シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
話はつい4時間程前まで遡る。…………もっと具体的に言うなれば、白銀公を倒した直後までだ。
『雪獄の頂天は今堕ちた、故に代替わりの時である』
『ユニークシナリオ「白銀へと至る道」をクリアしました』
『称号【頂天氷狼】を獲得しました』
『称号【
『称号【
『「
「はー楽しかった!あーー、最高だった!!…………にしたって死ぬほど眠いな、ははははは!!!」
ポリゴンと化して白銀公が爆散し、ついでシナリオクリアをアナウンスするウィンドウが自動で現れたのを認識した直後俺は仰向けにぶっ倒れて爆笑した。
正直な話今なら不意に湧いて出てきた
白銀公が消滅してその姿を一振りの大太刀から二振りの小太刀へ戻った覇兎【赫竜】と覇兎【金龍】を拾い上げインベントリアに仕舞い込む。そして……忘れちゃいけないのがこいつだ。
「まさか、あんな使い方しても壊れず残っているとはな……」
そう、半ばヤケクソのように白銀公の口から体内に投げ刺した沼潜の短刀である。よく考えてみればこいつは覇兎の前身たる
さて、武器の回収は済んだ……次からが本命その1、白銀公の素材回収のお時間だ。
「いやあ……これ見ると達成感湧き上がってくるなあ……スクショでも撮っておくか?」
通常シナリオで出てくるエネミーは素材を落としたりすることがないそうなのだが、白銀公は何故か大量にアイテムをドロップしている。まぁラッキーだと捉えておこうか、ざっと見渡す限りで数十個はある素材の山……涎が出てきそうだ。どれ1つとして取りこぼしがないように慎重に辺りを確認しながらアイテムをインベントリアに放り込んでいくとやっと長い長い戦闘が終わったのだと言うことを実感する。
「はーー、全くもう、本当に神ゲーだなおい」
高難易度楽曲をAPした時とはまた違う爽快感だ、かと言ってクソゲーのクソ難易度クソバグ譜面なんかをひーこら言いながらクリアした時ともまた違う、何と言えばいいのか……妙に爽やかな気分だ。
そしてそこからシナリオ報酬を確認しようとした時、一件のメールが飛び込んできた。
「ん、ぁ?サンラクからメール?何だよ今いいところだったってのに……なにぃ!?「規格外エーテルリアクター修理完了されたし、試運転してみないか?」だと!?」
予定変更即断即決、迷うことなど一切なし。「すぐ行く」とだけ連絡を返し全力で落ちてきた縦穴を登っていく……
「情けねえ死に方ァァァァァ………………!!!」
落ちて死んでリスポーンした、締らねぇ……!!
◇◇◇◇
更にその数十分前。とある黄金の蠍との激闘を終え、水晶の大地で生ける水晶の蠍を己が背で育てる老蠍から命からがら逃げ切ることに成功したサンラクが神代の叡智を読み取らんと一晩中作業を続けていた若き古匠に情報量的にも物理的にも高出力な情報の飽和爆撃を叩き込みフリーズさせた後。
1人彼は自室へ繋がる兎御殿の通路を規格外エーテルリアクター片手に歩いていた。目的はたった1つ、そう、それ即ち……!
「くくくく……パワードスーツ1番乗りは俺に決まってるだろうが……!!」
思いっっっきり自らの欲望を満たすためである!!なお弁明として彼にもほんの一瞬葛藤があったことだけは明記しておきたい。「でもビャッコも俺と同じぐらい働いてたしな」「流石に1人で使うのはなぁ……」因みにそんなほんの一欠片の良心の呵責は「でも他の奴よりかは先に使ってみたいじゃん?」で打ち砕かれた挙句「ビャッコの奴化かしの枝葉の買い占めとか言っていたし仕返ししてやろう」という非常にペラッペラな理論武装で納得することにした。化かしの枝葉をビャッコから毟り取ってスケープゴートにしようとした結果だと言うことは都合よく記憶から抹消されている。
自室にたどり着き格納空間へと転移したサンラクは目的のパワードスーツが格納されているエリアへと進んでいく、そして防具立てに支えられているかのように宙に浮かぶパワードスーツの元へ辿り着く。
「ふふふふふ……パワードスーツ一番乗りはこの俺だ」
最早選ぶ時間も面倒くさいとばかりに何となく規格外特殊装甲の内の1つを選択してそれを調べ、パワードスーツの起動にはそれに対応する戦術機獣にリアクターをセットすればいいということを突き止めた。そして規格外特殊装甲【昇滝】に対応した戦術機獣、名を戦術機龍【青龍】にリアクターをセットする。
「ふはははは……さぁ、目覚めるがいい【青龍】よ…………!!」
だがサンラクは失念していた。規格外特殊装甲というものの性質……というより、ただ1つの当たり前の事実を。規格外特殊
結論から言えば、【青龍】を起動するところまではよかったが【昇滝】を一式装備で装着することができないため合体ができないという何とも心がへし折られる結果に終わったのであった。
「えぇ……嘘だと言ってくれよ……これじゃ頑張った意味ないじゃねぇかよ……」
こんなしょっぱい思いはしたくない、さらに言えばオイカッツォとペンシルゴンは合体も問題なく行えるのが更に腹立たしい……ん?待てよ?もう1人はどうだ?サンラクはいつもの4人のうちの1人、具体的には自分と似たり寄ったりの上裸の顔(狐面)を思い浮かべて非常に悪どいことを考える。
――――――どうせなら、アイツにも同じ思いを味わってもらおう。
どうせ遅かれ早かれこの事実には直面するのだからそのタイミングが早まっただけだし問題ないだろ!!そんな思いのもとサンラクはビャッコにメールを送りリアクターをその場に置いてログアウトした。リアクターさえ置いておけばビャッコは迷うことなく起動しようとするだろう、その場に止まっていると騙したことがバレてしまう、今めちゃくちゃ眠いしログアウトしてしまおう………………何とも酷い話である。
ビャッコがその真実を突きつけられるまであと5分。
◇◇◇◇
俺の目の前に、それはある。手を伸ばせば届く距離、だというのに合体は許されず、何なら起動すら行えない。漸く俺はサンラクがわざわざ俺に戦術機関連の話をしたのか納得が行った……あんのクソッタレ、自分も合体できないからって俺のことも絶望の渦の中に叩き込みやがった。しかもアイツが思ってるより深く今俺はダメージを受けてる。
なんせ戦術機獣の起動には頭装備を装備する必要があるらしいのだが……さて、今俺の頭には何が刻み込まれているでしょうか?
「あっっっっのクソドラゴンがァ……………!!!」
そう、ジークヴルムの
「い、いや……落ち着け俺よ。確かにパワードスーツが着れないことは残念だがまだお楽しみは待っているじゃないか!!」
シナリオクリア報酬をまだ確認していないだろうが!この際割とどんなものが来ても喜べる自信がある、何せ割と楽しみにしてたパワードスーツがこんな結果に終わったので。
「えーーーっと……「
対応した素材を用いて作られた装備を装備した量に応じてSTR、AGI、DEXを上昇させる。また、装備数に応じて「白銀残滓」を展開することができる
「……………………………………」
読み間違い、テキストを読み足りなかったかと思って一度スキルの説明欄を閉じて再度確認、うん、何も間違ってないね?
「何でこれも装備品依存なんだよ……」
神様、俺は何かしましたでしょうか?この仕打ちはあまりにもあんまりだと思うんです。ねえ神様?おいコラクソが返事くらいしろやマジでふざけてやがんのかギリギリこんなもん産廃じゃねぇか!!!!!
――――――いいやもう完全にやる気失せた。格納空間から現実空間へ戻り半分キレ散らかしながら目的の場所……ビィラックの鍛冶場へと向かう。
「おーーいビィラックゥ!!」
「…………ん、狐面の人か、なんじゃワ、リャァァァァァァァァァァァァァァァア!!!???」
何やら大量の金ピカ素材を前にうっとりしていたが知ったこっちゃない。
適当に雪獄群天狼と白銀公からドロップした素材をビィラックの目の前に叩きつける。
「これで沼潜の短刀をこう……いい感じに強化しといてくれ。あともう1個武器作りたいから……そうだな、刀以外でなんか頼む。それじゃ!!」
「ちょ。まちぃやワリャ!?何じゃこの素材見たことないぞ!?」
「また今度説明してやるからさ!とにかく頼むわーーー!!」
「お前ら2人っちゅうのはほんにふざけとんのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!!!」
遠くの方でビィラックが叫んでるが聞かなかったことにしよう。
そしてログアウトするべく自室へ向かう道すがらオルトに遭遇した。
「ビャッコさん、何をなされたんですか?凄まじいヴォーパル魂ですが……」
「ん、まぁちょっと色々あってな……とりあえず疲れたから寝るわ、今度は2、3日起きないけど目ぇ覚ましたらまたどこか攻略しに行こうぜ」
「わ、わかりました…………?」
すまんなオルト、俺のモチベーションは今萎びきっている。凄まじい眠気も相まって今ちょっと割と限界なんだわ。
自分でも雑な返答になっていることを自覚しつつ自室へ辿り着きベッドにダイブしてログアウト処理、2つの絶望に包まれながら俺は眠りにつくのであった。
◇◇◇◇
そして4時間後、現在朝の9時である。本音を言えばもう少し寝ていたかったがそうもいかない、何せ本日はキョウに昼飯を作ってやる日だからだ。割と毎日作ってはいるが本人曰く「いつもより気合い入った料理が出てくるから楽しみ」とのことなので手は抜けない。サクッと下準備とキョウの遅めの朝食の用意をしながら俺は今回で萎びたモチベーションをどうやって回復させようか思案するが……
「なーんにも思いつかねぇ……」
基本的に俺の気晴らしはゲームをするかランニングをするか料理を作るか竹刀か木刀を振るかな訳だが今回のモチベーションの下がり方からしてこう……ピンポイントに回復する様なものじゃないといけない気がする。となればゲーム以外の選択肢は除外するべきか。とはいえそんなゲームあったかなぁ……??
ぼんやりと朝食の為にフライパンに油を引き、熱してホットケーキの種を垂らして焼いていくと階段からゆっくりとショートパンツにキャミソールといった出立ちのキョウが大欠伸をかましながら現れた。
「ふ、あぁぁ……おはよこーくん、良い朝だね」
「おはようキョウ、今日も今日とて遅いお目覚めだな」
「そりゃ完全にオフの日だからねぇ、もちろん軽く素振りはするけどちょっとくらい生活リズムも崩したくなるものだよ。ところで朝ごはん何?」
「昨日の晩ホットケーキ食べたいって言ってたからホットケーキ焼いてる、あともうちょいで焼き上がるから用意して待ってな。後昼飯は俺特製の炒飯な、量食べたいなら午前中ガッツリ運動しとけ」
「やった、僕こーくんの炒飯好きだから楽しみ」
「はいはい、ちゃんと美味いの作ってやるから先着替えてこい」
「はーい」
まぁ、息抜き云々を考える前に飯を作るのが先かな。そう考えながら俺はホットケーキをひっくり返した。
【頂天氷狼】
取得条件 「白銀へと至る道」をクリアする
【
取得条件 「白銀へと至る道」をA+評価でクリアする
【
取得条件 天覇のジークヴルム由来の武器で白銀公と戦闘を行う
白銀集合のテキストに書かれているけどぱっと見じゃちょっと気付きにくいこと
装備品がどのラインかまでは明記されていない(ビャッコはここで引っかかった)。聡明な読者諸君ならわかったことでしょう。