シャングリラ・フロンティア〜音ゲーマー、神ゲーに挑まんとす〜 作:トレセン暮らしのデュエリスト
「はぁいこれで6連勝ォ!!ブランクありの俺相手に流石に弱すぎませんかねェ!!?」
わらわらと群がってくる以前の借りを返したそうな方々を片っ端から叩きのめしてあれよあれよの6連勝、とはいえやはりブランクは大きいな……以前なら仕留めれた状況下で止めを刺せないことが何度かあった。とはいえ向こうの方で吠え面見せてるあいつら見てると何と言うかこう、浄化されてる気がする。
「クッッッソ腹立つあの野郎ォォォォォォォォ!」
「どうにかして吠え面かかせてやりてぇ……!!」
「けどあの速度に対応できなきゃどうにもならんしなぁ」
「
「あの人今確か国外遠征してるよ、今ウチと戦争中のアルセリアの他にも軍事行動起こしてる他国の諜報とか何とかで」
ロクさん?あぁ確かレコンガイヤの国内ランキング1位の人だったかな、あの人に結局勝てなくてそのまま新作音ゲーに蜜に群がる虫が如く吸い寄せられた俺はこのゲームを引退したんだったか。
「おっ、マッチした。対戦よろしくお願いしまーーす」
『フシューー……フシュー…………!コロス……コロス……!コロシテオマエノアタマモギトッテトロフィーニシテヤル……!!』
「何それこっわ」
えーと、対戦相手の名前は?「タマモノウマ」?それ名前大丈夫なの?というかランキング5位の人なの?数ヶ月前のランキング5位は確か別の人だったような……でもなんか俺に恨みありそうなんだよな。馬形レコンドって割と珍しいから以前マッチングしてたなら覚えていそうなもんだが記憶をほじくり返してもそんなレコーダーはいなかったぞ?
色々と疑問符が頭に浮かぶがまぁ今はこの戦闘に真剣に取り組むとしよう、というかちょっとでも気を抜いたら操作トチって自殺しかねない。
(にしても馬形レコンドか……厄介な)
馬形レコンドの特性は武装を多く装備できるところにある、つまり乗り手1人1人で武装の構築が違うのだ。高機動型、馬力に物を言わせた脳筋カスタム、俺が見かけた限りで最も尖った構築はあれだな、要塞構築。武装の8割程を耐久を守るための武装に換装し主武装は前面に取り付けた連邦式:突撃槍「ヘヴィメタル」のみとかいうトンチキ構築だ。あれは厄介だった、鈍足でこちらの動きについて来れないのは当然なのだが問題は余りにも装甲が硬すぎて
そりゃまぁ数ヶ月離れていたからな、新武装なんかも追加されているだろう……何とかできる範囲で武装を把握して構築傾向を割り出していくしかないか。
そんな考え方は甘かったと、俺はこの数十秒後に痛感することになった。
◇◇◇◇
「クソッタレ……!!なんだそのトンチキレコンドはよぉ!!!」
『これこそがレコンガイヤ馬形レコンド構築議論の現行最強構築!!逃げて差し切るフルスロットル型ぁ!』
律儀に答えてくれてありがとうっつーかそりゃマジの
「いやでもこれ俺が思ってる3倍くらいガチっぽいな……?」
何が厄介ってブーストが。あの野郎レコンドの方向転換に小型のブースターを超高速で何度もフカして出来るだけ最小のモーションで旋回してやがる、小回りがし辛い馬形レコンドの弱点を上手いこと潰してやがる。それに距離の詰め方も上手い……なるほど伊達にランキング5位を名乗ってるだけあるなこれは。
「一撃入れればゲームセットなのはお互い様だが中々骨が折れるなこりゃ……」
こっちは咆哮を、向こうは兎に角何でも良いから1発攻撃を俺に当てること。それだけでこの戦いに決着がつくという非常にシンプルなものだがいかんせんこのゲームにおいてそんな甘っちょろい考えは即座に捨てるべきだ……まずはあのレコンドに取り付けられた兵装を割り出していかね、ば……!?
『移動曲、「
「げぇっ!?お前馬形レコンドでそれは出来なかったはずだろ!?」
移動曲「縮地」……小型ブースターを一定数以上取り付けて、適切なタイミングで発動した上で若干リズムを
「そのブースター、一体幾つ積んでやがんだ……!?」
『聞いて驚け25個ぉ!』
通りでそんなにぬるぬる曲がれるわけだわこの野郎!というか逆にそれよく操作できるな!?
機動性を直進か大回りなカーブくらいしか出来ないラインまで捨て去ったはずの馬形レコンドが足回りから小さな爆発を何度も起こしながらぬるりと弧を描くように旋回し俺の駆るハクアレンコの最強の砲撃から身を躱わす。次の瞬間前足に取り付けられていたのだろうブースターが炸裂し大きく振り上げ……あれこれもしかして操縦席の俺ごと潰す気じゃね?
「おおおおおおおおあっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
咄嗟に全力で後ろへ飛び退き即死の踏み付けからは回避を果たすも今度は踏みつけられた大地を中心に亀裂が走っている……ん?何だこれ少なくとも俺がやってた頃こんな攻撃はなかったはず――――――――
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」
衝撃波が大地から放たれゴリゴリとハクアレンコの耐久を削っていく、俺が望んだが故に
(今のところわかってる兵装はあの脚部に取り付けられた小型推進力強化装置【爆竹】とあの衝撃波くらいか……馬形レコンドって確かもう少しくらい兵器載せれたよな?であればもう1つか2つくらい何かしら警戒しておくべきか)
機動力が死にきっている以上出来るだけ使いたくはないが
とはいえ武装は超インファイト特化の構築、相手もそれを理解しているからこそさっきの衝撃波を放つ兵装なんか取り付けているんだろうし。さてどうしたものか……と、言っても解決策というか今の状況を1発でひっくり返せる切り札はあるにはある。ただその切り札が今この状況下だと
(不意にパチリと脳内の電灯が灯り隠されたシルエットが浮かび上がる)
――――――――汝、恐れること勿れ。エナドリの神は何時の望みを全て叶えるであろう。(不意に脳裏に浮かぶ破壊槌を携えたミノタウロス、ゾンビ、消防士に少年がグッとサムズアップする幻覚および幻聴)
あ、あなた方はライオットブラットの!?よーしエナドリの神様が天啓くれたぜ、やっぱりゲームする前にしれっと飲むエナドリは俺達の迷いをいつも断ち切ってくれる最高のアイテムだぜ!
それではいざ起動、『
◇◇◇◇
(
レコンガイヤ連邦国レコーダーランキング5位、タマモノウマは歓喜していた。
最近はたいした歯応えのある戦闘が出来ず不完全燃焼気味であり、どうせ今日も身内には強い奴はいないだろうから単身敵対国であるアルセリアにでもカチコミをかけてこようかと準備し、さぁ行くぞと腰を上げた瞬間齎されたかつてのランキング2位「ハクアレンコ」……ビャッコの復帰。遙かな昔彼の駆るハクアレンコの餌食にされた哀れな被害者の1人でしかなかった彼を支えたモチベーションが「打倒ハクアレンコ」であったが為に余計にその情報は彼の脳髄を揺さぶり己が身に宿す灼熱の闘志は燃え盛った。あの時の自分とはもう違う、環境に蔓延っていた「ガン待ちトラップスパイダー」の構築をまるまるパクってランク戦を走っていた過去の自分とは。
誰も思いつかないような構築……そう、ハクアレンコを
さて、ここで彼には1つ大きな誤算……というか、誰も知らないことがあった。
それ即ち、「ハクアレンコは今までの戦闘で1度も最高速度での駆動を見せたことがない」ということ。そしてこの誤算は最低最悪の形で牙を剥くこととなる。
「GU,GURUrururururururu…………Wooooon!!!!!!」
バチリ、とハクアレンコの白磁色の鋼の肉体に似合わぬ黒雷が迸った。その現象に対してタマモノウマは一切動じることなく『
――――――音源解放。格闘ゲームで例えるなら
そのパッチ内容とはズバリ、「音源解放時全挙動にノーツ判定を付与」というものである。これがまぁやり辛い、何せ今まで兵装を音ゲー運用はしてきたもののレコンドの操作自体にまでその判定を強いられるとは思っていなかったからである。オートマ車からいきなりクラシック車に切り替えると言えば伝わるだろうか。そんなわけで弱体化を施されて以降の音源解放は「負け寸前の人間の負け惜しみ」やら「悪足掻き」などと呼ばれるようになり自然と産廃扱いを受けるようになっていったのだった。
そんな扱いを受けている音源解放を発動した、つまり事実上のサレンダー宣言を受けたタマモノウマはほんの一瞬ではあるが気を抜いた……そしてその気の緩みは、彼の敗北に音速の速さで繋がることとなった。
「――――――――――――――な」
「負けなんて誰が言ったよ」
次の瞬間には凄まじい勢いで肉薄してきたハクアレンコが足元に超低姿勢で攻撃の構えをしていた。
咄嗟にブースターを吹かそうとするもそれより早くハクアレンコが黒雷を纏った爪で
「――――――――――詰みには違いねぇが、一矢くらい報わせろやこの野郎!!」
確実に勝てるのならそれでよし、こちらが負けると言うならば、せめてお前諸共死に晒せ……そんな想いから取り付けられた自爆兵装【
(は?何で?何で?ハウリングブレットのチャージが終わるよりも早く俺がレバーを引く方が早いはず、ましてや首元の攻撃の余波がコクピットにまで届くなんてそんなの
そう、通常であればレバーを引く方が間違いなく早かった。なのに何故かハクアレンコが備え持つ最強の兵器の起動の方が早かった……もうお察しの通り、音源解放によるバフである。
ポリゴンと化していきながらタマモノウマはその事実を正確に認識しながら砕け散っていったのだった。