シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
ここの……雲上流編の大地の、雲のドームの中。その中に空間があって尚且つ中にはレベル100オーバーの化け物共とその親玉がいるのは現状この世界において俺以外知らないだろう。
それに俺もここについてはほとんど分かっていないことの方が多い、例えば
「UOOOOOOOOON!!!!――――OOOOOONN!!」
「ははは……えぇ……?」
冗談でしょ?最早笑いしか出てこないよ。白銀公が遠吠えをした。次の瞬間何処からともなく現れるここへ至るまでの14回のチャレンジで俺を都合の良いおやつや狩りの練習台なんかにしてくれた非常に因縁のある大量の
ゆったりと白銀公の後ろへ控える雪獄群天狼達、親玉の命令を今か今かと待ち構えるその姿は白い死神と言って問題ないだろう。対してこちらはソロ、レベル上限にも届いていないし何なら上裸だ。はっきり言って無理ゲー、クソゲーの部類なんだが……
「くっくっくっ……この状況で笑えてくるのは我ながらイカれてるとしか思えないなぁ」
どうしょうもなくワクワクしている自分が居る、相手は数の暴力とレベルの暴力を存分に引っ提げて襲いかかってくる狼共、どう考えても諦めるしかない状況下……それでも燃えてくるものはあるんだな、これが。要は全員ぶちのめせば良いんだろ……上等だよ、せっかく発生させたユニークシナリオ、せっかくたどり着いた最下層、せっかく割と良いところまで削ったろう親玉狼!ここで諦めたらゲーマーの名折れ!寧ろ楽しむくらいがちょうど良い!
刃紋が煮え滾るマグマの如く赫く輝く【赫竜】と鍔と刃紋が照り輝く
「全身全霊……お前らぶちのめしてやる」
「UU……OOOOONNN!!!!」
白銀公の鳴き声に合わせて雪獄群天狼が俺に襲い掛かってくる、13体の死神が迫り俺に牙を突き立てんと口を開いて乱れ1つ無い完璧な連携で距離を縮めてくる。
対する俺が取る行動は1つのみ……襲いくる死を跳ね除け、逆にプレゼントするだけだ。
長い長い死神狩りが始まった。
◇◇◇◇
「お"…………っらぁ"!!!!」
「グギャウッ!?!」
これで最後の1頭、喉元に深く突き刺した雲斬氷刀を引き抜いた後動きを鈍らせようと後脚を切り落とした後反撃を喰らって手からすっぽ抜けていった【赫竜】を回収する。
結局決まり手は喉元を貫通した雲斬氷刀ではなく頭蓋を全力で踏み潰したことだったが……まぁ、大した差では無いだろう。
俺が13頭の死神と死闘を繰り広げる中白銀公は一切の介入をしてこなかった。舐めてんのかこの野郎高みの見物しやがって。時刻は現在朝の4時……クソッタレ、戦闘が始まったのは昨晩の18時だぞ。ウェザエモンですら30分そこらしか戦闘してないっていうの。
回復ポーションもMPポーションもとっくの昔に在庫切れ、なんならその後も何発か被弾している上に【赫竜】の効果でHPは驚きの1だ。何かにつまづくか脚を挫くかするだけで死ぬぜ、これぞ正に風前の灯ってやつだ。
「まぁ…………俺が死ぬ前にお前を殺せば問題ないだけなんだがな」
【金龍】を真っ直ぐ白銀公に突き付け俺は最後の宣告をする。
「こんなドームの地下深くじゃ、朝日なんてものは拝めねぇが……天を覇する金色で、地を獄する銀色を切り裂けば良い。覚悟しやがれ“
対するは銀の獣。雪獄の中で
だがしかし問題はそこではない、冷気以上に溢れ出すその闘志……自らを超えんとする敵対者に対する殺意。
威嚇態勢に入った奴から噴き上がるそれらは単なるゲームのモンスターMobに設定されたシステム的に俺達プレイヤーへの敵意ではなく、もっと単純で、もっと明確で、根本的に出所の違う衝動に駆られてのものだろう。
「そりゃ、こんな隠しエリアで、ユニークシナリオのキーだろうモンスターだから分からんではないけど……」
たかがモンスター1匹であることには変わりないはずだ、だというのに一体どれほどのAIを積み込んだのか。背筋の震えは寒気から来るものか、果たして恐怖か、戦慄か。どれであっても決して負の意味が込もったものではない。シャングリラ・フロンティアというゲームに込められた製作者の想いと熱意が今目の前にいるこいつからひしひしと伝わってくる。
「最高……ほんと、最高だよ……!だからこそ、俺が今出し得る全てを持ってお前を倒す!!」
バフスキル全開放、俺の全身が金と赫の夥しいエフェクトに包み込まれ膂力のあがった両手でミチミチと音がするほど【覇天却火】を強く強く握りしめる。
「いざ尋常に勝負ッ!!」
白銀公が作り出した
「ッ!!?!」
自らのダメージを気にしていないのか、はたまた自分の銀の装甲は絶対に砕けないと言う自信の表れなのか。氷の剣山の後ろから強引に振り抜かれた尻尾が刃となり俺を剣山ごと切り裂こうと薙ぎ払われるのを咄嗟に回避しようと試みる。
世界が一瞬スローに見える錯覚がする、全神経が回避のみに意識を注ぐ――――いや、逆だ。膝の力を抜け、股関節を柔らかく、肩の力まで抜いて完全に脱力を。
倒れるよりも滑らかに、回避ではない
(早く立て早く立て早く立て……!!ちょっとでも止まったら死ぬぞ!)
潜り込んだ瞬間素早く片手で覇天却火を握り締めもう一方の手で地面に手をつき跳躍、次の瞬間つい先程まで俺が居た地点は大質量のスタンプ攻撃により原型を失った。
背中に氷の破片とその下にあった本来の地面由来の物だろう石片がめり込む感覚がするがあんまり気にしない方向性でいこう。
思いつく限りの挙動で白銀公から距離を取ろうとするが、俺を確実に両断もしくは粉砕しようとする
ここだけ切り取れば劣勢にしか見えない、このままではいずれ追い詰められ牙か尻尾かはたまたお手かいずれかの手段で俺はミンチ肉になるだろう。だが諦めたわけではない、諦めることはない。細い細い勝利へと繋がる糸を1本1本撚り合わせて縄を生み出し正気を見出すための起点を探し続ける。果たしてその時は訪れるのか、その答えは案外早く提示された。
「今!勝機は見えたッ!!!」
今までずっと叩きつけ、振り回しとその猛威を振い続けていた氷の刃がとうとう崩壊し、『バキリ』と嫌な音を立てて粉々に砕け散った。白銀公が一瞬だがバランスを崩し、ついで尻尾の刃を修復すべきか迷う素振りを見せた。
おいおい刃物を扱うなら定期的に研ぐなりなんなりしておけよ、その一瞬は……最高に命取りになるぞ?
反転攻勢一気に距離を詰め跳躍、狙うは頸だ。構えは大上段……全力で今この一閃を振り抜く!
「
セツナノミキリ、
あれだけ固かった身体を豆腐か何かの様な柔らかさで切り裂いていく……!
「お、おおおおおおおおおおおお……!!!!」
「U,UUUUUUUOOOOOONNNNN!!!!!!!」
白銀公が絶叫する、いい加減くたばってくれ眠いんだよと言う思いを込めた一閃は頸に更に食い込み両断寸前まで進んでいく。
――――――――――待て、何か、おかしい。
俺の第六感がそう告げた。コイツに……白銀公にこのまま勝てる?いや、ない。絶対にあり得ない。コイツはこのまま黙ってやられる奴じゃないはずだ……!!
咄嗟に手を離し遮那王憑きを発動して跳躍する、次の瞬間。
「U,O"O"O"O"O"O"O"N"N"!!!!!!!」
白銀公の全身から氷の刃が生えてきた。自分の直感に素直で良かった、あのまま突っ張っていたら確実に死んでいた……!
だがもう正直な話、あれは正気を保っていないだろう。周りが見えているかどうかすら定かじゃない、まあ覇天却火が頸の3分の2以上を切り裂いているしな……寧ろなぜそれで生きているのかが不思議なくらいだ。無闇矢鱈に辺り一体に攻撃を撒き散らす姿からしてあのまま放置していても勝手に死ぬだろうが……あれほどの
いつだって、どんなゲームジャンルだって初見攻略に付き物なのはドラマ性だ。成功確率がどれだけ渋かろうとゲームというものはそういうある種博打の様なものはやはり必要になってくるわけだ。まあそもそもゲームというものは楽しむために存在しているわけだしな。じゃなきゃ何のためにゲームやってるのかわからん。
じゃあ最後に、恐ろしく強かった
【黒染矛双】を取り出し構える、驚いたことに白銀公が突っ込んできた……死の直前まで俺を殺そうと襲い掛かってくる姿勢には感服させられるよ全く。――――――が。
「雑すぎるぜその振り下ろしは……!赫衣竜装【戦燼】!」
俺を踏み潰さんと振り上げ、そして振り下ろされた右前足を赫き竜の幻影でもって弾き飛ばす。体勢が崩れたところを一閃……嘘だろまだ沈まないっていうのか。しかもまだ諦めることなく俺を噛み砕こうとしてくるのか。だがな白銀公……俺がお前に言った宣言は憶えてるか?
「こんな地下じゃ月だって拝めなかったろ……半月でよけりゃ拝ませてやる、その代わり……お前が朝日を見ることは、絶対に無い!」
「致命剣術【半月断ち】肆式」起動。横薙ぎに振り抜いた刃を返し、切り裂いた線をなぞる様に半月を描く。俺を噛み砕こうとした顎はほとんど半狂乱になっていた筈だというのに恐ろしい程に俺を正確に捉えていた。
音ゲーだろうが何だろうが、ボスを倒してケリが着く瞬間が最も寂しく。そして嬉しい瞬間でもある……終わりの時間だ。俺の首元にヒヤリとした牙が当たる。後数瞬遅ければ俺は間違いなく食い殺されていた。
「…………
さて、勝利の余韻に浸りたいところではあるが……ウィンドウを展開しユニークシナリオ……「白銀へと至る道」を確認する。なんて言ったってユニークシナリオ、それもあの化け物みたいな強さの狼が条件……間違いなく破格の恩恵だろう…………!!!
まぁ色々言いたいことはあるが結論から言えば俺は主に2つの理由からここからおよそ2日3日ほどログインを行うモチベを完全消滅した。