。
「取り敢えず頭を壁に打ち付けるとか―――――っ」
空気が一変する。静かだった純白の空間が
呼吸が浅くなる、冷や汗が噴き出してくる。後ろを振り向け、後ろを振り向け。振り向かないとどっちみち……死ぬ!!
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
振り向いた瞬間目に映ったのは銀の毛並みに黄金の瞳、ついでに振り上げられた爪だった。
咄嗟にその場から飛び退いて距離を取り武器を展開する。
「UUUUUUUUUUOOOOOOONNN!!!!!」
「おいおいおいおい……!親玉か……!?」
十中八九親玉だなクソが、オーラが余りにも桁違いすぎる。
俺を仕留められなかったことを認識した
(どうする、このまま戦闘?正直勝てる気しないがこの場所に訪れる理由もほとんどない、だったら今この場でやれることを全部やるべきか――――?)
多分こいつ、俺のレベルより遥かに上だ。放たれるプレッシャーが……そう、ウェザエモンやジークヴルムに近い。あぁ、あぁ。なんて……
「――――――――そうだよな、そんなくっだらないこと考えるよりも楽しんだ方が良いか」
負けるかもしれない?もう訪れることがないかもしれないから戦いたい?違う違う、そんな甘っちょろい考え方しょぼいんだよ。
目の前にいる強いやつをぶちのめす。勝つ。それこそ楽しいゲームライフ。
「さぁ!!楽しませて貰うぜ!!」
「UUUUUUUUUOOOOOOOOOONNNNN!!!!!」
俺が挑戦の意思を示すと同時、白銀の獣が高々と吼えた。
不世出モンスターまだ実装されてないだろって!?
緋色の傷判定でお願いします(スキルは貰えないよ、代わりと言ってはなんだけど勝ったら代替わりが起きるよ!)