シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
なんつーか、こいつをデザインしたデザイナーは多分「デカくて速くて力があるモンスター」をコンセプトにひたっすら練り上げたんだろうな。そう思った。
次に思ったのは「このモンスターをデザインしたデザイナーは多分突き詰めに突き詰めすぎたコンセプトに歯止めが効かなくなったんだろうな」ということ。
最後に思ったのは……まぁ、なんというか。
「突き詰めすぎだバカタレがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ重ってぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
物事には限度ってものがあるだろうが!!!!
白銀の狼と戦闘を開始してから早数時間、エナドリも摂取せず、用意も碌にしていない状況下で戦闘を始めたことを俺は凄まじく後悔しながらも俺は諦めることなく刀を振り続けていた。
◇◇◇◇
この狼なんて言ったって速いこと速いこと、目で追いきれなかった場面が幾つかある位にはとにかく速い。その図体で一体どういう筋肉ならそこまでの俊敏な動きを維持できるのかさっぱりわからん。まぁここはファンタジーだから気にするところではそこではないが。
爪、牙。正直怖くない。付いてる場所は固定だからそこら辺の挙動にさえ気を付けていれば回避は容易……な訳あるか、そもそもの巨体と速度のお陰で見切って避けようとする前に爪が届くし牙が伸びてくる。
体力が異常に多いのはちょっとキツイな、そもそも硬い上に何回クリティカル叩き込んでも怯みもしないのは心折れそうになる……あれだなコイツ、ちょっとやそっとの攻撃じゃ削れない上にHPバーの本数が異常に多いタイプのモンスターだ。
「いぃぃぃぃぃぃいっ!!!!」
何より厄介なのはこの尻尾だよ尻尾ォ!!薙ぎ払い振り下ろしは当たり前だがこともあろうに
しかもあの狼、物理一辺倒の脳筋
「だが速度はウェザエモン以下!!!」
だが大きい分リーチとパワーがあっても速度は多少遅い、問題はこっちも近寄りづらいし攻撃しようとしても避けられる点か。
結論としてはフィジカル特化、マジでフィジカルにステータスポイントを極振りしたようなやつだ、氷属性攻撃?マジでサブオプションみたいな感じにしか思えん。ここまで行けばこの狼の攻略チャートは浮かんでくる……つまり。
「お前の機動力が活かしづらい
動きが速い?リーチが長い?要はつまり近づき続ければ問題なしってことだろ?
圧倒的なフィジカルも圧倒的な体格差も全て近づくことで解決する、これ爺ちゃんの教えなんだけど実際役に立つシーンが多すぎて馬鹿に出来ないんだよな、流石は小柄な身体で懐に潜り込んで一本取り続けた人間だわ。
「HP一桁ァ…何十回ぶん回しては切れを繰り返してるが……また本格的に
覇兎【赫竜】で食い潰したHPをニトロにして俺の全身に力が巡っていく。ほら引きつけて引きつけて……ここ!
「先ずは怯みやがれ……バスタードナックル!!」
「UUUUUOOONN!??!!」
叩き込んだ勇気の一撃は狼の横っ腹に突き刺さり、今までの数時間に渡る戦闘の中で両手で数えるほどしか起きなかった怯みモーションをやっとこさ見せた。
「怯んだな……!
【金龍】と【赫竜】を使って怯んだ狼の体を素早く駆け上がる、急げ俺、次の瞬間には俺を振り落とそうとしてくるだろう狼の背中に登ろうとしてるんだからな。
何回か殴ってみたところやっぱり弱点ほぼ完全克服のクソエネミーじゃなさそうだった。偶々攻撃が背中に当たった時怯みを見せたしな……これで本当に偶々怯んだだけなら即死ですね。間違いなく。
「まぁずは先駆けいっぱあつ!!」
エフェクトが刃から一気に放たれ、それと同時に狼の背中に直撃。続いて数時間分の戦闘を物語るかのように俺自身も吹っ飛んでしまいそうな勢いの衝撃波が発生する。
「まぁだまだァァァァァァァァァァァァァァァア!!」
リキャストの上がった
「【赫竜】が手元に残ってるのは暁光だった、HPを削ってスキルの効果を存分に発動できるから、な…………っ!!」
背へと乗られた挙句背骨辺りを集中的に斬りつけた上に刀を突き刺された怒りか、金色の瞳が稲光が如く眩しく凶暴な殺意を迸らせながら狼は感情を行動にそのまま反映させたかのように突貫しその巨大な爪を俺に向かって振り翳してくるのを慌てて回避。
攻撃を仕掛けた腕が地面に着弾するのと同時、狼の巨体が腕1本で支えられ、バネ代わりとなって文字通り
「………………っ!!【
咄嗟に最強無敵の安全圏へと退避。だーくっそ数少ないMPポーションを使わされた、今までの戦闘でも何度か危ない場面はあったものの使うことはなんとか回避してきたってのになぁ。残りは……2本、か。
インベントリア退避という択が失われつつある。あの狼相手によくここまで集中力を保てたなと自分を褒めたいところではあるが褒めるのはヤツをぶちのめしてからにしよう。さて、インファイトは間違ってない筈なんだが……手数は足りてる、火力が足りない。地形を利用して攻撃できないものか少し考えてみたがどう足掻いても無理な気がする、今戦闘フィールドになってるあそこは殆ど起伏のない真っ平らな原野染みたところだしかといって上に上がれば上で待ち構えてるであろう子分どもにカバディカバディされるのがオチだ。
「火力……最悪火力さえ出せればワンチャン有りそうなんだが…………ぁ?」
天啓降りてきたわ。
◇◇◇◇
白銀の狼公は聖域を侵す不届き者が突如消えたことに少しの戸惑いを覚えたものの、いつ何時現れるか分からないみょうちくりんな生物を殺す為に警戒を続けていた。
この思考ルーチンは今まではなかったものである。
ビャッコ自身は知るよしも無いが何処かの半裸鳥頭により実装されたサイレント修正は
ビャッコもとんだ不運に巻き込まれたものである。
さて、今ここでビャッコがインベントリアから現実世界へと帰還。
「え、何で復帰直後に攻撃……!?「赫衣竜装【戦燼】」っ!!」
赫き竜の残影がビャッコに纏わりつく。それにより氷爪が弾き飛ばされた白銀公の体勢が僅かに崩れる。
「おっけ取り敢えず即死は回避ィ……!てかさっさと【金龍】返せやコラァァァ!!」
その隙を見逃さずビャッコが全力で接近し全力で踏み込み跳躍、背中に突き刺さった【金龍】の確保に乗り出した。
しかし悲しいかな思いの外深く突き刺さった【金龍】は抜けない、というか持って引っこ抜こうとするとダメージ判定が出る……クリティカルで。体力が一気に回復していくのを尻目に今度は【赫竜】でクリティカルを叩きつけていく。
「はっはーー!HP危険域を反復横跳びする感覚は癖になるなぁ!!?」
ゴリゴリとHPを削り、減った分を即充填する……強引にHPを危険水準一歩手前で固定し赫と金のエフェクトを大量に吐き出しながら二振りの刀と狐は吼える。